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異能力者がいる世界  作者: 雷田矛平
十三章 異世界序幕
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三百一話「襲撃/罠」

お久しぶりです(4年振り)

ちょっとずつ投稿していく体制を作ってます。この話自体は昔書いたまま投稿してなかったやつです

この章があと4、5話くらいで終わるのでそこで積もる話をする予定です


 翌朝。


「理子、起きろ!!」

「お兄ちゃん。もう、何!?」

 兄である火野に揺り起こされた理子は。


「ごめんね、いきなり。でも――」

「敵襲や、逃げるぞ!!」


 既に臨戦態勢に入っている光崎と火野に。


「……え?」


 寝起きで回らない頭はその言葉を処理できなかったが、火野に手を引っ張られる形でテントの外に出て気づいた。

 昨日撒いたはずの荒くれ者たちが自分たちに迫っていることに。


「ええっ!? 何であの人たちがここに!」

「分からん! でも逃げるしかないやろ!!」

「いや、でも荷物とかまだテントの中で……」

「言ってる場合か!」


 現代世界から持ってきた荷物にテントなとのサバイバル用品もまだ広げたままだ。しかし、それらを回収する余裕は無い。

 三人は身一つで森の中に投じるのだった。




 その後、火野の錬金術によるナイフでの牽制、光崎の目映い光や屈折率操作を駆使しながら逃げることでどうにか荒くれ者を撒くことに成功する。

 周りから見えないように藪の中で小休止する三人。


「とりあえず一段落……と言いたいところやけど」

「うん、妙だよね」


 火野と光崎は状況を確認する。

 一番の疑問は昨日完全に撒いたはずの荒くれ者たちがどうして自分たちの場所にたどり付けたのか? ということ。

 火野は朝、野生の勘とでも言うべき気配察知で敵に気づき、光崎を起こし、そして理子を起こして間一髪逃げたという次第だった。

 そのためどのように敵が自分たちを探したのかは分からずじまいである。


(どういうことだろう……こういうときタッくんなら)


 幼なじみの顔を思い浮かべながら思考する光崎。

 どちらかというとおっとりしており、戦いに向いていない光崎だが、中二病である雷沢によってどんな異常事態にも対応し得る知識はたたき込まれている。


「もしかしたら……」


 その結果、ある可能性に気付く。




「気付いたこと教えてもらえますか、光崎さん」

 理子が口を開いた。


「うん、いいけど……その、大丈夫かな理子ちゃん? いきなりこんなことに巻き込まれてるけど……」


 火野はこれまで科学技術研究会との戦いに幾度と無く身を投じ、光崎もアジトを強襲する作戦に参加したことがあり荒事には慣れている。

 しかし理子はこれまで一度も戦いに参加したことがない。

 だからこの事態に参っているのではないかと、光崎は心配をかけるが。


「大丈夫じゃないですよ。荷物もせっかく持ってきたサバイバル用品も手放すことになって……あの人たちには一泡吹かせなければ私も気が収まらないんです!!」


「おっ、調子出てきたやないか」


 流石兄妹といったところか、好戦的なところを見せる理子。


「分かった。じゃあ作戦の説明をするね」








 その男、荒くれ者たちの頭領は逃げた三人の能力者の行方を探していた。


「○×△」


 能力発動を異世界の言語で唱える。

 その男が身に宿すのはCランクの能力『魔力視』。

 能力者が能力を使うことによって生じる残存魔力を見ることが出来る能力。最大で一日前に使用された能力の痕跡すらも関知することが可能だ。

 それによって部下から消えたと報告された能力者どもの行方を追ったのだった。


 そして朝、やつらが潜んでいるだろうテントを見つけて、しかし血気盛んな部下が拙攻してしまった。テントを囲んでから襲撃すれば逃がすことも無かっただろう。

 結果やつらに気付かれてまたも追走することになっている。


 だがそれも終わりを迎えようとしていた。


 残存魔力が濃くなってきた。

 先ほど使用されたばかりの能力。つまり三人も近くにいるということ。


「…………」


 やつらの能力、その事象改変度から見てBランクだろう。

 つまりは貴族に連なる者たちだ。

 その身柄を抑えることが出来れば大きいし……最悪殺しても貴族どもにダメージを与えられるならそれでいい。




 そして見つける。残存ではない魔力反応。

 何も無いように見えるが……魔力反応がある以上そこには何かがある。敵の中に姿を隠す能力がいることはこれまでの接触から明らかだった。おそらくそこに隠れているということか。

 かくれんぼも終わりだ。

 男はその場所に踏み込んで。


「○×△……!?」


 ガチャリ、と。

 赤いトラバサミにその足を挟まれるのだった。






「やっぱりそういうことだったんだ。能力者を、魔力を追うことが出来る能力者がいた」


 男が罠にかかった場所の近く、藪に隠れたまま光崎は呟いた。


 最初の違和感はどうにも敵が能力を見て驚いた様子がないことだった。

 そのことから敵は能力者であるor能力のことを知っていると判断。

 未だこの場所が異世界であると気付いていない三人ではあるが、戦闘における認識ならそれで十分。


 完璧に撒いたはずの敵が自分たちを追ってきたのも、探知系の能力があるからだと考えた。

 そのため光崎は理子に何らかの罠を作成するように言うと、理子は力強く『任せといて』と頷き物の数秒でトラバサミを作成。

 それを光の屈折率操作で隠蔽。

 隠れているのが人ではなく罠。これまで理子の罠作成能力を見せていないこともあり、騙すことに成功したというわけだった。




「○×△! ○×△!」

「さて、と」


 トラバサミをどうにか解除しよう攻撃している敵に対して、理子は錬金術を発動。

 より自由度を奪うための状態、手頃な木の枝にワイヤー金属化を組み合わせて逆さ吊りに移行する。


「鮮やかだね~」

「自分が対象じゃなければ素直にスゴいって言えるやな」


 光崎と火野が感心する。




「何でこんなことをしたのか聞きたいけど……」

「○×△……○×△!!」

「何の言語だろ……? 英語でも無いよね」


 逆さ吊りのまま喚く男だが、この場に誰も『言葉ワード』の能力者がいないため異世界の言語、スタリシア語を理解することが出来ない。


 やがて喚き疲れたのか観念したように男は黙り――おもむろにその懐に手を突っ込んで。


 ビィーーッ!!

 と笛を鳴らして力尽きたように気絶した。逆さ吊りされているのに叫び続けたことなどから限界が来たのだろう。




「あっ……」

「っ……腕も拘束しとくんだった」


 空中で動けない時点で何も出来ないだろうと思っていたのが裏目に出た。

 音は森中に響く。敵の仲間たちにこの場所を知らせるだろう。


「どうするんや?」

「敵の一人がこっちの手にあるんだし……人質みたいにしてあっちの行動を封じたいけど」

「言葉が通じないのが厄介やな……」

「とりあえず付近に罠を仕掛けて回りますね」


 理子は辺りにトラバサミを複数作成して、敵がやってきてもいいように備える。


 そして周囲を警戒しながら――何もないまま数分が経った。




「……?」

「誰も来ないな」

「どういうことだろう?」


 あの笛の音は敵の位置、自分たちを報せるものではなかったのか。

 違うとしたら何だったのか。

 撤退の合図? しかしあれだけの敵意を見せていたし、ここに一人仲間がいるのに逃げるとも思えない。

 襲撃でもないとしたら……第三の手段。

 これまでと違う方法で私たちを攻撃してくるとしたら。


 最初に異変に気付いたのは火野だった。




「なあ……何か焦げ臭くないか?」




「え……まさか!?」

 三人はあわてて確認する。

 そして気付いた。




 森が燃えている、自分たちに火が囲むように迫っているということに。




明日も投稿します

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