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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第5章 ドタバタ夏休み編
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第57話 蓮宮十三代目当主

風音ちゃん無双で天音が最大のピンチを迎えますが、すぐに絶望から希望の展開を迎えます。

「風音ちゃんを止めるぞ、花音!来い、轟牙!」

「言われなくても!おいで、流星!」

璃音義兄様と花音義姉様は暴走をする風音ちゃんを止めるために自身の契約聖獣である霊亀の轟牙と麒麟の流星を召喚します。

「「契約執行!!」」

契約媒体の蓮牙と蓮月掲げて、アーティファクト・ギアの霊皇氷帝剣と蒼穹麒麟弓を生み出した。

「さーて、蓮宮最強の風音ちゃんを止めますかな!」

「分かっていると思うけど、油断しないでね!」

二人は長年共に戦い続けた事で生まれた姉弟の息のあったコンビネーションで風音ちゃんに戦いを挑んだ。

「麗奈!拙者たちも!」

「はい!」

「「忍獣召喚!」」

せっちゃんとれいちゃんは忍獣石を取りだして忍獣である銀狼の月姫と大蝦蟇の幸助を召喚する。

「月姫!契約執行でござる!」

『任せなさい!』

せっちゃんは契約媒体の忍者刀を手の中で回しながら月姫と契約執行をし、三日月の形をした特殊剣のアーティファクト・ギア、銀狼月牙を生み出す。

「銀羅!私達も!!」

『分かった!』

既に顕現陣から呼び出したレイジングを掲げて銀羅と契約執行をする。

「契約執行!アーティファクト・ギア、清嵐九尾!!」

清嵐九尾を右手に、そして愛用のダイナマイトを左手に構えて風音ちゃんを止めにいく。



「アーティファクト・ギアか……アリスよ、人と聖獣の絆は昔より深まったようだな」

私は五百年前には無かった人と聖獣の絆の象徴であるアーティファクト・ギアを見て感心していた。

「そうね。特にあの子達は自分の聖獣を愛しているからね。そこにいる小さな小鳥ちゃんもね」

アリスが私の前を指さすと、この体を借りている我が子孫・天音の契約聖獣である鳳凰の雛である白蓮が小さな翼を羽ばたかせていた。

「天音を返して欲しいか?」

『ピィーッ!!』

「そうか……よし、直ぐに返してやろう」

『ピピィッ!?』

「ああ、本当だ。少し待っていろ……」

私は瞼を閉じてこの体を借りる際に眠らせた天音の魂に呼びかけた。

(目覚めよ……天音)

(蓮姫様……?)

(天音よ、今何が起きているのかもう分かっているな?)

(はい、風音を……妹を助けます)

(体を借りてすまなかった。この借りは必ず返すぞ……)

(蓮姫様!)

私は眠りにつくように意識を鎮め、交代するように天音の魂を呼び起こして体を返した。



「うっ、うぅん……あれ?」

『ピィッ?ピィーッ!』

「白蓮?」

目覚めた俺を見るなり白蓮は涙を流しながら顔に抱きついている。

俺は手で白蓮の小さな体を撫でる。

「白蓮……心配かけたな。俺たちも行くぞ!」

俺の声に白蓮は体を発行させて鳳凰の姿へ成長する。

『うん!ちちうえ!』

「みんな!今、行く――」

風音を止めるために戦っているみんなに呼び掛けようとしたその時、信じられない光景が広がっていた。

千歳達五人掛かりで戦っているのは風音で間違いなかったが、その風音の姿が見当たらなかった。正確には、風音の代わりに別の女性が戦っていた。

花のように凛とした可愛らしい容貌にスタイルの良い体、そして一番目を引く腰まで長い黒髪ロング。

そして、身に纏う装束は巫女装束に龍鱗を一つにした不思議だが煌びやかで美しい装束だった。

それはさっき目覚める前の俺の意識の中で見えた一人の女性の姿と似ていた。

「蓮姫様……?」

それは俺の中で見た蓮姫様とよく似ていた。

そこにアリス先生が近付いて俺の思っていることを見透かしているように話しかけてきた。

「天音もそう思う?あれは確かに蓮姫にそっくりね」

「あれは誰なんですか?」

「あれはアーティファクト・ギア、神龍双覇で一時的に成長した風音。でもまさか、蓮姫とそっくりなのは予想外よ」

「あれが風音!?」

確かによく見ればいま戦っている女性の顔に風音の面影を感じた。

だけど、あの風音の姿は俺と同じくらいかそれ以上の年齢までに成長していた。

まさかアーティファクト・ギアには人間の体を成長させる力もあるとは思いも寄らなかった。

でも、雛の白蓮が鳳凰になる原理と似ているから有り得ないことではない。

しかし、そんな事を考えている暇はなかった。

「それにしても……強いわね、私も加勢した方がいいかしら?」

暴走しながらも神龍双覇を自由自在に操っている風音はとても強かった。

五人の攻撃を美しく舞うように避けて、捌きながら優位に戦っていた。

流石は当代蓮宮の天才にして最強の巫女剣士……その実力は桁違いだ。

でも、ここでアリス先生の力を借りる訳には行かなかった。

「ありがたい言葉ですが、今回は遠慮しておきます」

「それは蓮宮十三代目としてかしら?」

「それもありますが、俺は……風音の兄ですから。兄として何がなんでも大切な妹を助けます!」

風音を助ける意志を硬め、顕現陣から蓮煌と神子装束と手甲を一度に取り出す。

「……わかったわ。頑張ってね」

「はい……白蓮!」

『うん!!』

「契約執行!鳳凰白蓮!!」

白蓮と三つの契約媒体を一つに融合させ、三つの神器を生み出して体に装着させる。

両腕に鳳凰剛柔甲を装着し、体に鳳凰之羽衣を纏い、そして右手に鳳凰剣零式を持つ。

「アーティファクト・ギア、“鳳凰武神装”……装着完了!」

白蓮と同時契約を行い、複数のアーティファクト・ギアを装備するこの状態を『鳳凰武神装』と名付けた。

もっとも、名付けたのはアニメとマンガ好きの千歳だが。

更に俺はガーディアン・カードを起動させて、髪飾りのガーディアン・アクセサリーにして髪をポニーテールに纏めて結界を纏う。

そして俺は後ろを振り向いて親父と母さんの方を見る。

「ちょっと風音と喧嘩をしてくるよ」

今まであまり風音と喧嘩をしたことがないけど、何故か言ってみたくなった。

「天音……風音を頼む」

「お願い……風音を……風音……」

二人は俺に託すように頼んだ。特に母さんは涙が流れるのを必死に耐えながら言っている。

あんな悲しい顔をした母さんの顔は見たくない……一刻も早く風音を助ける!

「行ってくる……!!」

俺は地を蹴り、風音を止める戦いに参戦する。



「蓮宮流、紅蓮裂刃!!」

参戦した俺は大振りで鳳凰剣零式を振り下ろした。

「蓮宮流……」

風音は俺の攻撃を見ると神龍双覇を逆手で構えながら体を独楽のように回転させ、そのまま俺に攻撃してきた。

双凛白蓮刃(そうりんはくれんは)!!」

回転の遠心力による二刀の連続攻撃は強力で、重量のある鳳凰剣零式の紅蓮裂刃を簡単に防いでそのまま俺を吹き飛ばした。

「……やるな、風音!」

入学する前に戦った時よりも数段階も強くなっており、兄としてうれしい気持ちがあった。

「お兄、ちゃん……」

風音は虚ろな瞳で俺を睨みつけると右手の神龍双覇の鋭い切っ先を俺に向けた。

そして風音はとんでもない事を言うのだった。




「私は、大好きな、あなたを殺す……」




典型的なヤンデレの殺し文句だった。

「えっ……?」

「蓮宮流、百花双蓮刃!!」

高速の乱撃である天凛蓮華を両手の二刀で放った百花双蓮華は単純計算で二倍以上の斬撃を生み出してる。

あれは防ぎきれないと察するが、ヤンデレ発言に呆然として反応が遅れてしまった。

「Brast!!!」

その時、ダイナマイトが風音の周囲でばらまかれると同時に爆発した。

ダイナマイトの爆発で風音は攻撃から防御の体勢に入り、俺への攻撃を中断した。

「天音!大丈夫!?」

「あ、ああ……千歳、ありがとう」

「まさか風音ちゃんがヤンデレに目覚めるとは……愛って恐ろしい……」

千歳は風音の恐ろしさに額から汗が流れた。

「天音……取りあえず、頑張れ」

「ヤンデレに愛された末路は……うん、頑張って」

「親方様!頑張るでござるよ!」

「旦那様!どんなに重い愛でも頑張って負けないでください!」

四人は俺を応援しているが、あんたらは頑張れとしか言えないのか?

もっと何かアドバイスとか無いのか……。

「とにかく、風音に呼びかけるしかないか……」

俺と風音が積み重ねてきた兄妹の絆を奮い起こせば風音は戻ってくると信じて呼びかける。

「風音!目を覚ませ!お前はこのままで良いのか?このまま暴走したまま戦って満足なのか?」

「……構わない」

ダイナマイトを受けた際の埃を払いながら風音はそう言った。

「この悲しみを紛らわせるなら……暴走でも何でも構わない!!」

「悲しみ?何のことだ!?」

その問いに風音は涙を流しながら神龍双覇をがむしゃらに振りまくって斬撃を放ち、そして叫ぶように言った。

「私が……私があなた達と血の繋がっていない偽物の家族ということよ!!」

「なっ……!?」

どうして風音と俺達が血の繋がっていない事を……まさか、白蓮と銀羅に話した時の話を聞かれてしまったのか!?

「私が……ここにいる“蓮宮風音”は偽物だった。心も思い出も、この剣の腕も……私の全てが偽物……だから私は全てを壊して、私自身も消える!!!」

自分自身が偽物と断言して全てを壊そうとする風音は自身の体から霊力を爆発させた。

確かに風音は蓮宮の血を継いでいる子孫じゃないけど、俺達蓮宮の人間とほとんど変わらない程の霊力を秘めている。

風音は体を回しながら神龍双覇を振り回して霊力を纏わせると、神龍双覇から神力が溢れ出して一つに混ざり合って光り輝く。

あれは間違いなく契約者の持つ力と契約聖獣の持つ力を一つにして発動するアーティファクト・フォースの輝きだった。

「蓮宮流剣術弐式……奥義!!!」

「奥義!?」

蓮宮流剣術の奥義を発言した風音に俺は驚愕する。

蓮宮流の武術には基本となる型や技などが存在するが、敵を圧倒する絶対技の『奥義』は存在しない。

古くからの蓮宮流の考えとして、奥義は教わるものではなく自ら作り出すものなのだ。

風音が神龍双覇を使って放つ奥義……どれほどの威力か分からない以上、みんなに被害が及ばないように威力を少しでも抑えないと!

「氷蓮!!!」

顕現陣からもう一つの神具・氷蓮を出すと同時に白蓮と契約執行をする。

「アーティファクト・ギア、鳳凰剣百式!!!」

そして、二つの鳳凰剣……双翼鳳凰剣を重ね、俺もアーティファクト・フォースを発動させて光を纏わせる。

「蓮宮流、鳳凰光翼剣!!!」

俺の持つ最大の剣……輝く鳳凰の翼を幾重にも重ねた巨大な光の剣を作り出す。これで、風音の奥義に対抗する!

「みんな、下がって!!」

「天音!?」

みんなに下がるように言い、鳳凰光翼剣を構えながら走ると、風音は神龍双覇で大きな円を描いてからその円を十字に斬りさいて、自身が生み出した奥義を放つ。




「蓮宮流奥義……双蓮神龍破!!!」




十字に切り裂いた円から巨大な竜巻のような龍が現れて俺に襲いかかってくる。

俺は鳳凰光翼剣を振り下ろして龍を真っ二つに斬ろうとした。

しかし、龍は口を開いて複数の牙を向けると目を疑う光景が広がった……。




ガブッ!バキッ!!ゴクンッ!!




龍は鳳凰光翼剣を捕食するように噛み砕いてそのまま呑み込んだ。幾重にも重なった光の翼が見るも無惨に噛み砕かれ、光の羽や粒子が散っていく。

「鳳凰、光翼剣が……」

これまで何度も強敵を打ち倒してきた俺と白蓮の剣が噛み砕かれ、呆然としてしまった。

風音は神龍双覇の切っ先を俺に向けて鳳凰光翼剣を噛み砕いた龍を操る。

龍は引き続き鳳凰光翼剣を噛み砕き、更に双翼鳳凰剣に何かの『力』を流し込んだ。

それは柄を握っている俺の体にまで流れ込み、両腕に異変が起きる。

「がぁっ、ぐぅっ!?」

両腕に今まで感じたことのない凄まじい激痛が走り、何かが折れ、壊れていくような音が鳴っていく。

風音はもう片方の神龍双覇で横に凪払うように振ると、俺の体に纏うガーディアン・アクセサリーの結界を一瞬で破壊した。

「さようなら、お兄ちゃん……」

そして、両腕の中に一瞬の流された力が爆発して鳳凰光翼剣が消え去って元となる双翼鳳凰剣が弾け飛びながら宙を舞った。

回転しながら宙を舞った双翼鳳凰剣はその重りですぐに地面に突き刺さったが、双翼鳳凰剣の柄にはあるモノがあった。

それに気付いた時、俺は信じられない絶望を感じた。

「あっ、あぁ……?」

俺は自分の手と腕を見つめようとしたが目の前には無かった。

何故なら、俺の両腕は双翼鳳凰剣の柄をしっかり握っていたからだ。

「あ、天音の、腕が……」

千歳は手で口元を抑え、声を震わせてそう言った。




そう……今の俺の体に両腕は無い。




風音と神龍双覇が流し込んだ力によって無理やり引き千切られてしまったのだ。




気付いた時には失った両腕から血が大量に流れ出し、更なる激痛が体に走る。

「あっ、くあっ……うぁああああああああああああああああっ!!!」

俺は悲鳴を上げてその場に倒れてしまい、腕を失った激痛に意識を奪われてしまう。



風音と応竜による攻撃で鳳凰光翼剣は破られ、天音が腕を引き千切られてしまった。

千歳が急いで天音に駆け寄り、私は指を鳴らして魔法を使い、未だに二つの鳳凰剣を握り締めている天音の引き千切られた両腕を回収した。

私の魔法があれば両腕を元通りにくっつけるなんて、簡単で造作もないこと。

天音から出ている血を止めてすぐに両腕をくっつけようとしたその時、天音の左手の顕現陣が勝手に発動して中から蓮の紋が描かれた巻物が出て来た。

その巻物に見覚えがあり、私は記憶をたぐり寄せて思い出そうとする前に巻物が勝手に開いた。

中には無数の文字や蓮の紋が描かれており、巻物に封印された霊力が開放されると同時に文字と蓮の紋が浮き上がり、倒れている天音の周囲を舞い、私が回収した両腕が天音の元へ飛んだ。

そして、巻物から開放される膨大な霊力は色鮮やかな光となって天音を包み込んだ。



両腕を引き千切られたショックや激痛で意識を失った俺はふと気が付くと見知らぬ場所にいた。

「ここは……?」

そこは黒く暗い空間に見渡す限りの水が広がっており、俺は水の上に立つ事が出来ていた。

その水の上に小さな白い姿があった。

「白蓮!」

それは鳳凰の姿の白蓮で俺は駆け寄ると自分の両腕があることに気が付いた。

「夢の中、なのか……?」

先ほど風音に引き千切られたのは良く覚えている。その腕があるということはこの世界が夢の中だと推測できる。

しかし、そんなことより今は白蓮の方が先で、倒れている白蓮を抱き上げた。

「白蓮!大丈夫か!?」

『うん……ちちうえ?ここは……どこ?』

「分からない。俺達は風音と戦っていたはずなのに……」

何が起きているのか理解できずにいたその時。

「天音」

「えっ、蓮姫様……?」

背後にいきなり蓮姫様が現れて俺に話しかけてきた。

「お前の中から見ていたが、風音は強いな……十歳であそこまで強いとなると、歴代蓮宮で最強の巫女剣士になれるな」

蓮姫様は蓮宮の義理の娘である風音の事を認めていた。

「だが、このままだと風音は自ら命を絶とうとする。私自身としては後継者を失うのは困るのでな」

「後継者?風音が?」

「蓮宮の当主はお前だが、私自身の“破魔の巫女剣士”としての後継者は風音だ。双蓮を抜き、あの応竜を従えたのだからな。もっとも、今は暴走しているが……」

風音が蓮姫様の後継者として決めている……つまりそれは風音を血の繋がりを関係なく、蓮宮の人間として認めているという意味だ。

「止める……風音を止めてみせる!」

「出来るのか?一度敗れたお前が?」

厳しい言葉を投げかけてくる蓮姫様だが、俺は諦めたりしない。

もう二度と……俺は目の前で何も失わないと決めたから!

「それでも風音は俺の大切な妹だ!何が何でも止める!!」

風音は自分の存在が偽物で全てを否定したが、俺にとって風音との十年間の思い出は全て本物だ。たった一人の妹……俺は必ず止めて救ってみせる!!!

そんな俺の決意に蓮姫様は小さく微笑んだ。

「良い決意だ。それでこそ私と波音が作った蓮宮の当主を継ぐにふさわしい……良いだろう、貴様に蓮宮の全てを授けよう!!!」

蓮姫様がそう宣言すると暗闇と水しかなかった世界が一変して生まれ変わった。

暗闇が一瞬で明るい青空となり、水が青空を写し出して空色となる。

そして、水の上に色鮮やかな蓮の花が次々と咲いて一面の蓮畑となっていく。

「綺麗だ……」

『うん……』

美しい蓮畑に見取れていると、不意に優しい声をかけられる。

「天音」

「えっ?あなたは……」

そこには璃音兄さんによく似た面影の男性が立っていた。

「し、詩音叔父さん!?」

『ええっ!?りおんとかのんのちちうえ!?』

璃音兄さんと花音姉さんの親父さんの詩音叔父さんがそこにいた。

「な、何で、詩音叔父さんが……?」

呆然とする俺に叔父さんは優しい笑みを浮かべながら俺の頭を撫でた。

「私だけではないよ。見なさい」

目の前で次々と色々な人が現れる。

その人達を見たことがなかったが、全員蓮宮の戦闘装束を身に纏い、神具を握っていた。

そして、蓮姫様と叔父さんを踏まえると総勢十二人もいた。

「まさか……蓮宮の歴代当主……?」

『す、すごい……』

初代から十二代目までの蓮宮神社の歴代当主が勢揃いし、俺と白蓮は驚くしかなかった。

そして、十二人の当主達は俺と白蓮を丸く囲むんだ。

「蓮宮天音よ……我ら十二人が築き上げてきた蓮宮の全てをお前に託す。お前自身と、お前の大切な存在を全て守れ!!!」

蓮姫様を中心とする十二人の持つ膨大な霊力とそれぞれの持つ形が異なる形をした蓮の紋章が俺の中に流し込まれる。

十二人の歴代当主の霊力と十二の蓮の紋章が俺の体に流れ込むと、霊力と紋章が刻印として俺の体中に刻まれていく。

「今ここに……蓮宮天音を……“蓮宮十三代目当主”とする!!!」

蓮姫様の宣言と共に刻印が刻み終わる……それが当主の証である“霊煌紋”だと気付いた。

「さあ、我らの力を携えて風音を救え!“十三代目”!!」

正式に蓮宮神社の十三当主に認められ、霊煌紋を継いだ俺は自身満々で頷いた。

「はい!!」

『ちちうえ、もどろう!』

「ああ。行くぞ、白蓮!!」

俺は白蓮と共にこの夢の世界から抜け出し、現実の世界に戻った。

兄として、当主として風音を救うために。



天音の両腕が引き千切られた後に謎の光に包まれた。

私達が心配する中、光が消えると驚く光景がそこにあった。

「天、音……?」

「……心配かけたな、千歳」

天音は目を覚ましてスッと立ち上がり、私の頭を撫でた。

「天音、手が……」

「ああ。歴代当主のみんなが助けてくれたんだ」

「えっ……?」

何のこと?って聞こうとする前に天音は元に戻った両手を前に出して叫んだ。

「来い、白蓮……双翼鳳凰剣!!」

地面に突き刺さっている双翼鳳凰剣は天音の言葉に輝き出し、宙に浮いてから天音の元へ飛んでいった。

天音は双翼鳳凰剣の柄を握りしめてキャッチし、手の中でいつものように華麗に回して構える。

「さあ……Show Time Againだ!!!」

自身満々な天音の態度に驚きつつも、今までと違うその凛々しい面影に私は顔が熱くなるのを感じた。

ああ……私はまた、天音に惚れ直したんだ……。

何度目か分からない天音に対する惚れ直しにうっとりとしながら、私は走り出した天音を見送り清嵐九尾のグリップを強く握った。




.

天音が正式に蓮宮十三代目当主となり、その力を受け継ぎました。


ってか、妹に腕を失わされるってなかなか無いですよね……。


次回、風音とのバトルがいよいよクライマックスです。

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