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異能力者がいる世界  作者: 雷田矛平
五章 夏祭り、後の祭り
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百二十七話「旅行二日目 夏祭り騒動6 囮作戦3」

 黄龍ファンロン臨時日本拠点の裏口警備を任されているその男性は、近くで大きな音がしたことで目が覚めた。


 うおっ! 俺、今寝ていたのか!?

 イスの上で飛び上がったその男性は周囲をキョロキョロと見回す。

 ふう、誰にも見られていないようだな。……良かったぜ。寝ているのがばれたら組長にどれほどどやされるか分からないからな。


 ドン、ドン、ドン!

「……で、何だこの音は?」

 男は音の出所を探して、どうやら扉の方から鳴っていることに気づく。

 誰かが叩いているのか? ていうかこの裏口は鍵が壊れててかからないはずなんだが。


 ドン! ドン!! ドン!!!

 そのとき一層音が激しくなった。

「はいはい、今開けますよ、っと」

 寝起きで頭が回転していないのか、扉を開けようと立ち上がって、

「って、だからこの扉は鍵がかからないはずなんだよ。だったら誰が扉を叩くってんだよ」

 鍵のかかっていないドアを叩くということがおかしいことに気づく。


「………………」

 けどまあ、うちのバカたちならそういう意味のないことをしてもおかしく…………いや、ちょっと待て。

 ほとんど寝かけていたからよくは分からないが、そういえば先ほど警備を任されているやつが何人か出ていったはずだ。


「確か、表の方で俺たち黄龍ファンロンのことを知る能力者のガキが二人出たとかだったか……?」

 俺らに正面から刃向かおうなんてバカなやつらだ、とか言いながら出ていった仲間もいたが果たしてそうだろうか?


 そんなわけがない。黄龍ファンロンのことを知っているやつなら、いくら能力者といえど二人で敵うことがないことぐらい分かるはずだ。

 それになぜやつらは表口の見張りに見つかるようなヘマをしたんだ? こっちの裏口からの方が侵入しやすいっていうのに。


 考えられる理由は…………、

「そいつらは囮ってことか?」

 仲間が一人やられたとも確か言っていた。そうやって派手に自分たちの存在を印象付けさせた理由は囮だからと考えるとしっくりくる。

 だとしたら、他に警備が薄くなっているこの倉庫に潜入する係がいるはずだ。そして潜入係は見つかりにくいように裏口から侵入しようとするはずだ。



「そうか、そういうことか」

 つまり今、この扉を叩いているのはその潜入係っていうことか。

 寝起きの頭がフル回転する。いろいろと繋がってきた。

 潜入係というぐらいだから正面からの戦闘は苦手なんだろう。しかし、この裏口の通路は一本道で俺という見張りが立っている。だったら奇襲するためにはどうすればいいか?


 ドン!!! ドン!!!

 その答えがこの音だ。つまり扉を叩いて俺に開けさせて出てきたところを奇襲する。そういう作戦なんだろう。


「なかなか頭の回るやつじゃねえか」

 惜しむらくは俺の頭が良くて、その策に気づいてしまったということだな。

 扉を開けたところですぐにかかってくるのか、それとも何もないことを確認させて油断したところにかかってくるのかは分からない。が、どちらにしても警戒してれば対処できるだろう。


「さて、返り討ちにしてやるか」

 ほくそ笑みながら、扉の向こうに声をかける。

「すいませーん、今から開けますね」

 相手に不審がられないようにあくまで仲間に声をかけているつもりを意識だ。

 その声を聞いてか扉を叩く音も無くなる。

 くくく、俺が警戒してないと思って作戦が上手く行っていると油断しているんだろうな。本当は演技なのにな。


 そして男は警戒しながらドアノブに手をかけ、



 バチッ!!



「ぐっ…………!」

 そのまま気絶した。










「ふう、上手く行ったか」

 雷沢は裏口の扉を開けて一息つく。

 足下にはここを見張っていた男性が倒れている。

 雷沢はどうやって扉越しに男を気絶させたのか? 行ったことは簡単だ。ドアノブは金属製で電気をよく通すのだから、男がドアノブを掴んだ瞬間、雷沢の持つ能力『電気エレクトリック』を使って扉越しに電気を流し込んで気絶させたのだ。


「大体、何だあの気持ち悪い猫なで声は。演技しているのがバレバレじゃないか」

 見張りのかけた思わずぞわっとするような声を思い出す。

「大方扉を開けてから勝負だと勘違いしていたんだろうが……まあ、いいか」

 雷沢は振り返る。

「それじゃあサーシャさん、先に進みますよ」

「そうデスね」

 二人は見張りのいなくなった裏口から進み出した。











 コードネーム『ささやき女』は某所で思う。

 経過は順調。報告によるとあちらも順調のようだ。











「何で当たらないんだよ!? ……くっそ、おっさんもう一回分くれ!」

 五発とも外した仁志が財布から金を出して新しいコルク弾をもらう。

 女性陣with仁志は射的屋に来ていた。プレイしているのは美佳と光崎と仁志で、他の三人はその後ろで見守っている。


 バカね、仁志は。こういうのはもっとちゃんと狙いを付けるべきなのよ。

 美佳は自分の顔を銃の横まで持っていく。こういう時の銃には銃身の上に狙いをつけるための出っ張りがある。それを標的の重ね合わせて、そしてぶれないように銃を固く持って……撃つ!

 パン!

「よっし!」

 コルク弾は狙い通り当たって、キャラメルの箱が落ちる。射的屋のおじさんがそれを拾って美佳に手渡した。

「嬢ちゃん上手いねえ。四発とも当てるなんて」

「美佳さん、スゴいです! 百発百中ですね!」

 後ろの恵梨も褒めてくる。

「まあね」

 美佳は返事をしながら、恵梨も元気が戻ってきたことを確認する。

 私の腕前を見せて、恵梨のテンションを上げさせる。……予定通りね。

 ただ単に光崎との勝負に来たはずの美佳の何が予定通りなのかは分からなかったが、誰も脳内で思っていることにツッコめる人はいない。


 美佳は隣をちらっと見る。

「ああもう、落ちないなー」

 ちょうど光崎が最後のコルク弾を銃に込めるところだった。手元には一つも景品が無いようで、つまり四発とも外したということだろう。

 ふっ、どうやら私の勝ちのようね。

 そもそも光崎は勝負を受けていないのだが、こういうのは本人の自己満足の問題だ。そっとしておくのがベストだろう。


 美佳は五発目のコルク弾を銃に込める。これまで四発とも景品を落とさせているが、それで満足せず五発目も当ててるつもりのようだ。

 さっきの負けを取り戻すためには完璧に勝たないとね。

 そもそも暗号解読に勝ち負けもないのだが、こういうのは本人の(以下繰り返し)


 ……あれにしよう。

 美佳は下段の方にあるお菓子の缶を狙うことにした。その狙いを見てか由菜が話しかける。

「さっきから軽いものばっかり狙っているけど、美佳は一番上段のぬいぐるみとか狙わないの?」

「バカを言わないで由菜。ああいうのは罠よ。どうしてこんな軽いコルク弾であんなのが落とせると思うのよ」

 狙いをつけながらほとんど自動的に会話をする美佳。 

 標準OK。脇も締めた。これであとは引き金を――


「でも、光崎さんは狙ってるよ?」


 引くだけ……!

「って、え?」

 間抜けな声を上げる美佳だが、それでもきちんと狙いをつけていたことが幸いしたのか、五発目も命中してお菓子の缶が落ちる。


「えいっ!」

 それと同時に光崎が放った五発目も上段のぬいぐるみに命中した。

 とはいえ美佳がこれまで落としてきたもののようにすぐには落ちない。ぬいぐるみはぐらぐらと揺れて……落ちた。


「! やったー!!」

 光崎が喜びの声を上げる。 

 カラン、カラン、カラン!

 射的屋のおじさんも手持ちのベルを鳴らして、

「おめでとうー!! ……いやー、おじさんですら難しいこのぬいぐるみを落とす人が出るとはね! 本当に思っても見なかったよ!」

 光崎を褒め称える。 


「光崎さんやりましたね!」

「純は全部同じところに当てていたものね」

「うん! 何だっけこういうときは物体の重心に当てるといいってタッくんに教わったことがあるから」

 どうやら光崎は五発ともぬいぐるみに当て続けていたようだ。それによって少しずつ後退させ、最後の五発目でトドメを刺したというわけだ。



「あっ、嬢ちゃんも落としていたんだね。……はい、これ」

 おじさんが同時に当てていた美佳の景品を取って手渡す。

「すごいね。これで五発とも命中? それもなかなかできるもんじゃないよ」

「そうですよ! 美佳さんもすごいです!」

 二人が褒めてくれるが、美佳はそれが聞こえてなかった。


 ま、まさか暗号解読に続き、射的でも負けるなんて……。

 美佳は光崎に負けたと思っていた。確かに五発命中はすごいことかもしれない。が、美佳の判定基準的にはスライム五体倒した勇者が自分で、魔王一人を倒した勇者が光崎だった。どちらがすごいかは言うまでもない。

「完敗だわ……」

 そもそも射的というゲームに勝ち負けも(以下繰り返し)


「あれ? 美佳ちゃん景品五個って……えっ!? 全部当てたの!? すごいね!」

 そのとき由菜と彩香の二人の褒めちぎられていた光崎が、美佳の手元を見て驚いた。

 もちろんホワホワしていて人の悪意というのに無縁そうな見た目通り、光崎の言葉に他意はないはずだ。

 そう分かっていても、美佳は皮肉を言われたと思ってしまった。

 ………………けど、私は負けを認めないほど子供ではない。


「……確かに今回の勝負は私の負けです、光崎さん」

「えっ、何言っているの? 美佳ちゃんの方がスゴいって! 全部景品を落としているんだから」

 光崎さんには邪気がない。そう、邪気がない……。美佳はぐっとあふれ出そうになる感情をこらえて続きを言った。

「ですが、次! 次の金魚すくいの勝負では絶対に負けませ――」



「へえ、面白いことを言いますね」



 何故か横からセリフが遮られる。夏場なのに冷たい風が吹いてきたかのように美佳の背筋がゾクッとする。

 振り向くと修羅がいた。

「金魚すくいで勝負? 面白いですね。それで私に勝つつもり、と?」

 本来、笑みとは暖かさを伝えるものなのに、現在恵梨が浮かべてる笑みは冷たさしか伝えない。


 な、なんでここで裏恵梨が出てくるの!?

 美佳が狼狽する。彰が暗黒面ダークサイドと呼ぶ恵梨の冷酷な部分を、美佳は裏恵梨と呼称していた。


「……もう遅いかもしれないけど、恵梨金魚すくいのことで挑発されると見境が無くなるから。それほど腕前に自信があるのよね」

 恵梨と昔から交友のある彩香が今さらな注意を行う。

「で、でも私、今光崎さんに勝負を挑んだんだけど!」

「さあ? 聞き間違ったんじゃない? ここ喧噪がひどいから」

 確かに夏祭りだけあって活気があるから、さっきから会話するにもいつもより大きな声を出している。

「そんな理不尽な!」

「私に言われても」

 彩香の突き放すような一言。


 くっ、こうなったら聞き間違いだと恵梨に急いで説明しなければ。裏恵梨の矛先にされ続けられたら精神力がどれだけあっても足りな――

「分かったよ、美佳ちゃん。金魚すくいで勝負だね。……私、負けないからね!」

「光崎さん!? 何で勝負に乗り気なんですか!?」

「あら、光崎さんも勝負に参加するんですか?」

 裏恵梨のまま聞いているが、何というか良い意味で鈍感な光崎はその冷たさを感じないようだ。

「うん。今、美佳ちゃんに誘われたからね。美佳ちゃん絶対に負けないって意気込んでたよ」

 そんな火に油を注ぐような一言を!

 光崎としてはただ単に自分に言われたことを復唱しているだけなのだろう。だが、『光崎さんに』という目的語が抜けている。


「……へえ?」

 さっきまでのが冷風なら、今度はブリザードのような冷気を持って美佳の方を見る裏恵梨。

 精神力がガリガリ削られていくのに耐えられなくなった美佳は光崎の方に話を振る。

「な、何でさっきの射的の時は勝負に乗り気じゃなかったのに、今は乗るんですか!?」

「え? だって、射的は勝負じゃないけど、金魚すくいって立派な大会もある競技なんだよ。だったら勝負がなりたつでしょ」

 光崎の中ではそれは当然のことだったらしい。


 駄目だ。仁志とか火野君みたいな度の抜けたバカでも無いのに、この人の思考が読めない。……こうなったら多くの人を巻き込むことで負担を軽減するしかない。

「そ、そういえば由菜と彩香さん、恵梨に金魚すくいを教わりたいって言ってたよね」

 さわらぬえりに祟りなし、とさっきから会話の輪から外れている由菜と彩香。その二人も『勝負じゃなくて、教わるくらいなら大丈夫よね』というような顔色をしている。


 それを聞いて裏恵梨が、そうでしたね、とつぶやいた。

「由菜さんと彩香に教える約束をしていたんでした。私が教えるからには、素人でも一つのポイが破れるまでに、最低でも十匹はすくえるようになりますよ。………………もしできなくても、何回でも、きっちりとできるまで教えてあげますからね(ニッコリ)」

「と思ってたけど、真剣勝負の邪魔をしては悪いわね」

「そうね。私たちは外から見ているよ」

「裏切り者おおおっ!!」

 速攻で彩香と由菜は友人を見限った。


「それじゃあ行きましょうか」

 裏恵梨が宣言する。どうしてそこまで大きな声でもないのによく聞こえるのか不思議でならない。

「………………」

 何とも言えず、恵梨についていくしかない美佳。



 前を行く恵梨がぼそっとつぶやく。

「ふふっ、叩き潰してあげますからね」

 ………………怖いよ、怖いよお。

 美佳の心境は祭りの中なのに死刑執行を待つ囚人のようだった。






「よっしゃ、やっと落としたぜ! 見たか! ……って、誰もいねえ!?」

 置いてかれた仁志は十発目にしてようやく景品を落としていた。













「ちっ、これだけに囲まれるとさすがに面倒だが……やっぱり戦えはするな」

 同じ頃、彰と火野は黄龍ファンロンの構成員八人と戦闘中だった。

 逃走していた彰は、あまり逃げすぎても囮としての意味がないと思い、林に入ったあたりでわざとスピードを緩めて戦闘を開始していた。


「同感や!」

 少し離れた場所で戦っている火野が声を返す。

 独り言みたいなもんだから返事しなくても良かったんだが……まあ、それほど余裕があるってことだな。

 火野とタッグを組んで戦闘している彰は、つまり一人につき四人は相手しないといけない計算だ。

 確かに四人同時に攻撃をしかけられたら面倒だっただろうが、しかしそれは難しいのだ。四人同時にかかるということは、一人に割り当てられた戦闘可能領域は360°を四で割って90°分。それでは狭すぎて同士討ちしてしまう危険性だってある。


 だからどうしても二人ずつ、もしくはがんばって三人で入れ替わりながらの波状攻撃をするしかない。が、錬金術のおかげで彰と火野は、二人までの無能力者を相手することなど余裕どころか圧倒していた。三人相手でようやく少しきついと言えるレベルである。

 突然現れて、そして空中を自在に飛び回る剣や盾を対処するのは一般人では難しい。それに彰には風の圧縮金属化からの解除による暴風で相手の体勢を崩すことまで狙える。警戒されて効果が薄れるのを恐れてまだ使ってないが、相手の動きも読めてきたしそろそろ使おうと思っている。

 そういう意味では火野も念動力サイコキネシスで一人を問答無用でオトすこともできたが、それは彰に禁止されていた。自身の魔力を半分以上使うため乱発できないし、それに使ったあとは魔力が一気に減ったことによる疲労で隙が増えるからだった。

 それ以外にも禁止させている理由が一つあるが、今は関係ない。

 



「どうしますか? やつら結構手強いですよ」

「そんなの分かってるわ!」

「ガキだと思って舐めすぎましたね」

 今は相手が攻撃の手を止め、彰たちを遠巻きに囲んで作戦会議をしている。本来の戦闘ならば絶好のチャンスだが、彰たちの役割は囮だ。戦闘が長引けば長引くほど良いので、彰は木に体を預けて休憩していた。


 それに、どんなに考えようと俺たちを倒せるような案は出ねえよ。

 やはり能力者と戦うときは自分が能力者であって初めて条件がイーブンだ。体格的に劣っていても、常識外の力というのはそれを補って余りある。




「おまえら何やってるんだ」




 だからこそ恐れている事態が彰にはある。

「出てきやがったか……」

 彰は初めて聞くが、いずれ来るだろうと思っていた声に体を緊張させる。


 その声の主は黄龍ファンロンの拠点のある方向から走ってやってきていた。

 一目見てカタギの人間ではないと分かる雰囲気。その危ない雰囲気を隠そうともしない、なのにシャープな印象を与える男性だ。

「俺が少し離れていた間に何をやっているんだ!」

「で、ですが組長。そこのガキが攻め込んできて……」

「だったら俺を待つとか選択肢があるだろうが!!」

 声の主に、さっきまでこの八人をまとめていた男が萎縮している。


「彰、これはどういうことや?」

 状況の変化に、火野が近寄って聞いてきた。

「おまえにも分かりやすいように説明してやる。やつはおそらく黄龍ファンロンの幹部だ」

「何で分かるんや?」

「声を聞くだけで分かるだろ。あれは統率者の声だ。証拠にさっきまでデカい態度を取ってた奴がペコペコしている」

「……まあ、そうやな。それで何で恐れていたんや?」

「忘れたのか。黄龍ファンロンの構成を」

「……?」

 どうやら忘れているらしい。


「はあ。……黄龍ファンロンは能力者と無能力者の混成組織で能力者なのは幹部だけだ」


 つまり。


「やつは能力者だ」


 怒鳴り散らしている男を見て彰は思う。

 自分たちも相手も能力者。これで今まで黄龍ファンロン相手に、彰たちの強みであった不平等は無くなった。残るのは学生である自分たちと、大人でありプロである相手の経験・体格差である。


 これまでで一番キツい戦いになるだろう。

 彰は今まで戦ってきた能力者を思い出す。


 恵梨と一緒に戦った戦闘人形ドール。彼はどこか動きが機械的で、それに能力の扱いが上手くなかった。


 その次に戦った火野、彩香。二人とも能力の扱いは上手かったが、どちらも同じ学生ということで体格・経験差はほとんどなかった。


 連続殺人犯モーリス。能力の扱いも体格差も負けていたが、しかし彼と戦うときは執行官というプロである味方、ルークがいた。


 そして今回。

 おそらく体格でも経験でも負けているプロ相手に、組むのは同じ学生である火野だ。


「………………」

 それに加えて今までの戦いと決定的に違う部分がある。


 その黄龍ファンロンの幹部が吠えた。


「だから、いつも言っているだろうが! 目には目を、歯に歯を、能力者には能力者を! おまえらはこの俺、()本俊(ベンシュン)の到着を待つべきに決まってただろうが!」


 そう、俺たちは。


 彼、()本俊(ベンシュン)が何の能力を持っているのか知らない……!

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