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異能力者がいる世界  作者: 雷田矛平
十一章 平和な日々、移ろう季節
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二百六十八話「能力者会談 彰VS火野2」

 始まった彰と火野の試合。


「そもそも二人ってどっちが強いの?」

 端的かつ難しい質問をするのは、今日初めて能力者の戦いを見た由菜。

「どうなのかしら?」

「ちょうど一年前くらいに戦いましたけど、二人が試合前に言ってた通り一戦目は不意打ち、二戦目はそもそも私が加わって二対一でしたし……」

 彩香も恵梨も答えに悩んでいる様子。


「勝つのはお兄ちゃんだよっ!!」

 そこに断言を持って話に入ってきた少女がいた。


「あ、理子ちゃん」

「お兄ちゃんが絶対に絶対に勝つんだから!」

 兄、火野正則の勝利を確信しているのは火野理子。

 兄と同じく炎の錬金術の使い手。今年進級して中学三年生になった。


「……兄妹でどうしてこんなに変わるんだろう?」

「さあ。付き合いの長い私たちでも分からないわ」

 一日目に初対面は済ませている由菜。あの兄からこのかわいい妹が出てきた混乱は既に落ち着いているが、それはそれとして疑問は残っているようだ。



「随分と確信を持っているようですが……彰さんだって簡単には負けませんからね!」

 火野が勝つ=彰が負ける、である。そう言われて恵梨にも火がついたようだ。

「恵梨お姉ちゃんには悪いけど、今のお兄ちゃんは絶対に誰にも負けないんだから!」

「彰さんだって絶対に絶対に負けないんですから!」

「ならお兄ちゃんは絶対の絶対の絶対に――」

「そこ、無駄に張り合わないでくれるかしら?」

「「すいません」」

 恵梨と理子の争いを諫める彩香。



 大人しく席に座った理子に彩香は聞く。

「にしても珍しいわね。そこまで火野の勝利を断言するなんて。何か理由でもあるのかしら?」

「……皆さんを狙っていた研究会って組織との決戦について、お兄ちゃんから話は聞いてます。そこでお兄ちゃんは不甲斐ない思いをしたって」

「そんなこと無いと思うけど……李本俊リベンシュン相手に十分に頑張ってたわ」

 一緒に戦っていた彩香の評価は高い。未来が見えるなんて能力にあれだけ戦えれば十分だ。

「でもお兄ちゃんはそう思っていないようで……だから春休み、実家に帰ってきたときに猛特訓を積んで……その末に新技を会得したんです!!」

「新技……なるほど」

 理子の自信の源はそれなのね。


 正直、彰が勝つという心証を抱いていた彩香。

 しかし、今の話を聞いて分からなくなる。


 勝つのはどちらなのかしら……?






 一階、試合場。

 試合開始が宣言され、少女たちが見守る中、彰と火野は同時に錬金術を行使した。


 お互い開始前に剣は作ってある。追加で生成したのは、両者正反対の性質の物。


「行けっ!」

「食らうかっ!」

 彰はナイフを飛ばして、火野は盾を作って弾く。


 ナイフは様子見だったため三本しか作っていないが、その全てを防がれる。


 火野が作ったのは盾か。そして動いても来ない。意外だな、守り重視なのか……?

「おいおい、そんな守ってばかりじゃ勝てねえぞ? いいのか?」

「そう思うなら攻めて来ればいいやろ?」

 挑発にも乗ってこない。……面倒だな、どうするか。


「二人とも開始位置から動いていないね~。積極的な二人にしては珍しいかも」

「普通ならどちらも開幕ダッシュするタイプだからな。……まあお互いに能力は分かっている。火野君はともかく、彰君は迂闊には近寄れないだろう」

 実況の光崎と雷沢の評。

 二人が言うとおり、彰は警戒を持って試合に臨んでいる。


 火野の『念動力サイコキネシス

 あれを食らったらアウトだな。

 炎を、エネルギーを操る炎の錬金術の応用技。エネルギーをそのままぶつけるそれは、前回の対峙において彰を一撃ノックアウトしている。

 移動エネルギーによって敵を壁や床にぶつける『念動力サイコキネシス』。打撃エネルギーで直接敵を攻撃する『念動力サイコキネシス改』。

 錬金術の性質上、射程は領域エリア内の2mしかないが、彰だって基本的に技を仕掛けるには領域エリア内に相手を捉える必要がある。

 必殺の距離は同じだが、必殺技の威力が違う。魔力をほぼ使うだけあって念動力サイコキネシスの威力は桁違いだ。近距離での撃ち合いは火野に軍配が上がるだろう。


 それが分かってるから火野も守りの構えなんだ。

 遠距離から仕留められないように盾を展開、近づいてきたら念動力サイコキネシスのカウンター。その一撃で決着が付くからこそ、火野から積極的に攻める必要はない。


「少しは頭を使った戦い方が出来るようになったな」

「俺やって成長したんや。考えることくらい出来るんやで」

「ああそうだな。――本当バカの考え休むに似たりってやつだ」

 彰は思考しながら進めていた錬金術を発動。

 そして剣を片手に火野に特攻する。


「あ、彰君から動いたね~」

「さて、念動力サイコキネシスの対策はあるのか!?」

 雷沢の実況に観客は固唾を呑んで見守る。


「……」

 もちろん勝算はある。

 仕掛けは直前に錬金術を発動したのに、傍目には何も変わっていないところだ。

 ならばどこに何を作ったのか?

 その答えは服の下に鉄板を作ったである。


 このままわざと火野の領域エリアに無警戒で入る。

 火野はしめたと思い、念動力サイコキネシスを繰り出すはず。

 それを俺は鉄板でダメージを半減させる。

 そうすれば念動力サイコキネシスの反動で疲労困憊の火野が残るだけ。


 万が一にも気づいて念動力サイコキネシスを使ってこなければ、領域エリア内に捉えた俺の技が炸裂する。念動力サイコキネシスを使わなければ、領域エリア内での立ち回りは俺が上だろう。

 選択肢は全部潰した。

 俺が知る火野にこの策を退ける力はない……!


 彰が火野に接近。

 互いに相手を領域エリア内に捉えた。


「うぉぉぉぉっ……!」

 彰は手に持った剣で斬りかかる。

 そして避けられたときの為にナイフの生成を開始。


 さあ、どうする……!

 攻撃を仕掛けながらも、火野の応手を見極めるため、全神経を持って火野の動きに注目する。



 ――次の瞬間、彰の視界が回った。



「……っ!」

 想定外の事態。

 集中が途切れてナイフの生成が中断される。

 今のは……何かがぶつかった……っ!?


 視界に映るのは試合場の天井。頭に何かが当たって上に弾かれたのだ。

 弾かれる直前まで、火野には何も動作はなかった。

 つまり、これは能力による仕業。

 見えない攻撃、念動力サイコキネシス


 よし、使ったな……!

 計画通り火野に念動力サイコキネシスを使わせることに成功した。

 常に動いていて、的も小さい頭を狙われたのは予想外だったが、どうしてかダメージはほとんどない。

 これで疲労困憊の火野を討ち取るだけ。

 彰は弾かれた頭を戻して正面を見ると。


 火野が踏み込んできて、剣を振り抜いたところだった。


「ぐっ……!」

 ろくに防御行動は取れなかったが、服の下の鉄板に当たったようでダメージは少ない。

 だが、一旦距離を取った彰はそんなこと気にしている場合ではなかった。


「……ん? 何か感触が……あ! 何か服の下に仕込んだんやな!? くっ、違う場所を攻撃しとくんやったで!」

 地団駄を踏む火野。その動きに鈍りはない。

 そう、火野が普通に動けているのだ。

 それはおかしい……念動力サイコキネシスを打った後は疲労困憊、動くのもやっとなはず。

 こっちの隙を突いて、攻撃を仕掛けるなんて動作が出来るはずがない。


 悔しがっていた火野だが、すぐに落ち着いたようで彰を見てそこで気づいた。

「……何や、彰混乱してるなー?」

「ちっ……」

「いい気味やで」

 火野に嘲笑われる。


 火野に侮られる。彰がそれを許せるはずが無く、一気に頭が働き出した。

 そしてすぐに違和感を洗い出す。

 そうだ、念動力サイコキネシスを使って疲れていないのもおかしいが……念動力サイコキネシスを食らってこの程度のダメージなのもおかしい。


「なるほど……威力を押さえた念動力サイコキネシスってわけか」

「っと、さすがは彰やな。もう気づくなんて」

 火野が正解を示す。

「威力を押さえることで魔力の消費を抑える。言葉だけなら簡単だが……」

「本当、出力を安定させるために苦労したで。もともと錬金術本来の使い方や無いからな。……でも完成した。


 これが俺の新技『念動力サイコキネシス細』や」


「……そうか」

 彰は自分の驕りを自覚した。

「当たり前だよな。おまえも成長するってのに……それを想定していなかったなんて」

 俺の知る火野? それはいつの話だ?

 実際に戦闘場面を見たのはかなり前だろ。そこから俺だって成長したが、火野だって成長しているのだ。


 ……まあいい、反省は終わった後だ。そんな余裕はない。

 火野の新技『念動力サイコキネシス細』

 これは……おそらく想像以上に厄介な技だろうから。

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