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異能力者がいる世界  作者: 雷田矛平
五章 夏祭り、後の祭り
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百三十話「旅行二日目 夏祭り騒動9 黄龍幹部、李本俊との戦闘3」

「はあ…………はあ…………」

 頭に一発。肩に六発。腕に三発。腹は何とかガードしきった。そして足には八発。

 彰が本俊ベンシュンの攻撃を食らった数である。


(致命的な部分は避けているが、このままじゃヤバいな……)

 だが、満身創痍になりながらも戦闘場所を少しずつ移動させていた彰はようやく目的地に着いていた。


 そこは彰たちと本俊ベンシュンが最初に接触した場所であった。逃げながらの戦闘だったためこの場から離れていたのを、また戻ってきたというわけである。

 この場所に彰が策を行うために必要な物がある。いったいそれは何だろうか?


 答えは足がプルプルと震えながら、木にもたれかかっている人物だっだ。


「……何や、……あんたら戻ってきたんか」


 この戦闘の一番最初にノックアウトされた火野である。


 本俊ベンシュンが目を見張る。

「一時は動けないほどのダメージを与えたはずなんだがな」

「俺の、忍耐力を舐めるなよ……」

 息絶え絶えに火野が言う。彰と違い一撃しか食らっていない火野だが、その分強烈なのをもらっていた。あれを見たからこそ、彰は超守備的に戦って被害を減らしている。


 彰は火野に駆け寄った。

「良かった火野、立ち上がれるほどに回復していたんだな」

「まあな……」

「それで早速悪いがおまえにはあいつを倒してもらう」

「人使いが……荒いやつや……」

「やつの能力は未来が見える能力だ。禁を解くからぶっ放せ」

「OKや」



「はっ! 手負いのやつが一人増えたからって何になる! それにおまえは俺に完敗しただろ!」

 火野が立ち上がってたことを意外に思ってた本俊ベンシュンだが、すぐに意識を切り替える。


 彰は火野の邪魔にならないよう下がった。

「おいおい、わざわざここまで誘導したのは二人でかかってくるためじゃなかったのか?」

 それを見咎めて本俊ベンシュンがつっかかってくる。

「何だ、誘導してるってバレてたのか。……いや、あんたの相手なんてこいつ一人で十分だぜ」

「……舐めたことを!!」

 彰の態度が尺に障ったようだ。火野に向けて猛然とダッシュする本俊ベンシュン


 とはいえ、本俊ベンシュンは冷静に考えていた。

 ガキの態度は気になるが、この死に損無いの能力はあいつと同じ物体を生成して操る能力。……よく思い出せば武器が消えると炎になったから媒介する物が違うのだろうが関係ない。そんなの未来の見える俺にとって何回やっても当たるわけがないからな。





 とか、勘違いしてるかもしれないな、本俊ベンシュンは。

「風の錬金術と炎の錬金術には明確に違いがあるっていうのに早計だな……」

 彰は本俊ベンシュンの考えを見越していた。



 本俊ベンシュンを倒すこの策は非常に簡単だ。はっきり言って策とも呼べないレベルである。


 未来が見える能力者?

 だったら――


 本俊ベンシュンが火野に迫る。空中に呼び出した二本の剣の攻撃を避けて、懐に入ろうとした本俊ベンシュンは。


「食らえや!!」

「っ!」


 ズサッ!!

 何の前触れもなしに吹き飛んで地面を転がる。



「――見えない攻撃をすればいいだけだ」

 火野の『念動力サイコキネシス・改』

 打撃エネルギーをそのままぶつけるその技が炸裂した。









 コードネーム『ささやき女』は某所で通信を受け取る。

 あちらの決着がついたか。こちらも急がないと。









 彰たちと本俊ベンシュンの戦闘の決着が付いた少し前。



「これだけの武器があるとは……。どれだけデカい取引なんだ」

 雷沢は目に入った光景に驚きと呆れの混じった感想をつぶやいた。

 その部屋は入り口以外の壁にデカい棚が据え付けられていた。そこにはところ狭しと並んだ銃、手榴弾、ロケットランチャー、地対空ミサイル、地雷、マシンガン、スナイパーライフルなどなどがあった。

 これだけの武器があれば千人くらいは殺してもおつりが来るだろう。

「すごいデスね」

 サーシャも同じような感想のようだ。


「……さて、見とれてる暇は無いか。さっさと終わらせるとしよう」

 雷沢はポケットから赤色の金属球を取り出した。

「それは何デスか?」

「いい質問だな。これは火野くんが錬金術で作った物だ」

 火野の能力『炎の錬金術』。その圧縮金属化で作ったのがこの金属球だ。錬金術で作った物は本人から離れても魔力の供給を切らない限り元に戻らない。


「これを使ってこの部屋を燃やすつもりだ。一個一個破壊していくよりよっぽど手間がかからない」

 雷沢はその金属球を数個取り出して、燃えやすそうな場所を探して置いていく。

「しかし何故わざわざそんな面倒なことをするのデスか? ライターなり使って直接火をつけた方がいいんじゃないデスか?」

「そんなことしたら煙を見た人が集まって逃げられなくなるだろ。火薬に引火しての爆発も危険だ。それに彰くんたちが囮としてどれだけ敵を引きつけておけるか分からないから、早めにここから逃げないといけない。

 だからこれを設置してすぐにこの部屋を出るぞ。安全な場所に逃げてから火野君に炎に戻してもらうつもりだ」

「よく考えているのデスね。……確かに、高野彰さんと火野正則さんのためにも私たちが早めに逃げて、囮役を終わらせてあげないといけまセンね」

「そういうことだ」

 サーシャが感心している間に金属球の設置を終える雷沢。

 さて、帰るぞ。と口を開









「待てよ…………」









 雷沢はあることに気づいた。

「い、今のはどういうことだ……?」

 サーシャさんの今の発言。ちょっとおかしくないか? もしかして僕が今彼女に抱いている疑問は……。もしかして根底から違うのか? いや、ここは合っているがその後の結論が違って。……あれということはたぶんあれで。そうか。そういう風に考えれば……。ちょっと待て、ということはそれ以外のことも……。ああ、これまであった違和感にも全て説明がつく。……僕はどれだけピンぼけした推理を行っていたんだ。僕の性分のせいで真実が遠くなっていたってことか……。


「ハハハッ!! ハーハハハハハハッ!! そうか、やっぱりこの世界は現実だ! フラグも、ご都合主義も存在しなかったんだ!! 」


「ら、雷沢さん!? そんな大きな声を上げたら、誰かに見つかるかもしれまセンよ!?」

 突然笑いだした雷沢を注意するサーシャ。だが、雷沢はそんなこと聞いてもいなかった。


「ああ、ちょうどいいタイミングで返信も着たようだ」

 雷沢はマナーモードにしてポケットに入れておいた携帯電話が震えて、メールの着信を知らせる。その中身を見た雷沢が言った。

「やっぱり僕の思ったとおりだ。これで全て繋がった。……少し話があるんですが、サーシャさん、いいですか?」

 雷沢はいいですか、と聞いておきながら有無を言わせない迫力だった。

戦闘終了。ですが、第五章の本番はここからです。

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