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異能力者がいる世界  作者: 雷田矛平
二章 炎の錬金術者、来襲
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三十五話「放課後デート1」

 由菜との放課後デートを約束したその次の休み時間。

 トイレにでも行こうかと、イスから立ち上がろうとした彰は、


 クラスの男子生徒達に机を囲まれる。


 まだ座っている彰は、人の壁に視界を(さえぎ)られて周りが全く見えなくなる。

「………………おまえらどうしたんだ?」

「それは自分の胸に手を当てて考えればいいんじゃないかな?」

 そのうちの一人がにこやかに、……あくまで表情はにこやかに、そう告げる。

 その圧力に屈した彰は、言葉どおり胸に手を当てて考える。


 ……俺が何をした?

 一年二組の生徒たちは無駄に元気だが、理由なくバイオレンスに向かうようなやつらではない。

 ………………だが、理由があれば……。


 思い出されるのは、前の休み時間に恵梨が声をはりあげて由菜とのデートを取り付けたこと。


 思い出されるのは、そのとき当然だが教室に男子生徒たちがいたこと。


 思い出されるのは、彼らが「リア充、死すべし」という志を持っていること。


 ……………………。

「……落ち着けみんな。暴力はいけない。そう、人は対話をすることで衝突を避けられるんだ。……人類皆兄弟って言うだろう」

「そうだな(バシッ!)」

「彰は良いことを言うよな(ドカッ!)」

「死ね!(ボスッ!)」

 囲んだ男子生徒たちが攻撃を始める。


 しかし、その威力はあくまで冗談で通じるほどの物だ。理由は本当に冗談だからではなく、周りにクラスメイトの女子の目があるためである。(ねた)みにまみれて本気で攻撃する姿など見せたら、彼女を作ることなど夢のまた夢になってしまう。

 他人が抜け駆けして幸せになることは許せないが、自分は幸せになりたいという男子たちの考えが見て取れた。


「ちょ、ちょっとやめろよ、おまえら」

 真面目に見せかけて本当はケンカ慣れしている彰にとってはそこまでダメージはないのだが、今の一年二組の男子生徒たちは下手をすると不良よりも迫力がある。

「何をやめるんだ?(ガシッ!)」

「ただの冗談だよ?(ボキッ!)」

「死ね!(ボスッ!)」

 ……一人ほど冗談では済まないような生徒もいたが。


 それはチャイムが鳴って先生が教室に入ってくるまで続いた。




 放課後。

「くそー。今日は散々だったぜ」

 彰はぼやきながら会議場を去って歩きだす。


 三時間目の休み時間。

 また男子生徒に囲まれそうになった彰が取った策は、授業後即座に由菜と雑談を始めることであった。

 女子の目の前では攻撃をできない以上、男子生徒は諦めるしかない。

 そうやって彰は今日一日を過ごした。


 文化祭についての会議は、朝同様に放課後も各々の主張が飛び交い、騒然としていた。

 二年生、特に三年生の主張が激しく、一年生の立場は不憫なほどだった。彰が一年二組の代表として自分の意見を言うこともできないほどである。

 一年生が部長になることはないので、その場に一年生は各クラスの学級委員長しかいなかった。辛い立場に妙な連帯感ができて、会議場ではお互いに目で励ましあっていた。

 結局ほとんど何も決まらずに会議は終わった。


 由菜との待ち合わせ先である校門に、彰は向かう。

 恵梨と一緒に住んでいることがばれたときは放課後に男子たちが彰に攻撃に来たが、今日は彰が会議があったためそれは成されていない。

 今は大半の男子生徒がもう部活に行っているため、今日の襲撃はもうないだろう。

「おーい、彰」

 校門が近づくと、すでに待っていた由菜が彰を見つけ声をかけてくる。

 彰は小走りで駆け寄りながら返事する。

「待たせたな」

「待ち合わせに女の子を待たせるなんて、それでも男の子なの?」

「すまん、すまん。会議が長くなってな」

 詫びを入れながら、二人は歩き出した。

 デートの始まりである。





 二人は隣り合って歩きながら、目的地であるスーパーを目指す。 

 彰と由菜は幼なじみだ。

 だから放課後デートみたいなことぐらいはしたことがあるのではないか? と思われるだろうが、


 き、き、緊張する……。


 彰の隣で、由菜は内心そう思っており、答えはノーだ。


 小学生の頃、学校帰りに公園などに遊びに行ったりはしたがそれはデートと呼べる物ではなかったし、中学生の始めの頃は彰が不良となっていたため二人で帰ることはなくて、中学生の終わりの頃は受験勉強が忙しく、高校生になってからはまだ日が浅くていろいろと忙しかったためそんな機会がなかった。


 しかし、彰はそんなことにお構い無しに自然体である。

「放課後の会議もひどかったぞ」

「そ、そうなの」

「あの混沌がGW明けにまたあると思うと、本当辛いぜ」

「へ、へえー」

 由菜は一応は返事をしているが、半分が上の空である。

 最近は恵梨が彰の家に住み始めたため、久しぶりの彰との二人きりに、由菜はテンションが定まらない。


 しっかりしなさい私! 由菜は自分に喝を入れる。

 そしてそこは長年一緒に過ごしてきた幼なじみ。テンションがじきに安定する。

「今日はやたらと男子に絡まれていたね。どうしたの?」

「ああ……それは聞かないでくれ」

「彰もきちんと委員長をやっているわね」

「何故このタイミングで? とは思うが、ありがとな」

 二人は学校生活を話題に盛り上がる。




 しかし、由菜は気づいていなかった。

 今はただ二人で歩いて話しているだけだ。

 そんなことは今までも登下校するときや、家が隣で帰り道が同じなので何回も合った事なのだ。


 しかし一緒に買い物なんてほとんどしたことが無かったし、二人で喫茶店に入ったりなどは全くしたことが無かった。


 二人はスーパーの前にたどり着く。


 そう、放課後デートの本番はこれからだった。

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