三百十二話「VS『無敵』? 能力4」
『無敵』の能力者を騙るステニーは、その昔スタリシア王国の貴族の家に生まれた。
領地は狭く、王都から遠く離れた辺境だったため力はそんなに無かったが幼いステニーにそんなことは関係なかった。
優しい両親の元、その愛を受けながら、すくすくと育って――。
ある日、貴族としての資格を失った。
決闘、力なき者を追いやることの出来る決まり。ステニーの父親は能力を持って戦い、敗れた。
屋敷から、領地から追われる間に家族とも離ればなれとなったステニー。
その上、不幸にも『反逆者』に襲われて――。
「何だ、この能力は……!!」
「攻撃が通らない!?」
「無敵じゃねえか!!」
荒くれ者たちが持つ斧や剣を弾き飛ばして何とか身を守った。
とはいえ多勢に無勢。結局はやられるに過ぎない、そう思った矢先に。
「その能力は確か、先日貴族を追われた…………くくっ、なるほどな」
『反逆者』の現リーダー。
「いい目をしている。おまえ今の能力者社会を憎んでいるだろ?」
「…………」
「決まりだ。付いてこい」
彼に見出されてステニーは『反逆者』に入ることとなり――今へと至る。
ーーー
ところ変わらず、ガヴァの中央広場にて。
「さっさとあのガキを見つけてこい!!」
ステニーは部下たちに怒鳴る。発破をかける半分、ストレスの発散が半分だ。
ちっ、あのガキにまんまと逃げられるなんて……。
にしても咄嗟に引き寄せる方の力を使っちまったな、こいつらには見られていないし大丈夫だろうが、無敵のイメージと違うあっちはなるべく使わないようにしないと。
あのガキはその身で体験しただろうが……だからといって俺の能力の仕組みがバレるはずが無い。
ハッタリとして『無敵』と呼んでいるが、この能力に本来名前は無い。
この能力は両親から聞いた話によると、昔はBランク規模の魔力は消費するのに何も起きない能力だと思われていたらしい。
だが一族による長年の試行錯誤によりどうやら自分の体に謎の力を帯び、周囲の金属に謎の力を付与することで反発させたり、引き寄せたり出来るということが分かった。
ただそれだけの能力。だがそのことを知らないやつらを欺くには十分だ。
『無敵』という虚構がバレないようにいつも細心の注意を払っている。
みんなが使っている斧は使えない。周囲の金属を無差別に反発させてしまうから。だから愛用ということにした木刀を使っている。
部下から事前にガキの能力は聞いていた。金属の生成、相性の良い、『無敵』神話の崩れない相手。
ただガキには逃げられてしまったが……いやこれは逆に使えるか。あいつは俺の『無敵』を破れそうにもないから尻尾を巻いて逃げたということにして――――。
「まだここにいたのか。探す手間が省けたぜ」
空からさっきのガキが降ってきた。着地すると履いていた緑色の靴が風となり消えていく。
「こっちこそだ、尻尾巻いて逃げ出したかと思ったぞ」
「人質なんて取ろうとする卑怯さには敵わねえよ」
「ガキには分からねえようだから教えてやる。力ある者のすることは何だって正義なんだよ」
二人とも逃亡により戦闘が一時中断していただけという認識なのだろうか、お互い冷めること無く既に臨戦態勢だ。
「……はんっ、確かにそうかもしれねえ……なっ!!」
またしても彰から仕掛けた。ナイフを数多く生成しての投擲。
ステニーは考える。
馬鹿の一つ覚えのようだな。続けていれば無敵を破れるとでも思っているのだろうか。
だがさっきの風が爆発するナイフがあったら面倒だ。
爆発しても影響が無いようになるべく近寄らせない内に反発させる……!
そうしてステニーに一切近づけないままナイフは弾かれていき――。
「痛っ……!」
ナイフに紛れて放られた投石が直撃した。
投石……!?
一体いつの間に……ナイフをブラインドにして……いや、だとしてもどうして……ナイフをカモフラージュに本命の投石……それは、俺の能力を理解していないと…………。
「まさか……!!」
「やっぱりな」
投石をヒットさせた彰は自分の考えが正しかったことを確信する。
この異世界は能力により発展した世界。それ故に基礎的な科学に関する知識さえも無いのだ。
能力『磁力』、磁力を操る程度の能力が『無敵』だと名乗ってこれまでバレなかったのもそのせいだろう。
それを理解していなかったから俺もハッタリに騙された。由菜のおかげで助かったな。
ここまで分かれば攻略法は簡単だ。敵は自分の能力の仕組みがバレるなんて思ってもいないんだから、こんなちょっとした工夫だけで隙を突ける。
ステニーが怯んだ瞬間に彰はダッシュで距離を詰めながら右手に緑の剣を生成する。そのまま振りかぶって――。
「まだだ……!!」
投石により逸れた気をどうにか正面に向けるステニー。
ガキは剣を振りかぶってこちらを斬ろうとしている。俺の能力の再使用が間に合わないと思ったのか?
だがお生憎さま、俺は復帰したし能力も間に合う。
剣を弾き飛ばせばそのまま勢いでガキも体勢を崩すはず。そこにカウンターでこっちの勝ちだ……!
そうしてステニーは『磁力』を発動。
彰が持っていた剣がすごい勢いで弾き飛ばされて――しかし、彰の前進する勢いは落ちない……!!
「なっ……!」
抵抗なく吹き飛ばされた剣。
まさか本当は……剣を握っていなかった……!? 空中での操作で持っているように見せかけて、俺の能力使用を誘い……致命的な隙を作り出すために……!!
「おらぁっ!!」
「ぐはっ……」
彰はそのまま握りしめた拳でステニーを殴りつける。虚を突かれたステニーは防御することも出来ずに殴り飛ばされた。
「能力だけじゃねえ。素手でのケンカも得意なんでな、俺は」




