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異能力者がいる世界  作者: 雷田矛平
十一章 平和な日々、移ろう季節
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二百五十七話「異能力者隠蔽機関の優雅な休日3」

 二つ目の能力を持ってみませんか。

 能力を何故複数持っているか質問した返しでハミルにより提案された。


 少しうろたえ気味の恵梨が聞く。

「えっと……そんな簡単に出来ることなんですか?」

「はい」

 ハミルは頷く。

「でもどんな方法だ? それに何の能力を……?」

「あ、先に私が複数の能力を持っている理由を説明した方がいいでしょうね。それが彰さんたちに二つ目の能力を渡せる理由にもなりますし」

 ハミルは一人納得して、説明を始める。


「私が複数の能力を持っている理由……それは能力『複製移譲コピーペースト』のおかげですね」

「コピペ……ですか?」

「はい。『複製移譲コピーペースト』その名の通り、能力を複製し受け渡す能力です」

「まんまパソコンじゃねえか」

 能力がファイルみたいな扱いだ。


「これが他人に対しても使用可能で、色んな人の能力を受け取ったおかげで私は複数の能力を持っているわけです。彰さんたちに二つ目の能力を渡すのもこれを使ってです。私の能力の中から一つを『複製移譲コピーペースト』しようと思っているんですが……」

「なら『探知サーチ』をお願いします! これさえあれば彰さんが一人で戦いに行こうとしても気づくことが……!」

「そんなこともうしねえって」

「本当ですか?」

「……たぶん」

 小声で付け足す彰。


 期待に目を輝かせる恵梨に対して、ハミルの返事は申し訳なさそうなものであった。

「すいません、私が持っている能力と言いましたがその『探知サーチ』だけは無理でして……」

「……ずいぶんピンポイントに断られました」

「諦めろって。……でも、何か理由があるんですか?」

「そうですね……確かにパソコンに例えた方がいいかもしれません」

 彰の茶々を使って例えるハミル。


「能力者をパソコン、能力をファイルという例えは結構合っていると思います。……つまり、能力者のハードディスクには容量があり、能力によりファイルのデータ量も変わるんです」

「初めて聞く理論だな。えっと……要するに能力者が持てる能力の数には限りがあるってことか。それは人によって変わったりするのか?」

「いえ、一定だと聞いています」

「なるほど……。でも、能力によりデータ量が変わるって言うのは……」

「それは分かりやすい例で言うと、ラティス様とリエラですね。二人の能力『記憶メモリー』と『空間跳躍テレポーテーション』はその能力一つしか持てません。1000GBの容量があるパソコンに、1000GBのファイルを入れている……というように想像してもらえれば」

「一つで容量を使うほどに……それだけ強力な能力ってことでいいのか?」

「はい。便宜上Aランクと呼んでいます」

 Aランク……新しい分類が来たな。


「それと『探知サーチ』を渡せない理由がどう関わるんですか?」

「えっと、『探知サーチ』はそのランクで言うとBランクの能力なんです。Bランクは能力の容量を使い切るほどではないですけど、二つ持つのは無理という感じで。1000GBの容量に600~700GBのデータを入れているくらいに思っていただければ」

「二つ持つと1000GBをオーバーするってことですか……」

「はい。ですからそのBランクよりも下、Cランクの能力なら一緒に持つことが出来ます。先ほどまでの例えで言うと、これは10~50GBくらいのデータです。私が持ってる能力も『探知サーチ』以外は全てCランクの能力です」

「だからたくさん能力を持てるってわけか」

 それと同時にハミルにそんな能力があるのにラティスとリエラが一つしか能力を持っていないのは、Aランクの能力者だから、と。


「ところでそのランクってどうやって決まってるんですか? 強さ……じゃないですよね、『記憶メモリー』がAランクですし」

「ランクというのは、能力によって起こす変象の規模の大きさで決められるみたいです。記憶を思い出させなくする『記憶メモリー』も、一瞬で遠くまで移動できる『空間跳躍テレポーテーション』も普通には出来ない現象ですよね? 逆に『言葉ワード』は普通に翻訳を、『声変化ボイスチェンジ』だって変声機を使えば事足ります」

「どれだけ常識外なのかを表すのがランクって感じか」

「お二人の水使い、風使いもそれぞれ素材を金属に変化させる……なんてしていますから、ランクBはあるみたいですね」

 ハミルは錬金術のことを、どういうわけか雷沢が名付ける前の旧称で呼ぶ。


「……あ、だから『探知サーチ』が受け渡せ無いってわけですか」

「ランクBの能力は二つ持つことは出来ない……だったな。錬金術を既に持っている俺たちはもう一つBランクの能力を持つことが出来ない」

「それもありますが、そもそも『複製移譲コピーペースト』ではBランクの能力と、『複製移譲コピーペースト』自体を受け渡すのは無理でして……」

「そうですか。……残念です」

「……」

 『探知サーチ』を諦めきれない恵梨と考え込む彰。


「本当はこの『複製移譲コピーペースト』も乱用は禁止されてるんです。ある意味、能力者を作れる能力ですから」

「……それがマズいことは何となく分かりますし、能力者が増えては隠蔽機関の仕事も増えますね」

「はい。ですけど、彰さんたちには研究会を倒してくれた恩もありますし、ラティス様が一つくらい能力をあげてみたら、って」

「軽いなあ……」

 そんな福引きの景品みたいにポンポンとあげて良いものなのか。


「ハミルさんの能力を一つもらえるってことは……『変装ディスガイス』は姿を変えたところで、ドッキリくらいにしか使えなさそうですし……『声変化ボイスチェンジ』も同様……だとしたら一番実用的な能力は『言葉ワード』でしょうか」

 切り替えが早いもので、恵梨は既に何の能力を貰おうか考えている。

「ところでハミル。他に何か能力持っていないのか? 特に戦闘で役立ちそうなのとか」

「他に……と言われましても、少し多すぎて」

「そんなに持っているのか?」

 実際ハミルはどれだけ能力を持っているんだろうか。

「……そうですね、でも戦闘に役立ちそうなのは無いですね」

「そうか」

 だったら欲しい能力は……恵梨と同じだな。


「『言葉ワード』でお願いします」

「俺も同じで頼む」


「分かりました。……ちょっと失礼しますね」

 ハミルは席を立って、彰と恵梨のおでこにそれぞれ手を当てる。


「発動……『複製移譲コピーペースト』」


 その瞬間不思議な感覚が彰を襲った。

 これは……。

 言うならば……初めて能力を使ったときに似ているだろうか。

 彰は自分の中に流れてくる力を自覚する。


「終了です。これで彰さんと恵梨さんは『言葉ワード』を使えるようになりました。能力の発動をイメージすれば使えるはずです」


 ハミルの手が離れる。


 その様は実にあっけなく。

 彰と恵梨は二つ目の能力を手に入れたのだった。

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