三百四話「宴会」
火野たちはムギシャ村を一通り案内してもらった後、村人の好意で空き家に寝泊まりさせてもらえることになった。
山火事を防いだこと、滅多に変化の起きない田舎に突然現れた来訪客、そして何より火野兄妹の人柄が好かれたようで、夜には村の広場で宴会が行われることになった。
「そこで剣を構えながら俺はこう言ったんや『甘かったな』って」
「ひゅーかっけー!」
「やるじゃねえか、火野のあんちゃんよぉ!」
「もっと聞かせてくれー!!」
「うーん……そんな戦闘あったっけ?」
村のおじさんたちに囲まれて光崎も聞いたことのない武勇伝を語る火野。
「え!? 電気が無いって、じゃあ洗濯機も冷蔵庫もテレビも無いんですか!?」
「何だい、それは?」
「電気ってのは……そうだねえ、貴族様の能力で聞いた覚えもあるけど」
「本当に違う世界から来てるんだねえ」
理子ちゃんは反対に村のおばさんたちに囲まれている。光崎たちが能力者であることや異世界から来たことは皆に共有されている。
「楽しんでいるかい」
そんな集まりを遠巻きに眺めていた光崎の元にクラルがやってくる。
「離れて大丈夫なんですか、『言葉』の範囲は」
火野たちが異世界で言語が通じているのはクラルが発動している『言葉』のおかげである。
「ああ、十分範囲内だよ。もっとも彼なんかは『言葉』なんて無くてもコミュニケーションが取れそうだけど」
火野の打ち解け具合を見てクラルが苦笑する。
「そうですね……」
「君たちの目的、一緒に異世界に来ただろう仲間と会う、という目標の大変さは分かるが、あまり思い詰めても仕方ないと思うよ」
光崎が一人思い悩んでいるように見えたのか、クラルは息を抜くように言う。
夕方、落ち着いたタイミングで光崎は雷沢から教わっていた知識から現況を推測。同じ異世界にいるはずの仲間たちと出会うという、他のみんなと同じ目標を立て、火野、理子、ついでに聞いていたクラルと共有している。
「いえ悩んではいたんですけど別のことで」
「別?」
「はい。タッくんは今頃どうしているんだろうな……って」
お約束として同じ異世界の別々の場所に飛ばされただけ。雷沢の言葉を疑うという思考回路は光崎には存在しない。
夜空を見上げる。同じ空の下にいる。でもどんな状況なのかは分からない。
無事に決まっている……でも……。
「タッくん……幼馴染の能力者、だったか」
「はい」
「……その、聞いたところ『電気』の能力者だというのは本当なのか?」
歯切れ悪そうに聞いてくるクラル。
そういえば夕方に話した時もそこが気になっていたみたいだけど……。
「はい、そうですよ」
「そうか……なら…………いや……だが……」
表情がコロコロと変わるクラル。まだ今日一日と短い付き合いだが、その間もずっと飄々としている態度を崩さなかった彼にしては珍しい素の様子だ。
「それって……」
気になって光崎が問いかけようとしたそのとき。
「よーし、ならそいつは俺たちが倒してやるで!!!!」
火野の大きな声に続き、おっさんたちから歓声が上がった。
もう、火野君ったら、何か知らないけど安請け負いしちゃ………………俺『たち』?
「どうしたの、お兄ちゃん?」
大きな声に気になったのか理子ちゃんもその輪に入る。
「おお、理子。それと光崎さんも聞いてくれや!!」
火野は少し離れた位置の光崎にも話を振りながら宣言した。
「俺たちでこの村に被害をもたらす――ドラゴンを退治するで!!!!」
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異世界に降り立った彰たち。
まだまだ物語は始まったばかりである。
<十三章 異世界序幕 完>
十四章 異世界間幕 へと続きます。視点は彰たちに移ります。
その前に作者近況と本編現状をまとめる話を差し込む予定。




