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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第5章 ドタバタ夏休み編
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第62話 咲き乱れる想い

今回も恭弥君が頑張りますが、思春期の男の子ゆえに色々暴走します(笑)


さあ、恭弥の恋が叶うのか必見です!

深い暗闇が広がる森の中……俺と雷花はゆっくり歩いていた。

「月と星の光しかないから、やっぱり暗いな……」

「う、うん……」

「何か、本当にお化けが出そうだな……」

「うん……」

さっきから積極的に話しかけているが、雷花は「うん」としか言っていない。

それどころか……。

ギュッ。

肝試しが始まってからずっと俺の腕に抱き付いて服を強く握りしめていた。

しかも、カタカタと体が強く震えていた。

「もしかして、こう言うの……苦手なのか?」

「う、うん……お化けとか、幽霊とか、苦手で……」

「じゃあ、何でこの肝試しに参加したんだ?無理に参加しなくても……」

ぶっちゃけのところ、肝試しに雷花に参加してもらわないと困るが、苦手なら最初に一言言えば、肝試しを止めてもらったが……。

「思い出……」

雷花の呟くような言葉に俺は耳を傾けた。

「思い出?」

「みんなと……恭弥と思い出を一つでもたくさん作りたいから……怖くても、肝試しに参加したの……」

何て健気なんだ……こんなにも震えているのに俺達と思い出を作るために……だが、それよりも今の雷花に俺はかなり心臓が破裂しそうなぐらいに鼓動を早めている。

何故なら、さっきから雷花の柔らかい胸が腕に当たっていて、ずっと恐怖に耐えているその表情に色っぽい吐息……正直に言うと可愛すぎる!!!

今すぐに雷花をギュッて抱きしめたい!

この小さな体をしている雷花を抱き締めて頭を撫でたい!!

何と言うか、雷花が可愛すぎるから俺の父性本能とか色々なものがくすぐられる!!

だがしかし、俺は雷花を抱き締めたい欲望をグッと押さえ込んだ。

ばーちゃんが言っていた……女の子が怖がっている時こそ優しく頼れる紳士であれと!

だからすぐに静まれ、俺の欲望!!

「恭弥?どうしたの……?」

俺の異変に雷花は不思議そうに俺を見上げながら聞いた。

瞬時に俺は平常心を保って雷花に笑いかけた。

「いいや、何でもない。心配するな、雷花には俺が付いているからな」

「うん……」

少しキザな台詞かもしれないが、雷花はそんな事を思っていないように少し笑顔になって頷いた。

あれ?これってかなりいい雰囲気なんじゃないか!?

なるほど、これが吊り橋効果の効力なのか!!

ありがとうございます、紅さん!蓮姫さん!

お二人の作戦は正しかった。これで雷花との距離を縮められる!

この時の俺は二人に感謝して雷花にどんな告白をするか考えていた。

しかし、そんな事を考えている暇は無いと宣告される事態が発生してしまった……。




『ヒヒヒ……』




「「ん?」」




『ヒヒヒ……』




不気味な笑い声が聞こえ、空気がひんやりと涼しくなったような気がした。

俺と雷花は恐る恐る振り返って後ろを見ると……。




『……ヒヒヒヒヒヒッ!!!』




不気味な青白い幽霊が三体現れてこっちに近付いてきた。

「……キャアアアアアアアアアアッ!?」

「ま、マジかぁあああああああああっ!?」

俺は雷花を抱き上げてそのまま森の奥へダッシュした。

「きょ、恭弥!?」

「雷花、しっかり掴まっていろよ!」

「う、うん!」

肝試しとは言え、本当にお化けが出るとは予想外だった。

すぐにでも倒したいところだが俺は天音と違って霊力や破魔の術を持ってないから、実体のないお化けを対処する方法がない。

ひとまず、怖いものが苦手な雷花を安全な場所へ移すしかなかった。



「……ん?恭弥と雷花さんの声……」

「どうやら、天音が発動した『夢幻』のお化けでちゃんと驚いているようだな」

あぐらをしながら座り、精神を集中させている俺の隣でお茶を飲んでいる蓮姫様がそう言った。

それにしても、日本茶が本当に好きなんですね……いつも飲んでいるし。

現在俺は『霊煌拾式・夢幻』でこの島全体に夢と幻を発生させる空間を作り出している。

そして、恭弥と雷花を驚かせるために今さっき幽霊の幻影を作り出して驚かせている。

「天音、上手く行くと良いね」

「そうだな……千歳、ちゃっかり俺の膝に頭を乗せるな」

「えー、良いじゃん。恋人が膝枕をするのは当たり前なの」

「そうだぞ、天音。私もよく波音に膝枕をしてもらったもんだ」

蓮姫様は夫の『波音様』の事を思い出しながら言っている。確か、武術は出来ないけど、料理とかの家事が得意な人ってアリス先生は言っていたな。

「ちちうえ、ぼくも!」

「白蓮……良いよ、おいで」

「わーい」

擬人化している白蓮は千歳の反対側の膝に頭を乗せて寝転がる。

ちょっと膝が痛いけど、我慢するか。

「むー、私も膝枕をして欲しいな……」

同じく擬人化している銀羅が羨ましそうに見ているが空きがないから無理かな。

すると千歳は銀羅に向けて両手を広げ、優しく微笑んだ。

「ほら、銀羅。お母さんのところにおいで」

「千歳……うむ!」

銀羅は千歳に抱きつくように飛び込んだ。

銀羅は嬉しそうに千歳の胸の中で眠りについた。

この辺りだけ人口密度が非常に高かったが、微笑ましい家族みたいな光景だから良しとした。

「……ところで、天音」

「はい?」

「先ほどから、風音が溢れんばかりの怒気や殺気を放っているのだが……」

蓮姫様が指差した先には璃音兄さんと花音姉さんと鈴音に押さえられながら双蓮を握り締めてこっちを睨みつけている風音がいた。

「やれやれ……せめてお前以外の男に惚れてくれれば良いのだがな」

「それ、かなり難しいと思いますよ……」

お互いに苦笑を浮かべ、俺は再び精神を集中させて恭弥と雷花さんを驚かせるため幽霊の幻影を生み出す。



『『『ヒヒヒヒヒィッ!!!』』』

先ほどから追いかけてくるお化けがどんどん増えてきていた。

「呪われているのかこの島は!?」

「呪いの島……怖いよぉ……」

抱き上げた雷花は目をつぶり、俺の服を必死に掴んでいる。

吊り橋効果は一応効果てきめんだが、こんなにお化けはいらないぞ!?

だが幸いにも全力で走っている俺とお化け達の距離はどんどん離れていっている。

この調子で引き離してやるぜ!

だが、更なる試練が俺に待ちかまえていた。

淡い白色に輝く何かが俺の視線の先にいて不気味に動き回っていた。

人間みたいな形をしていたが、全然違っていた。




『『『ケケケケケーッ!!』』』




それは体から肉を失った骨の死体……動く骸骨だった。

しかも人間や動物と種類が豊富だった。

「今度は骸骨かよぉおおおおおおっ!?」

お化けに骸骨……一体昔に何があったんだよこの島は!?どんだけ肝試しに適した島なんだ!?

「ちっ……しゃあないな!雷花、下ろすぞ!」

「ふぇっ!?」

雷花を下ろすと、俺は右肩の顕現陣から金剛棒とガーディアン・カードを取り出した。

ガーディアン・アクセサリーを起動させ、悟空が昔頭に填めていた緊箍児と同じ形をした金の輪っかを頭に填めて結界を纏う。

「さあ、どっからでも掛かって来いや、化け物共がぁっ!!」

悟空がいないから如意金箍棒はつかえないけど、雷花を守るために全力で化け物共と戦ってやる!!

『『『ヒヒヒヒヒィッ!!!』』』

『『『ケケケケケーッ!!!』』』

お化けと骸骨が同時に襲いかかってくるが、金剛棒を手の中で回しながら薙払っていく。

骸骨は倒すのにそんなに時間は掛からなかった。

「そいやぁっ!」

足の関節を狙って金剛棒で砕き、バランスを崩してから頭蓋骨を蹴り上げて吹っ飛ばす。

だが、実体の無い幽霊をどうするか迷った。

金剛棒で殴っても効果はなく、すり抜けるだけ……こう言う時に天音のような霊力みたいな力が使えれば良いなと思う。

だけど、俺が使える力は身体能力を強化する気力とそれから……ダメだ。

みんなが持っていない『この力』は、ばーちゃんに使ってはいけないと言われている。

それに、この状況を打破できる力でもない。

「ちっ……面倒だな!」

「キャアアアッ!!」

「雷花!?」

雷花の悲鳴が聞こえ、振り向くと二匹のお化けが雷花の周りで恐がらせている。

『ヒヒヒィ……』

『ヒーヒッヒィ……』

「嫌……嫌だよ……」

恐がらせているだけで身体的な危害を加えていないが、雷花をこれ以上恐がらせるわけにはいかない!!

「てめえら!雷花から離れろ!!」

雷花に駆け寄ろうとするが、それをお化け共が行く手を塞ぐ。

「くっ、雷花!」

必死に呼びかけるが、雷花は自分の体を両手で抱き締めながら今まで以上に大きく震えていた。

「あっ、あっ、あああっ……」

顔に浮かぶ血の気が引いていき、体からパチパチと電気が溢れていく。

そして、突然上空にたくさんの雷雲が浮かんでくる。

「雷雲が……ら、雷花!落ち着け!」

嫌な予感が頭を過ぎり、俺は雷花に呼び掛け続けるがそれは既に意味がなかった。

「あああああああああああああああっ!!!」

雷花の声が破裂しそうなぐらいな悲鳴が響き渡り、それと同時に雷雲から無数の落雷が落ちた。

「どわぁっ!?」

次々と雷花を中心に落ちる無数の落雷……もしかして、お化けによる極限状態の恐怖が雷花に秘められた鳴神一族の雷を操る能力が暴走してしまったのか!?

だとしたら、このまま雷を呼び続けたら雷花自身がどうなるかわからない……そうなる前に雷花を止めないといけない。

「雷花!雷花!!」

「あああっ、あああああああああああああああっ!!」

ダメだ……今の雷花に言葉は無意味だ。

近くまで行って呼びかけるがしかない。

だが、もはや雨のように降り注ぐ落雷の所為で雷花に近付くことは無理だ。

トールやアリス先生なら何とか出来るが……あまり呼びたくはない。

これは俺に架せられた試練……雷花は必ず俺が助ける。

そのためには……。

「さっきは使わないと思っていたが、言いつけを破るよ、ばーちゃん……!」

金剛棒を顕現陣に仕舞い、俺は目を閉じて左手を胸に置いた。

心の中で一つの事を思い、考えた。

まずは小さな宝箱を思い浮かべた。

だがその宝箱には鎖が何重にも巻かれ、錠が掛けられて開かなかった。

そして、錠を開けるための鍵……。

「開け、世界の理……」

その言葉が鍵となり、錠が外れ、鎖が砕かれて宝箱が開いた。

そして、次の瞬間……俺の体から緑色の閃光が煌めいた。



俺達が異変に気が付いたのは雷雲が現れ、次々と落雷が落ちたところからだ。

「ヤバい……姉ちゃんが暴走している……」

弟の雷輝君が同じ鳴神一族として雷花さんの異変に気が付いた。

「天音、もしかしてやり過ぎた?」

「かも、しれない……夢幻の術は扱いが難しいから……」

霊煌紋の力は受け継いでいるがまだ完全に扱い切れていない霊操術がある。

「あらあら。これは助けに行った方が良いかし――っ!?」

俺が作った焼き菓子を食べているアリス先生が突然絶句し、

「さあて、これで上がり――ぬぉ!?」

悟空達聖獣と一緒にトランプで遊んでいたトールが上がると目を見開いて驚愕し、

「恭弥……えっ!?」

孫の恭弥の無事を願った若葉さんの体が緑色に輝き、驚いた。

「若葉、どうしたのじゃ!?」

緑色に輝く若葉に恭介さんが心配するが、若葉さんは首を横に振って手を握った。

「私は何ともないわ……ただ、恭弥が……」

「若葉……恭弥はもしかして……あなたの力を……」

「ええ……」

深刻そうな表情を浮かべるアリス先生に若葉さんは小さく頷いた。

一体恭弥に何があったのか、俺達は固唾を呑んで聞いた。

『若葉……と言ったな。ワシにも分かるぞ』

トールが若葉を見下ろし、雷花さんの落雷が発生した方角を見る。

『恭弥の解放した力……それは“ユグドラシル”の力じゃな?』

「は、い……」

若葉さんは力無く頷いた。

ユグドラシル……世界樹……北欧神話で幾つもの世界を支える大樹と言われている。

その世界樹の木の精霊である若葉さんの血を継いだ恭弥……一体どんな力を秘めているのか?

俺は親友の無事を祈った……。



俺に秘められた力を解放し、ゆっくりと雷花の方へと歩いて行った。

「雷花……」

恐怖から暴走している雷花を止めるため、この力を使わせてもらう。

降り注ぐ無数の落雷……一撃でも受ければ死ぬのは必至。

だが俺は……。

「邪魔だ」

その落雷を身に纏う緑色の閃光で打ち消した。

落雷を次々と打ち消していき、確実に雷花に近付いていく。

そして、雷花の目の前まで立つが、雷花自身は全く俺に気付いていなかった。

俺は腰を下ろし、雷花に視線を合わせた。

「雷花……」

「あぁ……あぁあ……」

俺は直感的に今の雷花を止めるにはこれしかないと考え、大きく息を吐いて覚悟を決める。

「雷花!」

そして俺は雷花の体を抱き寄せて強く抱きしめた。

俺の体から発せられている緑色の閃光が雷花の体を包むと、落雷がピタリと止み、雷雲が少しずつ晴れていく。

「あっ……あぁ……あれ?」

目をぱちくりとし、雷花は目が覚めたように呆然としていた。

「雷花、目が覚めたか?」

「きょ、恭弥……?私、何を……」

「あまりの恐怖でお前の雷の力が暴走したんだよ」

「えっ……?えぇえええーっ!?そ、そうなの!?」

「ああ。それを俺が止めたんだよ」

「どうやって……?」

俺は抱き締めていた雷花を解放して体から出ている緑色の閃光を見せた。

「これは、ばーちゃんから受け継いだ力……“ユグドラシルの輝き”だ」

「ユグドラシルの輝き……?」

「ああ。世界を支えるユグドラシルの力の一部で、俺の場合は“力を打ち消す能力”なんだ」

「力を打ち消す……?それで私の暴走を……?」

「そう言うことだ。まあ、代償はちょっとばかしあるけどな」

「代償!?代償って、何なの!?」

しまった……余計なことを言ってしまったと今更後悔する俺。だけど、ここまで言ってしまったらもう後戻りは出来ない。

「大したこと無いさ。ただ、俺の体がちょっと“精霊”みたいになるだけだ」

「精、霊……!?」

「ああ。俺の場合はばーちゃんと同じ木の精霊の力だな。例えば木と話をしたり、木を生み出すとかが出来るように――」

「どうして恭弥はその力を使ったの!?」

「はえっ!?」

珍しく声を上げて怒鳴る雷花に俺はビックリして固まった。

よく見ると雷花は涙目で俺を睨み、握り拳を作って俺の胸を叩き始めた。

「バカバカ!私なんかの為に……恭弥のバカァッ!」

「うわっ、ちょっ!?雷花さん、止めてぇっ!」

「もう、二度とその力を使わないで!私と約束して!!」

「は、はいっ!」

ギリッと睨みつける雷花の瞳に俺は首を縦に早く振り、約束した。

いつの間にかお化けは消えており、少々中断していたが肝試しを再開して更に森の奥へ進んだ。

そして、目的の場所に辿り着くとそこには信じらんない光景が広がっていた。

「「お、温泉……!?」」

そこには熱い湯気が漂う天然の温泉があり、その温泉を肝試しの目的の品である、虹色に輝く『虹の石』の岩で囲まれていた。

「まさか温泉があるとはな……しかも、温度はちょうど良いな」

軽く温泉のお湯に触れると、ちょうど良い熱さのお湯の温度が指から全身に伝わる。

「……恭弥」

「ん?あっ、そうだな。すぐに虹の石を持って戻ろうか」

温泉の底に敷き詰めるように置いてある虹の石を取ろうとしたが、その手を止められて雷花がのぞき込むように俺を見て言った。

「違うよ。一緒に……温泉に入らない?」

「えっ……?」



「どうして、こうなった……?」

「何が……?」

「いや、何でもない」

現在、俺と雷花は一緒にこの天然温泉の中に入っている。

つまり、男子の夢である好きな女子との混浴だ。

だが、混浴と言っても裸ではない。

一応予備として持ってきた水着に着替えて温泉に入っているのだ。

男子としては雷花の裸を見られないのはちょっと残念だが、もし仮に裸同士で混浴したら欲望が爆発して雷花に襲いかかってしまいそうなので、安心している自分がいると言う、何とも複雑な心境だった。

「温泉、気持ちいいね……」

「そ、そうだな……景色も最高だからな」

今は景色なんかより雷花に見取れていますが。

雷花は温泉から立ち上がると俺を見下ろしながら尋ねてきた。

「ねぇ……恭弥」

「ん?何だ?」

「どうして、私を助けるためにユグドラシルの力を使ったの……?」

「そんなの決まっているだろ?仲間を守るために理由なんているのか?」

俺は冒険部部長として尤もな事を言うが、雷花はその理由に納得していない。

「だったら、閃光弾を使って応援を呼べば良かったじゃない……」

「うっ……」

確かに雷花の言う通りに助けを呼べば良かったのだが、俺自身の手で雷花を助けたかった。

「嘘吐き。恭弥の本当の気持ちを言って……」

嘘吐きと言われ、更に厳しい目つきで睨みつけてくる雷花に俺は観念するしかなかった。

俺も温泉から立ち上がり、雷花と向き合った。

ここまで積み重ねてきた雷花との関係が完成するか、崩壊するか……さあ、ここからが勝負だ!!

「雷花!お前は俺の事をどう思っている?」

「え?どう思っているって……恭弥は私にとって一緒に笑いあえる大切な仲間で……」

「俺は……雷花の事を可愛い女の子だと思っている!」

「ふぇえっ!?」

可愛いとストレートに言われ、雷花は顔を真っ赤にしていた。

よし、ここは一気に攻め続ける!

「初めて会ったあの時から俺は雷花の事をずっと気になっていた。一緒に戦って、一緒に同じ時間を過ごしていく内に……俺は雷花に対して仲間以上の感情を持っている!」

「仲間以上の、感情……?」

「ああ。そして、この旅行で雷花と一緒にいる内に、俺は心に秘めた一つの事に気が付いたんだ!」

俺は雷花に近付いて両肩に手を置いた。

雷花も今から俺が言うことに何となく気が付いたのか、最高潮に顔を赤くしている。




「俺は、雷花の事が大好きだ!俺の嫁になってくれ!!」




言ってしまった。

しかも告白どころかプロポーズも言ってしまった。

フッ……どうやら千歳やじーちゃんの影響を受けてしまったようだな。

だが、後悔はしていない。

例え、断れて振られようとも……。




「うん、良いよ……」




――えっ?

半分諦めかけていた俺の耳に女神のような優しい声が届いた。

「雷花、今なんて……?」

よく聞こえなかった俺に雷花は優しい笑みを浮かべて言った。

「だから、良いよ。私、恭弥のお嫁さんになってあげる……」

「雷、花……」

これは夢じゃないかと一瞬疑うが、足に浸かっているお湯の熱さが夢ではないと証明している。

目の前にいる心底惚れている可愛い少女が俺の嫁になってくれると了承してくれた。

「ねえ、恭弥……私をお嫁さんにしたいのなら、証をちょうだい……?」

「あ、証……?」

「うん、証だよ……んー」

雷花は目を閉じて顔と……唇を前に突き出した。

ら、らら、雷花さん!?つまりこれは、証と言う名の誓いのキスと言うことでしょうか!?

「お、おう!」

雷花を俺だけの嫁にする為に意を決し、雷花の顔に手を添え、俺の唇を雷花の突き出した唇に重ねた。

「んむっ……」

「んくっ……」

重ねた雷花の唇はとても柔らかく、思わず貪りそうになったが、それは止めて両腕で雷花を強く抱きしめた。

そして、一分にも満たない短い時間だったが、お互いの唇を一度離した。

「大好きだよ、恭弥……」

「俺もだよ、雷花……」

もう一度唇を重ねて心に証を刻んでいった……。



「ただいまー」

「遅くなりました」

ずいぶん長い時間を掛けてしまったが、目的の虹の石を持ってみんなのいる無人島の入り口に帰ってきた。

「恭弥!」

ばーちゃんが血相を変えて俺に駆け寄ってきた。

もしかして、ユグドラシルの輝きを使ったのがバレた!?

それならば、何か言われる前に先手を打とう。

「ばーちゃん、俺は雷花を守るために覚悟の上で使ったんだ。後悔なんかしてないし、何より……」

雷花を抱き寄せて見せびらかすようにした。

「掛け替えの無い、一番大切なもんが出来たからな」

面を食らったばーちゃんの顔はとても驚いていたが、すぐにいつもの優しい表情になった。

「そう。それなら、私が言うことは何もないわ。雷花さん」

「は、はい」

「恭弥の事、よろしくお願いしますね」

「はい!」

ばーちゃんは雷花の事をすぐに気に入って認めてくれた。

もちろんじーちゃんもだが……。

「ハッハッハ!これはめでたいな!若葉よ、可愛いひ孫の顔が楽しみだな!」

「ふふっ。そうですね、恭介」

「じ、じーちゃん!?」

「ひ、ひ孫……」

まだ気が早すぎるひ孫発言に俺と雷花は顔を真っ赤にする。

「恭弥と、私の子供……恭弥と子作りエッチをして、それから……」

特に雷花は自分のお腹に手を当てて、何やらブツブツと呟き始めるほどだった。

『やるじゃねえか、相棒!』

『ガハハハッ!幸せになれよ、雷花!!』

「恭弥兄ちゃん、姉ちゃんをよろしくお願いします!」

俺と雷花の身内の悟空とトール、そして雷輝君が俺達を祝福してくれた。

「恭弥、雷花さん。おめでとう」

「二人共、末永く幸せにね!」

親友の天音と千歳も祝福し、他のみんなは周りで拍手をしたりしてくれた。

「いやー、またまたラブラブカップルの誕生かしら?」

「これなら、今の世代の血を引いた、次の世代も安泰だな」

ちなみに年長者達であるアリス先生と蓮姫さんはそんな事を言っていた。

その後、俺達は目一杯南の島でのリゾートを楽しみ、ジェット機で無事に日本へと戻った。

そして、俺は恋人として今まで以上に雷花と一緒にいる時間を作っていき、共に愛を育んでいった。




.

新たなカップリング、恭弥×雷花が決定しました!


今回はかなり雷花ちゃんを可愛くしてみましたが、どうでしたか?


最後にひ孫のところで子作りと暴走していましたが(笑)


次回は天音と千歳の誕生日会を行い、それで夏休み編を終了したいと思います。


取りあえず夏休みと言えば、まずは海。


そして、お祭りと花火なので、天音と千歳の誕生日にそれを組み込みたいと思います。

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