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異能力者がいる世界  作者: 雷田矛平
一章 水の錬金術者
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十七話「戦闘人形との戦闘4」

 作戦を伝え終わった彰は戦闘人形(ドール)と鹿野田に向けて一直線に走る。

「ええ、やる気ですね。では……戦闘人形! 迎え撃ちなさい!」

 鹿野田に命令され、戦闘人形が前に出て彰を迎撃する態勢をとる。


「おらっ!」

 カキン! 剣と剣が打ち合う音がした。

 彰と戦闘人形の戦闘が始まる。

 さっきまでは空中の剣も彰に斬りかかっていたが、

「えいっ!」

 今は空中の剣は恵梨と打ち合っている。

 場所は戦闘人形から二メートルほど離れた後ろで、風の錬金術で物を動かせる範囲、領域(エリア)の限界地点だ。


 恵梨は空中の剣の猛攻にさらされて、戦闘人形に近づけない。

 持ち手のいないその剣は、地面すれすれから斬り上がったり、空中で回転したりと自由自在に動き恵梨を翻弄(ほんろう)する。

 しかし、これで恵梨の目的は果たされていた。

 恵梨の目的はこの剣を彰と戦闘人形から離すこと。

 そうすれば彰が思う存分、一対一ができるからである。


 ようするに、彰の作戦とは二人がかりの挟み撃ちであったのだ。



 さすがに三本目の剣は無いようだな。

 彰は戦闘人形と攻防を繰り返しながら、内心で安堵する。

 というのも、恵梨からきちんとイメージできるなら三本の剣を同時に操ることも不可能ではないと聞いたからである。

 だがさすがに、戦闘人形も自分が動きながらもう一本の剣を動かすので精一杯のようである。


 彰はさっきからつばぜり合いに持ち込もうとするが、さっきの攻防で戦闘人形に警戒されているのか持ち込むことができない。

 一進一退の攻防を繰り返している。

 しかし、彰に焦りはない。というのも、作戦に自信があるからだ。

 まぁ、気長に待ちますか。

 緊迫した攻防をしながら、気楽な彰。

 そう。作戦の(かぎ)を握るのは、彰ではなく恵梨だった。




 鹿野田は戦闘人形(ドール)に彰たちが二人がかりでかかってきても、勝ちを確信していた。

 そもそも、負けるかもしれないという思考回路がない。

 鹿野田にとってこれは戦闘ではなく実験であり、実験とはある程度結果が分かっている状態でするものであるからだ。この場合の結果とは当然、戦闘人形(ドール)の勝利であった。


「はぁ、はぁ」

 鹿野田が見ると、激しい攻防に恵梨が肩で息をしている。

 見れば彰も玉のような汗を浮かべている。

 それに対して、戦闘人形はまだまだ余裕だ。

「すばらしいです。ええ、戦闘人形(ドール)よ」

 戦闘人形(ドール)は鹿野田の属する、科学技術研究会、能力研究部門の最高傑作だ。

 ただの少年に見えるその体には、実はいろいろ改造されている上、危なげな薬も使われて戦闘用にされている。


「このまますれば、あともう少しで勝てるでしょう」

 彰たちが疲れているのを見てつぶやく鹿野田。


 しかし、それは逆に言うと。

 このままでなければ、どうなるかは分からないということだ。




 ただただ、剣を打ち合っている戦場に変化が訪れる。

 彰の作戦の発動であった。




 空中の剣の動き方に慣れてきた恵梨は作戦を実行する。

 剣と剣がぶつかる、その寸前、


「解除!」


 恵梨の剣が水に戻って浮く。


 結果、戦闘人形の操る空中の剣は水を斬ることになり、


金属化(メタライズ)!」


 剣が水を通過する瞬間、恵梨が再度、水を金属化した。


 空中の緑色の剣を、その内に取り込んでの青色金属の(かたまり)となる。


「行けー!」

 そして、恵梨は魔力で加速してその塊を自分の後ろに投射。当然、戦闘人形(ドール)の剣も一緒に飛んでいく。



 これで、恵梨と戦闘人形までの道を阻むものはなくなった。



「何!?」

 驚く鹿野田は、能力のそんな使い方を想像していなかった。


 恵梨はダッシュで戦闘人形との距離を詰める。

 戦闘人形は振り向いて、恵梨を撃退することはできない。

 そんなことをしようものなら、今度は正面の彰に斬り捨てられる。


 有り体に言って、戦闘人形はピンチだった。



「だが、まだです!」

 鹿野田は叫ぶ。

 戦闘人形の切り替えは早く、すでに恵梨に巻き込まれた剣は解除して風に戻し新しい剣を作り出そうとしている。


 風の収束まで約一秒かかり、その前に恵梨は二メートルの距離を詰めきるだろうがそこは問題ない。


 というのも、恵梨は剣を持っていないからだ。


 さっき、戦闘人形の剣を無力化する際に恵梨は剣を使っている。距離を詰めても武器がないのなら戦闘人形を倒すことはできない。

 ペットボトルを出して新しい剣を作ろうにも、そのころには戦闘人形も新しい剣を作りきっているだろう。

 そうなれば、撃退できる。



 しかし彰はそんなこと当然予測済みで、対処はすでに行っていた。


 焦りましたよと安心しかけた鹿野田は、ふと恵梨の手首で何か光が反射したのを見つける。



 よく目を()らしてみると、恵梨は手首にブレスレットのような物を着けていた。

 青色の金属製のブレスレットを。


「な、に……!?」

 困惑を通り越し、現実を認識できない鹿野田は見た。

 そのブレスレットが水に戻り、形を変え、一瞬で武器に変わるのを。



 恵梨は走りながらその武器を手に持ち、


 彰は戦闘人形をひきつけるために攻撃を激しくして、


 戦闘人形は焦りながらも目前には彰が攻撃してくるためどうしようもなく、


 呆然とする鹿野田の前で、


「食らえ!!!」

 恵梨は戦闘人形に向かって武器を振り抜いた。

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