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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第5章 ドタバタ夏休み編
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第55話 蓮宮の過去と現在

大変お待たせしました!


1ヶ月近くも更新が止まってすいませんでした。


ピクシブのチート箒ちゃんの小説の執筆にハマってしまいました……。


今回は風音ちゃんの過去が明らかになります。


そして後半はまたもや怒濤の展開になります。

夏休みで久しぶりに家に実家に帰ってきたと言うのに千歳の爆弾発言によって混乱を引き起こされ、誤解を解くの時間がかかってかなり疲れた俺は白蓮を連れて自分の部屋に戻った。

「ほら、ここが俺の部屋だよ」

『ピィー!』

4ヶ月振りの自室は変わらず、母さんが掃除してくれていたので綺麗だった。

白蓮は初めて見る俺の部屋を探索するように飛んで色々なところを見ていく。

「ふぅー……やっと落ち着ける」

ベッドに横になり、体を伸ばしながら久しぶりに見る天井を見上げる。

「色々な事があったな……」

思い返せばこの4ヶ月はドタバタの出会いと戦いの日々だった。

決して楽しい時はなかったとは言わないけど、せめて残りの夏休みは学生らしく思いっきり楽しみたい。

宿題はとっくに終わらせているから後はどうやって楽しむかだ。

コンコン。

「天音ー、入って良い?」

ドアをノックする声の主は千歳だ。

「ああ、良いぞ」

「失礼しまーす」

『失礼するぞ、旦那』

夏休みの間うちに泊まる荷物が入ったキャリーバックを持った千歳が銀羅と一緒に入ってきた。

本当に俺の部屋で寝るつもりなのね……。

「まぁ……部屋は狭いがゆっくりしてくれ」

「うん!天音の部屋、入るの久しぶりだな」

『これが旦那の部屋か……エロい本はどこに隠してあるかな?』

銀羅はベッドの下とかを捜索し始めた。

「そんなもんはないわ!」

『何?思春期の男子は必ずエロい本の一冊や二冊はあると聞いたぞ!』

「それ……恭弥に聞いた?」

『うむ』

これは後で恭弥をシメなくちゃいけなくなったな……銀羅に余計なことを吹き込むな!

「銀羅……俺はエロ本とかそう言うのは持ってない。わかったな?」

『おお、そうか。エロ本がない代わりに千歳がいるから必要ないんだな?』

「どうしてそう言う考えに行き着くんだ……?」

相変わらずの独自解釈に俺の頭にまた頭痛が蘇る。そんな時、千歳は本棚から一冊の大きな本を抜いて持ってきた。

「懐かしい……天音、久しぶりにアルバム見ようよ!」

『ピー?』

『ある、ばむ?何だそれは?』

「アルバムって言うのは写真を整理してまとめた帳面だよ。人間が昔の思い出を残す手段の一つなんだ」

『つまり……旦那の昔の姿が見れると言うわけか?』

『ピィー!ピィー!!』

「よし、じゃあ久しぶりに見るか」

千歳からアルバムを受け取り、最初のページから開いた。

最初のページには俺が産まれる前に母さんのお腹の中にいた頃の写真から始まり、更に産まれたばかりの俺の写真が大きく張られていた。

『ピィー……』

『これが産まれたばかりの旦那か……やはり人間の赤子はやはり猿みたいに見えるな……』

「ははっ、人間の産まれたばかりの赤ちゃんはみんなこんな感じだよ。千歳の写真もあるよ」

次のページを開くと産まれたばかりの赤ちゃんの千歳の写真もある。ほとんど同じ時間に生まれたから記念に一緒に撮ることにしたのだ。

今思えばここから俺と千歳の付き合いが始まったと思うと本当に不思議な縁だと感じる。

『キュルピィー!』

『早く次のページを見せてくれ!』

「はいはい」

ページを開いていくと俺と千歳の成長の記録が刻まれている写真が貼られている。ページを開く度に、小さい頃の俺や千歳を見て白蓮と銀羅は可愛いと連呼している。

『おおっ!?千歳と旦那が一緒の風呂に入っている!?』

『ピィッ!?』

「幼稚園ぐらいの頃だから、それぐらいあるよ……」

「天音。何なら、今夜一緒にお風呂に……」

「入りません」

「むぅー……」

アルバムを見ながらそんな話をすると、六歳ぐらいの俺が赤ちゃんの風音を抱いている写真が出て来た。

『次は風音か……むっ?』

銀羅は赤ちゃんの風音の写真を見つめると尻尾で器用にページを開いた。

『……変だな』

「変って、何が?」

銀羅は尻尾で指差しながらこのアルバムについて指摘し始めた。

『最初のページには旦那や千歳の産まれてすぐの写真があったが、風音が産まれてすぐの写真がない。見た感じ、この写真に写っているこの風音は産まれてからかなり時間が経過している……旦那、風音が産まれた時の写真は別のアルバムにあるのか?』

たった一枚見ただけでアルバムの違和感を感じ取った銀羅に俺は感服した。伊達に妖狐の最終形態の九尾じゃないって事だな……。

「九尾様に隠し事は出来ないって事か……」

「天音、話すの?」

「まあ、白蓮と銀羅には遅かれ早かれ、いつかは話さなければならないし……」

何か訳ありな話となり、白蓮と銀羅はドキドキしながら俺を見つめる。俺は腹をくくると、真剣な眼差しで二人を見つめて口を開いた。




「実は……風音は……俺の本当の妹じゃないんだ」




『ピ、ピィ……?』

『本当の妹じゃない……?つまり、義妹って事か……?』

「ああ。風音は母さんの遠縁の子で、風音の両親は不幸な病気と事故で亡くなったんだ」

「まだ産まれて間もない風音ちゃんの貰い手が見つからなくて、親戚中をたらい回しにされかけた時にその話を聞いた天音のご両親が引き取ると名乗り出たのよ」

そして、親父と母さんが風音を引き取るには何よりも大きな理由があった。

「実は、母さんのお腹には俺の弟か妹になったかもしれない子供がいたんだけど、流産してな……悲しみに暮れた時に風音の話を聞いて、二人はこれは運命だと直感したらしい」

「そして、風音ちゃんはこの蓮宮家に引き取られたのよ」

流産した時の母さんの悲しい顔は五歳の時の俺でも覚えている。あんなに悲しい顔の母さんは初めてだった。

『ピィ……』

『そんな事が……』

白蓮と銀羅は知らされる事実に驚いている。確かに突然こんな事を言われれば誰でも驚くだろう。

「この事は風音がもう少し大人になってから言うつもりだから、二人とも黙っててな?」

『ピピッ!』

『ああ、もちろんだ』

白蓮と銀羅は良い子だからちゃんとその事を秘密にしてくれる。

『ピピィ、ピピッ?』

すると白蓮は「父上は風音をどう思っている?」と尋ねてきた。

「どうって……例え血の繋がってなくても、風音は俺にとっては掛け替えのない大切な妹だ。風音が初めてこの家にやってきて、この手で抱き上げた時……俺に妹が出来て最高に嬉しかったんだ」

幼くて力が弱いこの両手で初めて赤ちゃんの風音を抱き上げた時……初めて命の重さを感じた。

あの時の俺はこの子を大切にして、守っていきたいと思ったんだ。

「羨ましいな……天音。私はお姉ちゃんとして風音ちゃんを可愛がりたいんだけどな……」

お母さんの事情で弟と妹が出来ない千歳にとって風音は羨ましい存在だ。だけど……。

「風音はめっちゃ千歳をライバル視しているんだよな……」

「風音ちゃんは天音が大好きだからね……それも結婚したいくらいにね」

「そう言えば昔、一方的な結婚の約束をさせられたな……」

俺は瞼を閉じてその事を昨日のように思い出す。




『おにいちゃん!わたしとけっこんしてください!』

『え?嫌だ』

『えー!?なんでー!?やっぱりちとせおねえちゃんがいいの!?』

『そう言う事じゃなくて、兄妹で結婚出来るわけないだろ?』

『するもん!かざねはおにいちゃんとけっこんするもん!』

『いや、だからね……』

『わたしはおにいちゃんとけっこんするの!ゆびきりげんまん、うそついたらわたしとけっこーん!』

『どうあがいても結婚しかないじゃないか!?』




約五年前のとある日の一方的な約束を思い出した俺は苦笑を浮かべる。

「全く、困った妹だよ」

「でもその強引なところが可愛いじゃない」

「ああ。千歳と同じでな」

「何よー!私はそんなに強引じゃないわよ!」

「自覚ないのかよ?」

今更なツッコミを入れ、俺はアルバムにある数年前に家族全員で撮った写真を見る。例え血の繋がっていない義理の妹でも風音は俺の大切な妹だ。

今までも、そしてこれからも……。




そしてこの時に俺は気付いていなかった。




「嘘……私とお兄ちゃんが……」




今の話を聞かれていたことに。




「実の、兄妹じゃない……?」




それが悲しみの神器を生み出すことに繋がるとは思いも寄らなかった……。



アルバムを閲覧した後、銀羅が蓮宮神社の面白い場所に連れて行けと言い出したので、仕方なく俺は千歳と白蓮も一緒にある場所に連れて行った。

「面白いかどうか分からないけど、ここが蓮宮神社の宝物庫だよ」

『宝物か!?それは楽しみだな!』

「大したものがあるかわからないけどな」

親父から許可を貰って鍵を預かり、鍵を開けて重い扉を開けるとそこには蓮宮神社の歴史が詰まった場所だった。

中に入ると古い臭いが漂い、外よりかなり涼しく、別の空間に迷い込んだ感じだった。

「ここには初代から集めた古い文献や骨董品が数多く眠っているんだ」

『ピィー……』

「うわぁ……何かすごい歴史を感じる……」

『私の尻尾がビンビンに感じるぞ。蓮宮神社の古い歴史の重みを!』

妖力が込められた九本の尻尾で銀羅は宝物庫にある数々の物から出ている思念を読み取る。

「あまり無闇に触れないでね。壊したりしたらヤバいから。見たい物があったら俺に言ってくれ」

「はーい」

『ピィー!』

『了解した』

親父に扱い方を教えて貰った俺は手袋をしてまだ見たことがない巻物を広げて読む。

小さい頃から大昔の文字を読んでいたから意味がよく分かる。だから英語の代わりに国語だけは得意になった。

『ん……旦那、これを見てくれ?』

「銀羅?どうしたんだ?」

銀羅は尻尾を器用に使って一本の巻物を持って俺に差し出してきた。

それは『封』と書かれた紙で厳重に封印されていた他の巻物とは全く異なる代物だった。

「これをどこで?」

『やけに強い霊力を感じたから、試しに探してみたらそこの棚の奥に古い木箱に入っていたそれを見つけたんだ』

「古い木箱の巻物ね……」

見た目は特に不思議な点は見あたらないが、銀羅の言うとおり強い霊力を感じる。ふと、『封』の紙に触れた瞬間静電気みたいな何かが俺に流れ込み、『声』が聞こえた。




『我が一族の証を示せ』




一瞬幻聴かと思ったが幻聴にしてははっきり聞こえた気がした。一族の証は蓮宮神社の人間の証と言う意味だよな?

だったら……これしかないよな。

左手の顕現陣から蓮宮神社の人間の証である蓮煌を取り出し、鞘から抜いて蓮煌の刃を巻物に近付けてみた。

ピシッ!!

「おっ?」

近付けた途端、紙が真っ二つに割れて巻物が開けるようになった。

俺は千歳達に視線を向け、開けるぞと目で伝えながらゆっくり巻物を開いた。どんな文章が記されているのか内心ワクワクしていたが、巻物には文章が一切描かれていなかった。

「魔法陣……?」

巻物には到底似合わない内容である魔法陣が描かれていた。しかもその魔法陣に見覚えがあった。

十三の精霊が描かれている独特な形をした魔法陣……確かこれは。

「アリス先生の魔法陣……?」

そう呟いた次の瞬間、巻物の中にある魔法陣が輝き、青白い何かが飛び出した。

「な、何だ!?」

『そなたの体、少し借りるぞ』

「はぁ!?」

逃げようと思ったが、体が全く動けずに固まってしまった。それが金縛りだとわかったその時にはすでに遅かった。

「天音!!」

千歳が俺を助けようと動いたが、千歳の体にも金縛りを掛けられて動けなくなっていた。銀羅と白蓮も同様だった。

そして、青白い何かが俺の体に入り込んだ瞬間、眠気が体に伝達して目の前が真っ暗になった……。



銀羅が見つけた巻物を天音が開くと変な何かが飛び出して、天音を動けなくして体内に入った。

動けなくなった私も動けるようになると、すぐに天音の側に行きたかったがそうも言ってられなくなった。

「あなた……“誰”なのよ!?」

私は顕現陣からレイジングを取り出して天音に銃口を向けた。

滅多なことで天音に銃口を向けたりしない。

そう、普段の天音なら。

「早く天音の体から出て行って!その人は私の大切な人なの!!」

天音の意識はなく、違う何かが支配しているのは分かっていた。

伊達に十六年近くも天音の幼なじみをやってきたからそれはすぐに分かった。

天音に取り憑いた何かは持っていた蓮煌を鞘に収めて私に笑いかけた。

「案ずるな。私がこやつの体を乱暴に扱うつもりはない。少し体を借りるだけだ」

声は天音だが、いつもと口調が全く違う。

『ピ、ピィ……』

『何だ、こいつは?天音と全く異なる気配……そして何より、場を支配するようなこの威圧感……千歳、ただ者じゃないぞ!』

銀羅の言う通り、既にこの場の空気は天音に取り憑いた何かが完全に支配していたが、敵意は全く感じられなかった。

何を考えているのか分からず、私はとにかくレイジングを構えて警戒をした。

すると、この宝物庫に向かって複数の足音が響いて声も聞こえた。

「天音!今の霊力は何だ!?」

「千歳ちゃん、大丈夫!?」

「みんな、無事かニャー!?」

「何かあったの?」

宝物庫の扉の前に璃音義兄様と花音義姉様、お義父様とお義母様が駆けつけてきた。

「皆さん……気を付けてください!今の天音は何かに取り憑かれています!」

「何ぃ!?てめぇ……俺の大切な弟に手を出すとは良い度胸じゃねえか!今すぐ出て行け!!」

璃音義兄様は瞬時に顕現陣から蓮牙を取り出して戦闘態勢に入って天音を――正確には天音に取り憑いた何かを睨みつける。

すると、天音はまるで何かを安心した表情で私達を見渡し、満足した様子で頷いた。

「どうやら……この者は皆から愛されているようだな。“数百年”経っても我が一族は安泰で何よりだ」

「数百年?我が一族?てめぇは何者だ!?」

「うむ。そろそろ私の名前を明かしても良いな。よく聞け、“蓮宮”の姓と“音”の名を持つ“我が子孫達”よ!!」

天音に取り憑いた何かは舞を踊るようにその場で一回転して、威風堂々の振る舞いをして自らの名前を明かした。







「私はこの蓮宮神社初代当主にして、破魔の巫女剣士……“蓮姫”だ!!!」







それは、この蓮宮神社の初代当主の名前だった。

つまり、天音の体に取り憑いたのは蓮宮神社の創始者であり、アリス先生の唯一無二の親友という私達にとって偉大な人と言うわけだ。

「う、嘘でしょ……?」

私はあまりの驚愕にそう言うしかなかった。



天音が蓮姫の魂に憑依したその頃、天聖学園の図書館城の地下深くあるアリス先生の部屋で、大量の本の山の頂上で部屋の主であるアリス先生は眠っていた。

そして、蓮姫が自らの名前を名乗ると、アリス先生は目を覚まして起きあがった。

「……目覚めたのね、蓮姫」

不老不死の魔女にとって唯一無二の親友の目覚めを感じ取ったアリス先生は本の山から降りて体を伸ばして間接を慣らす。

「さーて、愛しの蓮姫に会いに行こうかしら?」

アリス先生は指を鳴らして魔法陣を呼び出し、その中に入って地下室から消えた。




.

どうでしたか?


風音ちゃんが天音の義妹で、まさかの蓮姫復活!


相変わらずの怒濤展開ですいません……。


次回は風音ちゃんが暴走して暴れてしまいます。


それでは、また次回に!

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