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異能力者がいる世界  作者: 雷田矛平
十章 決戦、科学技術研究会
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二百五十三話「決戦23 決着」

 戦闘人形ドールの投げたナイフが彰を避けるように曲がった。

 その光景に驚いている鹿野田と戦闘人形ドール


「今度はこっちからだ!」

 彰は風の錬金術を使いナイフを生成。戦闘人形ドールに向かって加速して飛ばす。


「っ……戦闘人形ドール!」

「……!」

 鹿野田の指示に戦闘人形ドールが盾を作ってナイフを防ぐ。

 しかし、その間に彰は駆けていた。

 戦闘人形ドール、鹿野田との距離が近づきもう2m。お互いに領域エリアの範囲内だ。


「……!」

 戦闘人形ドールは彰を近づけまい、と空中に剣を作り斬りかかる。

「無駄だ!」

 だが、彰が手を振るうとその剣は跡形もなく消えて無くなった。


「また……ですか。一体何が……」

 鹿野田はその現象について考察を始める。




 もちろんこの一連の流れにはタネがあった。

 彩香……おまえのおかげだな。

 初詣に彩香とした話。昔、火の錬金術に一卵双生児の双子が生まれたときに、一方が作った物を一方が操作できたらしい。

 双子で大丈夫なら、同じ遺伝子の俺と戦闘人形ドールで出来ないわけがない。

 それによって戦闘人形ドールのナイフを解除して消したり、操作して曲げたりしていたのだ。


 彰と戦闘人形ドールの戦いは彰が圧倒的に有利だった。戦闘人形ドールが武装を生成する端から消しているのだから当然とも言えたが。

 逃げる戦闘人形ドールを追う彰。だが、その表情に余裕はない。

 ちっ……あれに気づかれる前に、さっさと決めなきゃいけないのに……!


「観念しろ!」

 そしてようやく戦闘人形ドールを壁際に追いつめる。

 彰は剣を振るってトドメを刺そうとして……。


戦闘人形ドール! そいつの剣を解除しなさい!」


「……!」

 そこに鹿野田の指示が届き。

 彰の剣はかき消えた。


「ちっ……気づかれたか」

 彰は舌打ちして撤退する。

「なるほどですねえ。その可能性は考えていませんでした、はい」

 鹿野田はしたり顔でうなずいている。


戦闘人形ドールとあなたは風野大吾の遺伝子から作られたクローン人間。ですから能力も厳密に一致しています。あなたが戦闘人形ドールの剣を解除できたのはそれが理由ですか」

「……ああ、そうだよ」

 やさぐれ気味な彰。

「しかし、それは戦闘人形ドールからも当てはまります。もうあなたの剣が戦闘人形ドールに届くことはありませんよ、はい」

 そう、このことに気づかれるのを恐れて、彰は攻め急いでいたのだ。

 決めきれなかった……このまま戦い続ければお互いに相手の武器を消す展開になり肉弾戦になる。そうなっては既にダメージを負っているこっちが不利だ。

 っ、後少しだったのに……これではもう戦闘人形ドールに勝つ方法が……。


「そういうことですか……全く、彰さんは一人で突っ走りすぎなんですよ」

「恵梨……」

 鹿野田と話している間に、恵梨が近寄っていた。

「脇腹からそんなに血を流しているのに……無茶しないでください」

「それ恵梨の仕業で……」

「と・に・か・く。止血しますからちょっとじっとしていてください」

「いや、そういう局面じゃないんだが……」

 いつも通りに戻った恵梨はマイペースで彰の止血をする。

 といっても、救急キットを持ってきているわけでもないので、流れた血を水の錬金術で操作して浮かして、傷口の血を金属化する応急処置だ。


「はい、終わりました」

「だから……」

「それと……これも渡しておきますね」

「……っ! もしかして!」

 そこで彰はようやく恵梨の目的に気づいた。

 彰の手に渡された青の剣。流した血が形を変えて、金属化したものだ。


「すいません、もう水が無かったので……」

 奥の手の足首のブレスレットを使った剣も、正気に戻った際に金属化を解いてしまっていた。

「恵梨……」

「ですが、これなら……戦闘人形ドールに届くでしょう?」

 彰と戦闘人形ドールが消せるのはお互いの能力で作った物のみ。


 恵梨の水の錬金術が作った物は解除することが出来ない。


 なるほど、考えたな……。

 彰は感心すると共に、一つ気になることがあった。

「……いいのか。自分じゃなくて、俺がこの剣を使って? もう元に戻ったように見えるけど……戦闘人形ドールに復讐したい気持ちは残っているだろ?」

 彰の疑問を予想していたのか、恵梨の返答は早かった。

「いいんですよ。大体、彰さんじゃないと戦闘人形ドールの防御を突破できませんし、誰かさんに空中からたたき落とされたダメージが酷いですし」

「……」

「ですから……やり方は任せますから、私の分までお願いします」

 恵梨は笑顔で送り出す。

「……ああ! 任された!!」

 彰は頼もしい返事と飛び出す。


「っ……!」

 彰の手に持たれた青の剣。それが意味することを理解しているのか、戦闘人形ドールはあわててナイフを投げて彰の歩みを止めようとする。

 その全てを消し去りながら、彰は一直線で戦闘人形ドールに向かう。


「……」

 昔の俺では……俺一人では勝てなかったな。

 隠蔽機関のラティス、ハミル、リエラ、それに畑谷先生に風野藤一郎さん。戦場には立っていないが、彼らのサポートがなければここまで来れなかった。

 火野が、雷沢さんが、光崎さんが、ルークが結果的に他の敵を押さえることになったから、俺は戦闘人形ドールとの戦いに集中できた。

 由菜がお守りを渡してくれたから、恵梨を元に戻すことが出来た。

 彩香の話のおかげで戦闘人形ドールの激しい攻撃の中こうして歩いていれる。

 そして――恵梨が渡してくれたこの剣が決着を付ける。


戦闘人形ドール……おまえは強いよ。同じクローン人間だけど、そっちは鹿野田の改造を受けているからな。一対一なら負けてたさ」


 でも。


「生憎、俺には仲間がいる。……卑怯だって言うなよ。だったらおまえも感情を出さず引きこもっていないで、仲間を作って出直すんだな」


 彰は自分と同じ顔をした少年に思いを伝える。


 そして。


「彰さん……」

 恵梨が祈るように見守る中、


「これで終いだ」

 彰は青の剣を大きく振りかぶり、


「…………仲…………………間……?」

 戦闘人形ドールは無駄だと悟ったのか抵抗を諦め、


「そうですか……そうですか! 戦闘人形ドールが……私の技術の粋を尽くした戦闘人形ドールが……負けるというんですねえ!」

 鹿野田は自身の研究の成果が敗れる瞬間を見る、




「食らえ!!」

 彰は戦闘人形ドールを一閃の下に降した。

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