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異能力者がいる世界  作者: 雷田矛平
十章 決戦、科学技術研究会
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二百五十話「決戦20 彰VS恵梨2」

 ある日常の一幕。


「そういえば彰さんと私って戦ったことなかったですよね」

 夕食を食べ終わった恵梨がふと思いついて聞いた。

「……言われてみるとそうだな」

「火野くんや彩香とは能力者会談の試合で戦ったことがありますし……今度の会談で戦ってみますか?」

「んー、でも今度の会談では前に流れた火野と試合をしようって話もあるしなあ」

「その後でいいじゃないですか?」

「あー……うん……でも……」

「……珍しいですね、彰さんなら一も二もなく話に乗ると思いましたが」

「いや、な。俺は戦うとなればやっぱ全力で戦いたいんだよ」

「……私が手を抜くとでも?」

「その心配はしてない。でも……何て言うのか俺の気持ちが問題なんだろうな」

「気持ちが?」

「火野と戦ったときは、あっちが戦闘人形ドールだと勘違いして本気で突っかかってきた。だから負けられなかった」

「そうでしたね」

「彩香と試合したときも、彩香

を過去から救いたいという思いがあった」

「そんなのあったんですか?」

「……今の無し。忘れてくれ」

「嫌です。今度彩香に伝えてみますね」

「………………」

「それはさておいて、つまり私との試合に気乗りがしないのは、理由がないからってことですか?」

「……まあ、そういうことなんだろうな。これが火野だったりしたら、絶対負けられねえってなるんだが」

「私だったらそうはならないんですか?」

「……何かなら

ないんだよな。あ、決して恵梨のことを軽んじているとかそういう訳じゃなくて」

「それは分かってます。……言われてみると私も彰さん相手に本気出せるか自身が無くなって来ました」

「恵梨もか。何なんだろうな……報酬でも付ければ本気になれるのかね?」

「なら、一ヶ月の食事当番でも賭けてみますか」

「ははっ、そうなったら全力だな」

「私も負けられませんね」


 そこでその話題は終わった。

 何てことない会話。

 一年も一緒に過ごして、そのような記憶は二人ともありふれているのに、今この時からはもっとも遠い。




 彰が剣を握り、室長室にて本当の意味で戦いが始まった。


「行け!」

 彰は先に作っておいた空中の剣を繰り出し接近前の牽制を行う。

「……!」

 恵梨も同様に空中の剣で応じる。


 緑の剣と青の剣はお互いを弾いて相殺された。


 そこに彰は突っ込む。上段からの斬撃。

 腕の力に加えて、能力でも

シンクロさせて動かしている彰の剣。


 ガキン!!


 恵梨はそれを受けきった。


「感情が暴走していても、技術が衰えたわけじゃねえか……」

 力は彰の方が上。しかし、剣道をしていたこと、能力の扱いに慣れていることを考えると技術は恵梨の方が上だ。柔よく剛を制された。


 だが、攻防はまだこれからだ。

 お互いがお互いを領域エリアに捉えている。

 彰にとっても、恵梨にとっても技を仕掛けるチャンス


 しかし、彰は深追いせずに後退した。


「打ち合いは不利だな……」

 彰が警戒するのは恵梨の透過攻撃パーミエーション

 相手の防御に対して剣を一瞬水に戻して、再度金属化する事により無効化する必殺の一撃。

 正面からその技を撃たれては、彰は対応する術はない。

 だから彰は一撃離脱の戦法を取るつもりだったが。


「死ね!!」

「こうも突っ込まれるんじゃそれも難しいか……」

 引く様子が無い

恵梨に対し、彰は次の策を取る。

 向かってくる恵梨に対し、生成したナイフを発射。

 恵梨は『水靴ウォーターシューズ』で上下左右に動き、それに当たらず距離を詰めるが。


「解除」


「……っ!」

 圧縮金属化を解き、爆風をまき散らす。

 現在、彰と恵梨はそれぞれ錬金術で作った靴を装備して空中で戦っている。つまり足下が安定していない。それだけに圧縮金属化の爆風は対処しづらい。

 このまま距離を取り

ながら同じことを繰り返して、隙を見せたところを叩く。

「悪く思うなよ」

 相手の弱点、こちらの長所を理解した容赦のなさ。

 彰の本気。


 恵梨の我慢の時間が始まった。

「くっ……!!」

 暴風の中を行く。

 地上に降りれば対処は楽なのだが、恵梨はその選択肢を取らない。彰が空中に居続ける限り、それを追い続ける。

 遠距離からの攻撃も点での攻撃は彰に避けられるし、先ほどまで使っていたワイヤー付きナイ

フは、この風の中では流されて狙いを絞りきれない。


 そして遂にそのときが来た。


「っ……!!」

 風に身体を取られ、恵梨が大きく体勢を崩す。

「来た!」

 彰は待っていたその機を逃さない。

 全速力で恵梨に接近し、そして斬りかかる。

 恵梨も何とか不安定な体勢から、その攻撃に対し剣を合わせる。


 とはいえ状況は彰が圧倒的に有利。

 剣が交差する――!


 ガキン!


「うおっ……!」

 彰の

焦った声。

 優勢で、攻撃していた彰が身を引く事態となった。


「マジかよ……」

 彰は信じられない面持ちで恵梨を見る。

 ここで透過攻撃パーミエーションを使うか、普通……!?

 恵梨が受けに使った剣が水に戻った瞬間、彰は全力で後退していた。そのまま攻撃を続けていたら斬られていただろう。

 でも、それは恵梨も同じはず。透過攻撃パーミエーションで俺の剣をすり抜けたら、そのすり抜けた剣が当たる

可能性があった。俺が攻撃を止めて回避に移ったからそうはならなかったが……そうじゃなかったら相打ちだった。

 勢いが乗っていた分俺の方が先に攻撃が届いたはずなのに……恵梨はやはり自分の身を犠牲にしてでもこちらを殺すつもりだ。


「厄介だな……」

 自分の身を大事にしない相手。

 それは攻防共に計算を狂わせる。

 そして、ちょっとやそっとのダメージで戦いを止めたりしない。


「こうなったら……」

 彰は躊躇いなく次の思考をしていた。


 恵梨を止めるには……殺すしかない。


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