第54話 蓮宮神社
お待たせしました!
新章、夏休み編スタートです!
今回は新キャラがけっこう登場します。
イギリスから帰国してすぐに実家の蓮宮神社へと帰ることになった俺と刹那はすぐに準備をして璃音兄さんと花音姉さんと一緒に向かった。
天聖学園からバスと電車を乗り継いで小一時間程度の時間をかけ、約四ヶ月振りの帰省だった。
「ここが蓮宮神社でござるか……」
「ああ。行こうか」
俺達は鳥居を潜り、蓮宮神社の境内に入る。
参道を歩くと、蓮宮神社の最大の目玉である『神池』が眼に映る。
「こ、これは……」
初めて見る刹那はその神池に驚いていた。
大きな神池の水面一杯には様々な色をした蓮の花が咲き誇っていた。
「何とも見事で綺麗な蓮畑でこざる……」
『ピィー!!』
刹那は蓮畑に感服し、白蓮は自身の名前の由来である蓮の花を一目で気に入り、蓮畑の上を飛んで間近で見る。
「この神池の水はとても綺麗な霊水で、その霊水を吸っている蓮は一年中枯れることなく咲いているんだ」
「少なくとも私はこの蓮宮神社は日本一綺麗な蓮が咲く場所だと思うわ」
璃音兄さんと花音姉さんは自慢げに刹那に話す。蓮宮の人間にとってこの蓮畑はお気に入りの場所でもあり、もちろん俺もこの蓮畑が大好きだ。
「さて、そろそろ本殿に……」
蓮宮神社の本殿に以降とした矢先、真夏だというのに体に寒気が走った。
「さ、寒っ!?」
『ピピィッ!?』
「な、何で、夏なのに……!?」
薄着で来ている俺達は突然の寒気に凍えてしまう。
「あー、この冷気は……」
「天音、あの方よ」
「あの方……?」
体中に霊力を纏って寒気を遮断している璃音兄さんと花音姉さんは目線を本殿の方に向ける。
すると、奥からゆっくりと何かが近づいてくる二つの影を見つける。
「まさか……」
俺はその二つの影が誰なのかすぐに分かってしまった。
一人は蓮宮神社の巫女装束に身を包んだ黒髪長髪の女性で、もう一人は真っ白な雪の模様をした着物を着た白銀の髪をした女性……。
「お帰りなさい、天音」
『お帰り、天音!』
二人の女性は笑顔で俺を出迎えた。
「……ただいま、母さん、美雪……」
俺は久しぶりに再会した二人の家族――母さんと美雪に笑顔で返事をした。
『ピ、ピィ!?ピィッ!?』
「お、親方様にそっくりでござる……」
白蓮と刹那は俺と母さんの顔を見比べてとても驚いている。
それはそうだ。俺は撃まれた時から母さん似の顔で、母さん譲りの綺麗な黒髪を持っている。並んで立てば双子の姉妹に見られるほどよく似ている。
「紹介するよ、俺の母さんの蓮宮 六花だ」
「初めまして。息子がいつもお世話になっています」
母さんは刹那に頭を下げて挨拶をする。慌てて刹那は腰を下ろして跪いて自己紹介をする。
「も、申し遅れたでござる。拙者、天音様にお仕えしております。神影流忍者、月影刹那と申すでござる!」
「まあ、あなたが天音の忍者さん?これからよろしくね」
「はい!!」
「そして、こっちは……」
『私は六花の契約聖獣、雪女の美雪だ!』
白銀の髪をした女性の正体は母さんの契約聖獣で日本で有名な雪を操る若い女の姿をした妖怪・雪女の美雪だ。
美雪は俺が産まれた時から一緒に遊んでくれた、花音姉さんとは別のもう一人の姉さんみたいな存在だ。たまに寒い冷気を放出するのはちょっと苦手だが。
『ピィーッ!』
『おお、お前が天音の契約聖獣の確か、鳳凰の白蓮だっけ?本当にちっちゃくて可愛いなー!』
『キュルピィー!』
早くも白蓮と美雪は打ち解けて楽しそうに話している。
「ただいま、六花さん」
「ただいま戻りました」
「はい、璃音さんと花音さんもお帰りなさい」
璃音兄さんと花音姉さんは母さんにただいまの挨拶をする。
「ところで、六花さん」
「風音ちゃんは今どこに……」
ドドドドドドドドドドドドドドド……。
「な、何だ!?」
何かが走ってくる音が聞こえ、その方角を向くと土煙を上げて何かがこっちに向かってくる。
「お兄ちゃぁああああああああああーーーん!!!」
その姿に当然見覚えがあり、真っ直ぐ俺の方へ全力疾走している。
そしてこのままだと俺の身に危険が及ぶと察し、身構える。
「おかえりなさぁああああああああああーーーいっ!!!」
全力疾走のスピードを乗せながら俺に向かって飛んでくるが、
「天凛蓮華」
体を回転させながら敵の攻撃を回避する天凛蓮華の動きで飛んでくる少女をまるで突進してくる牛を華麗にかわす闘牛士のようにひらりと回避する。
「えっ……?ひにゃああああああああああっ!!」
そして、俺に回避された少女はそのまま神池に飛び込みそうになる。
「刹那、頼む!」
「あ、危ないでござる!!」
そこを刹那に頼んでキャッチしてもらい、何とか事なきを得る。
「大丈夫でござるか?」
「う、うん。ありがとう。って、お兄ちゃん!!可愛い妹のハグをどうして嫌がるのよ!?」
俺の前でプンスカと怒る少女は俺の妹だ。
「ハグ?あれはどうみても全力疾走からの突撃だろ。あんなのをまともに喰らったら俺は生死の境をさまようわ。どうせなら、普通に出迎えてよ」
「むー……わかったよ。それじゃあ……お帰りなさい、お兄ちゃん!」
今度は威力のない一般的な抱きつきなので俺はしっかり受け止めて抱き締めた。
「ただいま、風音。元気にしていたか?」
「うん!!!」
妹の名前は蓮宮風音。
今年で十歳になるのにとても甘えん坊で、特に俺の事が大好きらしい。
妹という立場から俺に対するスキンシップはある意味千歳以上で、天聖学園に入学する前は風音と千歳で俺を取り合っていたぐらいだ。
「何と!親方様の妹君でござったか!?拙者、神影流忍者の月影刹那と申すでござる!」
風音が俺の妹と知ると母さんの時と同じように跪いて自己紹介をする。
「えっ?あなたがお兄ちゃんの忍者さん!?じゃあ、忍法を見せて見せて!」
「承知したでござる。では、忍法・影分身の術!」
忍法で四人に分身する刹那に風音は目をきらきらと輝かせる。
「わぁ!凄い凄い!!」
風音は忍者である刹那を気に入った様子で他にも忍法を見せてとせがんでいる。
刹那は蓮宮家に徐々に受け入れられているから取りあえず一安心した。
「ほうほう。騒がしいと思ったら、天音達が帰って来たのかニャー?」
語尾がとても変な少し渋い声が耳に届いた。
母さん、美雪、風音、そしてこの蓮宮神社に住む最後の一人が……神子装束に黒髪ロングをした中年の男性が鳥居の方から来た。
「親父……相変わらずの猫語だな」
「ニャハッハ!小さい頃からの口癖はなかなか直らないもんだニャー」
もう三十をとっくに過ぎているのに、変な猫の語尾を付けて喋る男は俺の親父だ。
「あー、刹那。紹介するよ、俺の親父の蓮宮 時音」
「拙者、天音様にお仕えする神影流忍者の月影刹那と申すでござる」
「コホン……よろしく、刹那君。私は蓮宮神社当主代理の時音だ」
親父はちゃんとした時は語尾が普通になる。いつも普通にしていればいいと思うけど。
「とっつあん、戻ってきたぜ!」
「叔父さん、ただいま!」
「璃音、花音……おかえりだニャー。さあ、こんなところで立ち話も何だから家に入ろうニャー」
再び猫の語尾に戻った親父は家の方へ歩み、俺達はそれに付いていく。
「あの、親方様。一つよろしいでしょうか?」
「何だ?」
「何故、時音様は語尾にニャーを付けるのでござるか?」
刹那の疑問も尤もなのでその疑問に答えよう。
「それは親父の契約聖獣に深い関わりがあるんだよ」
「時音様の契約聖獣?」
「ああ。親父の契約聖獣は……」
ズシン!!
突然頭に重い何かが乗っかり、転げ落ちそうになる。
「重っ!?白蓮じゃないとすると……」
『久しぶりだニャー。元気だったかニャー?』
頭の上から聞こえる気が抜けそうなゆったりとした声……間違いない、こいつは……。
「“タマ”!危ないだろ、いきなり頭の上に乗っかったら!」
両手で頭の上乗っていたもの――小さな三毛猫を掴んで叱る。
「ね、猫……?」
刹那が目を開いて驚くのも無理はない。
さっき喋っていたのはこの三毛猫……『タマ』なのだから。
しかし、タマはただの三毛猫ではない。その理由はお尻にある尻尾にある。
「二又の尻尾……?もしや、“猫又”でござるか?」
『そうだニャー。ワイは時音に飼われていた三毛猫から猫又に変化したニャー』
猫又は人に飼われた猫が年老いて変化した存在で、タマは元々親父が飼っていた三毛猫で年老いて寿命で死ぬ寸前に奇跡的に妖力を得て猫又に変化したのだ。そして、そのまま親父の契約聖獣となり、ずっと側にいる約束をしたのだ。
ちなみに、親父の語尾はタマの影響であることは言わずもがなだ。
『ところで、その小鳥が天音の聖獣かニャー?』
『ピィー?』
「ああ、そうだよ」
タマの次に俺の頭に乗った白蓮にタマはじぃーっと見つめる。
そして、目を怪しく輝かせて口から涎が垂れていく。
『ジュルリ……とっても美味そうだニャー……』
『ピビィ!?』
猫の肉食動物としての血が騒ぎ、白蓮は狙われる恐怖から震えて俺の髪にしがみつく。
「真っ二つにぶった斬るぞ、この化け猫が……俺の子供に手を出すんじゃねえよ……」
思わず蓮煌を取り出しそうになったがその前に危機を察したタマは親父の元へ走って肩に乗る。
『時音ー、お前の息子が不良になったニャー』
「いやいや、お前が悪いじゃないか。天音の大切な鳳凰に手を出したらいかんぞ?」
『わかったニャー』
タマは親父の言うことはしっかり聞くけど、白蓮を怖がらせるわけにはいかないから家にいる間はしっかり見張っておかないとな……。
「あ、そうそう。天音」
「何だ、親父」
「帰ってきて早速だが、すぐに私と本殿に来てくれるかな?」
「ああ、わかった」
語尾が普通と言うことは何か大切な話があるようだ。気を引き締めていこう。
☆
部屋に荷物を置き、早速本殿に往くと一足先に親父が座っていた。
「座りなさい」
「ああ」
親父に向かい合うように座る。
「来てもらったのは他でもない。天音が六月に倒した聖霊狩り……瑪瑙の話だ」
「瑪瑙……」
あの時の戦いは俺は今でも忘れることができない。
非情で残虐な聖霊狩りの奴ら……龍神の澪を奪うために詩音叔父さんと弓子叔母さんを殺し、更にはその澪を最後に殺した瑪瑙……。
せっかく助けることが出来た澪を目の前で殺された時の光景は今でも忘れられず、戦いの時にいつも俺の脳裏に浮かんでしまうほどだ。
「璃音と花音から話は聞いた。天音が兄さんと義姉さんと澪の仇を討ってくれたと……」
「仇を討ったって……ただ俺は叔父さん達を殺した瑪瑙が許せないから倒しただけだよ……」
最後は自分の心を抑えきれずに突撃してしまって、瑪瑙を倒せたのは兄さんから受け取った氷蓮と霊力のお陰だし……。
「こんな事は不謹慎かもしれないが、私は兄さんの仇を討ってくれた天音にとても感謝している」
親父はよほど嬉しかったのか目尻に涙を浮かべて俺の肩に手を置いた。
「私は息子であるお前を誇りに思うよ。流石は蓮宮神社次期十三代目当主だ!」
俺は蓮宮神社の次期十三代目当主としての肩書きを持っている。
親父の兄さんである詩音叔父さんが十二代目当主で、本来ならその息子の璃音兄さんが十三代を継ぐはずだったけど、天星導志の関係で当主の座を辞退し、俺が当主を継ぐと宣言した。
霊力の高さや潜在能力から他の蓮宮一族にそれが認められ、俺が成人してから十三代目を継ぐまで親父が当主代理としてこの蓮宮神社を守っている。
「ありがとう、親父……」
「ああ。ところで、天音。当主になるお前に渡す物がある」
「俺に?」
親父は本殿に祭っている御神体の元へ行く。
蓮宮神社の御神体は邪を祓う聖なる力を持った『蓮霊之神』と言う名前の神様だ。
蓮をこよなく愛し、様々な武術を巧みに操る武神であり……それが代々蓮宮神社に伝わる蓮宮流の武術や十五歳に贈られる蓮の名を持つ神具の由縁となっている。
その蓮霊之神の御神体の像の前に古い小さな木箱が置かれており、親父はそれを俺の前に持って来た。
「これは……蓮宮神社の当主に代々継承されてきた“霊煌紋”だ」
箱の中に入っていたのは蓮の紋が描かれた古く小さな巻物だった。「この巻物が……?」
巻物を持ち、開かないで全体を見渡すと大きな霊力が込められているのがすぐに分かる。
「巻物の中にある霊煌紋は蓮宮の歴代当主の霊力と、当主のみが使える秘伝の霊繰術が込められているんだ」
つまり、初代当主の蓮姫様から十二代目の詩音叔父さんの霊力に関する力がこの小さな巻物に入っていると言うことだ。
何というか、蓮宮の長くて凄い歴史を巻物からジワジワと感じてくる。
「まさしく蓮宮神社の一子相伝の力って事か……これを俺に?」
「本当なら天音が成人になり、当主の継承式の時に渡すつもりだったが、特例で霊煌紋だけ渡すことが認められたんだ」
「何で?」
「……天音はここ数ヶ月、瑪瑙の戦いだけでなく、刹那君の忍者の里の長、そして先日のイギリスの戦い……どうみても一高校生の人生ではないな」
「仰る通りです……」
みんなから呪われているのではないかと疑われるほど何故か俺を中心に大きな戦いに巻き込まれやすい。
体質かどうかわからないけど、このままだと身も心も持たないかもしれない。
「だから私は天音を強くするため、この霊煌紋を渡すことを一族の皆を説得したんだ。兄さんのように早く死なれては困るからね……」
兄と義姉……大切な二人の家族の死を見た親父は当たり前かもしれないけど、息子である俺も死なせたくない。
「親父……」
親父は巻物とそれを持つ俺の手を包むように両手で包み込んだ。
「天音、私はお前が歴代最高の当主になることを信じている。お前の事だ、これからもきっとたくさんの戦いに巻き込まれるかもしれない……だからこそ、この霊煌紋を受け継ぎ、強くなって自分と大切な人達を守るんだ!」
巻物と手を包む親父の手はとても温かい。親父の気持ちを応えるためにも、俺は今よりももっと強くなる……自分と大切な人達を守るためにも!
「ああ、任せてくれ親父。俺は強くなってみせる!」
「よし……では、霊煌紋の継承は後で行うとして、せっかく帰ってきたんだ。ゆっくりと休みなさい」
「ああ、そうさせて貰うよ」
霊煌紋の巻物を顕現陣に仕舞い、親父と一緒に本殿の隣に建てられている自宅に向かい、白蓮や母さん達がいるリビングに入る。
「ふぅー、暑い暑い。母さん、何か冷たい飲み物を……」
今は真夏で何か冷たい飲み物を母さんに頼もうとした時だった。
「あっ、お帰りなさい。あなた♪」
リビングにはここに居るはずのない千歳がのんびりと寛いでいた。
「……どうして千歳がいるんだ……?」
『私もいるぞ、旦那ー』
「お邪魔しております、旦那様」
「銀羅、麗奈、お前もか……」
銀羅と麗奈も当たり前のように座り、冷たいジュースを飲んで寛いでいる。
「おや、千歳ちゃん。久しぶりだね」
「はい!お久しぶりです、お義父さん!」
未来の義理の父に挨拶をする千歳……ダメだ、何か寛げない。
「あのですね、千歳さん。まずはどうして家にいるのか説明していただけませんか?」
「実はですね……さっき実家に帰ったんですが、両親が仕事でいなかったんですよー」
「そうなのか?」
確か千歳の両親はアーティファクト・ギアの研究をしていると聞いたことがある。何か大きな仕事でも出来たのだろうか?
「お祖父ちゃんも学園の仕事でいないし、家の中で銀羅と麗奈だけじゃ寂しいので……」
「寂しいので……?」
「天音のお家でしばらくご厄介になることを思いついて参ったのです!」
胸を張って堂々と言う千歳。つまり何か?学園のみならず夏休みもずっと一緒って事!?
「ちょっと、流石にそれは急すぎないか?母さんだって困――」
「千歳さん、歓迎するわよ♪銀羅さんも麗奈さんも自分の家だと思って寛いでね」
「「はいっ!」」
『感謝するぞ、旦那の母君』
「……マジですか?お母様……」
母さんは満面の笑みであっさりと了承した。
「だって、娘が一気に増えたみたいでお母さんは嬉しいのよ♪」
「数年後には本当の娘になってますよ、お義母様」
「あら、そうだったわね」
あぁ……俺に安らぎの時間はもう一生訪れないのね……。
学園のみならず家でも千歳のハイテンションに付き合わされるのか。
「麗奈さんは刹那さんは同じ客室で、千歳さんは天音の部屋で寝泊まりね♪」
「喜んで!!」
「ちょっと待て!!」
最後の聖域である俺の自室に千歳を寝泊まりさせる?それこそ本当に安らぎの時が失われるじゃないか!?
俺は全力でそれを阻止しようとするが予期せぬ伏兵が現れる。
「だったら私もお兄ちゃんの部屋で寝るー!」
「風音!?」
風音が俺に抱きついて宣言する。それを見た千歳はギラリと眼光が鋭く光り、風音に対抗するように俺に抱きつく。
「ちょっと風音ちゃん……天音から離れてくれないかな……?」
「嫌です。千歳さんが離れてください」
俺を挟んで激しいにらみ合いをする幼なじみと妹……何でこうなった?
悩む俺を兄さんや親父達は面白そうに眺めている。見せ物じゃないぞこれは!
「千歳さん、いくらお兄ちゃんの幼なじみでもベタベタし過ぎですよ」
「私はただの幼なじみじゃないよ。私と天音は結婚を前提にお付き合いしている恋人同士なんだから♪」
あ、やっぱりそれを言っちゃうのね。
「なあっ!?」
風音は俺と千歳が恋人同士と聞いてとても驚いている。
「おおお、お兄ちゃんと千歳さんが恋人同士ぃ!?」
「ええ。もうキスはしたし、一緒に寝たわよ」
「キスに寝たぁ!?」
「補足説明をするが、ただの添い寝だぞ、添い寝」
「えっ?何を言っているの、天音。あんなに激しくしたのに……」
千歳が顔を赤くしながら何かとんでもない爆弾発言を言っている。
「あまり聞きたくないが、何のことだ……?」
「決まってるじゃない、子・作・り♪」
その瞬間、俺は二人を引き離すと顕現陣から蓮煌を取り出してクーラーの風を浴びて涼んでいる白蓮に目を向けた。
「白蓮……契約――」
「ストップだ、天音!!」
璃音兄さんが鳳凰剣零式を出そうとする俺を羽交い締めをして止める。
「いくら恥ずかしいからってアーティファクト・ギアはやり過ぎだ!」
「離してくれ……このアホ幼なじみに裁きを下さなければ……じゃないと面倒なことに……」
「時音さん。私達の初孫よ、初孫!」
「ああ。天音と千歳ちゃんの子ならきっと可愛い子供が産まれるだろうニャー……」
『良かったわね、六花』
『おめでとうニャー!』
ほら見ろ。既に母さんと親父と美雪とタマが変な話をしているし!!
「おおお、お兄ちゃんと千歳さんが……ベッドの上で合体……赤ちゃん……うわぁあああああああああん!!!」
風音に関しては頭がオーバーヒートし過ぎて何やらヤバい妄想をして床を転がっている。
小学生なのに大丈夫か、我が妹よ……。
ちなみに、花音姉さんと刹那と麗奈は冗談とわかっているので特に反応せずジュースを飲んでいる。
よかった、まだまともな人間がいて……。
『ピィー?』
『白蓮よ、まだお前は何も知らなくて良い』
何が起きたのか分からない白蓮に姉貴分の銀羅がそう告げた。
そして俺は千歳を黙らせて親父や風音達の誤解を解くのに奮闘した。
千歳には後で必ず制裁を加えると誓い、俺は久し振りの我が家を寛ぐことに専念した。
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学園のみならず実家でもドタバタで天音君は大変です(笑)
新キャラの風音ちゃん、六花さん、時音、美雪、タマは如何でしたか?
個人的に六花さんは大好きです(爆)
次回は風音の秘密などに迫ります。




