第58話 蘇る家族の絆
風音ちゃんとの戦いもついにクライマックスです!
十三代目を引き継いだ天音のチート無双が始まりますがwww
天音の腕が失われ、俺はこれ以上風音ちゃんの罪を重ねないように花音と忍者カップルと共に止めようと奮闘したが、風音ちゃんの強さは変わらず勝てるかどうかも分からなかった。
「ちくしょう……強いな、流石は俺達の可愛い妹だぜ!」
「感心している場合じゃないでしょう。璃音、あなた相変わらず本気を出せないでいるわね?」
「それは花音も同じだろう……」
俺と花音は風音ちゃんに対して本気で戦っていない。否……戦うことが出来ないのだ。
風音ちゃんは俺と花音にとって、天音と同じくらいに大切な妹だ。
そんな大切な妹を止めるためとはいえ、傷つけるなんて俺達には出来るわけがなかった。
それが俺と風音の最大の弱点だ。
自分の家族や仲間に対して本気で戦うことが出来ない……それが例え操られたり、暴走していたりしても。
「璃音殿!危ないでござる!!」
刹那の声が響き、気付いたときには風音ちゃんがすぐ近くまで来ていた。
「さようなら、璃音お兄ちゃん……」
「くっ!?蓮宮流――」
風音ちゃんの攻撃を防ごうとしたその時、
「“霊煌陸式・結界”」
俺の目の前に一つの影が現れると同時に綺麗な蓮の花を模した結界が現れ、風音ちゃんの攻撃を弾き返した。俺を守ったその後ろ姿に見覚えがあった。
「天音……?」
「璃音兄さん。後は俺に任せてくれ」
いつの間にか両腕が元に戻っていた天音が俺を助けてくれた。しかし、今の天音は前の天音と違っていた。
雰囲気だけじゃない、見に秘めた霊力が今までと比べ物にならないほどに膨大なものとなっていた。
「まさか、天音……霊煌紋を……?」
「ああ。この通り、ちゃんと受け継いだよ」
天音は鳳凰之羽衣の裾をめくると、肌に蓮の紋様が刺青のように刻まれていた。
まさしくあれは十二代目当主の親父が生前に体に刻んでいた霊煌紋そのものだった。
霊煌紋をその身に刻み込んだ人間は蓮宮の当主となったという意味だ。
「花音姉さん、璃音兄さんを連れて下がって」
「え、ええ!」
「刹那、麗奈。二人も下がっていて」
「承知したでござる!」
「御武運を!」
俺達は天音の言うとおりに下がり、再び風音ちゃんと対峙した。
「お兄ちゃん……」
「残念だったな、風音。お前を止めるまで、そう簡単には死なないぜ!!」
天音は双翼鳳凰剣を構え直し、威風堂々の態度で風音に向かって宣言するように言い放った。
「蓮宮十三代目当主……蓮宮天音!いざ、参る!!」
本来ならば十二代目当主の親父の息子である俺が継ぐはずだった十三代目当主……それを俺の大切な弟である天音が見事に引き継ぎ、今こうして目の前で逞しく成長した姿を見られ、嬉しさで涙が溢れ出した。
「ちょっと、璃音……泣いているの?」
「あの小さかった天音が、俺の代わりに十三代目を……強く、逞しく成長したな……」
俺は涙を拭い、天音の十三代目としての初めての戦いを一瞬たりとも見逃さないよう目を見開き、風音ちゃんを取り戻すためのこの戦いを見届ける。
☆
「お兄ちゃん……今度こそ殺すよ……」
風音は殺気を放ち、神龍双覇を構え直して走り出した。
霊煌紋を輝かせ、体中に霊力を駆け巡らせる。
「“霊煌弐式・強化”!」
一瞬で身体能力を数倍にに強化し、高速移動で風音の背後につく。
俺の体に刻まれた霊煌紋には歴代当主が一つずつ生み出した計十二の霊操術が込められている。
璃音兄さんを守った結界は強固な盾を生み、強化は自分や自分以外の何かを文字通り強化させる力を持っており、結界は六代目当主、強化は二代目当主が作り出した霊操術だ。
「速いっ!?」
俺の強化された身体能力に驚く風音は振り向いたが、それよりも早く鳳凰剣零式に霊力を纏わせて霊煌紋を解放させて振り下ろす。
「“霊煌肆式・斬撃”!!!」
振り下ろした霊力を秘めた斬撃が何倍にも巨大化して風音に襲いかかる。斬撃は四代目当主が生み出した霊操術で、霊力を纏って放つ斬撃を巨大化する力を持っている。
「鈴音!!」
『我が力を……風音に!!』
神龍双覇から鈴音の力が解放され、アーティファクト・フォースの力が増幅されると同時に神龍双覇の刃を交差させながら上下に振り下ろす。
「蓮宮流、応竜神空斬!!」
二つの斬撃が一つに合わさり、俺が放った斬撃と同等の斬撃を生み出して相殺させた。
霊煌紋で強化された斬撃を相殺させた風音には流石としか言いようがなかった。
だが、まだまだこんなものじゃない!
「はぁあああああああああああああっ!!」
全身の身体能力を更に強化して重量のある双翼鳳凰剣を全力で振るう。
「せやぁああああああああああああっ!!」
対する風音も全身の力を使って神龍双覇を振るって双翼鳳凰剣と打ち合う。
ぶつかり合う四つの神剣……一撃一撃が交わる度に衝撃波が起き、空気を震わせて大地に響き渡る。
そして、衝突する激しい剣撃が斬撃の嵐を巻き起こす。
俺は強化された肉体を駆使して蓮宮流の技を連続して使う。
「蓮宮流……水蓮天昇!天凛蓮華!!」
右手の鳳凰剣零式で体を回転させてから上へ切り上げ、左手の鳳凰剣百式で乱撃を放つ。
本来ならばこの二つの技は一刀流で使用するための技だが、俺は風音のように最初から蓮宮流剣術弐式を使える訳じゃない……だからこそ、蓮宮流の技を自分の技として昇華させた。
「くっ、まだまだぁっ!!」
風音は俺の攻撃を防いでいるが、若干押されていることに気が付き、焦り始めている。
まだ攻め続ける……流れは確実にこちらに傾いている!!
「煌めく鳳凰の魂……数多の輝きと共に、今ここに具現させる!!」
アーティファクト・フォースの力を鳳凰剣零式に流し込んで炎の球体を生み出す。それを何十個も生み出して俺の周囲に展開させる。
そして、双翼鳳凰剣でその球体を全て切り裂いて鳳凰の姿を模した真紅の鳥を球体を生み出した分だけ呼び出す。
「蓮宮流……焔翔鳳凰乱舞!!!」
数十体の真紅の鳥が飛翔し、一斉に風音に襲いかかる。
風音は大きく息を吸い、吐きながら体を回転させる。
「水蓮……天昇閃!!!」
神龍双覇で螺旋状に描いた斬撃は数十体の真紅の鳥を消し去った。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
水蓮天昇閃を放った風音は大きく呼吸を乱し始めた。
それもそうだろう。魔法陣無しの初めての契約執行に、アーティファクト・フォース、そして長期に渡る戦闘……わずか十歳の少女の体力が持つはずがない。
「風音、そろそろ終わりにしよう……」
「お兄、ちゃん……」
風音は目を閉じて最後の一撃を放つ準備を整える。
使うとしたら、あの龍を生み出す風音と応竜の奥義だろう。
「白蓮、もう一度鳳凰光翼剣で行くぞ」
『えっ?でもあの剣は……』
白蓮の言いたいことは良く分かる。ついさっき敗れた剣で再び挑んでも負けることは必死。
だけど……。
「あの剣は俺とお前……そして蓮煌と氷蓮で繰り出す最強の剣だ。一度敗れたぐらいじゃ折れたりはしない。だから、俺を信じてくれ、白蓮」
『ちちうえ……うん!ぼくはいつでもちちうえをしんじるよ!』
「ありがとう、白蓮」
俺の子は本当に良い子に育っている。
だからこそ、その思いに必ず応える!!
「蓮宮流剣術……」
再び双翼鳳凰剣を重ねてアーティファクト・フォースを纏わせる。
今まで特に考えたこともなかったが、やはりこの剣こそが……。
「奥義!!!」
俺と白蓮の……『蓮宮流剣術奥義』だ!!!
「鳳凰、光翼剣!!!」
光り輝く鳳凰の翼が幾重にも重なり、巨大な光の剣となる。
「その剣は既に見切っているよ……蓮宮流剣術弐式奥義!!」
やはり風音は鳳凰光翼剣を破ったあの奥義で決めるつもりだった。
「双蓮神龍破!!!」
再び巨大な竜巻のような龍を現して俺の前に襲いかかってくる。
そしてさっきみたいに牙を向けて鳳凰光翼剣を食べようとしたが、そうはいかない!!
「はぁっ……うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
両腕に力を込め、一つに重ねた双翼鳳凰剣を光の翼を纏った状態で一気に引き離した。
「重ねた剣を分離させた!?」
光の翼が壊され、光の羽と粒子が周囲に散る中、俺は引き離した鳳凰剣でアーティファクト・フォースを纏って技を再構築させる。
これは……ただの奥義じゃない。
「蓮宮流奥義……改!!」
「奥義改!?」
鳳凰光翼剣は双翼鳳凰剣を重ね、白蓮の聖なる光を秘めた鳳凰の翼を具現化させて作り出す奥義に対し……この奥義は壊した光の翼を右手の鳳凰剣零式と左手の鳳凰剣百式で再び光の翼を再構築させる。
左右に引き離した双翼鳳凰剣は対をなす二つの巨大な光の片翼の剣を作り出した。
俺はこの鳳凰剣をこう名付けた!
「双翼刃・天翔鳳凰剣!!!」
その剣を持つ俺の姿はさながら鳳凰の翼を持った神子……と言えばいいだろう。
俺は天翔鳳凰剣を構えて風の龍に立ち向かう。
「破っ!!!」
襲いかかってくる風の龍を天翔鳳凰剣で切り裂く。
今まで上から振り下ろすことしか出来なかった鳳凰光翼剣の一撃を喰われる前にあらかじめ分離させ、多方向からの連続攻撃を可能にした。
風の龍を切り裂く度に光の衝撃波が発生し、衝撃波によって周囲は清浄な空気となる。
そして、風の龍を形を保てないほどにまで斬撃を与え、霧散した。
「私の……双蓮神龍破が……」
奥義を破られ、呆然とする風音……今、全てを終わらせてやるからな。
「再び一つに重なれ、光り輝く鳳凰の剣!!!」
天翔鳳凰剣を再び一つに重ね、鳳凰光翼剣を作り出す。
そして、体に刻まれた霊煌紋を輝かせる。
「“霊煌壱式・破魔”!!!」
蓮宮初代当主の蓮姫様が作り出した霊操術の力を鳳凰光翼剣に込め、一気に振り下ろす。
「う、動けない……」
既に力を使い果たした風音は避けることも防ぐことも出来ずにその場に座り込んだ。
そして、風音は神龍双覇の中にいる鈴音と共に人を傷つけずに魔だけを祓う『破魔』の力を宿した鳳凰光翼剣の光の斬撃をその身に受けた……。
☆
戦いが終わった後、風音と神龍双覇の中にいる鈴音を引き離して休ませ、俺は膝枕をして風音をゆっくり眠らせた。
千歳が羨ましそうに見つめていたが、そこはスルーした。
「うっ、うぅん……?」
「風音」
「あれ?お兄、ちゃん……?」
「気分はどうだ?」
「えっと……私、今まで……はっ!?」
風音は突然起き上がり、俺から離れた。
「風音?どうしたんだ?」
「私……私、お兄ちゃんにヒドいことを……お兄ちゃんの腕を……」
さっきの戦いのことを覚えているようで、本来の性格に戻った風音は罪悪感で体を震わせていた。
「あれは疑似契約のアーティファクト・ギアを使って暴走していたんだ。風音の責任じゃないよ」
俺は風音の事を一切恨んでいない。
風音の本心で腕を壊したわけじゃないんだし、何だかんだで腕も元に戻ったからな。
「でも、でも……っぅ!!」
自分を許せない風音は何かを決意すると突然走り出し、そして地面に突き刺さっていた双蓮を引き抜いて自分の首に押し当てた。
「な、何をしているんだ、風音!?止めるんだ!!」
「来ないで!!」
刃をグッと首に押し当て、俺達は下手に動けなくなる。
「私は……私は……大好きなみんなを苦しめた。だから、その償いをするの……」
「馬鹿!!命で償ってどうするんだ!!」
「ありがとう、お兄ちゃん……ううん……“天音さん”」
「風音ぇっ!!」
風音は俺を『天音さん』と呼び、笑いながら手に力を込めた。
ピシィン!!!
その時、何かがひび割れるような音が鳴ると不思議な光景があった。
「えっ……?」
今まさに自ら命を絶とうとした風音は自分の起きていることに驚いて唖然としていた。
何故なら、双蓮の刀身を包み込むように滑らかな丸みを帯びた氷に覆われ、風音の肌に傷を付けられなくなったからだ。
こんなにも美しい氷を操れる人物は一人しかいない……。
「はっ、くっ……風、音……」
「母、さん……?」
そこには雪の模様をした着物を身に纏い、黒髪から光に反射して輝く雪のような銀髪になった六花母さんだった。
双蓮の刀身を綺麗に凍らせたのは母さんと雪女の美雪とのアーティファクト・ギア……『夢幻雪衣』の力だった。
璃音兄さんと違って攻撃的ではないが、美しい雪と氷を自在に操る能力を持っている。
母さんは美雪との契約を解除して元の姿になると疲れた表情を浮かべた。。
『六花、大丈夫?』
「久しぶりの契約だからちょっと疲れただけよ……」
母さんはアーティファクト・ギアを全く使用しない性格だからたまに使うとこうしてかなりの体力を消費してしまう。
そして、呆然としている風音の元に行くと凍り付いている双蓮を引き離し、俺に向かって投げ飛ばした。
「風音……危ないことをしたらダメよ?」
母さんは弱めのデコピンをして風音を叱る。
「どうして……」
「ん?」
「どうして、私なんかの為に……私は、あなたの娘じゃ……」
「あなたは私の娘よ、風音」
母さんは風音を抱き寄せた。頭を撫で、もう離さないと言わんばかりに強く抱き締めた。
すると、頭の中に蓮姫様の声が響いた。
『天音よ……』
「蓮姫様……?」
『“拾壱式”を使え』
「拾壱式……?は、はい!」
蓮姫様の言っている意味がすぐに理解が出来、俺は霊煌紋を発動させる。
「“霊煌拾壱式・記憶”」
手から小さな霊力の球体を生み出して飛ばした。
その球体が母さんの中に入ると、母さんから何かが飛び出し、不思議な現象が起きた。
『残念ですが、蓮宮さん。お腹の子は……』
『そん、な……』
まるで映写機で映画を映すように空中に映像が浮かんだ。
その映像は母さんが流産し、医者からその知らせを聞いたときの映像だった。
「私の記憶……?」
そう……十一代目が生み出した霊操術の記憶は人間や物の秘めた記憶を映像として蘇らせる力を持っている。
そして、母さんから蘇らせたのは風音との記憶。
『この子が……?』
『ああ。君の遠縁の子だが、この子の両親は事故にあってしまい、一人ぼっちなんだ……』
次に親父が初めて母さんに風音を合わせた時の記憶だ。
『……見て、時音さん。この子、笑っているわ』
『何?本当かい?今までずっと笑ったことがないと聞いたが……』
『時音さん……私、この子を育てます』
『六花……』
『産まれなかったあの子の分までこの子が長く生きられ、幸せになれるように、私の全てをかけます……』
『そうか……それならこの子に名前を付けないとな』
『それならもう考えています』
『早いね』
『風のように、優しく誰かを包み込む存在でいられるように……“風音”と名付けます』
母さんの決意……それは、産まれて来なかった子の分まで風音を幸せにする事だった。
そして、親父が風音に向かって俺達の気持ちを代わりに伝える。
「風音……確かに君は私達の本当の子供ではない。だが、君はみんなに愛されて今まで生きてきたんだ。それは偽物なんかじゃない……真実だ」
親父のその言葉に風音は母さんの着物をギュッと握りしめ、震える声で恐る恐る聞いた。
「私は……ここにいて良いの……?みんなの家族でいて良いの……?」
「当たり前じゃないの!あなたは私の娘……あなたがお嫁に行くまで手放さないわ」
母さんのその言葉に風音の心が突き動かされた。目尻から大量の涙が零れ、涙声で風音は母さんに抱き付いた。
「ご、めんなさい……お母、さん……ごめんなさい……」
「良いのよ、風音……」
母さんは泣きじゃくる風音を抱きしめて頭を撫でてあやした。
その光景に思わず俺達も涙目になってしまう。
そして、少し離れて見ていたアリス先生はこう呟いた。
「母は偉大、かしら……?」
アリス先生は空を見上げて何かを思い老けていた。
☆
アリス先生が運んだ異世界から蓮宮神社に戻ると、風音は土下座をして俺に謝ってきた。
「風音、もう良いって。気にしていないからさ」
「でもでも!私、お兄ちゃんの腕を……」
「腕は治ったからもう良いんだよ。それにこうして風音は俺達のところに戻ってきたんだからな」
「だっ、だったら、責任を取る!」
「責任って何――んむっ!?」
風音は土下座から勢い良く立ち上がると俺の首に両腕を巻くと、そのまま俺の唇にキスをした。
「なあっ!?」
「「あっ……」」
「なっ……」
「あらあら……」
千歳達が驚き、風音は俺の唇から自分の唇を離すと、とんでも無いことを言うのだった。
「お、お兄ちゃんを義妹の私のお婿にします!!!」
義妹としてのキスからのプロポーズだった。
「お、お、お前……」
「うわぁああああああああああああっ!!」
「ち、千歳!?んうっ!?」
千歳が突然騒ぎだして俺に近づくと、強引にキスをしてきた。
「ああっ!!ち、千歳さん!?」
「んくっ……んっ……ぷはっ!!風音ちゃん!天音は私の旦那様だからね!!」
風音に対する嫉妬心から俺に熱いキスをする千歳……愛する妹と恋人のキスに俺の頭は既にオーバーヒートをして真っ白になっていた。
「ち、違います!お兄ちゃんは私のお婿さんです!」
「私が天音の恋人よ!いくら義妹とはいえ、それはダメよ!!」
「だったら奪うまでです!義妹でもお兄ちゃんと血は全く繋がっていないから結婚出来ます!」
「私は天音と結婚するために今まで生きてきたの!!」
「私だってお兄ちゃんと結婚するために生きてきたんです!!」
火花どころか嵐や雷が起こりそうなぐらいに千歳と風音の間で酷く荒れていた。
『ピ、ピィー……』
『蓮宮風音……侮れないな』
「親方様、大変でござるな……」
「これが世間で言う一級フラグ建設士なのですね……」
「ぶははははは!!全く、天音は可愛い顔してかなりのフラグ野郎だな!!ぐはははははっ!!!」
「璃音……それ、笑えないからね……」
「時音さん、私はどうしたら……」
「ニャー……どうしたもんかニャー……」
『今は良いんじゃない?風音が元気になったんだから』
『そうだニャー。今はこの状況を楽しむニャー!』
みんなはこの状況を楽しんだり哀れんだりしている……もう誰でも良いから助けてくれ……。
☆
「あらあら、面白いことになったかしらね」
天音と千歳と風音の三角関係に面白がっていると、隣にいる巨大な影が同意するように言う。
『流石は我の風音だ!』
「……応竜、あなた、性格が変わっていない?」
風音とアーティファクト・ギアの契約が解除された後、応竜は五百年前の記憶を取り戻した。
でも、五百年前の時と性格がかなり変わっていていた。
『そうかもしれないな。この身と心を支配していた邪気は五百年の封印で消え去ったからな。これからは風音の為に生きていくつもりだ』
「あらそうなの?でも、これ以上迷惑はかけないでね。あなたと相手をするのは大変なんだから」
『分かっておる……』
「それで、あなたはどうするの……蓮姫」
私の背後に天音の体から出た蓮姫の魂が現れる。
『そうじゃな……このまま向こうに行っても良いが、それはつまらん。しばらくは今の世を楽しむとするか』
「本当に?良かった……」
『アリス……寂しい思いをさせたな。すまない』
「良いのよ。あなたがこうして側にいてくれるだけで……」
私がそう言うと、蓮姫は優しく抱き締めてくれた。
『お前の気が済むまで側にいてやろう。時間はたくさんあるからな』
「ありがとう、蓮姫……」
久しぶりに感じる蓮姫の優しさに私は思わず涙を流して自分の体を預けた。
『さて、我は風音の元に行くか……』
鈴音は目を閉じて体を一瞬輝かせると、白蓮の雛のように小さくなり、小さな白い蛇に羽がついたような体となる。
どうやら五百年の封印の間に勝手に身についた能力らしい。
『リンリーン!』
そして名付けられたその名に相応しい鈴の音のような声を出しながら風音の元へ飛んでいった。
「あっ、鈴音!」
応竜――鈴音は子供のように風音に抱きついてから風音の首に巻いた。
良かったわね、鈴音。良い契約者に出会えて。
でも、それにしても……。
「全く、本当に飽きないわね……この時代は」
私は次々と起きる面白かったり大変なイベントに退屈しない日々を過ごして充実していた。
それも全部、蓮姫の子孫……天音のお陰と言うのが面白い。
次にどんなことが起きるのか楽しみになる私だった。
.
幼馴染と義妹の三角関係キター!!!
やってしまいました、この小説初の三角関係www
これから天音がどうなるか見ものものですね。
次回は常夏の島で遊びます。




