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異能力者がいる世界  作者: 雷田矛平
十一章 平和な日々、移ろう季節
281/327

二百六十九話「能力者会談 彰VS火野3」

評価にブクマありがとうございます。

最低限週一更新は続けたい……。

「それなら次はこっちから行くで!」

 火野が今度は攻めに転じる。


「ちっ……!」

 彰はその突進に身構える。

 火野が最初攻めてこなかったのはカウンターで俺の出鼻をくじくためだろう。そしてそれは成功した。

 ならその次はどうするか。念動力サイコキネシス細に一撃で決める決定力はない。攻めに来るのは予想できていた展開だ。

 念動力サイコキネシスは射程の短い技。とはいえ逃げてはこちらからも決定打が無いし、この狭い試合場ではいつか掴まる。

 つまり……受けるしかないってことだな。


 彰は二枚の盾を空中に浮かべ、剣も防御的に構えて、攻めを捨てた防御態勢を取る。

 そこに火野が突っ込んだ。 


「はっ……!」

 火野が剣を振り下ろし、彰は盾を移動させて受けようとする。

 しかし、剣と盾が交差する直前。

 バシッ! と鋭い音がして盾が剣の軌道上から逸れた。


「盾を念動力サイコキネシス細で弾いたか……!」

 予想していても対処できないのが見えない攻撃の恐るべき点だ。

 二枚目の盾が追いつくタイミングじゃなかったので、彰は大きく退いて避ける。


「逃がすか……!」

 火野は振り下ろした剣を跳ね上げるようにして彰を猛追。

 彰もそれを受けるために剣を振り下ろそうとするが、

「くっ……!」

 今度は腕が横に弾かれて剣の軌道が逸れた。。もちろん念動力サイコキネシス細だろう。

 防御失敗した彰。そこに迫る火野の剣は逃げるところを無理に追ったせいか、彰の胴を……服の下に鉄板を仕込んだ位置を狙ってしまっている。


「おらぁっ!!」

 だが、そんなこと気にせずに火野は振り切った。


 ガチンッ……!!

 金属と金属がぶつかる甲高い音。

 鉄板で確かに威力は削がれている。だが、衝撃までは殺しきれない。

「ぐっ……」

 彰は腹に響く打撃に顔をしかめる。

「ちょっとは効いたみたいやな!」

 火野は勢いそのままにナイフを生成。剣と併せてフルアタックを叩き込もうとして。


「調子に乗るなよ……っ!」

 彰は二枚目の盾を、自分と火野の間に落として錬金術を解除。 

 圧縮金属化により秘められていた暴風をまき散らす。

 吹き飛ばされる形で両者は強制的に距離を取らされた。


「逃げたな……念動力サイコキネシス細、どうしようもないんやろ!」

「こ、これも戦略の内だっつうの!」

 火野の挑発に彰は少々図星だったのを認めたくなくて声が上擦る。


 そこに実況の二人の声が響いた

「目まぐるしい攻防だね。状況は火野君が有利かな?」

「ああ。彰君は念動力サイコキネシス細の対処に悩んでいるんだろう」

 光崎と雷沢の状況判断。

 自分が不利だと言われ噛みつきたくなる彰だったが、実際戦況はそうだったので押し黙る。


 今までの念動力サイコキネシスが相手を一撃でKOするストレートだとしたら、今回の技は相手を牽制するジャブだ。

 そして見えない攻撃という特性に合っているのは後者である。

 見えない一撃というのもロマンがあるしハマれば強いが、見えない牽制で相手を崩しさえすれば締めは見えていようが避けられない。

 やってくることが分かっているのに対処できない。シンプル故の強さ。

 簡単に隙が見つかるような代物じゃないだろう。……だったら先に仕掛けるしかないか。


「彰相手に時間を与えると怖いからな……また行くで!!」

 火野は考える余裕を与えまいと再接近。

「時間? それならもう十分だ」

 彰は試合前から布石を打っていたその策を発動する。


 彰と火野、再びの交差。

 火野は先ほどと同じ上段からの振り下ろし。

 対して彰は盾で受けようとする。

 しかし、火野は念動力サイコキネシス細でそれを排除。

 先ほどと同じ光景が繰り広げられて――しかし、彰は今度は引かない。


 その様子に驚いたのは火野の方だ。

「血迷ったな!?」

「ふん、来るなら来い!!」

「……言われなくてもっ!!」

 ノーガードの彰に気圧されそうになりながらも、火野は剣を振り切ろうとして。


「――なーんてな」

 その攻撃は途中で弾かれた。


 カラクリはよく目を凝らさなければ視認できないほどに細い糸状の物。それが空中にピンと張られてたことだった。


「ワイヤーか……!?」

「ああ、そうだ。そして今頃気づいても遅い!」

 彰は攻撃を受け止めたワイヤーを操作。火野の四肢を絡め取っていく。

 ハロウィンの夜、ディール戦でもやったように空中に磔にしようとする。



 そのとき実況の評があった。

「なるほど、見えない技を持っているのは火野君だけじゃなかったということか」

「ワイヤー状金属化だっけ。去年、藤一郎さんが開発した技を、彰君も使えるようになったんだよね」

「ああ。そして錬金術で作っているから操作も可能。ああいう風に相手を拘束するのも容易い。問題は生成に時間がかかることだが、あらかじめ隙を見て作っていたのだろう」

 そこで光崎は首を傾げる。

「……んーでも、相手の火野君も錬金術だよね。ワイヤーを作って拘束しても、空中に剣を作って斬られそうな……」

「分かってないな、純。だから彰君は開始前にあんな確認をしたんだ」

「確認……あ!」

「この試合相手を傷つけすぎないように刃物の刃は潰した状態で作らないといけない。それも間違いが起こらないように相手に攻撃しないときもだ。つまり――火野君はワイヤーを斬る刃物を生成できない」


 雷沢の言葉に観客席も反応した。

「……何かずるくない?」

「まあでもすごく彰さんらしい戦法ですね」

「試合前から布石を打ってたんだし、ズルいっていうよりさすがって感じじゃない?」

 由菜、恵梨、彩香、それぞれ違う感想。

 そして、理子もまた違うことを思っていた。


「でも……あれって、そんなに脅威ですか?」




 再び試合場。

 彰は火野を完全に拘束しようとしていた。


 動きを止めさえすれば、後は煮るなり焼くなり自由だ。刃物は出せないとはいえ、盾で守ることは出来るがそれではジリ貧だろう。

 ワイヤーの操作に集中するために、服の下の鉄板も解除しないといけなかったが問題ないだろう。ここから先火野に攻撃の手番は回ってこない。

 試合は勝ったも同然。

 なのに――。


「何や、彰。男を拘束する趣味があったんか」

「うっさい、黙れ」

 ……何なんだ、この火野の余裕は。


 追いつめられているというのにそれを感じさせない。

 俺も時々わざと余裕を見せたりするが、これ相手からするとすごく不気味だな。


 そうしている内に拘束完了。これで火野は空中から動くことは出来ない。

「……いいだろう。どういうつもりか知らんがこれで――終わりだ」

 彰は火野に向かって最短経路で突きを放とうと接近して。


「甘いで……!」

 その瞬間火野は二つ動いた。


 一つ目は盾の生成。これは彰の突きを受けるためだろう。

 二つ目は……錬金術の発動。

 炎の錬金術、発動プロセスの二段階目、金属化以降を放棄して使用する。

 つまりこういうことだ――周りのワイヤーに対して、火を起こした。


 ガキンッ!!

 彰の突きが盾と衝突し音を鳴らす。

 それと同時に、ワイヤーが焼き切れて火野は地上に帰還。


「……マズい!!」

 一連の流れはもちろん彰も把握しているが、既に行動を起こしている。止めることは出来なかった。

 彰の方から接近して、そして攻撃を防御された一番無防備な瞬間。

 絶好のカウンターチャンス。鉄板も解除した今、ここで高速かつ威力の高い攻撃――念動力サイコキネシスで床に叩きつけられたらひとたまりもない。


「食らえっ……!」

 しかし、火野の取った選択肢は剣で叩きつけることだった。


「……!?」

 驚きながらも、盾を動員して受けようとする彰。

「無駄やっ!!」

 火野はそれを念動力サイコキネシス細で弾く。

 そして初めてまともに攻撃が届いた。

「ぐっ……おらぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 彰は肩を強かに打ち付けられるが、何とか意識を保って圧縮金属化で作った金属球を完成。即解除することで火野を吹き飛ばす。


 暴風によるリセット二度目。火野も少し辟易しているようだ。

「ちょこまかと吹き飛ばして……まあでもそうでもしないと打開できない、追いつめられてるって証拠やな」

「…………」

 彰は火野の軽口には付き合わない。

 それ以上に気になることがあったから。


 どうして今のタイミングで念動力サイコキネシスを使わなかった……?

 確かに肩のダメージもかなりあるが、念動力サイコキネシスならこれ以上のダメージを防御される前にたたき出せただろう。タイミング的にも完璧だった。

 単に火野のミスと考えてもいいが……今の火野はそう抜けているやつではない。

 だとしたら……使えない理由があったということだ。


 肩を抑えうずくまり中々動かない彰。

 彰のダメージが大きすぎたんじゃないか、と心配そうに見守る観客たち。それを前にゆっくりと彰は立ち上がって。

「ははっ、あはははははははっ!!」

 そして高笑いを上げた。


「……何や、そこまでダメージがあったか?」

「ああいや、そうじゃない。にしても火野……強くなったな」

「頭攻撃したつもりは無いんやけど……どういうことや?」

 彰が人を、特に火野を誉めるなんて珍しいなんて言葉じゃ到底表せない事態だ。


念動力サイコキネシス細……威力を落とした念動力サイコキネシスの開発。そしてそれを動いている盾や、細い腕にピンポイントで当てられるほどのコントロールを得るために相当訓練したんだろ?

 研究会を倒して平和になったってのにどうしてそこまで厳しい訓練をしたのか……まあ、野暮だから聞かないが……とにかく強くなった」

「こいつ本当に彰か?」

 火野はいぶかしむ。


 そこに彰は宣言した。

「でも……俺はそれ以上に強いけどな!!」

「こいつ本当に彰やな」

 火野は確信した。


 彰は先ほどの考察の結果を端的に伝える。

念動力サイコキネシス細……その弱点見破ったり」

「…………自信満々やな。何だって言うんや?」

「まあ落ち付けって。今からの戦いで――」

 言いながら風の錬金術を発動。



「――俺の新技で実証してやるから」



 彰は足に『風靴エアシューズ』を装着した。

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