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異能力者がいる世界  作者: 雷田矛平
七章 ハロウィン、明かされる秘密
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百七十一話「学級委員長選挙2」

連日投稿二日目!

 そして六時間目。

 決戦の時がやってきた。


「それじゃあ今日のLHRは後期の学級委員長選挙を行う」

 担任の畑谷が黒板に書きながら話す。

「その後は新委員長のもとで係決めをする、というわけだが質問はあるか?」

 クラスを見渡すが挙手している生徒の姿は無し。


 ちなみに係とは、教科ごとの連絡を行う学習係や他には図書係、放送係などがある。斉明高校では委員長、副委員長以外には何かしらの係に所属しないといけないという決まりがある。


「無いようなら、早速学級委員長選挙に入るぞ。自薦、他薦は問わない。学級委員長になりたいやつは挙手し」


「はいっ!!」

 彰が天をも貫け、と言わんばかりにピンと手を伸ばして上げる。


「元気がいいな、高野。……というわけで二期連続を狙う高野が立候補したわけだが」

 畑谷は黒板に候補者の名前を書いていく。

「他にはいないのか?」


「………………」

 彰以外の手が上がらない。

 まあ、そうよね。美佳は得息する。

 そもそも学級委員長といえば良く聞こえるが、実際のところ雑用係のようなものだ。進んでやりたいと思うことの方が珍しいのである。


 だけど……一人も上がらないはずじゃないのよねー。。

 そう、彰に対抗して出馬するはずの彩香が手を上げていないのだ。

 全く直前になって彰と戦うことに怖じ気ついたの? ……せっかく面白い流れになっているんだから、止めさせないわよ。


「はい、先生」

 そして美佳が手を上げる。

「おっ、西条も立候補を……」

「いえ、違います。私は風野彩香さんを推薦します」

「えっ!!」

 何驚いてるのよ、そういう風に決まってたでしょ?


「風野か。……高野が入院している間も、副委員長の坂田に代わってクラスをまとめてたからな。素質的には十分だろう」

 畑谷は彰の名前の隣に、彩香の名前も付け足す。

「ま、待ってください。私はまだ選挙に出るって決めたわけじゃ……」

「他薦されるってだけで、その人が期待しているってことだ。一人とはいえ、そういう風に期待されるってことはすごいことだぞ。まあ、どうしてもっていうなら無理強いはしないが」

「それは………………はい。分かりました。私も選挙に立候補します」

 彩香が観念したように言う。


「というわけで候補二人目だ。……他にはいないのか?」

 少しざわざわとし始めた教室に向かって畑谷が呼びかける。


 生徒たちがざわめき始めた理由は黒板に書かれた二人の候補だ。

 前期の委員長だった彰と、その代理を行っていた彩香、どちらに票を入れるのか迷って周囲に話を持ち掛けているということだった。

 二人の内のどちらか、つまりそれ以外の候補者に入れる選択肢は誰も想像していない。そんな状況だったから、生徒はみんな自分が選挙に出てもこの二人に勝てる気が全くしなかった。

 だからなのかこの後も自薦、他薦は出ず――。



「先生、ちょっといいですか?」

 否、立候補したはずの彰が手を上げる。



「ん、どうしたんだ?」

「俺は委員長に美佳を推薦します」

「………………えっと?」

「立候補した人が他薦をしてはいけない、というルールはありませんでしたよね」

 畑谷の困ったような顔。生徒のざわめきも大きくなる。



「???」

 どうして敵を増やすようなマネを……?

 他薦された美佳も混乱している。

 どういうこと? 彰は火野君と選挙の結果で土下座を賭けている。この選挙には本気で勝負しに来ているはずなのに……?


「美佳さんも出馬かー。どっちに入れる?」

「うーん、悩むわね」

 と、そのときクラスメイトの女子の声が聞こえてくる。


「…………!!」

 それで美佳は気づいた。

 そうか、彰の狙いは女子票の分散……!

 特に彩香さんが転校してくる前までは、私はちょくちょく女子をまとめる役目をしていた。だから、そのことで私にも票を入れる人が少しはいるかもしれない。

 そもそもこういう学級委員長の選挙なんて、女子は女子の候補に、男子は男子の候補に入れることが多い。その女子票を私と彩香さんで分散できれば、男子票を独り占めできる彰が有利ってことだ。


「ふふん……」

 狙いに気付いたのを察したのか、彰がこっちを見てドヤ顔をしてくる。

 こんな手まで使ってくるなんて……彰は本気ね。

「ということは西条も追加だな」

 畑谷が自分の名前を黒板に書く。

 このままでは彩香さんの方が不利だ。…………いや、彰と彩香さんの勝負にあまり肩入れをするつもりは無かったのだが、何か彰にやられっぱなしなのは癪である。



 何かいい策はないだろうか……?



「すいません、僕も立候補していいですか?」

「……ちっ」

「おやおや、彰くん。態度が悪いですよ?」

 思わず舌打ちしてしまった彰に声をかけるのは、手を上げ立候補した斉藤。

「……彰の企みに気づいたのね」

 斉藤はアンチリア充の一年二組の男子生徒をまとめている。その斉藤が立候補したのだから、男子票のいくらかは斉藤の方に流れるだろう。

 火野と彰が選挙の結果で勝負していることは公にはなっていないが、斉藤のなら知っていてもおかしくはない。


 これでおおよそ互角。後は本人たち次第ってことね。


「斉藤も追加、っと。……じゃあ時間も無いし、この四人の内から決めるぞー」

 そして彰の仕掛けた盤外戦術は不発に終わり、選挙本番が始まるのであった。






「そうですね、僕が委員長になった暁には、学生が学生らしく過ごせるような環境作りを頑張りたいと思います」


 四人も候補がいると誰に入れるか迷うだろうから、ということで参考のために畑谷は投票前に一人一言ずつ抱負を語るように指示した。

 最初に語ったのは斉藤。良いことを言っているように見えて、訳すると学生らしくない行い=リア充を取り締まっていくという意味だ。女子の手前、直球で語れなかったのだろう。



 と、次は私の番ね。


「私が委員長になった際には、クラス全員の情報を把握して困っているときには声をかけたり、相談に乗ってあげたりしたいです」


「「「………………」」」


 教壇からクラスメイトの顔を見渡すと、その多くが怯えた顔を見せていた。

 どうやって情報を把握するんだよっ!? 本当に声をかけたり、相談するだけなのかよっ!? とでも思っているのだろう。

 そこは皆さんの想像にお任せしますよ、っと。


 実際美佳も斉藤もあまり真面目に考えて語っていない。自分たちは脇役で、票を取りすぎてはいけないと弁えていたからだ。




 さて、ここからが真打ちか。

 美佳と入れ替わりに彰が教壇に立つ。


 彰はどんな手を打ってくるだろうか……。

 全くの無策ということは無いだろう。

 美佳の見立てでは彰と彩香の票の数は接戦になると踏んでいる。

 もちろん接戦だから何もしなくたって彰が勝つ目が出るかもしれない。だが、そんな運に任せるような戦略を彰はしないはず。だから、勝つためにも彰が何か手を打つと予想できる。

 それが私を推薦した手だったのかもしれないけど、不発に終わったことだし他に何かすると思うけど……演説で打てる手って何があるのかしら?


「……ま、何にせよすぐに答えは出るか」

 教壇に立った彰に注目する美佳だった。

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