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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第4章 騎士王顕現編
64/172

第53話 英国、別れの時

長かったイギリス編もようやく終わりを迎えました。


セシリアの玉砕やラストの新キャラが見所です(笑)

セシリアの放った光の斬撃に呑み込まれたディルストは地面に倒れており、体から闇の魔力と共に肉体が消失していた。

同じ魔人であるアリス先生は哀れんだ目でディルストを見下ろしていた。

「哀れね。人間を捨てて魔人になりながら、そんな様になるとはね……」

「私の野望が……世界の混沌が……」

「……消える前に一つ答えなさい。誰があなたに竜繰の魔導書を渡したの?」

「使徒、だ……」

「使徒?」

「世界の全ての邪悪なる魔を生み出した始まりの人……“混沌の始祖”」

ディルストの口から語られる黒幕の存在にアリス先生は目を大きく見開いて驚く。

「混沌の始祖……!?」

「私に魔導書を渡したのはそれに仕える十二人の使徒の内の一人だ。これを使い、世界を混沌に導けと……」

「その結界がこんな末路……もはや哀れを通り越して愚かね」

「無限神書の魔女よ……貴様は自らを最強の魔法使いと自負しているだろうが、始祖と使徒からこの世界を救えると思っているのか?」

「まさか……また五十年前の大戦をもう一度起こすつもりなの?馬鹿馬鹿しい……」

「これからの世界、どうなるかわからん……混沌か破滅か、それとも……」

「そう簡単に世界を滅ぼさせないわ。少なくとも……私やみんながいる限りね」

アリス先生の言葉を聞いたディルストはどこか満足した表情となり、肉体の消失する速度が速くなる。

「ならば、地獄から見ているとしよう……貴様等の破滅の行く末を……」

その言葉を残し、ディルストの肉体は完全に消失してしまった。

これから先、そう遠くない未来に起こるかもしれない言葉を残して……。

しかし、何にせよ、ディルストによるイギリスを乗っ取り、戦争を起こそうとしたクーデターは未然に防がれた。

俺達の戦いはひとまず終わるのだった。



翌日、イギリスでは大混乱だった。

長年英国国家に仕えてきたディルストの反逆にドラゴンの大群の襲撃でマスコミやメディアが王宮に押し掛けてきた。

幸い死傷者が居なかったが、イギリスの街はドラゴンの攻撃で大きな被害が出ていた。

復興に時間が掛かると思っていたが、そこにアルティナ様が立ち上がった。王家に伝わる聖杖を手に、相棒のラベンダー・ドラゴンのリーファと共に半壊した街の中心へ立つ。

「さあ、行きますわよ、リーファ」

『ええ』

「契約執行!」

アルティナ様はリーファと聖杖を契約し、アーティファクト・ギアを作り出す。

アルティナ様が手にしたのはラベンダー・ドラゴンを象徴するラベンダーの花が飾られた綺麗な杖だった。

「アーティファクト・ギア、ラベンダーズ・ロッド!」

ラベンダーズ・ロッドを手にしたアルティナ様は柄を地面に置くとそっと呟いた。

「リカバリー・トゥモロー」

ラベンダーズ・ロッドが紫色の閃光を放つと、ドラゴンによって壊された建造物や道路が見る見るうちに元通りに復元していく。

ラベンダーズ・ロッドは戦闘能力は皆無だが、壊れた建造物を元通りに復元し、アルティナ様自身が頭に思い描いた建物を一分程度で作り出すことが出来ると言う『何かを生み出す』珍しい能力を持つアーティファクト・ギアだった。

その能力により、あっという間に半壊したイギリスの街を元通りにした。

アーティファクト・ギアの世界は人と聖獣の数だけ多くあり、本当に広くて深いものだと実感した。



アルティナ様による復興や世間に対する会見が無事終わり、俺達は王宮に集められた。

「みなさん、今回はイギリスを守っていただき、本当にありがとうございました」

イギリスを救ってくれた俺達に頭を下げて謝礼をした。

「つきましては、皆さんにお礼として騎士の称号を贈りたいのですが……」

「いらないわよ、称号なんて」

千歳が騎士の称号をいらないとあっさり言った。

「チ、チトセ!?」

「私達はあなたを守るために戦ったのよ。それに私達は日本人だから、騎士の称号は似合わないからね」

実はこの事は俺達で話し合って決めたことだ。大臣に騎士の称号を贈呈する話を予め聞いた時に俺達は断ることにした。

天星導志の璃音兄さんや花音姉さん、それに魔女のアリス先生が騎士の称号を貰う訳にはいかないから日本組の俺達は受け取らないことにした。

「その代わり、その分ペンドラゴン教会の四大騎士とシルヴィアさんにお礼をしてあげて。お願い、アルティナ!」

これはアルティナ様と親友である千歳だからお願い出来る事だった。

千歳の性格を理解しているアルティナ様は諦めたように苦笑を浮かべた。

「わかりました……それでは、ヴァークベルさん、レイズさん、キュアリーさん。あなた達の望みは何ですか?」

「えっ!?えっと……」

「う、うっ……」

「え、あ、あの……」

名前を呼ばれた三人は突然の事にオロオロとしていたが、シルヴィアさんが代わりに言った。

「アルティナ様、この三人を英国を守護する騎士にしていただけませんか?」

「騎士にですか?」

「はい。三人共、幼き頃よりこの国を守る騎士になることを夢見ていました。是非ともお願いいたします」

「わかりました。ドラゴンと対等に渡り合える実力を持つ三人が騎士になりたいと望むなら喜んでお受けいたします」

三人が騎士になることが決まった瞬間、


「いよっしゃあ!!」

「……よし!」

「念願の騎士だー!」

三人は嬉しさのあまり飛び上がっていた。

「騒ぐな、馬鹿!」

「ふふふ。シルヴィアさんはどうなさいますか?」

「私、ですか……?」

「元は母に仕えていた有能な騎士……よろしかったら、騎士団に戻って騎士団長にでも……」

確かにシルヴィアさんの実力から考えたら騎士団のトップである騎士団長になる事も可能だ。面倒見も良いし、指導者としての器もある。

騎士団長として申し分ない人材だが、シルヴィアさんは首を横に振った。

「申し訳ありません。お断りさせていただきます」

「どうして、ですか?」

「ペンドラゴン教会にいる大勢の子供達がいます。今更騎士に戻って、その子達を他に預けるわけにはいきません。私はシスターとして、あの子達の母親として生きていくつもりです」

「そうですか……でしたら、騎士達の師範になっていただけませんか?」

「騎士達の師範?」

「週に一日、騎士達の師範として鍛えるのはいかがでしょうか?その代わり給料は教会の子供達を十二分に養える額で。国からの補助に加えれば相当な額になりますよ」

月約4回の仕事で教会にいる子供達を養えるお金といったら相当な額だ。騎士にとっても貴重な指導を受けるのだから双方にとってありがたい話だ。

「お受けいたします、アルティナ様」

「「「「決断早っ!?」」」」

考えるまでもなく話を受けたシルヴィアさんに四大騎士は思わず突っ込んだ。

そして、最後にアルティナ様の双子の妹であるセシリアだった。

「セシリア。あなたは何が望みですか?私に出来ることがあったら何でも言ってください」

自分に双子の可愛い妹がいると知ってからアルティナ様はセシリアを可愛がろうとしている。

「それじゃあ……一つだけ」

「何ですか?」

全員の視線がセシリアに集中する。




「姉さん。俺を“騎士王”にしてくれ」




それはセシリアが普段から口にしている自分の夢だった。

「騎士、王……?」

「俺、政治とかそう言う難しいことは分からないし、自分の誇れるもんと言ったらこれしかないからな……」

セシリアはエクスセイヴァーを鞘から抜いて構える。

「俺もみんなと一緒に騎士になりたかった。でも俺が目指しているのはただの騎士じゃない。騎士団長より上の、王として騎士達を纏め、共に国と民を守る存在……騎士王になりたかったんだ」

「なるほど。国の政治は私で、国の守護はセシリア……二人の王女がそれぞれ自分の適した役目を担う訳ですね?」

大昔の王家などの身分の高い家では兄弟がいると必ずと言っていいほど継承者争いが起きるが、この二人に関しては元より争うことなく、お互いを補い合いながらバランスが取れた王となっている。

「そう言う訳だ。俺は大切な仲間達を、この国に住むみんなを、そして……姉さんを守る剣、最強の騎士王になる!」

王女としての自覚に目覚めたセシリアの決意にアルティナ様はセシリアの手を握る。

「セシリア、これからよろしくお願いしますね。共にこの国を守り、平和で豊かな国にしましょう」

「任せてくれ、姉さん!」

生まれてから十六年間離れ離れだった双子の姉妹は二人の英国王女として共にイギリスを守っていく決意と姉妹の絆を固めた。



それから遂に日本に戻る時間が迫る中、俺はセシリアに呼ばれた。

そこは王宮で用意されたセシリアの部屋だった。高級そうな家具が至る所に立ち並び、少し居座り辛かった。

「今回はありがとうな。アマネ達のお陰で助かったよ」

「いや。俺達は手伝っただけで最後はセシリアがしっかり決めたじゃないか。でも、何で俺だけなんだ?他のみんなも頑張ったのに……」

「もちろんみんなにも後で礼を言う。ただ、お前と……」

セシリアは顔を下に向けて俯いた。

「俺と?」

「ふ、二人っきりになりたかったんだ……」

「は……?」

セシリアの言っていることの意味が分からず俺は呆然とした。そして、まるでその隙を狙ったかのようにセシリアは俺に近づいて唇を重ねた。

その時、俺の思考は久しぶりに完全に停止した。セシリアがゆっくり唇を離すと、ようやく俺の思考が再起動して何が起きたのか理解できた。

俺は……セシリアにキスされたのだ。

「セ、セシリア、何を……」

「アマネ、いきなりこんな事をしてゴメン。だけど、これが俺の……私の気持ちなんだ!!」

セシリアは飛びつくように俺に抱きついて来て、すぐ目の前で叫ぶように言う。




「私は……お前が好きなんだ!!」




人生で二人目となる女の子からの告白だった。一人目は言わずもがな千歳だ。

まさかセシリアが俺の事が好きで、ストレートな告白をするとは思わなかった。

だけど、俺には……。

「セシリア、気持ちはとても嬉しいよ。だけど……」

「わかっている」

それを伝えようとすると、セシリアは人差し指で俺の唇を閉じた。

「アマネがチトセの事を大切に想い、愛しているのは最初からわかっている。だけど、私はこのままなにも言わずにアマネと離れ離れになるのは嫌だったから告白したんだ。玉砕覚悟でな……」

「セシリア……」

「それに悔しい気持ちから千歳に一矢報いるつもりで私の……英国騎士王のファーストキスをあげたんだ。光栄に思えよ?」

セシリアは舌をちょっと出してイタズラっ子のような笑みをする。

さっきのキスの事を思い出すだけで顔が熱くなるから確かに一矢を報われた……。

「まあ、もしもだけど……チトセと別れたらすぐに私に言えよ?真っ先にアマネを私の婿として迎えてやるからな」

「騎士王様からそんな事を言われるなんて恐れ多いです……」

もしもそうなったら俺は英国の王家の一人になるけど、そんな未来は簡単に想像出来ないよ……。

「まあ、とにかくだ……私はアマネにキスして告白したからスッキリした」

「その、ごめん……」

「謝るんじゃねえよ。ただ、騎士王として最後に一言だけ言わせてくれ」

セシリアは恋する乙女でなく騎士王として振る舞い、俺の前に立っていた。

「この先、アマネやチトセ達に避けられない大きな戦いに巻き込まれそうになった時は遠慮なく言ってくれ。私や騎士団のみんなは世界中何処だろうとすぐにアマネのところに駆け付ける。約束だ!!」

エクスセイヴァーを抜き、騎士としての約束を俺に交わした。

「セシリア……なら俺も約束だ。もしまたイギリスで何か大きな戦いが訪れた時、俺はセシリアの元に駆け付ける!!」

俺は顕現陣から蓮煌を抜き、セシリアのエクスセイヴァーと交差させて俺も約束を交わす。

英国の騎士王と日本の神子剣士……国と身分が大きく異なる二人の友情を越えた深い絆がここに結ばれた。



天音に告白して、見事に玉砕されたが私の心は妙に晴れていた。

自室のベッドに横たわり、天井を見上げると窓から誰かが進入する。

「セシリア、大丈夫?」

「アルトリウス……」

私の契約聖獣であるアーサー王の生まれ変わりの竜人・アルトリウスだ。

「見事に玉砕されたわね」

「見ていたのか?覗きが趣味な騎士王様なんだな……」

「あいにく、今は騎士王じゃなくてただの竜人よ」

竜人に転生して王様からかなり自由な性格になったみたいだ。

「……なあ、アルトリウス」

「ん?なに?」

「愛とか恋って、難しいよな」

「……そうね。私も前世でランスにギネヴィアを寝取られたからね」

振り切ったつもりでも未だにランスロットに妻を寝取られた事に傷ついているらしい。

「そう言えば、愛する妻を寝取られたんだよな……そう言えば、ランスロットはどうしたんだ?姿が見えないが……」

「ランスは自分の契約者を探しに旅立った。偶には帰ってくるように命令したから心配はしてない」

「そうか。良い契約者に出会えれば良いな」

「そうね。さて、話を戻すけど、愛や恋はある意味戦いより難しいの。私達には心があるから……」

「心、か……」

人間や聖獣には誰しも心があるから光にも闇にもなる。私は光の心を持っているだけど、もしかしたら闇の心になるかもしれない。

アルトリウスは自身の経験から忠告するように私に言う。

「セシリア、私達の国は人の闇の心で滅んだ……だから、闇に打ち勝て。私はこの国を同じ二の舞にしたくない」

確かにアーサー王物語は史実かどうかは分からないけど、登場人物が抱える多くの闇の心が国を破滅に導いた。

それを誰よりも恐れているアルトリウスに私は心配ないと笑いかける。

「心配するな、アルトリウス。もし私が闇に堕ちたら仲間達やシスターが私をぶん殴ってでも光に呼び起こしてくれるよ。それに、アルトリウスだって私を起こしてくれるだろ?」

私は騎士王だけど、対等に話し合う大切な人達が側にいるから闇に堕ちることは特に心配していない。

「そうか……それなら安心ね」

アルトリウスはベッドから降りると私に手を差し出してきた。

「改めて、これからよろしくね、セシリア・ペンドラゴン。いや……本当の名前は“セシリア・G・セイヴァー”かな?」

「ははっ、どっちでも良いよ。私にとってペンドラゴンもセイヴァーの方も大切な名前だよ」

私はアルトリウスの差し出してきた手を握る。

「これからよろしくな、アルトリウス。元伝説の騎士王、アーサー・ペンドラゴンとして共にこの国を守っていこうな」

「ええ、任せてちょうだい」

私はこのイギリスを平和で豊かな国にしたい。

難しいかもしれないが、アルティナ姉さん、シスター、ヴァン、レイズ、キュアリー、そして……私の相棒のアルトリウスがいればそれが実現する事も夢ではないと確信する。



旅行とパーティー参加のために訪れ、大きな戦いに巻き込まれたイギリス旅行も遂に別れの時がきた。

境界輪廻でこっちに来た恭弥達みんなはそれぞれ最初にいた場所へ戻っていった。

アリス先生もいつの間にか消えていたので多分図書館城の地下室に帰ったのだろう。

そして俺達は日本行きの帰りの飛行機に乗るために空港に訪れていた。

そして空港にはセシリアとアルティナ様、四大騎士が見送りに来てくれた。

「じゃあな、アマネ。あの約束、忘れるんじゃないぞ」

「もちろん」

セシリアと握手をすると、顔を耳元に近付けてで小さな声で囁いてきた。

「それから、婿の件も忘れるなよ」

「えっ?あ、ああ……」

さっきの事を思い出し、顔が赤くなってしまう。

「天音……セシリアと何かあった?」

『ピィー?』

アルティナ様と別れの挨拶をしている千歳は直感で何かに気づき、白蓮は小さな首を傾げる。

「チトセ、来てくれてありがとう。またイギリスに来てね」

「うん!あ、これ……渡しそびれちゃったけど、誕生日プレゼント!」

「まあ、ありがとう!これは……レイジング!?」

それは千歳の愛銃・レイジングと同じ形をしたオートマチックとリボルバーを合体させた合成銃だった。しかもプレゼント用の綺麗なリボンが巻かれていた。

「王女様だから何をあげたらいいか分かんなかったから、護身用にレイジングと同じ銃をプレゼントするね♪」

「ちょっと千歳!!何王女様に銃をプレゼントしてるんだよ!?」

「姉さんに何を渡してるんだこのクレイジーガール!!」

俺とセシリアは銃をプレゼントした千歳を叱ろうとしたが、

「ありがとう、チトセ!早速王宮に戻ったら練習するわ!」

「「ええぇーっ!?」」

アルティナ様は銃を抱き締めて嬉しそうに笑い、俺とセシリアは驚愕した。

「実は小さい頃からチトセの影響で銃に興味があったから、プレゼントしてくれてとても嬉しいわ」

「じゃあ、今度会った時は射撃対決をしましょう!」

「望むところです!」

まさかの展開に俺とセシリアは顔をひきつってしまう。

やっぱりアルティナ様は千歳の影響をかなり受けているようだった……。

『流石は我らの千歳だな……』

銀羅の言う通り流石としか思うしかなかったが、

「これで良いのか……?」

「姉さん……」

英国第一王女がハチャメチャな幼なじみで性格がおかしくなっていくことに申し訳なくなっていく。

そして、遂に飛行機の時間となり、俺達はセシリア達と最後の別れをする。

「アマネ、みんな!お前達に出会えて良かったぜ!!」

「チトセ!皆さん!またお会いしましょう!」

「今度はみんなで絶対に日本に行くからな!」

「セツナ、今度あったら拳を交えよう!」

「レイナ、また日本食の作り方を教えてね!」

セシリア達は大きく手を振りながら叫び、俺達も手を振りながらそれに応えて叫んだ。

「俺もみんなに会えて最高だよ!また会おう!!」

『ピィーッ!!』

「アルティナ、みんなと一緒に仲良くね!」

『さらばだ、英国の騎士よ!』

「レイズよ、望むところでござるよ!」

「キュアリー!今度会ったらたくさん教えますねー!」

遠いイギリスの地で俺達は楽しくも頼もしい友人を得て、飛行機に乗って故郷の日本へ帰るのだった。



イギリスから日本への飛行機の長旅が終わり、日本の空港に到着し、タクシーで天聖学園に戻ると……。

「天音、待ってたぞー」

「飛行機の長旅、お疲れ様」

アリス先生と同じくいつの間にか消えていた璃音兄さんと花音姉さんがいた。

「二人共、先に流星で帰っていたんだね」

「ええ。麒麟のスピードは天下一品だから♪」

「それで一足先に天聖学園に来てたんだよ」

「でもなんでここに?天星導志の仕事は?」

天星導志としてイギリスの戦いが一段落したら二人は次のところへ行くと思っていた。

すると二人は得意げな笑みを浮かべた。

「実は有給休暇を取ったんだよ」

「ゆ、有給休暇ぁ?」

「私と璃音はここ最近働いてばかりだったからボスを脅――じゃなくて、お願いして休暇を貰ったのよ」

正義の組織の天星導志に有給休暇と言うものが存在する事に驚きだが、そのボスを脅して有給休暇を無理やり貰ってきたことにも驚いている。

「溜まりに溜まった有給休暇を消費するために天音達の夏休みと一緒の休みを取ったんだよ。天音、久しぶりに一緒に夏休みを過ごそうぜ!」

「と言うわけだから……すぐに蓮宮神社に帰るわよ!!」

「それから天音の帰りを“風音”が凄く待っているからすぐに行こうぜ」

兄さんの口から『風音』と言う名前を聞いて俺はすぐにでも実家に帰る気になった。

「風音……わかった、刹那。帰ってきて早速だけど蓮宮神社に行くぞ!」

「了解でござる!」

「じゃあ……私も実家に帰ろうかな?れいちゃん、私達も行こう」

「はい、かしこまりました!」

俺と刹那は璃音兄さんと花音姉さんと一緒に実家の蓮宮神社へ、千歳と麗奈は天堂家へ帰る事にした。



その頃、蓮宮家の本家である大輪の蓮の花が咲き誇る神社、『蓮宮神社』。

その蓮宮神社の地下深くにある古い洞窟があった。洞窟には青白い霊力を纏った二本の刀が地面に突き刺さっており、それが洞窟全体を淡く照らしていた。

そして、その洞窟に一人の少女が座っていた。

その少女は蓮宮神社伝統の巫女装束に身を包み、代々伝わるしきたりである長い黒髪をしていた。

「ふふっ……鈴音(りんね)。もうすぐ会えるよ」

少女の膝には白い蛇に手足が付いた聖獣が座っていた。

『リン?リン、リーン!』

聖獣――鈴音は鈴の音のような高く綺麗な声を出して少女に応えた。

少女は微笑みながら鈴音の体を優しく撫でる。

「私が大、大、だーい好きな、“天音お兄ちゃん”に鈴音の事を紹介するね」

「リリン、リーン!」

鈴音は少女の体をよじ登り、マフラーのように自身の長い体を少女の首に巻いた。

その心優しく、可愛らしい少女は天音の妹――『蓮宮風音』。

現代の蓮宮巫女の中で最強と謡われている天才剣士である。




.

次回から夏休み編スタートです!


まず始めに天音の実家である蓮宮神社に行きます。


そこで妹キャラの風音や天音の両親が登場しますのでお楽しみに!

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