エピローグ
二話同時更新。最新話から来た人は気を付けてください。
………………。
…………。
……。
「しばらくはここで過ごすとしよう。今後の動きを決めなければな」
「そうですねえ」
サーシャと鹿野田の会話。
研究会本拠地から逃げた先、サーシャが用意したセーフハウスでの出来事である。
「それで……実際のところこれからどうするつもりだ?」
「彼らの前でも言ったでしょう? 『前の研究』に戻ると」
「すまない、確認だ。……そうか、あの研究に戻るのか」
サーシャは思い返す。
この一年間、高野彰という自分たちの手を放れたクローン人間を偶然見つけてからは、それに関わる実験ばかりを行ってきた。その間、手が回らないということで他の研究は止めざるを得なかった。
しかしその前は、逆にクローン研究の方を停止して、別の研究を行っていたのだ。
「最後にあっちの研究に関わる実験をしたのは……ちょうど一年前か」
一年前、彰と恵梨が出会うきっかけとなった出来事。
恵梨の両親が殺された事件。
この事件だけは一連のクローン人間の研究と直接関わりが無かった。
彰は戦闘人形を運用するテストだと判断していたが……確かにそういう一面があることも否めないが、しかしただ能力者と戦わせるのなら黄龍にでも頼めば良かった。
それでも恵梨の両親を襲わせたのは……その『前の研究』というのに必要だったから。
「……ならば研究機材が必要だな。そう考えると本拠地を潰されたのは痛いか。どうする、黄龍を頼るか? 彼らなら金を払えば匿ってくれると思うが」
「いえ、今後国からの予算が見込めない以上、お金は大事に持っておくべきでしょう」
「それもそうか。……なら、あちらか」
「そうですねえ……あちらの組織ですね、はい」
サーシャと鹿野田の意見が一致する。
「なら、善は急げだ。段取りは付けておく。主は休んでくれ」
「ではお言葉に甘えましょうか」
話は終わり。部屋を出て行こうとしたサーシャだが、鹿野田が声をかけた。
「サーシャ」
「……ん? 何かまだあったか?」
「私は研究のことばかり考えてしまいますから……ええ、こうやってサーシャが研究しやすい環境を作ってくれること、感謝していますよ」
「……どうした、らしくない」
「ですねえ……一段落付いたからでしょうか?」
「らしくない……が、ありがたくその言葉は受け取っておこう」
そして今度こそサーシャは鹿野田がいる部屋を後にした。
サーシャは鹿野田に言った通り、連絡を取ろうとして……直前の会話が思い起こされる。
「感謝……そうか、感謝か」
主にもそのような感情が……というのは失礼か。
しかし……そうだな、悪くはないものだ。
「今後も私は……私だけでも、鹿野田様の傍でその研究を支え続ける」
サーシャは思いをさらに固くした。
<十章 決戦、科学技術研究会 完>
…………はい、と。
というわけで、ようやく1st season『科学技術研究会』編が終わりました。
何か一話前がすごい最終回っぽく終わりましたが、このエピローグを見て分かる感じ異能力者がいる世界はまだまだ続きます。
十章は全編シリアスで通しました。
バトルも三か所に分かれて、そして一章以来謎だった彰の正体も判明。主人公対ヒロインだったり、色々展開を詰め込みました。
伏線もかなり消化してきましたが、まだ残ってるのは2nd season以降で使っていくと思います。
十章、途中から隔日更新を貫き通しました。書き溜めも無い状況から、よくやれたと思います。
それで今後ですが、少しデータ的なおまけを追加してから2nd seasonへの繋ぎのインターミッションをやる予定です。短編集になる予定。
その前に少し更新を停止します。休憩です。
十章終わったので感想とか期待していいんですかね……お願いします。質問なんかも受け付けておりますので、何か書いてもらえると励みになります。
雷田矛平でした。




