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異能力者がいる世界  作者: 雷田矛平
二章 炎の錬金術者、来襲
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二十七話「火野との戦闘1」

 彰と火野の戦いが始まる。

 周りに誰も人がいない裏通りを舞台にして。


 剣での攻撃には主に「刺突」と「斬撃」がある。

 彰は最初の攻撃に横から剣を振るう、斬撃を選択する。

 刺突は速さとリーチが出るも、腕が伸びきった瞬間無防備であるため相手の反撃に会いやすい。また「点」での攻撃ゆえ避けられやすい。

 相手の力量が分からない内は選択すべき攻撃でない、というのが彰の考えだ。

 その点斬撃は「線」での攻撃で避けにくく、また防御行動にも移りやすい。相手、つまり火野の力量が分からない以上、堅実な初撃で行く方針だ。


「ちっ!」

 対して、火野は身体を引いて彰の攻撃を避け、同時に剣を突き出す。

 彰はその突きを難なくかわす。


 ……まあまあだな。

 彰は最初の攻防での火野の動きから、火野が前に戦った戦闘人形(ドール)ほど剣の技術がないことが分かった。……比べる相手が戦闘マシーンであったため仕方なかったのかもしれないが。

 この程度の実力なら勝てるだろう。

 彰は再度攻撃に移る。


 今度は突きを選択。速度の出る一撃を火野に叩き込もうとする。

 火野は避けてカウンターを狙おうとするが、それは承知済み。最初の一発目は(なか)ばフェイントだ。

「!?」

 火野が驚いた表情をとる。

 彰は途中で剣を引き、もう一回刺突。相手の攻撃よりも先にこちらの攻撃を通そうとする。


 彰は相手の剣の腕を見切ったつもりであった。

 であるからこそ、この攻撃でいきなり決着をつけるつもりだった。


 しかし、それは過信だ。



 目の前の火野は剣士ではなく、能力者なのだから。



「残念だったな!」

 罠にかかった獲物を見て、火野が叫ぶ。

「何っ!?」

 彰は、太刀筋上に炎が燃え盛っているのに気づく。遅れて炎が赤色の盾に変わって宙に浮かんだ。彰の攻撃を先読みした火野が、炎の錬金術で作り出した防御だ。

 軌道修正する暇もなく、彰の剣が盾にはじかれる。

 ……つまり致命的な隙ができる。

 それに火野は防御はしたがカウンター攻撃行動中だ。遅れて彰に斬撃が迫る。


「くそっ!」

 彰はあわてて体を引く。しかし避けきれず右腕を少し斬られた。

 崩れた体勢を立て直し、火野の追撃をいなしながら後退。火野も深く追い込むと危険と見て、あっさり距離が開ける。

 斬られた右腕からは、赤い血が流れ出している。


 油断していた……!

 彰は火野との戦闘にあたって、同じ能力者である戦闘人形との戦いを念頭が置かれていた。

 しかし、戦闘人形(ドール)は戦闘マシーンであり能力を上手く生かすという考えがなかった。極端に言えば戦闘人形(ドール)にとって、錬金術は剣を生み出すだけの物であった。

 だから、火野に能力を工夫して使われることを想定していなかった。


「能力者同士の戦いは始めてか? まぁ、普通の人間じゃ防御と同時に、攻撃なんてできないからな!」

 火野は彰の油断を笑いながら、盾を解除して炎に戻す。また彰の攻撃にあわせて盾を作り出すつもりなのだろう。


「……まぁ、そうだよな」

 彰は自分の失策を認めながらも落ち着いていた。

 火野は剣の腕はそこまでないが、剣だけでなく能力の使い方まで含めて火野の実力だ。

 それを彰はなめてかかったのだから、傷をもらって当然だ。


「どうした? 負けを認めるのか?」

「まさか。俺はまだ実力を見せきってないぜ」

 火野の挑発を、彰は笑い飛ばす。


 それもそのはずだ。

 彰はまだ剣しか使っていない。


 しかし、彰も剣士ではなく能力者だ。



 さて、一週間の練習のほどを見せてやりますか……!

 彰は走って距離を詰める。

「さあ、来い!」

 火野は動かず、向かい撃つつもりのようだ。

 さっきから自分から攻撃してこないあたり、カウンターを主な戦略としているようだ。



 彰は剣の届かない距離から行動を始める。

 イメージを集中しろ……!

 彰は風の錬金術で扱える範囲、自分を中心とした半径二メートルほどの領域(エリア)のぎりぎりの場所にイメージを集中。

 風の錬金術とは空中でも物を作ることができる。彰が思い描いたとおり、空中に風が吹き、ナイフができる。


 ナイフは火野の背中側、火野から少し離れたところに浮いた。


 食らえ!!

 彰はそれを魔力を使って加速。火野を背中から狙う。



 完璧な奇襲。


 しかし、能力者は魔力の発現を感知できる。


 それは彰も恵梨から聞いて知っている。


 つまり、相手の目がない背中側からナイフで狙っても、ナイフが魔力で作られた物である以上、その存在は気づかれるのだ。


「!?」

 なので当然火野はそのナイフに気づく。

 彰が前から迫っているため、後ろを振り返れない。


 しかし、

「な、め、る、な!」

 火野は飛んでくるナイフを炎の錬金術の応用で火を生み出し、燃やし尽くした。

 空中でナイフが燃える様は、火の玉が浮かんでいるようだった。


 ほう。ナイフを燃やし尽くすほどの高熱な炎を生み出せるとはな。

 彰は斬撃の体勢に入りながら感心する。



 だがこれで、詰みだ。



 火野は後ろに気を取られすぎている。

 そこに、彰の剣が迫った。

 火野はあわてて剣でガードするも、

「おらっ!」

 彰は剣を弾き飛ばす。


 彰はもう一度剣を振り上げる。

 剣を飛ばされた火野は、それを防ぐ術を持たない。

 殺す必要も無いし……(みね)打ちにしておくか。

 彰が戦いの幕引きをしようとしたその瞬間、


「このクソがーーーーーーーー!!」


 火野が感情をむき出しにして吼えた。

 はは。そうやって後悔するといい。

 彰はそう笑って……しかし火野の目を見て考えを改める。

 火野の目はまだ諦めていない者の目だった。まるでここから逆転する秘策があるかのような。


 何故だ? ここから挽回する方法はないだろ!


 恐れを振り払うように、彰は剣を振り切ろうとして、



 突然足が地面から離れる。



「は?」


 彰はそのまま自動車にはねられたがごとく横にふっ飛んで、裏通りの建物の壁にぶち当たった。


「ぐはっ!」

 壁に叩きつけられた衝撃で、一瞬意識が飛びかける。彰は地面に崩れ落ちる。

 何だ!? 何をしたんだ!?

 彰の目からは火野が何かをしたようには見えなかったが、状況からして彰が飛ばされたのは火野が原因だろう。


 ホントにいったい何をしたんだ!?


 地面に倒れ伏しながら、彰は困惑した。

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