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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第7章 千年京都編
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第80話 もう一人の『九尾の妖狐』

急展開!!


いよいよ黒幕の登場です。


ここから修学旅行編も忙しくなってきますよ!

修学旅行二日目の夜は新選組のアジトで過ごすことになった。

色々と大変な事情があるので、葛葉先生に電話で説明して納得してくれた。

ただ泊まるだけじゃ申し訳ないので得意の料理を振る舞った。

この京都の伏見稲荷大社に住む宇迦之御魂神様に認めてくれた料理を新選組のみんなに振る舞うと……。

『『『う、美味いっ!!』』』

『『『美味しいっ!!』』』

新選組の隊員男女問わず美味しいと言ってくれて俺は満足しながら頷いた。

関東と関西じゃ味覚がかなり違うから口に合うか分からなかったけど、修学旅行前に京都料理を勉強しておいて良かった。

「このままじゃ、天音の料理ファンが世界レベルで増えてしまうわね……」

千歳はパクパクと料理を美味しそうに食べながらそう言う。

「世界レベルって、大袈裟だな……」

「だって、行く先で天音は色々な人に料理を振る舞っているじゃない」

「それは流れというか、勢いでそうなったわけで……」

「はぁ……全く私の旦那様はトラブルに巻き込まれやすいんだから」

「それは否定できないな……」

「あ、そうだ。天音、ちょっと一人分の食事を持って付いて来てくれる?」

「一人分?ああ、分かったよ」

千歳の考えにすぐに分かった俺は台所で今日作った料理を一人分の御膳に盛り付けて千歳と一緒に地下室に向かった。

地下室は牢屋になっていて、その奥に話に聞いていた封印の間があり、そこに目的の人物がいた。

「気分はどう?晴香」

「……さぁね」

安倍晴香は封印の間に横たわり、不機嫌な様子だった。その傍らに十二天将達が心配そうに座ってみていた。

「はぁ、相変わらず素直じゃないわね。ほら、食事を持ってきたから食べなさい」

俺は晴香の前に御膳を置くと、スッと起き上がって御膳を見つめた。

「……誰が作ったんだ?」

「俺だよ。関西の人の好みに合わせて作ったから大丈夫だよ」

「男のお前が料理を……?」

意外そうな顔で俺を見る晴香だったが、そんなに意外なのか?

「天音の料理は美味しいわよ。遠慮せずに食べて食べて!」

「……料理を作ってくれたんなら食べなくては失礼だよね」

晴香は御膳の前で正座で座り、両手を合わせて軽く会釈する。

「いただきます……」

「はい、召し上がれ」

箸を持ち、一口食べた瞬間。

「……ん!?」

半開きだった晴香の目はカッと開き、もう一口食べる。

「もぐもぐ……これ、本当にお前が作ったのか?」

「ああ。口に合わないか?」

「い、いや、違う……その、とっても美味しいから……」

「そうか。口に合って良かったよ」

「こんなに美味しいなら毎日食べたいぐらいだ……」

晴香にようやく笑みが見られたが、千歳は何故か俺を庇うように立った。

「毎日食べたいって、それは天音に対するプロポーズかしら?」

「はっ?」

毎日俺が作った料理を食べたい……まあ、確かにプロポーズに聞こえなくもないな。

「なっ!?ち、違う!そういう意味で言ったんじゃない!!ただ本当に美味しいから言っただけで……」

「天音は私の愛する旦那様なんだから渡さないよ!」

千歳は左手の薬指に付けてある婚約指輪を晴香に見せつける。

「何!?お前達、結婚していたのか!?」

「まだ結婚はしてないよ。婚約はしたけどな」

普段は恥ずかしいからあまり付けないけど、顕現陣からペリドットの婚約指輪を取り出して左手の薬指に付けて晴香に見せる。

「……その歳で婚約者同士か……」

「天音と私は幼なじみで、ずっと一緒だったのよ」

「……妻が気の強い女だと、旦那のお前は大変だな……」

「ちょっと!それは失礼じゃない!?」

「全くです」

「ええっ!?天音っ!?」

千歳には悪いけど、そこだけは同意する。

すると千歳は俺に駆け寄って体を思いっきり揺らす。

「じゃあじゃあ!天音の好みは何!?何なのよぉっ!!」

「……強いて言うならもう少しお淑やかな感じかな?昔のお前みたいな感じの」

今とはまるで違う病弱で気弱な感じの千歳が懐かしかった。

「なるほど、昔の私ね!?分かった!今すぐ天音好みのお淑やかキャラになる!」

「無理しなくていいって。今の千歳は似合わないし、気色悪いから」

「酷ーい!!そこまで言わなくてもいいでしょー!?」

「お前はお前のままでいいって意味だよ。俺は今のお前を愛しているんだから」

「っ!?そ、そうやって私の心の急所を突いて……もう!天音のくせに生意気だよっ!!」

「意味分からないよ」

千歳の顔は真っ赤で妙に可愛かった。ふむ、千歳をイジるのはやはり楽しい。確かこう言うのを攻めのS属性って言うんだよな?

「……ごちそうさまでした」

「ん?あ、お粗末様です」

いつの間にか晴香は御膳をペロリと平らげて再び手を合わせて会釈する。

「あー、お腹だけじゃなくて心もいっぱいよ……あんまりイチャイチャしているのを見せないでくれる?恋人がいない人にとって苦痛だから」

「別にイチャイチャしてないけど?」

「無自覚か……腹立つな」

「はぁ……?まあ、それは置いておくとして、晴香はこれからどうするんだ?」

「どうもこうも、あの九尾についてもう一度六壬式盤で占うしかないな」

「六……何?」

陰陽師に関する知識をあまり持たない千歳は首を傾げ、晴香はため息をはくとそれについて簡潔に答える。

「六壬式盤は陰陽師が使う占い道具。今度は精度を上げるために十二天将の力を使うが……お前に頼みがある」

「えっ?俺?」

「そうだ。十二天将を六壬式盤に契約した神器を使うには膨大な霊力が必要になる。私の霊力はまだ完全じゃないからお前の霊力を貸してくれ」

十二天将と六壬式盤を使ったアーティファクト・ギアか……流石というか本当にすごいアーティファクト・ギア使いなんだな。

「わかった。俺の霊力で銀羅の無実が晴れるなら使ってくれ」

「ああ。だが、六壬式盤は私の神社にある。まずは神社に向かわなければならない」

「よし!それじゃあ晴香の神社に行こう!」

元気よく立ち上がる千歳に晴香は呆れながら手足に付けられた枷を見せる。

「いやいやいや、行こうってお前、私は手足を封じられて――」

「Break The Restraint(束縛をぶっ壊す)!!!」

パァン!ドォン!!バリィーン!!!

「――動けな……あれ?」

「さあ、行くわよ!」

顕現陣からレイジングとストリームを引き抜くと同時に枷の鍵穴を正確に狙い撃ち、枷を破壊してしまった。

「え、えぇー……?」

あっさりと自由の身となってしまった晴香は呆然としながら千歳の二挺拳銃を見つめる。

「さてと、白蓮達を連れてこなくちゃな」

千歳の無茶な暴れっぷりには慣れているからそのままスルーして俺は白蓮達を迎えに行く。

その後、千歳は近藤さんと土方さんに力説で説得して晴香を釈放してもらい、そのまま神社に向かうことになった。

しかし、一応晴香のお目付役として沖田さん――総詞と刀華ちゃんか付いて行くことになった。

総詞とは数時間前にやった道場での手合わせで、お互いに剣で語り合った中となり、友人として名前で呼び合うようになったのだ。

「安倍晴香の神社か……楽しみですね〜」

「いつもは中にはれないからね」

お目付役なのに晴香の神社に入れることにウキウキしていた二人だった。

「……ねえ、銀羅」

『何だ?千歳』

「その、銀羅は自分以外に九尾の妖弧の存在を知らない?」

銀羅は千歳の質問に答え難そうに俯くが、すぐに口を開いた。

『……居たにはいたが……』

「いたが?」

『そいつは、もう死んでいるはずだ。それに、そいつが京都を滅ぼそうとする理由が見つからないんだ』

「そっか。でもこんなに綺麗な都を滅ぼそうとするなんて変な妖弧さんだよねー」

『……今は綺麗でも昔はそうでもないぞ』

「えっ?どういう、こと?」

『千歳は……知らなくて良い』

銀羅は重い何かを抱えた様子で先を歩いていった。

「銀羅……?」

千歳は今まで見たことない銀羅の一面に驚いて呆然としていた。



???side。


夜の京都を歩いている俺達を一つの『闇』が寺社の上から見ていた。

『この妖気、もしやと思っていたがやはりお前か……』

その闇は九つの尻尾があり、僅かに差し込む月明かりでその尻尾と共に毛皮が金色に輝いた。

更に、血のような紅い双眼が夜の京都で怪しく光った。

『袂を分かった私達が再び再会するとは……これはもはや運命としか言いようがない。だが……』

双眼がギリリと細く、鋭くなって怒りを含ませた眼となる。

『何という堕落した心だ……古から由緒正しき闇の眷属が、あのような人間の小娘の下僕に成り下がるとは……』

人間に対する酷い恨みの心を映し出すかのように全身から金色の妖力が溢れ出した。

『まあ、良い。貴様の身も心も私の物にしてやる。二度と、逆らえないようにな!!』

闇は寺社の屋根から高く飛んで行った。

自らの野望を叶えるために。




『待っていろ……銀羅!!!』



新選組のアジトから歩いて数十分の場所に晴香の住む神社があった。

「ここが私の神社……“晴明神社”よ」

「晴明、神社……?」

晴明神社には置物から地面に敷き詰められている小石まで隅々まで様々な陰陽術が強力な術がかけられていて、一種の異世界みたいな場所だった。

「晴明神社は私のご先祖様・安倍晴明が亡くなった後にその功績を讃え、当時の帝が亡くなった安倍晴明を祀って建てたのよ」

最強陰陽師の安倍晴明が祀られている神社……まさに陰陽師の聖地みたいな場所だった。

「蓮宮天音、早速だが始めるぞ」

「わかった」

いつでも六壬式盤の占いを始められるように霊力を使えるようにするが、それは……無意味に終わることになる。

銀羅は何かの気配を感じ取ると、前進の毛が逆立ち声を上げた。

『……はっ!?みんな!避けろ!!』

突然の事に驚く俺達だが、空から金色の炎の火球がいくつも降り注いできた。

「結界!!」

蓮の盾を作り出して金色の火球を防ぐ。

とっさだったからあまり強固な盾を生み出せなかったが、なんとかギリギリだった。

「みんな、大丈夫か!?」

「う、うん!」

「刀華、大丈夫ですか!?」

「だ、だいじょうぶだよ!」

「誰だ!姿を現せ!!」

晴香はいきなり襲ってきた相手に対して叫んぶと、すぐにその姿が現れた。

その姿を見た瞬間、誰よりも先に言葉を口にしたのは銀羅だった。




『あ、姉上……!?』




そしてその言葉は何よりも衝撃的だった。

俺達の前に現れたのは金色の毛皮に九本の尻尾を持つ九尾の妖狐だった。

「あ、姉上って、あれが銀羅のお姉さん!?」

千歳はもちろん、俺達も驚きを隠せず、銀羅はコクリと頷いた。

『私の姉で、名前は金羅だ……』

『久しいな、我が妹よ』

銀羅の姉である金羅ははニヤリと笑みを浮かべて初めて口を開くと、銀羅と同じ感じの高い声が響いた。

『再会を喜ぶ前に私のところへ来い。そして共にこの都を滅ぼそう!』

その一言で晴香の占いで出た相手がすぐに分かった。

京都を滅ぼす九尾の妖狐は銀羅ではなく、その姉である金羅だった。

そして、その金羅に誘われた妹の銀羅は千歳の前に出ると、蒼い炎を尻尾の先から出した。

『断る!!』

蒼い炎は火球になると同時にお返しに発射した。

『私は千歳の契約聖獣だ!今更姉上に協力するつもりはない!』

金羅は銀羅の火球を金色の炎で打ち消すと、見下したように見つめる。

『やはりその小娘に堕落させられていたか……九尾の妖狐とあろうものが落ちぶれたものだな!!』

Quiet(うるさい)!!」

パァン!!!

千歳のレイジングが火を噴き、弾丸が金羅の頬を掠め、頬に一筋の傷が出来て血が垂れる。

『……貴様、何をする?』

「さっきから聞いていれば勝手なことを言わないで!銀羅は私の大切な契約聖獣で、娘よ!!」

『娘だと?貴様のような小娘が銀羅の母だと?馬鹿馬鹿しい、ふざけたことを言うな!!』

「ふざけてない!銀羅は私とずっと一緒に生きてくれると言ってくれた!今の銀羅はあなたの妹じゃなくて、私の娘……“天堂銀羅”よ!!」

母さんの時もそうだったけど、やっぱり母は強い存在だと思った。

千歳は銀羅を本当に大切に想っているからこそ臆せずにあの九尾の妖狐に立ち向かうことが出来ているのだ。

『……なるほど。貴様が銀羅を縛る枷になっているのか。それなら……』

何を考えているのか分からない金羅は姿を消した。

『っ!?千歳!後ろだぁっ!!』

いち早く気付いた銀羅が叫んだ、次の瞬間には金羅が千歳の背後に現れた。

「なっ!?」

『私と一緒に来てもらおうか』

金羅は九本の尻尾で千歳の体を縛ると俺達が助ける前に消えてしまった。

最初に現れた場所へ再び現れると、千歳が金羅にの尻尾に捕まっていた。

「千歳!!!」

『姉上、千歳を返せ!!』

『そうはいかない。銀羅を手に入れる為にはこの小娘の存在が必要だからな』

「離して!早く離しなさい!!」

ジタバタ暴れる千歳に姉は仕方ないと言った表情をして千歳を見る。

『このままでは面倒だ。貴様と“契約”をするか』

その言葉に千歳だけではなく俺達も驚いた。

「ふざけないで!誰があなたなんかと……」

『お前の答えは……聞いていない!!』

金羅の瞳が輝くと、体がアーティファクト・ギアの契約のように粒子化して千歳の体の中に入っていった。

「あっ!?うあっ、ああああああああああああああああああああっ!!!」

体の中に金羅が入っていく千歳は苦痛から体をねじ曲げるように動かしながら絶叫を上げる。

「千歳!!」

「旦那!早く千歳を助けないと!」

「分かってる!白蓮!黒蓮!!」

『うん!』

『『『バウッ!!』』』

「契約執行!鳳凰武神装!!冥覇獣神剣!!!」

顕現陣から契約媒体を取り出し、一瞬で三つのアーティファクト・ギアを契約して千歳の元へ向かった。

「朱雀!!」

『ああ!』

晴香はカードから双剣を取り出すと、隣に現れた真紅の翼と髪を持つ青年、朱雀と契約をする。

「朱雀刀……“双翼炎刀(そうよくえんとう)”!!」

朱雀は鳳凰と同じく火の鳥として、多くの人に崇められていて、晴香の持つ細身の双剣は俺と白蓮の鳳凰剣零式によく似たアーティファクト・ギアだった。

「刀華、行きますよ!」

「うん!」

そして、最後に総詞は自身の持つ愛刀と隣にいる刀華と契約した。

実は刀華と輝刃は数ヶ月前、人間が人工的に聖獣の力を手に入れる、または人間に眠っている混血の力を引き出そうとした組織の研究所で、無理やり聖獣の力を引き出されてしまった実験体の一人だった。

そこに新撰組が殴り込み、組織の研究員を全て捕らえて実験体となった人達を解放した。

しかし、刀華と輝刃は身寄りがなく、そのまま新撰組で引き取ることにした。

刀華と輝刃には体の一部を刀にする混血の能力……つまり、迅先輩と同じ御剣一族の血が流れていた。

刀華は総詞、輝刃は一士が面倒を見ていて、妹と弟のように可愛がってくれた総詞と一士の力になりたいと言って二人の契約聖獣になることを選んだ。

そして、刀と刀華が契約したことで御剣一族の刀神の力が込められた一つの美術品に近い美しい刀型のアーティファクト・ギアとなった。

「アーティファクト・ギア、“刀神彩華(とうじんさいか)”!!」

それぞれのアーティファクト・ギアが契約を完了し、千歳を助けるために俺と銀羅を筆頭に金羅を止めに行くが、この時から既に始まっていたのだ。




この美しい京都が全て滅びようとする、破滅へのカウントダウンが……。




そして、それを引き起こす全てを破壊する日本最強の『鬼』と、それが率いる『妖怪』が目覚めようとしていた。




.

千歳ちゃんがこれまでにない大ピンチを迎えます。


金羅が千歳の肉体と契約をしてしまいます。


ちなみにこれはよくある憑依ってやつです。


そして、千歳が皆さん大好き(?)の狐娘になります!


あれ?狐娘になったら天音はどうなるかな??

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