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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第7章 千年京都編
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第74話 千年の都

今回から修学旅行編です。


私の大好きな新選組と陰陽師のネタをふんだんに使いますので!

俺の母親代わりで冥界の女王の異名を持つペルセポネ姐さんの考えで天聖学園に通うことになった。

俺としては初めての学校生活で、何よりも死んだ母さんの故郷である日本で暮らせて嬉しいことばかりだ。

「えっと……ここだな」

そして今日は修学旅行の買い物をするために天聖学園の近くにあるショッピングモールに来ていた。

『『『くぅん』』』

「ツバキ、お前の物も買ってやるからな」

俺の足元にいる相棒のツバキは子犬形態で甘えている。

「おやおや〜?サクラ君じゃないですか」

「き、霧夜明日奈!?」

悪魔のジャーナリストと恐れられている霧夜明日奈がどうしてここに!?

「そんなに警戒しなくていいわよ。別に取って食うんじゃないんだから」

そう言うがソロモン王の生まれ変わりで、ソロモン72柱を使役している明日奈には並みの罪人よりも寒気が走ってしまう。

「あら?この子犬ちゃんが冥界の番犬、ケルベロスね?」

『『『ば、ばうっ……』』』

ツバキも明日奈の秘めた力に警戒し、後ずさりをしている。

「あはは、警戒しないで。ほら、蜂蜜入りの甘いお菓子だよ〜」

明日奈はポケットから市販されているお菓子を取り出した。

『『『がうっ!?』』』

「ほらほら〜、とっても美味しいよ〜」

『『『ばうっ!!』』』

ツバキは明日奈の取り出したお菓子に目を輝かせて俺に飛び付いてしまった。

「ツ、ツバキィッ!?」

「よしよし、良い子だね〜」

明日奈はお菓子をツバキに与えて食べさせている……はっ!?

この展開は黒蓮と天音の時と同じじゃないか!?

「止めろ!これ以上俺から契約聖獣を奪わないでくれ!!」

「えっ?べ、別に奪う気はないよ?だって私には悪魔のみんながいるし……」

「じゃあ、返してくれ……」

「そんな、捨てられそうになっている子犬みたいな涙目で訴えないで。私の心臓がキュンキュンしちゃうから……」

何故か頬が赤くなったサクラからツバキを返してもらい、気を取り直して話をする。

「明日奈はどうしてここに?」

「修学旅行で必要になる道具を買いに来たのよ。ここには結構良い物が揃っているからね。サクラ君は?」

「俺もそんなところだ」

「じゃあ、私が買い物に付き合ってあげるよ。さっきのお詫びも兼ねてね」

「んー……それじゃあ、お願いするかな?ここは初めてだからな」

「それでは、レッツゴー!」

明日奈に手を引っ張られてショッピングモールの中へと入っていく。

「やっぱり京都に行くからには情報は必要だよね〜」

最初に訪れたのは本屋で、そこで観光用の京都のガイドブックを手にする。

「京都……日本の古き伝統が残る町か……」

「日本人の故郷みたいなところだからね。一度は訪れるべきだよ。サクラ君は何処に行ってみたい?」

「俺は……清水寺かな?素晴らしい場所と聞いたから」

「おー、メジャーだね。私は天龍寺かな?綺麗な庭園を見たいんだ〜」

「そうか。この写真で見る限り本当に綺麗だな。機会があったら俺も見よう」

本屋でガイドブックを購入し、次に修学旅行で着て行く洋服とかを買いに行く。

「そう言えば、修学旅行の班はAとB組で混合して決めると聞いたが……」

「今回京都に行くのはA組とB組で、せっかくだから二つの組のみんなを仲良くさせるために班を混合で決めることにしたらしいよ」

「そうか。出来れば千歳と一緒の班になりたいな」

「相変わらず千歳ちゃんが好きだね君は。でも千歳ちゃんには……あっ」

「ん?どうした?」

「千歳ちゃんと蓮宮君がいるよ」

「何ぃ!?」

店の壁に隠れて二人同時に伺うと数十メートル先に千歳と天音、更に二人の契約聖獣である白蓮と黒蓮と銀羅がいた。

千歳は嬉しそうに笑いながら天音の腕に抱きつき、かなり密着しながら歩いていた……あれは間違いなく買い物デートだ。

「おやおや、いつも通りにラブラブだね〜」

「おのれ……イチャイチャしやがって!」

「サクラ君。いい加減諦めたらどうかな?あの二人に付け入る隙は殆ど無いからね。何たってあの二人は切っても切れない呪いのような絆で結ばれているからね」

「どういう事だ……?」

呪いのような絆と言う明日奈の言葉が気になり、思わず尋ねた。

「実は蓮宮君と千歳ちゃんの関係を気になってね。前にソロモン72柱のみんなに頼んで調べたことがあったんだ。そしたら――……」

立ち話も何だったので近くの喫茶店で明日奈から千歳と天音の話を聞いた。

二人は同じ日に同じ病院に産まれたが、千歳は産まれた時から体が弱くて虚弱体質だった。

幼い頃から病気で何度も生死をさまよっていた千歳に手を差し伸べたのが天音でずっと側にいて支えになった。

千歳にとって天音は命の恩人で、たった一つの希望の光……元々誰も付け入る隙は無かったわけだ。

それから千歳と天音はずっと一緒だった。

明日奈の言う、切っても切れない呪いのような絆のように……。

「前に、千歳ちゃんに『もしも蓮宮君と結ばれなかったらどうする?』って聞いたことがあるんだけど……そしたら千歳ちゃん、何て答えたと思う?」

「……一生天音を想い続いて独身か?」

千歳の性格なら独身でも構わないと言うかもしれないが、千歳の答えはもっと衝撃的だった。

「近いけどちょっと違うね。一つは『自ら命を絶つ』か、『純潔を守るために尼になる』って……」

「わぉ……」

そこまで千歳は天音の事を思っていたなんてな……千歳の天音に対する愛は無限大か。

「正直な話、私は女だけど蓮宮君が羨ましいよ。そこまで想ってくれる相手がいるんだからね」

「そうだな。あーあ、儚い想いだったな。俺の一目惚れ……」

「君ならすぐに良い相手が見つかるよ。さて、買い物を続けようか。まだガイドブックしか買ってないからね」

「ああ、そうだな。行くぞ、ツバキ」

『『『わんっ!』』』

気持ちを切り替えて明日奈とツバキと一緒に買い物の続きをする。



九月末……遂に待ちに待った修学旅行の日となった。

バスで東京駅に向かい、東京駅にて天聖学園が貸切にした新幹線に乗って京都駅に向かう。

「さあ、皆さん。京都で楽しく学びましょうね」

新幹線の中で俺達の班のリーダーである明日奈委員長がそう言った。

今回の修学旅行の班はA組とB組の混合で組まれるので俺達の班は冒険部のメンバーで構成されている。

俺に千歳、恭弥と雷花さん、刹那と麗奈、そしてサクラと……何故か俺達の班員に志願した明日奈委員長の八人。

それから聖獣組は白蓮と黒蓮と銀羅、悟空とトール、そしてツバキの六人だ。

しっかり者の明日奈委員長が班のリーダーになってくれて、修学旅行で俺達の行きたい場所などの希望を聞いてルートや計画などを決めてくれた。

本当に頼りになる俺達1年A組のクラス委員長だ。

「よし、そろそろトランプでもやるか!」

そう言った恭弥は持参のトランプを取り出した。

やはりトランプは旅行ので乗った時に新幹線や電車の定番ゲームだ。

「人数もいるからな。無難にばば抜きとか?」

「私はポーカー!こう見えてけっこう自身あるよ!」

「私は……大富豪」

俺はばば抜き、千歳はポーカー、雷花さんは大富豪とみんなでやるトランプゲームで意見が分かれた。

「京都駅まで時間もあるから、順番にやってこうぜ」

サクラの言う通り目的地まで時間もあるのでみんなで楽しみながら色々なトランプゲームをしていく。

そして、トランプで時間を過ごしていくうちに着々と目的地である京都まで進んでいた。



一方、その京都で二つの勢力が俺達の修学旅行に合わせて動きを見せていた。

一つは背中に『誠』の文字が描かれた浅黄色の羽織を羽織った学生達が大きな屋敷にいた。

「そう言えば、とっしー。今日からだっけ?関東の天聖学園の生徒が修学旅行に来るのは?」

屋敷の縁側でのんびりとしている一人の少年が近付いてくる一人の少女にそう聞いた。

「とっしーって言わないでください。今回の修学旅行はは二組分と聞いてます。はい、どうぞ」

少年に『とっしー』と呼ばれた長い黒髪をポニーテールで縛った凛とした雰囲気を持つ少女の手にはお盆を持っており、その上に和菓子とお茶が乗せられていた。

そこに可愛らしく少し活発な感じの少女が近付いてくる。

「近藤さん、土方さん。何しているんですかー?ああっ、二人で仲良くイチャイチャとお茶会ですか!?ずるいです!僕も混ざりたいです!」

「だ、誰がイチャイチャとお茶会だ、総詞(そうし)!フザケたことを言うな!」

総詞と呼ばれた少女は悪戯っ子のような笑みを浮かべて『土方さん』と慕う少女を弄る。

「もう、照れちゃってー。近藤さん激ラブの鬼娘土方さん♪」

「総詞ぃいいいいいっ!!!」

その言葉に土方はブチ切れて背後には誰が見てもはっきりと見える鬼のオーラが現れる。

「キャー!土方さんに斬られるー!近藤さん、助けてー!」

総詞はとっさに近藤の背後に隠れて助けを求める。

「近藤さん、今すぐ離れてください!!総詞をブッダ斬ります!!」

「まあまあ、落ち着いて。大人気ないよ、とっしー」

近藤は慣れている様子で土方を宥めると後ろにいる総詞に視線を向ける。

「それから総詞。あまりとっしーに悪戯しちゃ駄目だぞ?」

「はーい、わかりました」

近藤の言葉に素直に返事をする総詞に土方は大きくため息をつく。

「全く……近藤さんは総詞に甘いんだから……」

「はっはっは!それよりもお茶の続きとしようか。総詞、お前も一緒にどうだ?」

「はーい、喜んで!」

まるで兄妹のような関係を持つ三人は実はこの屋敷を拠点としたある組織の上層部のメンバーだった。

少年の名前は『近藤勇刀(こんどうゆうと)』。

一人の少女の名前は『土方歳光(ひじかたとしみつ)』。

そして、二人を慕う少女の名前は『沖田総詞(おきたそうし)』。

三人が所属するその組織は京都の治安を守るために結成された自警団組織……『新選組』である。

勇刀は新選組のトップである局長、歳光は局長を支える副局長、そして総詞は新撰組の実働部隊である十の隊で、特に精鋭の剣客で構成されている一番隊の隊長である。



もう一方では京都にある小さな神社に巫女の少女が寝ころんでいた。

「ふにゅ……ふみゅ……」

可愛らしい寝息で寝ていると少女の隣が金色に輝き、そこに金髪の美しい天女が現れる。

「んぅ……?あれ、天一(てんいち)……?」

少女は天女……天一の気配に気付いてすぐに目を覚ます。

『晴香様。六壬式盤(りくじんしきばん)が何かを反応しております』

「六壬式盤が……?ほな、どれどれ……」

天一に『晴香』と呼ばれた少女は起き上がり、隣の部屋に入るとそこには木製の大きな占い道具である式盤が置かれていた。

式盤の中央には北斗七星、その周囲には方角や様々な漢字が刻まれていた。

「さーてと、何が起きるのかなぁ……」

晴香は六壬式盤で占いを始め、これから起きるかもしれない吉凶を占った。

そして、占いの結果を見ると険悪な表情を浮かべた。

「ちょっとマズい事になったかもしれないなぁ……」

『晴香様、六壬式盤は何と……?』

「近々、京都に邪悪な“妖狐”が訪れるわ」

『妖狐!?となると……』

「九つの尾を持つ妖狐……“九尾の妖狐”。天一、“十二天将”を総動員させて、急いで調べてちょうだい!!」

『かしこまりました。では……』

天一は一礼をするとその場から消え、その神社から十二の光が飛んで京都のあちこちへ散らばって行った。

「偉大な御先祖様の名にかけて、この京都に手出しはさせないでぇ……!」

少女は京都を守るためにそう意気込んでいた。

天一率いる『十二天将』が仕えているこの少女は、約千年前の平安時代に存在したと言われる伝説の陰陽師『安倍晴明』の子孫……『安倍晴香』である。

晴香は晴明と同様に強大な霊力を持っており、晴明が使役していたとされる十二天将を自らの契約聖獣として使役していた。

そして、新選組と同様にこの京都を守るために日夜奮闘しているのだった。




.


今回も一気に新キャラが登場します。


次回は天音達の京都観光です♪

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