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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第1章 召喚と契約編
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第7話 千歳の存在

今回も最強ヒロインの千歳ちゃんが爆進します(笑)


天音君も負けじと頑張りますが。

 白蓮の世話で全く睡眠をとれなく、俺達は寝不足のまま食堂に向かって朝食を食べに行く。

「へぇー、コイツが卵から生まれたのか~」

 恭弥は白蓮を見て関心すると、相棒の孫悟空は目を細めてジッと見る。

『ふむ……この雛、どこかで見たことあるぞ……』

「え? 本当に? どこで見たんだ?」

『うーん……覚えてねえな。何せ俺はかなりの長寿だからな……』

「そうか……」

 さすがの悟空は千年以上も生きていれば、昔の記憶も曖昧になるのは不思議ではなかった。

「まあ、この白蓮の正体がなんなのかはまた後で調べるとして……天音、これはどういう事だ?」

 恭弥は白蓮を指差して聞いた。

 バクバクバクバク!

『ピピピピーッ!』

 白蓮は俺が頼んだ朝食セットの米や焼き魚を交互に食べまくっている。俺自身は別に文句はないけど、やっぱりちょっと食べ過ぎな気がするし、この子は何でも食べるから意外に雑食性なのかもしれない。

『ピョー!』

 腹が満腹になって満足したのか、パタパタと飛んで俺の頭に乗って横になって寝た。

「何というか、自由奔放だな。その雛は」

「良いんだよ。まだこいつは生まれたばっかりだからな」

 頭の上に載っている白蓮の頭を人差し指で軽く撫でる。

「天音、親バカになっとるぞ」

 恭弥に指摘されるけど、そうなのかな? 産まれたばかりの雛だから甘やかしたい気持ちは自覚しているけど。

「良いじゃない。天音が親バカでも。だって、白蓮ちゃんは可愛いしね」

 そう言う千歳は既に食事をし終えた銀羅の頭を膝に乗せて撫でていて、恭弥はジト目で睨む。

「お前も同類かよ」

「同類? 天音と一緒なら、誉め言葉として受け取るよ」

「……そうかい」

 度重なるツッコミ疲れで恭弥はため息をついて朝食を取る。それから教室に入ると、クラスメイト達(主に女子達だ)は俺の机の上にちょこんと可愛らしく乗った白蓮を愛でている。

『ピィー?』

「うわぁ! 可愛い~!」

「これが蓮宮君の聖獣? すっごく愛らしいね!」

「生まれたばかりなのに、もうこんなに成長しているなんて凄いね」

「蓮宮君はもうこの子との契約は済ませたの? どんな形のAGだったの?」

 白蓮は女子達にされるがままに指で体を撫でられ、次々と俺に質問してくる。女子達よ、白蓮は見せ物でもオモチャでもないからあまり触らないでください。

「俺はまだ白蓮と契約してないし、今すぐに契約するつもりはないよ。」

 だって……この子はまだ雛で、人間界と聖獣界の二つの世界や、聖獣契約の事を何も知らないからそんな勝手なことは出来ない。だから、せめて白蓮が成長して知性に目覚め、ちゃんと俺と話せるようになるまで契約は待っているよことにした。

「やっぱり、天音らしいね。そう言うと思って、はいこれ」

 得意げな顔をした千歳が俺の目の前に何かが書かれた紙を出してきた。

「これは?」

学園長(おじいちゃん)直筆の許可書」

「許可、書? 何のだ?」

「天音と白蓮ちゃんの契約を一定の期間まで先延ばしに出来る許可書。生まれたばかりの白蓮ちゃんと 契約は流石に難しいから、おじいちゃんに頼んで特例で認めてもらったのよ」

 許可書をよく見ると、確かに学園長の直筆で俺と白蓮の契約を先延ばしにすることを許可した内容が書かれていた。まさか、昨日の先生に言ったこととかも踏まえて千歳はこうなることを予想して祖父である学園長に頼んだのか?

「いつ書いてもらった?」

「昨日の契約の儀式の後にちょっとね。私は天音の為なら私はどんな事でもするからね」

 千歳は得意げな顔にウインクをして俺の長髪を指で軽く絡めて遊ぶ。

 生まれてからの幼なじみの千歳は俺の事を全て理解しているようで、こうやって予め先手を打っていつも俺を驚かせている。だけど、今回ばかりはとても有り難い。千歳には少し照れくさいが、感謝しなければならない。

「千歳、その……ありがとう……」

「どう致しまして。ねえ、天音……」

 千歳は目を少し細めると、俺の髪から手を離して首に抱きつい――って、ちょっとぉ!?

「ち、千歳!?」

「天音、ご褒美に今度の日曜日に街へ出掛けてデートしたいな……」

 耳元で優しく甘い吐息で囁くように話しかける。千歳さん、止めてください。クラスメイトの視線が全てここに集中していますから。

「デ、デートですか!?」

「そう。銀羅と白蓮ちゃんも一緒にね。家族一緒のお出かけでもあるの」

 そうか、白蓮と銀羅も一緒か。それなら何とか大丈夫……かな?

「色々とツッコミをしたいところはあるけど、二人も一緒ならいいかな?」

「じゃあ、今度の日曜日に時間を開けといてね。待ち合わせの時間と場所は、朝10時に校門前でね」

「同じ部屋に一緒に住んでいるのに、待ち合わせをする必要はあるのか?」

「デートには待ち合わせは重要な必須条件なのよ」

「そういうものなのか?」

「そういうものなのよ」

 即答で返事する千歳にとりあえず首から体から離す。

「わかったから取りあえずもうくっ付かないで。すごく恥ずかしいから」

「もう。ノリが悪いな」

 頬を膨らませて不満そうにするが、お前のそのノリが可笑しいだけだ。少なくとも俺自身が普通だと信じたい。

 でも、何にしても、千歳にはいつもお世話になっているからそのお礼をしなければ。

「まあ、デートの時に色々サービスしてやるからさ」

「本当? じゃあ、楽しみにしているよ♪」

「ああ」

 約束の証に指切りをして今度の休日にデートをすることになったが、この直後にクラスメイト達が騒ぎ出して俺と千歳の関係を質問してきてまだ授業も受けていないのにひどく疲れてしまった。やっぱり、千歳といると必然的に何かに巻き込まれて凄く疲れることを改めて実感した……。

 まあ、それでも千歳とは一緒にいると楽しいし、退屈もしないからいいけど……。

 俺にとっては千歳の存在が日常の一部で、大切なものだから。

 これに関しても千歳本人には絶対言わない。言ったらまた調子に乗って俺に何を仕出かすかわからないから……。


   ☆


 入学初日と波乱の聖獣の召喚と契約から早くも一カ月が過ぎた。白蓮は大きくなってきたが、まだまだ雛で体長が15cmぐらいだ。しかし、大食いは変わらずにいつも大量に食事をしている。どこにそんな量が入るかわからないぐらいの、食事をしていていつも周囲を驚かせているほどだ。

 ちなみに、俺はまだ白蓮とは人獣契約をしていない。少しずつ白蓮は人間の言葉を理解しているがまだ契約の事はまだちんぷんかんぷんだ。未だに契約できてなくて聖獣と共に受ける授業にも遅れが出ている。授業の内容は主にAGの能力値を上げて、契約者と聖獣の同調率を100%に近づける為の訓練をしている。

 一応千歳と学園長のお蔭でしばらくは免除されているがいつまでもこのままではいけないと思っていた時だった。

「天音―、どうしたのー?」

 暇な放課後に自室で俺手製のクッキーを食べながらその事を考えていると、一緒に食べていた千歳に話しかけられる。

「ん? ちょっとね」

『ピー!』

 バリバリバリ!

 目の前にいる白蓮は器用に嘴で粉々にクッキーを砕いて小さな欠片にしてから食べている。

「美味いか?」

『ピピー!』

 白蓮は「美味しいよ」と鳴いて隣では銀羅は初めて見るクッキーを珍しそうに見ながら食べる。

『ふむ。これは美味いな』

「銀羅、気に入ってくれた?」

『この“くっきー”と言う菓子はとても美味だ。旦那、将来良い婿になるぞ』

「ははっ、ありが――」

「違うでしょ、銀羅。そこは“千歳の良い婿になるぞ”よ!」

 感謝の言葉を千歳が遮ると同時に、銀羅の今の言葉にまさかの訂正を指示してきた。しかもとんでもない内容の訂正版で。

『あ、そうか。では訂正する。天音、将来千歳の良い婿になるぞ』

 そして、それを真に受けて銀羅が訂正版を言い直した。

「おい! 銀羅に変なことを言わせるな!」

「良いじゃない。事実だから♪」

「事実じゃないだろ。俺の人生を勝手に決めるな!」

 怒ろうとする俺だけど、千歳は突然目をぱちくりさせて見つめてくる。

「……ねえ、天音」

「何だ!?」

「顔、赤いよ……?」

「え……? はっ!?」

 手で顔を触ってみると凄い熱がこもっている。気付かないうちに一瞬で顔に血が昇って肌の色が真っ赤になってしまったらしい。

 真っ赤になった俺の顔を見て千歳が笑みを浮かべる。

「クスクス。ねえ、天音。どうして顔が赤くなったの?」

「そ、それは……その……」

「もしかして、私のお婿さんになること……満更でもない?」

「ま、まさか……そんな――」

 ガチャ!

 そこにまたもや俺の言葉を見事に遮るかのように部屋の扉が開いた。

「そこのバカップル! 呑気にイチャイチャしている場合じゃないぞ!」

「恭弥!?」

 突然話に割り込んできた恭弥に驚き、千歳の目がギラリと輝く。

「銀羅!!」

『承知!』

 千歳は懐からダイナマイトを幾つも取り出すと同時に銀羅が導火線に狐火で火を点火した。そして、恭弥に一斉に投げ飛ばして叫んだ。

「Blast!!!」

 ドゴーン!!!

「ゴパアッ!?」

 着火したダイナマイトは大爆発を起こして恭弥は爆炎に呑み込まれた。爆発と煙が止むと、恭弥が見事なまっ黒焦げになってしまった。うわぁ……これは酷い。

「空気読め、このバカ恭弥ァッ! 今すぐに滅べ!! そして、今の大切な時間を返せ!!!」

 涙目で叫んだ千歳はホルスターからレイジングを取り出して銃身を黒焦げの恭弥の額に強く押し付けて今すぐにでも弾を発砲しそうな勢いだ。

『じょ、嬢ちゃん! それだけは止めてくれ! こいつに死なれたら俺が困るんだよ!』

 廊下で待っていた悟空が慌てて千歳と恭弥の間に割り込んで止めに入るが、千歳の怒りは収まっていなかった。

「ノックもしないで突然部屋に入ってきたこのバカが悪いのよ! 今すぐこいつの脳天をぶち抜いてあの世・地獄・常世・黄泉の国・根の国・冥界に送らなきゃ私の気が収まらないわ!!!」

 要するに恭弥に死んでくださいと言いたいのですね千歳さんは。これは止めなきゃ本当に恭弥の命が危ない。

「お、落ち着けって、千歳!」

「うるさい! 天音は黙ってて!」

「はぁ……仕方ないな……」

 機嫌を損ねて暴走している千歳は恭弥を殺すまで止まらないだろう。数少ない俺の友人が死ぬのはとても心苦しいから千歳を止めることにした。

 スッと千歳の背後に立ってから、両腕で千歳を強く後ろから抱きしめた。

「ひゃあ!? あ、天音ぇ!?」

 予想通り、千歳は突然の抱擁に顔を赤くしている。

「な、な、何しているのよ!?」

 うむ。このあたふたと慌てふためいている千歳のこの顔がなかなか可愛いんだよな。何時も誰の前でも強気な態度でなかなか見せてくれないけど。

「お前を止めるためだよ。恭弥はやかましいけど、さすがに死んだら悲しいからな。ほら、もう少しこうしてあげるから機嫌直せよ」

 提案を上げると、千歳は黙ってレイジングをホルスターに仕舞い、小さな手で逃がさないように俺の両腕を軽く握った。

「…………強く」

「ん?」

「もっと、ギュッて、強く抱きしめて……」

「ははっ、りょーかい」

 顔を俯きながら言う千歳の顔は見れないけど、この反応も可愛いから良しとする。

 しかし、この場で問題点が一つあった。それは白蓮、銀羅、悟空の三体が一緒にこの光景を見ていることだ。しかもかなり興味津々で。

『ピィー♪』

『旦那がデレた。これはそこの黒焦げの人間に称賛を送らなければならないな』

『なるほど。これが恭弥から聞いた“ばかっぷる”というものか』

 間近でこの抱擁姿を見ているそこの三体の聖獣には今すぐこの部屋からご退場を願いたかった。



.

結果、天音君と千歳ちゃんのイチャイチャになってしまいました(笑)


天音君も千歳ちゃんの事が大好きなのです!

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