第85話 いざ、妖魔城へ!!
遂に天音達が妖魔城に殴りこみます。
あとどれぐらい続くんだろう……。
予想以上に時間が掛かるので、執筆予定のハロウィンを番外編として書こうと思います。
晴香side
新選組のアジトで天音達と分かれた後、私は十二天将と共に京都の北にある大きな山に来ていた。
その山にある神社『貴船神社』の本殿の前で私は十二天将と一緒に跪いた。
「貴船神社の祭神、“淤加美神”よ……どうか、私達の前に姿を現しください」
願うように頼むと、本殿の奥から大量の水が風に乗って私の前に来ると、それは人の姿になって私の前に降り立つ。
圧倒するような美しい美貌に透明な水色の綺麗な髪と瞳……そして、体から迸る神気が私の体にヒリヒリと突き刺さっていく。
『何ようだ?安倍の末裔よ……』
「淤加美神。突然の訪問、申し訳ありません。本日はあなた様にお願いがあり、参上しました」
『願い?言うてみよ』
淤加美神は神様故に少々偉そうな態度を取るが、私はあまり気にしない。
「はい。今夜、京都を侵略しようと数多の妖魔達が襲いかかってきます。京都とそこに住む人々を救うためにあなた様の力をお貸しくださいませ……」
淤加美神は古よりこの京都の貴船神社に住まう水神……その力は強大で魔を祓う力を持っている。
『数多の妖魔か……下手をしたらここまで被害が及びそうだな。良いだろう、力を貸してやる』
「あ、ありがとうございます!」
『ただし、条件がある』
「条件?な、何ですか?」
相手は日本でも上位に入る水神……どんな条件が出されるのか私は内緒ビクビクしていた。
『先日、伏見稲荷大社の宇迦之御魂神が東から来た少年に料理を作らせたらしい。そして、その料理がとても美味しいと自慢していた。その少年を探し出して私の為に作らせろ』
その時私の脳裏に料理が得意で女みたいな容姿をした一人の少年の姿が思い浮かんだ。
「分かりました。ちょうどその少年とは知り合いなのでお願いしてみます」
そう聞いた淤加美神は笑みを浮かべて私の頭に手を置いた。
『よし、後は極上の酒を用意しておけ……精々陰陽師として役目を果たすのだな』
淤加美神は体を水にして私の中に入り込んだ。
私の消費した霊力が溢れんばかりに回復し、神気が私の陰陽師としての力を何倍にも膨れ上がる。
「行くわよ、十二天将!」
十二天将達は私の周囲を囲むように並び立ち、巨大な陰陽道の陣が張られる。
私は十二天将の力を解放させるために私が名付けた『真名』を呼ぶ。
「騰蛇・紅姫」
『んっ!』
「朱雀・朱李」
『おうよ!』
「六合・陽明」
『ああ……』
「勾陣・黄桜」
『ああ!』
「青龍・龍之介」
『おう!』
「天一・詠美」
『はい!』
「天后・海璃」
『はっ!』
「太陰・静香」
『うん!』
「玄武・翠閃」
『心得た』
「大裳・早苗」
『畏まりました!』
「白虎・虎太郎」
『分かったよ!』
「天空・空雅」
『承知……』
真名を呼ばれた十二天将全員が返事をすると、陰陽道の陣が輝きを増し、私は今から発動する術のために呪文を詠唱する。
「我らが力にて数多の刃に加護を与えよ……天から蔓延る魔を討ち、祓う刃となれ!聖なる光よ……人を守りし光の壁となれ!」
霊力を解放して術を完成させる。
「降魔守護天陣!!!」
陣は貴船神社から京都全域に展開され、魔を祓う降魔と人を守る守護の力が京都にいる人間へ付与される。
「よし!次に行くわよ!」
私は十二天将を引き連れて貴船神社から次の場所に向かった。
☆
千歳side。
ここが何処なのか私には分からなかった。
最後に覚えている記憶は金羅に体を乗っ取られてしまったところだ。
あれからどうなってしまったか分からないけど、多分今も金羅に体を乗っ取られてしまったのだろう。
さて、どうしょうと悩んでいると私の前に不思議な光景が浮かんだ。
まるで走馬灯のような何かの映像が断片的に映し出されていく。
「……銀羅と金羅?」
それは幼い姿をしていたが銀色と金色の毛皮を持つ小さな九尾が楽しそうに野原で遊んでいた。
微笑ましい映像だったが、その直後に驚くべきものが映し出された。
幼い銀羅と金羅よりも一回りも二回りも大きく、銀色と金色が混ざった美しい毛皮を持つ綺麗な九尾だった。
「もしかして、二人のお母さん……?」
直感だけど、その九尾が銀羅と金羅のお母さんだとすぐに理解した。
お母さんにべったりと甘える二人の姿を見て更に微笑ましく感じ、幸せな気持ちになる。
二人にもこんな幼少時代があったんだな……。
しかし、その幸せな気持ちはすぐに打ち砕かれてしまった。
突然、武器を持ったたくさんの人間が現れて三人を攻撃し始めた。
「どう、して……?」
私はその光景を信じられず目を逸らしそうになったが、私は銀羅の契約者だからそれを見逃してはいけないと思い、気持ちを抑えながら見続けた。
更に驚くべき事に武器を持った人間に紛れて不思議な術を使う人間が何人もいた。
あれは晴香の使う術とはかなり異なるが、妖魔を退治する陰陽術だと分かった。
お母さんは銀羅と金羅を逃がすと、自分一人だけで人間達に立ち向かった。
しかし、お母さんは人間には攻撃せず、足元を狙って狐火を放って驚かし、逃げ回っているだけだ。
「どう、して……?」
そして、お母さんは人間達によって無残に殺された。
九尾は妖怪の中でも最高クラスの能力を持つ存在……それが人間を攻撃せずに殺されたのは納得出来なかった。
だけど、これが銀羅と金羅が人間を怨んでいる理由が分かった。
身勝手な人間が今までどれほど聖獣を傷付けてきたのか……。
「銀羅……」
初めて召喚し、出会った時に銀羅は人間を怨んでいて私を狐火で攻撃した。
もちろん私は一欠片も怒ってないし、怨んでもいない。
私にとってあれはただのじゃれ合いだから。
私と一緒の時を過ごすことで銀羅はよく笑い、みんなと楽しく過ごしている。
だけど、銀羅にこんなにも悲しい過去があるなんて知らなかった。
そして、金羅の記憶から人間に対する憎悪がヒシヒシと伝わってくる。
金羅は人間に殺されたお母さんの復讐をしようとしている……いや、これはただの復讐じゃない。
今まで私達人間が聖獣やそれに準ずる混血に対して行ってきたことに関する報復だ。
私は報復のために人間を滅ぼそうとする金羅を止めたい。
この世界で身勝手な人間は数多くいるけど、天音やみんなみたいに優しい人間もたくさんいる。
それを金羅にも分かって欲しい。
「でも、どうしたら……」
肉体を完全に支配されている私はここから目覚めることはできない。
金羅と話をしたくても私の声は届かない。
「ううん。諦めちゃダメ!金羅を助けるんだから!!」
そう意気込んで私はとにかくここから目覚める方法を模索しようとした。
『お主は金羅を救ってくれるのか?』
突然綺麗な声が背後から聞こえ、振り向くとそこには……。
「わ、私……!?」
一人の着物姿の女性がそこに立っていたが、まるで鏡を見ているかのように私と顔がそっくりだった。
でも、顔はそっくりでもそれ以外は違った。
天音よりも長い髪だけど、金色と銀色が混ざった不思議でとても綺麗な髪。
お尻から出ている髪と同じ綺麗な色をした九本の尻尾……すぐにそれが擬人化した九尾だと分かった。
「あなたは……?」
金羅や銀羅とは違う雰囲気を持つその女性に私はすぐに名前を尋ねた。
『私の名前は“天羅”。金羅と銀羅の母だ』
銀羅と金羅のお母さんの登場に驚いたけど、それ以上に次に言った言葉に私は驚いてしまった。
『そして、私はお主の――――』
それは天羅が『天堂千歳』という私自身に関わる大きな存在であることだった……。
☆
天音side。
新選組が発令した第一級警戒態勢に京都府警などが協力して京都の住人を周辺の他の都道府県に避難させた。
いつも賑わっている京都も今日ばかりはとても静かだった。
そして、夜となり京都の夜空を明るく照らす金色の月が天に昇った頃……異変が起きた。
月が血のように真っ赤に染まり、昨日の夜と同じように夜空を黒雲が包み込んだ。
「来る……!!」
みんなが警戒する中、黒雲の中から敵の根城である妖魔城が姿を現す。
「天音、あそこに千歳ちゃんがいるんか?」
「聖霊界は本当に私達の知らない未開の地みたいね」
「でも、私達はたとえどんな敵が相手でも負けない!!」
「よく言った、弟子よ。さて、十三代目よ。我々に指示を頼む」
蓮宮の璃音兄さん、花音姉さん、風音、そして蓮姫様の四人が当主である俺の指示を待っていた。
ある意味これが蓮宮十三代当主として初めての仕事……俺は新たな戦闘装束である天装衣を纏い、気持ちを引き締めて宣言する。
「これより、俺達蓮宮一族は妖魔城に襲撃し、金羅から千歳を助ける!!」
蓮宮一族の目的はただ一つ、金羅から千歳と銀羅を救い出す。更に予め考えていた作戦の指示を言う。
「刹那と麗奈は俺達蓮宮一族の援護を頼む!」
「「承知!!」」
忍者として城攻めの知識を持つ刹那と麗奈は俺達と一緒に妖魔城へ向かう。
「恭弥、雷花さん、雫先輩、迅先輩は妖魔城から出る妖怪達を引きつけて攻撃をお願いします!」
「ああ!」
「うん!」
「はい!」
「ああ……」
この四人は妖魔城のすぐ近くから広範囲攻撃をして妖怪達を引きつけると同時に撃墜させるチームだ。
「アリス先生、サクラ、明日奈委員長は酒呑童子をお願いします!」
「ええ!」
「任せろ!」
「任せなさい!」
三人には日本最強の鬼・酒呑童子を相手にしてもらうチームだ。
アリス先生とサクラはともかく、明日奈委員長はソロモン72柱と一緒に大暴れしたいという理由で酒呑童子を相手にすることを自ら志願した。
まずはあの聖霊界と繋がり、空に浮かんでいるように存在する妖魔城へ向かうことだ。
「さぁ……俺を連れて行ってくれ、黒蓮!!」
『『『バウッ!』』』
黒蓮は子犬フォームからケルベロスフォームに変身すると、その大きな背中に俺と白蓮、刹那と麗奈が乗った。
「鈴音!!」
『おうっ!』
鈴音は小さな龍から真の姿である巨大な応龍となり、風音と蓮姫様が乗る。
「流星!」
麒麟の流星はいつものように花音姉さんと璃音兄さんを乗せる。
「よし……行くぞ!!!」
黒蓮と麒麟は空を駆け抜けるように走り、応龍は空を飛び、妖魔城へ向かった。
待っていてくれ、千歳、銀羅……今行くからな!!
.
色々なフラグを残しながら次回に続きます。
さて、10月31日にハロウィン小説を投稿を予定しています。
本当は修学旅行編を終わらせてから書こうと思っていましたが、予想以上に伸びてしまったので『番外編』という新章で投稿します。
内容は天聖学園で行われる不思議で楽しいハロウィンにします。
天音が持てるお菓子製造スキルを駆使してハロウィン特製お菓子を大量に制作します(笑)




