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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第7章 千年京都編
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第83話 再起の衣

金羅に完全敗北した天音……しかし、天音を再起させるために彼らが動きます!


天音の新しい姿が見られます。

金羅に千歳と銀羅を連れて行かれたその直後、俺は霊力の大量消費と気力が尽きてしまい、意識を失ってしまった。

意識を失ったことによる深い眠りの中、目を覚ますと見慣れない天井が目に映った。

「ここは……?」

「お兄ちゃん、大丈夫!?」

「目覚めたみたいだな?」

「良かった……」

次に目に映ったのは関東にいるはずの風音と、天星導志で仕事をしているはずの璃音兄さんと花音姉さんだった。

「どうして、みんなが……?」

俺は布団から起き上がり、休んでいた頭を覚醒させながら話を聞いた。

「私達はアリス先生に呼ばれてここに来たの。お兄ちゃんが危機だって言って……」

「無事か?十三代目よ」

「れ、蓮姫様……!?」

後ろを振り向くとそこには壁にもたれ掛かっている蓮姫様がいた。

「アリスから話は全て聞いた。千歳と銀羅を奪われたことをな……」

蓮姫様は俺に近づいて膝をつくと、突然胸倉を掴んで上半身を持ち上げた。

「うぐっ!?」

「全く、だらしないぞ。それでもお前は我ら蓮宮の十三代目なのか?」

「蓮姫様!止めて!!」

「天音はまだ本調子ではないのですから!」

風音と花音姉さんの制止でひとまず手を離して解放した蓮姫様だったが……確かにその通りだった。

「天音」

すると、璃音兄さんがいつもと違う真剣な表情で俺に話しかけてきた。

「お前はこれから、どうするつもりだ?」

「……決まっている。千歳と銀羅を助ける!」

「勝てるのか?話に聞く限り、その金羅という九尾は強大な力を持つと聞くが……」

「それでも、千歳は……千歳は必ず助けてみせる!!」

千歳は、あいつは俺の希望の光……何が何でも必ず助ける!!

「たとえ……俺の命を犠牲にしてでも――」

「馬鹿野郎!!!」

「――っ!??」

璃音兄さんが大声で怒鳴った。

初めてだった。

璃音兄さんの怒りの声が俺に向けられたのは……。

「今のお前が行っても只の無駄死に過ぎない!!千歳ちゃんと銀羅を助けることなんて出来やしない!!」

そう言われて俺は初めて璃音兄さんに怒りをぶつけた。

「だったらどうしたらいいんだよ!!!」

怒りで我を忘れた俺は立ち上がると同時に璃音兄さんの胸倉を掴んで思いっきり壁に叩きつけた。

「お、お兄ちゃん!?」

「天音!止めなさい!!」

風音と花音姉さんが止めに入るが俺は無理矢理振り払った。

「俺は千歳を失うわけにはいかないんだ!もしも千歳を失ったら俺は生きていけない!!だから、必ず俺が助け――」

「ふざけるな!!!」

声と共に腹に強烈な痛みが走った。

下を見ると璃音兄さんの拳が俺の腹にめり込んでいた。

「か、はっ……」

急所を強く殴られ、意識を失いそうになりながらそのまま倒れてしまう。

「お兄ちゃん!!」

「璃音!あんたやり過ぎよ!!」

「今の天音にはこれぐらいやらないと収まらないんだよ……」

そう言うと璃音兄さんは俺に駆け寄った風音と花音姉さんを退けて、倒れている俺の胸倉を掴んで無理矢理体を起こした。

さっきの怒りの表情とは違う真剣な表情を浮かべていた。

「天音、お前は何一人で千歳ちゃんと銀羅を助けようとしているんだ?」

「何でって、千歳は俺の――」

「幼なじみ、恋人、婚約者……そんな事は分かっている。だがな、千歳はお前だけの大切な子じゃない。俺達にとっでも大切な子なんだぞ?」

俺は璃音兄さんの言うその意味にすぐに気付き、目を見開いてそのまま聞いた。

「俺と花音にとっては妹同然。風音にとってはお姉ちゃん。恭弥達にとっては大切な友人……ここまで言えばわかるよな?」

「千歳は俺だけじゃない、みんなと繋がっている……」

千歳は俺の大切な人だけど、みんなにとっても大切な存在だ。

「そうだ。何もかも一人で背負おうなんて考えるな。俺達を頼れ。じゃないと、親父のようにお袋と一緒に死んでしまうからな……」

死んだ詩音叔父さんはたった一人で瑪瑙に立ち向かったが、結局は弓子叔母さんを守りきれずに一緒に死んでしまった。

俺に叔父さんと同じ過ちを犯させないために俺に叱咤したのだ。

「天音。お前は千歳ちゃんと銀羅を救え。だが、一人で全てを背負おうとするな。俺達を頼れ、分かったな?」

「……ああ!」

俺はもう一人で背負うつもりはない。

みんなと一緒に妖魔達と戦い、千歳と銀羅を金羅の手から必ず助ける!!!

俺の答えに満足した璃音兄さんはニッと笑みを浮かべると、俺の胸倉から手を離して代わりに俺の少し乱暴に頭を撫でた。

「うん、良い顔だ。それでこそ俺の弟だ!」

「全く……ヒヤヒヤさせるわね。璃音、そろそろ私達がここに来た理由を果たしましょうか?」

「そうだな。じゃあ、出しますか!」

璃音兄さんは左手の顕現陣から大きな二つの木箱を取り出して俺に差し出してきた。

まずは小さな木箱を俺に手渡してきた。

「ほら、まずはこれを食え」

「食え?」

蓋を恐る恐る開けると、ふわりと甘い香りが漂った。

中にはピンク色の丸い物が二つあった。

「も、桃?」

「ああ。霊力を大量消費して疲れているお前の為に、蒼燕と太公望に頼んで用意してもらったんだ」

「蒼燕さんと太公望さんに……?」

「まあ、食え。皮ごと食えるからな」

「う、うん」

何で桃なのか分からないけど、取りあえず璃音兄さんの言うとおり桃にかぶりついた。

一口食べた瞬間桃の甘さが口の中に広がり、喉に果肉と果汁が通った瞬間、体に変化が起きた。

「えっ?えっ??」

霊力を使い果たし、ただの刺青のような黒色になった霊煌紋が力を得たように光を帯び始めた。

「璃音兄さん、この桃は?」

「仙桃だよ」

「仙、桃?」

「仙桃は中国の秘境にある桃で、仙人が作ったのよ」

「仙人が作った桃……」

もう一口かじって甘さを味わいながら呑み込むと、消費した霊力が徐々に復活してくる。

「すごい、霊力が回復してくる……」

「仙桃は不老長寿の効果があると同時に膨大な霊力が込められているんだ」

「だから、その仙桃を食べれば天音は100パーセント……いや、120パーセントの霊力の力を引き出すことが出来るのよ!!」

「ありがとう、兄さん!姉さん!」

璃音兄さんと花音姉さんに感謝し、用意してくれた仙桃を更にかぶりついて消費した霊力を回復させる。

「良かったね、お兄ちゃん!」

「ありがとう、風音」

腕に抱きついてくる風音の頭を撫でた。

二つの仙桃を食べ尽くし、霊力が回復どころかいつも以上に溢れ出ており、気分が最高潮に高まっていた。

「さてと、次はこれだな」

璃音兄さんは俺から小さな箱を受け取ると、次にもう一つの大きな箱を俺に渡した。

「その箱の中には俺と花音からの贈り物が入っている」

「贈り物?誕生日プレゼントはもう貰ったけど……」

「十三代目になったお祝いよ。本当はもっと早く贈りたかったんだけど、製作時間がかなり掛かっちゃったからね」

俺が十三代目を継いだのは8月の上旬。

この箱に入っている俺への贈り物の製作時間は少なくとも1ヶ月以上は経過したことになる。

一体中に何が入っているのか分からないけど、手に掛かる重みは意外に軽かった。

唾を飲み込み、緊張しながら木箱の蓋を開けた。

「紅い布……?」

木箱の中には紅い布が畳まれており、それを手に取って広げると、それは大きな紅いコートだった。

コートには銀細工で蓮宮の家門が付けられており、他にも綺麗な飾りが付けられていて、一つの芸術にも例えられるような品だった。

「これを、俺に?」

「ああ。そのコートには様々な魔術、錬金術、仙術、そして俺と花音の霊操術。世界中からありとあらゆる守護の術が掛けられた最高の防御力と守護力を持つコートだ」

1ヶ月以上も製作時間が掛かる理由はあっさり分かったが、それ以外にこのコートに込められた力に唖然としてしまう。

「天音は今まで神子装束を着て可愛いとか言われたことがあるよね?」

「そりゃあ、六花さんの血を濃く受け継いでいるんだ。そうだよな?」

仰る通りです……。

そうじゃなくても蓮宮の男子の大半は女の子みたいな可愛い顔をしていると言われている。

「だが、このコートを着ればもう天音が可愛いなんて言わせないぞ!」

「天音、早速このコートを着てみてちょうだい!」

「お兄ちゃん、早く早く!!」

三人の目が輝いていた……そんなに急かさなくてもいいのに。

軽くため息を吐きながら二人に貰った紅いコートに袖を通した。

コートに裾を通して着用した瞬間、信じられないことが起こった。

「えっ……?」

布団で寝るためにおそらく新撰組が用意したであろう着物が消え、代わりに黒色の軽装の鎧みたいな服が体に直接着用された。

上半身は妙に体にピッタリと合う動きやすいが鎧のように強固な服で、それに加えて肌触りがとても良く着用した不快感はなかった。

更には何故か分からないけど、本来なら服の下に隠れている霊煌紋の紋様が綺麗な白い線で黒色の服の上に浮かび上がるように描かれていた。

そして、下半身には黒色のズボンが着用され、両足には金属が仕込まれているブーツが履かれていた。

「ふ、服が替わった?」

「よし、“天装衣(てんそうい)”は無事に機能しているな!」

「その天装衣は着用するとその下に戦闘用の服にチェンジ出来るのよ」

璃音兄さんと花音姉さんが贈ってくれた紅いコート……『天装衣』はもしかしなくても凄い力を秘めたコートだった。

「ほぅ……天音よ、見違えるほどかっこよくなったな」

「あ、ありがとうございます」

静観していた蓮姫様は今の俺の姿を褒めてくれて、その直後に風音が抱きついてきた。

「おわっ!?」

「お兄ちゃんカッコイイ!素敵!大好き!改めてお兄ちゃんに結婚を申し込みます!!」

「お断りします」

「ガーン!私……ショック!!でも、お兄ちゃんを愛している!!!」

「はいはい……」

俺に千歳がいるにも関わらず風音はまた俺に告白とプロポーズを同時にしてきたよ。

本当この子は困った妹だな……。

「じゃあ、次に私もお兄ちゃんにプレゼント!」

風音は俺から離れると後ろに回り込んで長髪を持つ。

「お兄ちゃん、ちょっと腰を下ろして」

「わかった」

言われた通りに腰を下ろすと、風音は櫛を取り出して髪を梳いて綺麗に整えた。

何をするのか分からないけど、それはすぐに分かった。

チリィン!

「鈴の音……?」

「はい、完成♪」

風音が見せてくれた鏡で見ると、俺の長髪はポニーテールに纏められ、二つの鈴が付いた紅い紐で縛られていた。

「私がお兄ちゃんを想いながら心を込めて編んだ紐だよ」

「ありがとう、風音」

風音の頭を撫でて感謝して今の自分の姿を見る。

紅い紅蓮のような色をしたコートの天装衣に黒を基調とした鎧みたいな上下の衣服。

今まで神子装束や鳳凰之羽衣の所為でこれでもかと言うぐらいに女の子に見られていたが、これほどまでにカッコいいの男の姿はなかった。

それに加えて長髪を縛る紅い紐が更にカッコよさを引き出していた。

「天音。仙桃で霊力は回復し、天装衣でお前自身の戦力はアップ。準備は完了だな」

「後は私達に一言だけ言ってくれれば良いんだよ?」

「お兄ちゃん、私はどこまででも付いて行くよ!」

「天音よ、私も未来の蓮宮の嫁を助けるために手伝っても構わないぞ?」

四人の気持ちを受け取り、俺がこれから言う言葉は決まっていた。

「璃音兄さん、花音姉さん、風音、蓮姫様。千歳と銀羅を助けるために、力を貸してください」

「ああ!」

「ええ!」

「うん!」

「うむ!」

四人が共に戦ってくれると返事をしてくれた。

だが、この時点で俺はもう二人の大切な仲間のことを忘れかけていた。

『ピィー!』

『『『がうっ!』』』

障子が開くと、元気な白蓮と黒蓮が部屋に入ってきて俺に抱きついてきた。

「白蓮!黒蓮!元気になったんだな!」

『リーン!』

それに続いて風音の契約聖獣である応龍の鈴音が部屋に入ってきて風音に抱きついた。

「鈴音、お疲れ様!お兄ちゃん、鈴音は白蓮と黒蓮を回復させてあげたんだよ」

「そうだったのか。ありがとう、鈴音」

『リンリン!』

鈴音はちょっと自慢げに胸を張った。

本当にこれがあの応龍なのか疑問に思ってしまう。

黒蓮もそうだが聖獣は小さくなると性格が一変するのか?

よし、いつか聖獣が小型化すると性格が一変してしまうのは何故かという論文を書こう。

まあ、それはさて置き……。

「それじゃあ、みんなに顔を見せに行きますか!」

今は何をやっているか分からないけど、取りあえずみんなに顔を見せに行こう。




.

天音の纏う天装衣のモチーフは牙狼の冴島鋼牙の白い魔法衣と、Fateのアーチャーのエミヤさんの紅い衣服です。


可愛いと言われ続けた天音を背中で語れるようなかっこいい男にしたいために天装衣を出してみました。


今までと違う姿の天音に批判する方が多いかもしれませんが、どうかご理解のほうをお願いします。

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