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異能力者がいる世界  作者: 雷田矛平
八章 クリスマス、明かされる過去
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百九十五話「美佳のポリシー」

 思い立ったが吉日。

 恵梨はその日の放課後、彰と由菜の対策を行うためある人物に話を聞いた。


「すいません、美佳さん。少し話いいですか?」

「そんな改まってどうしたの?」

 西条美佳。普段から親交の深いクラスメイト。

 彰さんも由菜さんとも中学時代からの付き合いで、幅広い情報を持っている美佳さんなら相談するのにうってつけでしょう。


「まあ、今日は部活も無いし時間は取れるわ。場所はここでいいの?」

「えっと……」

 さっと教室を見回す恵梨。

 彰さんは用事があると言って先に教室を出ましたし、由菜さんも今日は部活があるはずですが……大丈夫ですね、二人ともいません。

「はい、ここで大丈夫です」

「ふーん、あの二人についての話ってことね」

「……分かりましたか」

 どうやら今の探す動作だけで恵梨の考えがバレたようだ。


「いいわよ。出来れば二人が話し合って解決して欲しかったけど、そろそろ当事者だけの問題に留まらない、って思ってたところだから」

 美佳も彰と由菜がクラスに悪影響を及ぼしていることには当然気づいている。それに二人自身が解決すべき問題だってことも恵梨と同じ考えだったようだ。


 机を挟んで向かい合って座る二人。まず口を開いたのは美佳だった。

「それで。私に聞くより、先に話すことがあるでしょ」

「…………?」

「あのハロウィンの夜何があったのかってこと」

「あ……」

「みんなして途中でパーティーを抜け出したと思ったら、沈んだ様子の由菜が帰って来るわ、急に元に戻った彰も落ち込んでいるわ、恵梨たちも元気がない様子で……本当何があったのかって問いただしたいところだったわよ」

 訳の分からないままパーティーがお開きになったことの不満をここぞとばかりにぶちまける美佳。

 元に戻ったとは彰役を『変装ディスガイス』でこなしていたハミルから、本人に戻ったことを指しているのだろう。

「そ、そうですね。……その節は本当にすいません」

 何があったのか聞きたくても、私たちの様子から聞くのを躊躇ったのだろう。そしてそのまま一か月も経った。……こんなことになるなら早めに何が合ったのかくらいは話しておくべき…………。


「それで聞かせてもらえるわよね?」

「…………」

 そう、話しておくべきだったのだが……問題が能力者に関わるとなると話は別だ。

 あのハロウィンの夜にあったことを説明するとなると、そこに触れないわけにはいかない。能力者のことを一般人に話すわけにはいかないけど…………隠蔽機関は由菜さんが能力者のことを知っても放置している。それなら美佳さんにだって教えても……。

 恵梨が逡巡していると、やれやれといった様子で美佳が言った。

「別に恵梨が隠していることは話さなくていいの。概要だけでも教えてくれれば」

「え……?」

「気づいていないと思ったの? 文化祭の時も、夏祭りの時も、遠足の時も。彰や恵梨、火野君に彩香さんが何か隠していることは把握している。……それが私に話せないことも」

「………………」

 そういえば美佳さんは文化祭の時彰さんが一人戦いに向かったことを私たちから誤魔化していたし、夏祭りの時も同じだ。……遠足の時はどうしてバレたか分からないですけど。

 これだけ関わりが深くなって誤魔化しきれるわけが無かったということ。それは由菜さんだけでなく、美佳さんも同じだったというわけですね。


「すいません、美佳さん」

「謝らなくていいわ。誰だって触れられたくない秘密の一つや二つは持っているわ。私だって恵梨に話せないことだってあるし、それが恵梨たちにもあるってだけ」

「………………」

「色々な情報を知っているから誤解されがちなんだけど、そうやって情報に触れてるからこそ私はどこまで踏み込んで良いのかについてはいつも考えているわ」

 情報屋としてのポリシーを語る美佳。

「だから今は由菜に関わるところだけでいいから、大事なところはぼかしていいから情報をちょうだい」

「ありがとう……ございます」

 美佳さんの言葉が本心だったのか、それとも悪く思っている私に対して即興のフォローなのかは分からない。……それでも誠実に話そう。それでないと私のことを赦してくれた美佳さんに筋が通らない。


「……あの夜、由菜さんと彰さんの間に起きたことは、彰さんが今まで隠し続けていたことが由菜さんにバレたことです」

 語りだした恵梨。

「それに対して由菜さんは、どうして話してくれなかったのか、約束したのにと彰さんを糾弾して……ですけど、彰さんはそれを冷たくあしらって……そのまま別れたという感じです。それが尾を引いて今の無視し合っている状況に続いているんだと思いますが……」

「やっぱり……そんなところだったのね」

 どうやら美佳の予想の範囲だったようだ。

「美佳さん、今の話で何か分かったんですか?」

「まあ……私もあの二人に関することは恵梨よりも知っていると思うから。……だけど、そうなると余計私たちからは手を出しにくいわね」

「それは……約束ってのが関わって来るんですか?」

 『お互いに辛いことや苦しいことがあったら隠さずに話す』

 由菜さんが大事に思っていて、彰さんが手段だと割り切っていた約束。一体どんな背景があったらそんなことになるのだろうか?


「関わるけど…………詳細は話せないわ」

 美佳は申し訳なさそうにしている。

「それは私が話せなかったのと同じように、触れられたくない秘密ってものなんですね?」

「ちょっと違うわ。私からは話せないってだけ。確かにそれには私も仁志も関わっていたけど、中心は彰と由菜。二人の了承も取らないで話していいことだとは思えないから」

 聞くなら本人から聞け、ということですか。

 それにしても美佳さんも仁志さんも関わっている……? 何かちょっと大きな話になってきましたね。




「それにしても当人たちが解決すべきというのが美佳さんの結論ですけど……それでは今までと変わりませんよね?」

 結果がこの一か月だ。お互い妙に頑固なところがあるから、ここまで来た以上どっちかが折れたりはしないだろう。

「そうね。ちょっと強引でもいいから何か二人に話をさせた方がいいかのかもしれない……」

「強引に……? どうやってですか?」

「それは今から考えるのよ」

 ああでもない、こうでもないとブツブツ声に出しながら思索にふける美佳。


(私も何か考えるべきなのでしょうけど……)

 美佳の考えには賛成だ。直接が駄目なら、間接でもいいから問題の解決に協力すべき。

(ですけど……やっぱり私もその約束っていうのは知っておいた方がいいかもしれませんね)

 能力のことも、約束のことも知る立場になれば、問題解決の糸口が見えてくるかもしれない。それは彩香や火野君よりも、彰さんと由菜さんと付き合いが長い自分の方が適任だ。


(となれば……彰さんか由菜さんに直接聞いてみるしかありませんか)


 聞いたところで教えてくれる可能性は高くないように思えますけど。

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