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異能力者がいる世界  作者: 雷田矛平
七章 ハロウィン、明かされる秘密
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百七十話「学級委員長選挙1」

第七章開始強化週間! 連日投稿行きます!

 キーン、コーン、カーン、コーン。

 四時間目終わりのチャイムが鳴る。


「もうこんな時間か。……キリがいいし、今日の授業はここまで」

 教壇に立つ畑谷が彰の方を見る。

 朝食を待ちきれない彰は、立ち上がりながら委員長として号令をかけた。


「「起立!」」


 ……? あれ? 今、声が二重に……?


「あ、ごめんなさい!」


 周囲頭を下げるのは風野彩香であった。




「さっきは珍しかったですね」

「ちょっとボーっとしていたのよ」

 あの後彰が号令をかけなおして昼休みに入った。いつものメンバーで昼食中、早速恵梨にいじられる彩香である。

「彰がいない間、委員長代理として頑張ってたからね。その時の癖が出たんでしょ」

「……軽くは聞いていたけど、実際どうだったんだ。俺の代理は?」

「そりゃあもうすごかったわよ。普段の号令の時も様になっていたし、体育祭の練習の時もきちっとまとめていたし、あれこそベストオブザ委員長と呼ぶべきだと思ったわ」

「へえ」

 それは俺も見て見たかったな、と彰はつぶやく。


 学級委員長である彰が入院している間、クラスをまとめていたのは彩香であった。

 実際には副委員長がそれをすべきなのだったが、彰が人に頼むより自分でした方が早いということで仕事を回さず、開店休業中だったために経験値が溜まっていなかったことや、彩香が美佳が手放しで褒めるほどに委員長としての才覚があったため副委員長を押しのけて彩香が委員長代理を行っていたのであった。


「彩香さんってやっぱりこれまで学級委員長を経験したことあるの?」

「……確かに、小学校、中学校、高校、まあほとんど学級委員長をしていたわね」

「あ、転校する前もやってたんだ。……お嬢様学校でも委員長になるってやっぱりすごいね」

 彩香は二学期になって転校する前までは、純章学園という学校に通っていた。

「私なんて彰に比べたらまだまだよ」

「いやいや、そんな謙遜しなくていいって。彩香さんは彰よりも委員長の素質あると思うよ」

「……人を委員長に仕立て上げておいて、ずいぶんな言葉だな」

 由菜を軽くにらむ彰。自分が委員長になった決定打が、目の前の少女にあることを忘れてはいない。


「あれ、そうだっけ? でもそれとこれとは話が別でしょ」

「そうですか、そうですか。……けっ、それならもう彩香が委員長をすればいいじゃないか」

 やさぐれる彰。

「……さすがに本職の彰がいるのに、出しゃばるなんておかしいわよ」

「それなら彩香さんが本当に委員長になればいいのよ」

 美佳が話に入ってくる。


「……? それってどういう意味や?」

「あれだろ、彰を倒して『私こそが真の委員長ですわ! おほほほほ!』って宣言するんじゃねえか」

「それは面白そうやな!」

「………………バカ言っている二人は置いといて、どういう意味なの美佳さん」

 一か月以上も付き合っていると、さすがに彩香も仁志と火野の扱いにも慣れてきている。


「いや、ある意味二人の言っていることが正しいかも。斉明高校って学級委員長とかの役職が一年で二期制なの、って言って分かる?」

「二期制……つまり、一年を前期と後期で分けるってことですか?」

「そういうこと。それで前期の期限が十月……今月までなの」

「つまり今月にも後期の新しい学級委員長選挙が行われるってことか」

 結論を彰が先に言う。


「だからその選挙で彩香さんが当選すれば、彩香さんが学級委員長になるってわけ」

「なるほどね」

「といっても、結構前期と後期通して委員長をする人が多いのだけど……」

「これまで半年も大変だったのに、さらに半年なんてやってられるか」

 できるならこんな面倒なこと代わって欲しい、と彰。


「そう……。まあ、彰の頼みだっていうなら断る理由も無いし、私も何というか委員長だと落ち着くから」

「落ち着くって……そんなレベルで慣れているんですか」

 恵梨があきれる。


「それでその学級委員長選挙っていつなんだ?」

「六時間目のLHRよ」

「今日かよっ!?」

 思った以上に近かった。

「そこで彩香さんが立候補すれば、もし他に候補が出てきても彰がいなかったときにクラスをまとめ上げた実績もあるし当選するでしょ。というか、私も票入れると思うし」

「私も彩香に一票ですかね」

 恵梨もうなずく。



 それに追随して彰も、

「俺もこの委員長を降りることが出来るなら誰にでも入れて――」



「……で、今どういう話になってるんや?」

「聞いてなかったのか、火野。彩香さんが彰に代わって学級委員長になるんだってよ」

 火野の疑問に仁志が答える。

「ん? 何でや? 彰が倒されたのか?」

「何か選挙っていう戦いの場に彩香さんは出るけど、彰は出るつもりが無いみたいだ」

「ふうん……つまり彰のやつは戦う前から逃げ出したってことか」



『戦う前から逃げ出したってことか』


『戦う前から逃げ出したってことか』


『戦う前から逃げ出した』


『逃げ出した』


『逃げ出した』



「――ああん? 誰が逃げ出したって?」

 火野の言葉が彰の頭の中でリフレインしている。

「どうしたんや、彰? そんな怖い顔して?」

「いいから、答えろ。誰が逃げ出したって言うんだ?」

「そんなの彰に決まっているやろ。だって彩香と戦わずして、委員長の座を受け渡すんやろ?」

「……話を聞いていなかったのか? 俺は委員長の仕事を面倒に思って、そして彩香も委員長をしたいって言っているから譲るだけで……」

「そんな言い訳して、本当は勝つ自信が無いんやろ?」


 ピキッッ!!!!!!

 彰のこめかみからそんな音が聞こえてきた。


「言うに事欠いて、俺が勝てないだと……?」

「そうや。大体、GWのときもあれだけ大口叩いておいて、彩香に負けたやないか」

「ちっ……あれは確かに判定では俺の負けだった。が、内容的には俺の……」

「世の中結果が全て、やで。GWのときも、今回の勝負も不戦勝とはいえ負けたってことやろ」


 プッツンッッ!!!!!!!

 彰の中で何かが切れた。



「…………良いだろう。そこまで言うなら、俺も黙っちゃいられねえ。選挙に出て彩香を倒してやるよ!!」



「あ、彰さん……? そんな無理をしなくても……」

 荒れ出した彰をなだめようとする恵梨。

「無理、だと? 恵梨も俺が彩香に負けると思っているのか?」

「えっと……」

 何だかんだいって一学期の間委員長を務めあげた彰と、委員長としての才覚に満ちている彩香が選挙に出た場合、どちらが勝つだろうか?

 恵梨はすぐには判断が出来ず、言葉をにごす。



「そんなに彰が委員長になりたいなら、私は選挙の立候補を辞退しても……そもそも彰の方がこのクラスには」

「いや、不戦勝で勝っても意味がねえ。彩香も本気で来い。その上で倒してみせる。……その時には火野。分かっているよな?」

「何をや?」

「俺が彩香に勝った場合、俺をチキン扱いしたこと、俺を侮ったことなどの非礼を詫びて土下座をしろ」

 えげつない要求をする彰。

「ほう……なら、彩香が勝った場合、俺の言ったことが間違ってなかったのにいちゃもんをつけたってことで土下座をするんよな?」

「万に一つもあり得ない可能性だが……もしそうなったら、俺の完璧な土下座を見せてやろう」

「……いいで。乗った」

 火野が不敵な笑みを浮かべながら了承する。




「ふうん。……これは面白いことになったわね」

 目の前で火花を散らす少年たち。突然の流れにおろおろする少女たち。

 それらを目の前にして、今から六時間目のLHRが楽しみになってきた美佳であった。

明日も投稿します。

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