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異能力者がいる世界  作者: 雷田矛平
十一章 平和な日々、移ろう季節
279/327

二百六十七話「能力者会談 彰VS火野1」

 五月、GW。

 今年も彰たちは日本の全能力者が集まる、能力者会談にやってきていた。


「能力者同士の戦いってすごいのね」

「試合だからこれでも制限してるんですけどね」

「父さんも年甲斐なく暴れて……もう」


 去年と違うのは、由菜と彰の両親もいることだった。

 由菜は単純に興味があるということで、彰の両親は研究会で起きたことを会談で報告するために付いてきた。


「能力者同士の戦い……鹿野田主任がここにいたら垂涎ものの研究材料なんだろうな」

「どうかしら、聞いた話によるともうそういう段階は過ぎてそうだけど」


 一日目のどんちゃん騒ぎを経て、二日目の会談で研究会との戦いの顛末とその結成当時の話がされた。

 研究会を退けたことには喜びの声も上がったが。

「……」

 自分の叔父、風野大吾が死んでいると聞かされた風野藤一郎は何とも言えない表情になっていた。いつも感情をコントロールしている彼らしからぬ出来事だった。


「負けの言い訳が出来て良かったな」

「……この年になっても自分が未熟なのを思い知らされるのは辛いな」


 三日目、希望者による能力者同士の試合が行われる日。

 そのせいかは分からぬが、伝統の一戦、風野藤一郎と日本の能力者副長の中田洋平の今年の試合は中田洋平に軍配が上がった。


「第一試合も白熱しましたが、これからの第二試合も見物となるでしょう!」

「それでは二人とも入場してくださ~い」


 大学生コンビ、雷沢と光崎が実況を担当する中、第二試合が始まる。




「どっちが強いか今日こそ決めようやないか、彰!」

 まず先に入ってきたのは火野の方だった。


「俺に勝てると思ってるのか?」

 追って、反対側の入り口から彰も入ってくる。


 そう、去年は彩香との試合があったため成立しなかった試合カード。

 炎の錬金術者と風の錬金術者の戦い、再びである。


 実況の雷沢が説明を始める。

「というわけで第二試合のカードは火野正則 対 高野彰です! 二人とも先日の研究会と戦いで先頭に立った実力者! 二人はどのように戦うのか!」

「彰君は去年も彩香ちゃんと戦ったけど、そのときとは別物ってくらいに強くなったよね~。やっぱり成長期なのかな~」

「ルールは簡単。どちらかが戦闘不能になるか、ギブアップを宣言するまでです。禁止事項として、殺傷力のある攻撃は禁止。二人とも錬金術だから剣などは刃をつぶして生成するように、試合の範疇に収まるようにしてください」

「あ、そうだ、確認があるんだが」

 そのとき彰が手を挙げて実況席に向かって発言する。


「何かね、彰君」

「殺傷力がある攻撃が禁止って分かるけど、それってどこまでが範囲なんだ? 別に相手に攻撃するつもりがない場合だったら、刃の付いた剣を呼び出してもいいだろ?」

「ふむ、厳密に決めてるわけじゃないが……そうだな、事故を防ぐためにそれも無しにしてくれ」

「そうか……分かった」

 抗議するかと思ったらあっさり引く彰。


 雷沢はそのらしくない態度にいぶかしむ。

(今の確認に何の意味がある? ………………いや、もしかして刃の付いた剣を使いたかったんじゃなくて、逆に使わせないために? その言質を取るために……)

「どうしたの~、タッくん?」

「……ああいや、すまない」

 今の発言が効果を現したとき素直に驚く方が実況向けだろうと考えを止める雷沢。


「ああ、それと高く飛びすぎることも禁止とする。空中戦になると、二階の観客席にも流れ弾が飛ぶかもしれないからな。二人とも最近飛べる技を身につけたからこそ注意しておく」

 体育館のような構造の試合場。試合自体は一階のフロア全域で行い、実況・観客席は二階にある。

「理解した」

「まあ、空中に逃げるようなやつに負けるつもりはないやけど」

 彰と火野がうなずく。


「それではルールの確認はここまで。両者は開始位置についてくれ」

 雷沢の言葉に従って移動を開始する二人。

 その間も会話は続いていた。

「おまえと戦うのも約一年ぶりか……あのときは大変だった。よりにもよって俺を戦闘人形ドールと勘違いしやがって」

「そんなこともあったな。……でも、実際どっちもクローン人間だったんだから、ほとんど同じような物やろ? あながち間違いじゃないやないか」

「……言われてみるとそうだな。ある意味おまえすごい勘をしてたんじゃないか?」

 偶然だろうけど。


「まあまあ、誉めるなって」

 火野は鼻の下をかきながら照れる。

「誉めてねえ。……まああのときは最終的に俺の勝ちだったわけだが」

「その前の一対一では俺が勝ったやないか!」

「それは念動力サイコキネシスの不意打ちだろ! おまえだけ俺の風の錬金術について分かってたんだし、あれは平等な勝負ではない!」

「それを言うなら二回目の勝負やって、そっちには恵梨がいたやろ! 二対一でやっておいてよく勝ったって言えるな!」

「両者そこまで!」

 実況の雷沢から制止の声が飛ぶ。


「全く、本当よくケンカする二人だな。そんなに過去の勝ち負けを気にする必要ない。――今から本当に強い者が決まる」

 雷沢が焚き付ける。

 そのときちょうど二人とも開始位置に着いたようだ。


「……そうだな、この試合に勝った方が真の勝者だ」

 彰は風の錬金術を発動。風が吹き、右手に剣が握られる。


「過去を水に流し、これからで全てを決めるってことやな。いいで、分かりやすい」

 火野も炎の錬金術を発動。炎が燃えさかり、剣が生成される。


「よし、二人とも準備が出来たようだな。それでは両者構え合って……。



 ――レディ、ファイト!!」



「行くで!」

「覚悟しろ!」

 雷沢の宣言に両者一斉に動き出した。

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