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異能力者がいる世界  作者: 雷田矛平
十四章 異世界間幕
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三百十三話「認識阻害」


 気絶したステニーを風の錬金術で作り出したワイヤーで縛り上げる。


「しかし手応えの無い相手だったな。いや勝てるに超したことは無いんだが」


 彰が覚える贅沢な不満。

磁力マグネット』を『無敵』と騙っていたのは良い発想だったがそれだけ。

 もっと磁力のことを分かっていたら、ガウス加速器による金属の超速投擲や、リニアモーターカーのように超高速移動したりなど色々工夫出来たはずだ。

 異世界だから知識が無かったことが悔やまれるな。




「……っ!? ステニー様が!」

「あのガキ!」

「こうなったら能力者がなんぼのもんじゃ! 寄ってたかって殺すぞ!」


 ちょうどそのとき彰を探しに行っていたステニーの部下たちが戻ってきた。


「やれやれ。後始末までしないといけないか。まあ数はいるみたいだし……ちょっとくらいは楽しませてくれよ」


 風の錬金術を発動、荒くれ者どもに突っ込んでいった。






 それからしばらくして。

 ステニーの部下たち7人が束になろうと、無能力者では彰の敵では無い。危なげなく戦闘を終わらせた彰は倒したやつらをそれぞれ縛っているとガヴァの警備隊がやってきたので引き渡す。

 合わせて8人が連行されていく姿を見て一件落着だと一息吐いて――――。


「……ん? 1人足りなくないか?」


 彰が倒した『反逆者ノースキル』は宣戦布告で1人、ステニー、そして最後まとめてかかってきた7人で合計9人のはず。

 しかし縄に付いているのは全部で8人。今現在この場にいないのは……。


「あいつ……『磁力マグネット』で逃げやがったな」


 肝心のステニーがいない。どうやら部下たちと戦っている間に逃げたようだ。


 ステニーがいた辺りに拘束に使っていたワイヤーの残骸が落ちている。

磁力マグネット』で反発させても簡単に解けないように雁字搦めに縛ったんだが……ダメージを気にせず無理矢理解いたか。


「やれやれガッツはあるみたいだな……」


 彰は『風靴エアシューズ』を発動。まだ遠くには行っていないはずだと判断して捜索に入るのだった。






ーーーーー






「くそっ……俺がこんな羽目になるなんて」


 満身創痍のステニーは体を引きずりながら逃げていた。

 目立たないように表通りを避けて、ガヴァの裏通りをのそりのそりと歩いて行く。


「あのガキめ……覚えてろよ……」


 ここから『反逆者ノースキル』の支部に戻り、治療を受け応援を要請。今回よりも大人数を動員して必ず潰してやる。あいつが守っていた女どもも嬲ってやって、『反逆者ノースキル』に楯突いたことを後悔させて――――。




「なっ……」


 バタン、とステニーが転んだ。


「くそがっ……!」


 悪態を吐きながら立ち上がろうとするが……ふと違和感を覚えた。

 俺はしっかりと足下を確認していた。何も無かったはずだ。ダメージが酷いとはいえそう簡単に転んだりするか?

 まるで今のは何かに足を引っかけられたような感覚で……。


「ぐえっ」


 立ち上がろうとしたステニーが上からの圧力によりその動作を中止させられる。

 まるで誰かに背中を踏まれたような感覚だ。


 しかしそれはおかしい。この裏通り、ステニーが見える範囲には人っ子一人いないはずなのに。




 極めつきに。


「質問です。あなたたち『反逆者ノースキル』は今回誰の命令で動いていたんですか?」


 誰もいないはずなのに明確に問いかけられる。




「………………」


 能力者か? 姿を透明にする力……だとしたら魔力の認識が朧気なのが不可解。今の声、声色から男か女か全く認識できなかった。姿、声、何もかもを認識させなくする能力……。


「『認識阻害(ジャミング)』……辺りか?」

「分かったところであなたに何か出来ますか?」


 正体不明の能力者の言うとおりだ。地面に這いつくばり抑えられて自分には抵抗不可能。




「ちっ……あのガキといい、何なんだよ、一体! いいよなぁ、おまえらは有用そうな能力で! こんな使えない能力を渡されたやつの気持ちが分かるのか!!」

「…………」

「誰の指図でもねえよ! 能力に恵まれているやつは悪だ!! 敵だ!! 全員ぶっ殺してやる!!」


 ステニーが喚いたところで。




「やっぱり追っ手では無かったようじゃな」


 相変わらず正体が掴めない声。だが話しぶりからして先ほどとは別人のようだ。


「そのようですね×××お嬢様」

「まったく××は気にしすぎじゃ」


 二人が話しているが『認識阻害ジャミング』のせいでステニーには名前が認識できない。


「やつらとこいつらが繋がっている、という噂も耳にしましたので」

「……だとしたら世も末じゃな。それでこいつはどうするんじゃ?」

「×さんならすぐに逃がしたことにも気付くでしょう。放っておいても大丈夫です」




「くそっ……」


 ステニーがこれまでのダメージで意識が朦朧としてきた中、二人の会話は続く。

 個人を認識する情報が全く得られない、だがその話し方を昔、どこかで聞いた覚えがあった。


 そうだ、まだ俺が貴族だった頃、国王の城にパーティーで呼ばれて、無邪気な話し方、ただ恐れ多くて近づけもしなかった。


 その名前は、このクソッたれた世界を作った者、この国の中心的人物――――。






「レリィ・スタリシア……第一王女……」


 それだけ呟くのが限界でステニーは意識を失うのだった。






「……どういうことじゃ? 『認識阻害ジャミング』を『強化ブースト』したのにバレたのか?」

「少々話しすぎましたかね。まあうわごとのようだったので大丈夫でしょう」

「そうか。じゃあ妾らも帰るぞ」


 認識できない二人が足音だけを残し裏通りを去って行った。


十四章 彰・由菜ルート 了


次回から雷沢・恵梨・彩香ルートになります。

その後火野ルートをやった後、十五章でまた彰ルートに戻ってくる予定。


1ルートでもまあまあ量あるのに3ルートも作るなんて過去の自分は何を考えてんだろうか。

今回彰ルートは異世界の基本的設定をやっていきました。最後に判明した情報やらを受けた展開は十五章で。

……このペースだと一体いつになるんでしょうね。

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