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異能力者がいる世界  作者: 雷田矛平
十一章 平和な日々、移ろう季節
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二百五十六話「異能力者隠蔽機関の優雅な休日2」

 遊びに来たと言う異能力者隠蔽機関のハミル。


 それならば、と恵梨がキッチンからお菓子とお茶を取り出して、つまみながら話を続ける。 

「ところで……隠蔽機関に休みってあったんですね」

 異能力者隠蔽機関の仕事は文字通り、能力者の存在を一般社会から隠蔽することである。ハミルが『探知サーチ』で能力を使ってる現場を掴み、リエラの『空間跳躍テレポーテーション』により現場に急行、ラティスの『記憶メモリー』で隠蔽を施す。

 その活動範囲は全世界である。故に夜中であっても休むことも出来ない激務だと思っていたのだが……。


「何とか今日だけは、各地域の能力者を統治している組織が水を漏らさぬ監視の目で頑張って貰っているので。……これおいしいですね」

 クッキー片手に話すハミルはかなりリラックスしているようだ。


「……」

 ハミルの言い方に引っかかりを覚える彰。

 今日だけは? ……何か日付が大事なんだろうか?


「ということはラティスさんとリエラさんも休みなんですね? ……だったらどうして二人も一緒に来なかったんですか?」

 恵梨の質問にハミルは衝撃の答えを返した。


「あ、二人なら今日はデートですので」


「「……」」

「もう一枚もらいますね」

「「……」」

「ん、おいしいです」

「「……」」

「お茶も良い物をありがとうございます……って、お二人とも先ほどからどうされたんですか?」


「「……デートッッ!?」」


 リアクション芸人のように驚く彰と恵梨。


「で、デートって……あのデートですか!?」

「どのデートかは分からないですが……異性と日時や場所を決めて会うことですね」

「そのデートですよ! まさか……お二人が付き合っているとは……」

「二人とも職務に忠実なタイプですからね」

「ですが……言われてみればリエラさんはラティスさんをよく支えてましたし……いや、でも……」

 動揺が収まらない恵梨。




「……」

 対して彰は最初の驚きとは打って変わって物静かにしている。

「彰さん? 何か、気になることでも……」

「……ああ、すまん。これでも驚いていてな」

「そうですか。……それでいつもはその間私は一人気ままに過ごすんですけど……彰さんたちとゆっくりお話ししたことが無いと思って良い機会だと」

「そうだな、いつもはバタバタしてるし……こうして話せる機会はありがたいが……なら少し聞いてもいいか?」

 そして彰はタイミングを窺っていた提案を行う。


「な、何でしょうか」

「いや、そうかしこまらなくていい。単純に改めて異能力者隠蔽機関や、そこに属するおまえらの話を聞きたいだけだ」

 ハミルにリラックスを促す彰。

「私たちの話……」


「ああ。どうして世界中の能力者の存在を隠蔽をしているのか、その理由を」


 隠蔽機関最大の謎。

 ラティスの『記憶メモリー』。

 記憶をいじるその能力さえあれば、世界を混乱に陥れること、支配することさえ出来るだろう。『空間跳躍テレポーテーション』にハミルの補助があればさらに完璧だ。

 それをわざわざこの世界の秩序を守るために使用している、その理由。


「……それは彰さんでもお話しできません」

 しかし、気の弱いハミルだがきっぱりと断った。


「そうか」

「すいませんね……」

 そしてそれを何となく予想していた彰は次の要求を伝える。

「だったら……ハミルが多重能力者であることは説明できないか?」

 一度無理な要求をしてから、それより優しい要求を伝える。交渉の常套手段。

 まあ、こっちもかなり気になってるんだけどな。

 ラティスの『記憶メモリー』やリエラの『空間跳躍テレポーテーション』に比べて自分の能力を地味だと思っているハミル。

 全世界の能力者の動向を窺える『探知サーチ』もそれはそれで規格外だと思うのだが、それ以上にハミルには能力者の仕組みとしておかしな点がある。

 そもそも能力者になる方法は……一応二つ。同じ能力を持った両親から遺伝すること、そして自分のような能力者のクローン人間を作ることのみのはず。

 後者は鹿野田の狂気があってこそ成し得たことだろうが……どちらの方法にしても、能力者が持てる能力は一つだけ。能力者ギルドのルークにも確認したが、それが能力者の世界としても常識のようだ。

 なのにハミルは自分が確認しているだけでも『探知サーチ』『念話テレパシー』『言葉ワード』『変装ディスガイス』『声変化ボイスチェンジ』の五つの能力を持っている。

 これは……一体どういうことだというのか?


「あ、それなら大丈夫ですよ」

 彰の頼みにハミルは快諾した。


「本当なのか!?」

 こちらも断られるかもしれないと思っていた彰は望外の展開に喜ぶ。

「はい。そもそもこっちから話そうと思っていましたから」

「私も聞いて良いですか!?」

 様子を窺っていた恵梨も身を乗り出して話に参加する。

「大丈夫です、恵梨さんも聞いて良いですし……それに――」

 その二人にハミルからも提案するのだった。



「何なら、彰さん達も二つ目の能力を持ってみますか?」



「「……え?」」

 軽いハミルの提案に、二人はポカーンとなった。

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