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異能力者がいる世界  作者: 雷田矛平
七章 ハロウィン、明かされる秘密

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百八十六話「ハロウィン変事9 戦闘開始」

 結上駅の改札を出てすぐ。

 二人の能力者が対峙している。



「ドウシテ、ココニイルノデスカ、タカノアキラ」

「さあな。考えてみろよ」

 目の前に立つ黒人男性に、ふてぶてしく言ってのける彰。

 昼休み終わりに学校を飛び出した彰だったが、先行していた能力者を追いかけたり、そいつらから情報を吐かせたり、その後は駅まで来て張り込んだり、既に時間は夜に差し掛かっている。

 ようやくだ……こいつを倒せば終わる。


「ドコカラカ、ジョウホウガ……マサカ!」

「ああ。おまえの仲間二人は締め上げといたぜ。命までは取ってないから安心しろ」

 確かに彰が目の前の能力者の仲間二人に行ったことは情報を吐かせただけ。命は取っていない。

 ……が、命は取っていないだけだ。


「ったく、プロ意識の高い奴は面倒だったぜ。おかげでこんなに時間がかかっちまった」

「キサマ……!!」

「……ああん? おまえがそんなことを言う資格があるのか?」

 凄みを見せたその男性以上の憤りを見せている彰。

「おまえらは俺の仲間を傷つけるつもりだったんだろう? それなのに自分たちが傷つけられたらキレるって……おかしくないか?」

「………………」

「他人に対して悪意を持つならな……その悪意が自分に返ってくることも覚悟しろ。日本では人を呪わば穴二つ、っつうんだよ」

 こう見えても中学時代は不良の彰。手段を選ばないえげつなさは持っている。




「さて、ここでおまえをブッ飛ばしてもいいんだけど……それじゃ駄目なんだよ。真の敵はおまえじゃないからな」

 目の前の能力者は依頼を受けただけの者。そんなやつをただ倒しただけではこの事態は終わらない。

「さっさと依頼主に連絡しろ。科学技術研究会のサーシャにな」

「……ソコマデ、バレテイルカ」

 携帯を取り出すその男性。

 ちなみに依頼主がサーシャということは予測からカマをかけた発言では無い。二人の仲間から聞き出したことだ。


「……ハイ……ソレデ…………」

 さて、サーシャはどう出るか……。

 ここまでは彰が思い描いた通りに進んだ。だが、一番の問題はここからだ。

 そもそも今回の『調査』とやらが、何を目的にどのように行うのかさえ分かっていないんだよな。

 それは仲間の二人から聞き出せなかった。そもそも知らされていなかったようだ。

 悪意を持って人を騙すサーシャ……今回はどう動くんだ?


「…………ワカリマシタ」

 男が連絡を追える。

「どうだったんだ?」

「ソレハ……チョクセツ、ツタエル、ソウデス」

「直接……?」

 疑問を持った彰には取り合わず、男は懐から取り出した紙を床に置く。


 何だこの紙……人の形に切り取ってあるな。

 それにしても直接って……。




「驚いたぞ、こちらの行動に気付いているとは思っていなかった」




「……っ!!」

 紙が実態を持った女性に変化する。

 ……いや、違う。入れ替わったんだ。


「久しぶりだな、サーシャ。……会いたくなかったぜ」

「私もだ。できれば直接会わずに事を進めたかったのだがな」

 現れたのは彰が二度も煮え湯を飲まされた相手。

 科学技術研究会所属、『交換(リプレイス)』の能力者のサーシャだった。



「だ、誰だあの美人!?」

「……今、いきなり現れなかったか?」

「あの二人とはどんな関係なんだ……?」

 突然現れた見目麗しい金髪女性に辺りが騒然となる。

 そういえばここは駅の構内だったな。衆目の前で能力を使ってるが……まあラティスがどうにかするだろう。


「全く。段取りが狂った。……鹿野田様にどう言えばいいのか」

「……今日は戦闘人形(ドール)が一緒じゃないんだな」

 この前は正体不明な能力者、戦闘人形(ドール)と一緒に現れていたのだが……。

「戦闘人形(ドール)は調整中だ。そのためのデータを取りに来たというのに……まあいい。ところで貴様は一人でここに来たのか?」

「そうだが」

「……お前の行動パターンは把握している。仲間を頼らず、全て自分一人で被るつもりか」

「……っ!」

 自分の心を言い当てられる彰。


「どうしてそれを……」

「それくらい分からずに人を騙すことなどできまい」

 心理学も齧っているサーシャだが、それを抜きにしても彼女にとって人の心など理解に容易いものだった。

「そうか……なら、それでいいだろう」

 何やら頷いて見せるサーシャ。


「ソレデ、ワタシハ、ドウスレバ……」

 黒人男性がサーシャに聞く。

「予定とは違うが……この少年と戦え」

「……ソレガ、イライヌシノ、イコウトアレバ」

「ああ。情報は渡してある。もしあのままなら敵ではないだろう。……そして高野彰。貴様はこのディールと戦え」

 隣の男性を指すサーシャ。


 『器官(オーガン)』の能力者……名前はディールといったのか。

「……嫌だ、と言ったらどうするんだ?」

 この場を掌握しているのは完全にサーシャだ。せめてもの反抗として、彰はそう言ってみる。

「それならそれでもいいんだぞ。このディールがおまえの仲間を襲うだけだ」

「……ちっ」

「約束してやる。ディールを倒せば今回は一旦手を引くと」

「敵の約束なんて信じられるかよ……」

 ぼやく彰だが、サーシャの言葉は真実だろうと考えている。


 さっきぽろっとこぼした今回の調査の目的。

 戦闘人形(ドール)のための情報収集だとしたら……仲間の中で一番の目的は俺か彩香が使う風の錬金術だろう。

 そしてデータを取るためには俺に本気で戦ってもらわないとこまるはず。だから恵梨たちのことを出して俺の逃げ場を無くしてから、今の約束でやる気を出させた……。


「……分かったよ。で、どこで戦うんだ」

 しぶしぶうなずく彰。だが、こんな人がたくさんいる環境では戦えない。

「それは考えてある――」


 ヌッ。


「……っ!」

 サーシャの手が彰に向かって伸びる。

 反射的に身を引こうとする彰だが、意表を突かれたのか逃れきれず。


 サッ!


 肩にその手が触れた瞬間、周りの景色が変わった。


「ここは……」

 駅構内の明るく華やかな場所から一転、暗く一面灰色な殺風景な景色に変わる。

 目の前の景色が突如変わる。そんな異常事態に、しかし彰は落ち着いていた。

「こんなことに慣れを感じるなんて俺も結構染まって来たな……」

 どうせサーシャの『交換(リプレイス)』でどこかに飛ばされたのだろう。

 キョロキョロと周りを見回す彰。

 ……周りに積んである資材、上空高くまで覆われたシート……どうやら工事中の建物の中か?

 シートで四方を囲まれて人目に付かないし、まだ工事が進んでいないのか中もほとんど吹き抜け。……確かに戦闘を行うには良い場所だろう。

 工事に関する情報、担当業者や施工主などが書かれた情報板に住所も書かれていたが、場所も結上駅からそう離れていないことも確認する。


「……ソウカ」

 同じく『交換(リプレイス)』で飛ばされたディールも上空を見ながら何やら頷いている。


「ここなら大丈夫だろう? 思う存分戦え」

 一距離取った組まれている足場の上から、サーシャがカメラを構えている。



「……」

 何が段取りが狂った、だ。

 こんな場所も見つけておいて、どう考えてもこうなることも予想していたとしか思えない。

 何から何までサーシャの手のひらの上のようで嫌になる。

 ……が、それに乗るしかないことも事実。


「やるしかない、か」

 風の錬金術を発動する彰。

 魔力によって風を起こし、それを金属化。剣の形に精製してそれを右手で握る。


「ヤルキノヨウダナ……」

「ああ、一つ言っておく。……おまえはサーシャから俺のデータを貰っているんだろう? 能力の詳細、俺自身の運動データ、そして能力を応用して使った技なんかの情報まで受け取っているんじゃないか?」

 さっきこぼしていたサーシャの言葉からの推測。

「……マア、ソウダナ」

 そこまで言い当てられて、否定しても意味ないと思ったのか肯定を返すディール。

「だとしたら注意しといた方がいいぞ」

 戦闘前に忠告……老婆心から来るそれを敵におこなってやろう。




「そのデータの時の俺と、今の俺を一緒だと思うなよ」




 データを取られたのは前にサーシャと会ったとき、つまり俺が無様に戦闘人形(ドール)にやられたデータのはず。

 あれから早二か月弱。

 俺は……あの時のように倒れるわけには行かない。みんなを守ってみせる。




「……ソウカ。ダトシテモ、ワタシガ、オコナウコトハ、カワラナイ」

 そしてディールも、



「器官(オーガン)、腕(アーム)! 力の強化(パワーアップ)!」



 己が身に宿す能力を発動する。


「………………」

 対象の部位に内容に応じた強化を行う能力……ハミルから聞いた特徴と合っているな。


「おまえ自身には何の恨みもないが……あんな依頼を受けたのが運の尽きだと思え」

「キサマジシンニハ、ナニノウラミモナイガ、アンナノニネラワレタノガ、ウンノツキダトオモエ」


「「………………」」

 言葉はそこまで。

 お互いにそれを悟ったのか。


「やっ!!」

「ハッ!!」


 次の瞬間には相手目がけて駆け出していた。

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