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異能力者がいる世界  作者: 雷田矛平
四章 文化祭、殺人者と追跡者
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百四話「事件の謎2」

「一体何なんですか……この『女性』は?」

 モーリスを事情聴取した報告書を読んだルークは呻く。ある結論に達したからであった。

「………………」

 こんなことをするなんて、まるで悪意が固まってできたような人間だ……もし、この女性が僕の思った通りだったらですけど。



「……君もどうやら全てが繋がったようだが、一応順を追って説明しておこう。認識は共有して置いた方がいい」

 ルークの上司、もうすぐ六十歳になるはずの貫禄たっぷりの男性は説明を始めた。

「さて、この報告書に書かれている中で我々が今まで知らなかったことが一つある。それは君も疑問に思ったとおりモーリスを唆した『女性』のことだ。

 モーリスに娘は殺されたのだと教えて、復讐するように導いた存在。それすなわち事件のきっかけを作ったと言えよう」

「そうですね」

「しかしこの中に二つの嘘がある。……その一つ、どうやらモーリスはその女性に娘を殺した犯人は八人いると言われたようだ」

「その内の二人は本当に犯人でしたけど……この『女性』がこんな嘘をついたせいで無関係な人が三人も殺されました。事件が拡大したのもこの『女性』のせいですね」

「普通八人も犯人がいるとは思わないだろうが……どうやら娘が死んだことや、最初の二人は本当の犯人でそいつらを殺したことによって自暴自棄になっていたようだ。本人も証言している。二人殺したことと、三人殺したこと。どちらも人を殺したことには代わりはない、と」

「実際は大きな違いです。……この世に一つだって無駄な命は無いんですから」

 しかし、なぜこの女性はこんな嘘をついたのだろうか? ルークには分からない。


「って、え? 嘘は二つあるんですか?」

「気づいていなかったか。……ただ、今説明すると二度手間になるので後にしよう。

 それともう一つ。この女性がやったことが我々、能力者ギルドの動きをモーリスに伝えていたことだ。……私もおかしいとは思っていたのだよ。いくら能力が強大だったとはいえ、素人が本気のプロから逃げて入られた状況が長く続いていたのだからな」

「すぐに捕まらなかったせいで事件の被害者は増えましたし、そういう側面でも事件の拡大に関与している。……しかし、こちらの情報が漏れていたっていうことはギルドの内部に内通者がいたということですか?」

「それはない。ギルド内には『真偽審判ジャッジ』の能力者がいるから裏切り者はどうしたって存在出来ないからだ」


 『真偽審判ジャッジ』とは、相手の言ったことが嘘か本当か判断できる能力である。『演算予測カリキュレーション』や『過去視パストビジョン』のように戦闘向きではない能力の一つだ。

 能力者ギルドにはルークの『二倍ダブル』のように戦闘向きの能力者もいれば、このように非戦闘員もいる。どちらもいろんな事件に対処するにはかかせない存在だ。


「しかし、それならどうやってその『女性』はこちらの情報を……?」

「それは不明だ。一応ギルド内に情報は注意して取り扱うようには言っておいたがどうなるか。

 ……そういえばこのモーリスの証言は『真偽審判ジャッジ』により本当であることが判明している。……裏付けの調査をする必要が無いのはありがたいことだ」

「……今のモーリスが嘘をつくとは最初から思っていません」

「そういう意味では君の作戦には感謝しているよ」

 そう。ルークの計略によりモーリスはもう復讐を諦めているのだ。これがもし復讐を望んでいた場合、捜査を攪乱するために嘘の情報を言った可能性もあっただろうが。


「……話が逸れているな。戻すぞ。

 つまり今までの話をまとめると、その女性はモーリスに復讐唆した。嘘をつき無関係な人まで殺させた。捕まらないように手伝いをした。

 ということになるのだが。…………はたしてそれだけなのだろうか?」

「そうではないでしょう」

 ルークの予想が当たっていれば、この女性が行ったことはもっと罪深い。



「その通りだ。……私がこの話を聞いたとき、ふと思い出したのがモーリスの娘を殺した犯人の、その一週間ほど前から周りにいたという女性だ」

「状況が酷似していますからね」

 ルークはうなずく。

「なぜこの犯人達がモーリスの娘を殺したのか? その理由は分かっていなかったが、殺せば富が入ると意味の分からない言葉を言っていることから推測して、誰かに嘘を吹き込まれたというのは想像に難くない。

 しかしその『誰か』とは誰なのか?」

「それが、その周りにいたという女性ということですか」

「状況からしてそうだろう。つまりこの犯人達はその女性に唆されてモーリスの娘を殺したのだと思われる。

 正体不明の女性に唆されて人を殺す。……モーリスの復讐とあまりに状況が似すぎているとは思わないか?」

「そうですね。そしてそれは偶然ではない」

 ルークは自身が考えた結論をまとめた。



「犯人を騙した女性。そしてモーリスを騙した女性。この『女性』は二人いるのではなく同一人物だと考えるのが自然です。

 つまりこの連続殺人事件は、発生した原因も、きっかけも、被害が拡大した理由も全てそのたった一人の『女性』の仕業なのだと思います」



 避けることの出来ない悲劇と思われたこの事件は、たった一人の女性による陰謀だった。…………こんなの誰が信じられるだろうか。

 とはいえ、

「そうだな」上司は肯定する。どこか満足げな様子だった。「私も同じ考えだ。……とはいえ、この仮定は荒唐無稽な話だ。日本とアメリカに渡って五人も死んだ大きな事件がたった一人の『女性』によって引き起こされたって言っているのだからな」

「一つでも証拠があれば良かったのですが……」

 ルークは臍をかむ。

 報告書には今の仮説を直接証明するような証拠は記されていなかった。まあ、こんな事件を起こすような犯人が簡単に証拠を残すとは思えない。

「証拠ならあるぞ」

 しかし、証拠が無いのならどうすればこの仮説が正しいのだと証明できるか………………。



「って、証拠あるんですか!?」

「ナイスリアクションだ」

 ハッハッハ、と鷹揚に笑う上司。

「茶化さないでください!」

「……今日の朝分かったことだ。その報告書には書かれていない」

 笑いを引っ込めて、上司は別の報告書を手に取った。

「昨夜未明、壊滅させた組織の建物に備え付けられた防犯カメラのログの解析が終了した。そのログには犯人と件の女性が映っていたそうだ。

 それを今日の朝、モーリスに見てもらったところ、自分を騙していた女性と同じだと証言したようだ」

「ということは……やっぱりさっきの仮説が本当だということに」


「これを受けてギルドはこの女性をA級犯罪者と認定。精鋭の調査団に行方を追わせている。

 君にはこの後の『ささやき女』対策会議に出てもらうぞ」


「……『ささやき女』って何ですか?」

「さっきから話題にしている女性のコードネームだ。いつまでも女性、女性言うわけには行かないだろう。嘘をささやくだけでここまで大きな事件を起こしたんだ。ぴったりの名前だろう」

「分かりました。……このルーク、必ずや『ささやき女』を捕まえて見せます」

 そうしてこの事件を本当の意味で終わらせる、そう決めたのですから。






 話も終わり、立ち上がって帰ろうかと思ったルークは一つ忘れていたことがあるのに気づいた。

「そういえば『ささやき女』がモーリスについた二つ目の嘘って何なんですか?」

 すっかり忘れていたそれ。ルークは全く検討がつかない。

「そういえば言うのを忘れていた。……今回の事件を受けて、異能力者隠蔽機関が情報交換の名目で能力者ギルドを訪ねた」

「ラティスさん、リエラさん、ハミルさんですか?」

「そうだ。……あの秩序を守ることにしか興味の無い奴らが解決された事件を気にするとは珍しいことだが、我々としても隠す必要は無いので事件の全貌を話した」

 言い方・雰囲気から、どうやら上司も異能力者隠蔽機関と旧知の仲であるようにルークは思った。


「その代価として、教えてもらったことの一つが、『ささやき女』がモーリスに言っていた死者の声を聞くことの出来る能力ーー『死霊ネクロマンサー』なる能力はこの世に存在しないということだ」

「……えーと、つまり」

「『ささやき女』が言っていたモーリスの娘の声というのは嘘だったということだ。……君と同じように、モーリスを騙す目的で死者を騙ったということだろう」

「そうですか……」

 ルークは自分が重罪人と同じ事をしていたことに少しの落ち込みを隠せなかった。


 それを見て取った上司がフォローする。

「とはいえ、君と『ささやき女』では行動は同じでも理念が違う。『ささやき女』はモーリスを自分の思った通りにモーリスを動かす為に嘘をついた。対して君の行動はモーリスの事を思い、復讐をやめさせるための嘘だ。

 その二つは決して同列で語られるべきではない」

「…………ありがとうございます」

 滅多に人を誉めることのない上司の賛辞に目を見張るルーク。


 それと同時に思い出したことがあった。

「ということは『ささやき女』の能力が『死霊(ネクロマンサー)』でないということは、何の能力を持っているのか不明ということですよね」

「そういうことだな。大穴で能力者ではないという可能性もあるが……まず無いだろう」

「能力者はその身に一つの能力しか宿せない。

 だからこの可能性は排除して考えてたんですけど、報告書にも書いたハミルさんが感知した廃工場にいた能力者って、もしかしたら『ささやき女』だったのかもしれません」

「突然現れたり消えたりしたことから、瞬間移動系の能力を持っている者という話だったか。考えられるな。…………確かにそれならこの能力者ギルドに侵入して情報を盗み出すこともできただろうし辻褄は合う」

 それならギルド全体にそれを想定して情報を盗まれないように警戒するように伝えよう、と上司は内線電話をかけ始めた。



「しかし、瞬間移動系とはレアな能力です」

 電話の間、することのないルークはひとりごちる。

 数多くの能力者が在籍する能力者ギルドにも、思い当たるのは二、三人しかいない。そのどれもが異能力者隠蔽機関のリエラのようにほぼ無制限に移動出来ず、制限がかかっている。

 例えば執行官の先輩に『短距離瞬動(ショートワープ)』という能力者がいるが、移動できる距離は良くて五メートル程が限度である。とはいえ、それがリエラの能力に劣っているというわけではなく、聞いた話によると一回の跳躍に使う魔力の量が違うらしい。リエラは一日に数回能力を使うのが限度だが、『短距離瞬動(ショートワープ)』はほぼ無制限に使えていた。

 例えるならリエラの『空間跳躍(テレポート)』は高速で物を運べる代わりに小回りが利かず燃費も悪い飛行機、『短距離瞬動(ショートワープ)』は小回りも燃費も良いバイクのようなものか。


 実際、模擬戦をしたときも自分の横手、後方、頭上にノータイムで現れては消えを繰り返す先輩を捉えるのはかなりの困難だった。しかも危なくなったら同座標に連続跳躍することで滞空されて仕切り直される。厄介な相手だった。

「通達を終えたぞ」

 と、ルークが記憶を振り返っていると上司の電話が済んだようだった。

「ご苦労様です」

「今まで気づけなかった以上、警戒しても気休めにしかならないのだろうがな。

 さて、少し早いが『ささやき女』対策会議の会議場に向かうか?」

「そうですね」

 ルークはうなずいて立ち上がった。




 会議室に向かう途中、ルークはさっきふと思ったことを上司に聞いてみた。

「そういえばですけど、異能力者隠蔽機関と知り合いなんですか?」

「……話したことがなかったか?」

 疑問に疑問で返される。どうやらルークの推測は合っていたようだ。

「聞いたことがありませんね」

「昔、今回のおまえと同じように一緒に作戦を行ったことがある」

「そうですか」

 ルークは直接見たことは無いが、上司は昔は腕利きの執行官だったらしい。今は引退して、このように管理職についているが、昔はやんちゃで様々な事件に足を突っ込みまくっていたと聞いたときにはイメージに合わなすぎて吹き出しそうになったものだった。


 会議室は下の階にあるため、ルークはボタンを押してエレベーターを呼ぶ。

「しかしあいつらに協力する者とは……」

「あいつらって異能力者隠蔽機関のことですよね。……その協力者といえば彰さんのことでしょうか?」

「そう。その少年だ。……報告書には風の錬金術者だと書いてあったが何者なのかね」

「ただの学生で……僕の友達ですよ」


 そのとき扉が開いた。エレベーターに乗り込む二人。

「ほう……君に友達が」

「珍しいですか?」

「珍しいだろう」

 まあ、そうですけど。内心でつぶやくルーク。

 父親も執行官で、その子供ということで幼い頃から期待されているルークは期待通りにエリートコースを歩んできた。その反動でろくに学校にも通っていないので一般人と話す機会はほとんどない。能力者の方でも若い身で高い地位についたせいで気安く話せる同年代などいない。

 彰のように軽口を言い合える人間は貴重な存在だった。


「彰さんが協力している理由は科学技術研究会なる組織から身を守るため、そして異能力者隠蔽機関が協力者を欲する理由は科学技術研究会を潰すためということで目的が一致しているそうです」

 モーリスを追いかけてる間、ルークと彰は報告ということで毎日電話をかけていた。そのとき雑談という形でお互いが自分自身のことを話していたので、ルークは彰の置かれた状況を知っているのである。


「そうだな。……やつらはなるべく中立な存在でいなければならないから我々の力を借りることはできない」

「どういうことですか?」

「世界には様々な能力者の組織があって、お互いが干渉しないようにそれぞれの地域を治めている、というのは知っているな」

「アメリカは僕たち能力者ギルドが治めてますし、ヨーロッパはあの組織が治めてますね」

「その中、例外なのは異能力者隠蔽機関だ。彼らの活動範囲は全世界だ。必然、良い意味も悪い意味も含めてどの組織からも一目置かれている。だからこそどこかの組織と手を組んだらパワーバランスが崩れる。

 能力者世界の安定を望む異能力者隠蔽機関からすればそれは避けたいところだろう。しかし、君も知っているとおり、アジアには能力者の統治機構がない」

「それだからそんな組織が蔓延っているんですよね」

「とはいえギルドがその組織を潰しにかかるわけにはいかない。アメリカ以外の国に手を出すことは、他の組織からすれば侵略行為として見られ、今度は自分がやられるのではないかと思われ面倒なことになる。

 結局、この状況の正解は全世界に関われる異能力者隠蔽機関自体が、能力者世界の安定のために潰したとするしかない。だからこそ、どこの組織にも所属していない協力者が必要だったのだろう」

「へえ」

 政治って面倒くさいですね、と若くて現場肌のルークは素直に思った。


「って、今回の事件、ギルドは思いっきり日本で活動していますし、異能力者隠蔽機関も関わってますよね?」

「それは最初アメリカで起きた事件だからだ。犯人もアメリカ人だったし、ギルドが事を収めて当然だ。そして異能力者隠蔽機関の協力もこの程度なら組織間のパワーバランスは崩れない」

「やっぱり難しいですね……」

 将来自分が執行官を引退するときになったら、管理職にだけはならないようにしよう。



 エレベーターの扉が開く。目的の階についたようだ。

「しかし、協力者とは……。それほど敵の組織が大きいのか。……いや、そいつに何か特別な思い入れが……」

 歩きながら上司がぶつぶつとつぶやきだした。

「何か気になることがあるんですか? 協力者を引き入れたのなんて、ただ単に科学技術研究会を潰したいからじゃないんですか?」

「……やつらは昔から三人だけで行動していることがほとんどだったからな。誰かに協力することはあっても、誰かに協力されることはほとんど無かったはずだ」

「珍しいこともたまには起きると思いますよ」

「たまに……たまに、か」

 上司は力無い笑みを浮かべる。


「そういえばおまえは気づいていないんだな」

「………………?」

 首を傾けるルーク。

「年齢の話だ。……私が何歳か知っているか?」

「もうすぐ六十歳ぐらい……ですよね」

「異能力者隠蔽機関の面々は何歳だろうか?」

「ラティスさんもリエラさんもハミルさんも……三十は行ってないと思いますね」

「私が現役だったのって何年くらい前だったと思うか」

「今が六十ぐらいだとすると二、三十年ぐらい前………………はっ!」

 答える途中で気づいた。


「えーと……異能力者隠蔽機関と仕事した時って彼らは子供だったんですか? 年齢からするとそういうことになりますよね。異能力者隠蔽機関は子供の頃から世界の秩序を保っていたってことに」


 小さい頃から大変な苦労だろうな、ラティスの子供時代を想像しようとして全く思いつかないルークにぴしゃりと上司の声が飛んだ。

「と、思うだろう?」

 どうやら不正解のようだった。

「……じゃあ、もしかしてラティスさんは異能力者隠蔽機関の二代目なんですね」

「違う。おまえの考えている可能性すべて違うだろう。……能力者のいる世界、常識に捕らわれてたら手痛いしっぺ返しを食らうぞ」

 ルークが彰に言った『能力という常識を越える力が振るわれる世界で、常識的に物事を考えたらいけない』という言葉はこの上司からの受け売りである。


「じゃ、じゃあ何なんですか?」

 自分があてずっぽうの推理しか出来ないと言われ憤慨するルーク。

 しかし、自分の甘さを思い知る結果となった。



「あの三人は十年、二十年前からずっと同じ姿だ」



「………………え?」

「やつらはずっと年を取っていない。時が止まったように、あるいは不老不死かのようにだ。……どうだ、この可能性を考えていたのか?」

「………………」

 言葉の出ないルーク。

 不老不死って、ラティスさんたちはそんな物語の中にしかいないような存在ということなのですか。


「他にもやつらには謎が多い」

 上司は指を折りながら列挙し始めた。

「まず、ラティスの能力『記憶メモリー』。使い方次第ではどんな悪いことだって出来るのに、なぜそれを能力者社会の秩序を守るために使っているのか? それはリエラの『空間跳躍(テレポート)』にだって言えよう。

 そしてハミル。彼女の能力は他の二人に比べれば強力ではない。しかし、彼女はなぜ二つ以上の能力を扱うことができる? 能力者は一つの能力しか持てないはずじゃなかったのか?

 さっきは言わなかったが、彼らが『ささやき女』が『死霊(ネクロマンサー)』で無いと見抜いた理由は、彼らはこの世界にある能力を全て知っているから嘘だと見抜けたそうだ。どうして彼らは全てを網羅しているんだ?

 そして最後にこの謎。なぜ彼らは不老不死なのか?」


 そのときちょうど会議室の前についた。上司は落ち着くためか頭を切り替えるためか、二、三回頭を振った。

「さて、会議前にこんな話をしてすまんな。……頭を切り替えて会議には臨んでくれ」

「……最後に一つだけいいですか。謎があるなら異能力者隠蔽機関に直接聞けばいいんじゃないんですか?」

 往生際が悪いと思いながらもルークは質問をする。

「私もそうした。しかし、ラティスが面白がって答えなかった」

「なら、能力者ギルドが勢力を上げて調べればそれぐらい分かるんじゃないんですか?」

「すでに調査済みだ」

「調査していたんですか! ……それはどうなったんですか!」

 上司に詰め寄るルーク。上司は苦笑と共に告げた。


「調査の結果、彼らはヴァンパイアのようだ。だから年を取らない」


「………………え?」

 ヴァンパイア? それって日光に当たると灰になって、鏡に映らず、十字架とか聖水が嫌いな存在ってことですか?

 困惑するルークに、


「バカ。こんなのが真実な訳が無い。ラティスの『記憶メモリー』で調査班の記憶を書き換えられたんだ。やつのしそうなことだ」


 そして上司は会議室の扉を開き中に入った。

 事実を飲み込むのに数秒。「待ってください!」その後ルークもあわてて会議室に入った。

次回、第四章最終話です。

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