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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第1章 召喚と契約編
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第6話 運命の誕生

お待たせしました。

天音の契約聖獣となる子の誕生です。

 俺以外の聖獣召喚と聖獣契約が無事に終了し、天聖学園二日目の夜を迎える。

 千歳の契約聖獣である九尾の狐の銀羅は人間界の初めての部屋に驚きながらも、千歳と一緒に寝るベッドを気に入っている。

 そして、机の上には引き取る事にして、今夜産まれる予定の不思議な卵が毛布に包まれて置かれている。

「生まれる、かな……?」

 心配してしまう俺は卵を優しく撫でる。

「大丈夫だよ、天音」

 シャワーを浴びてきた千歳が椅子を動かして俺の横に座る。ふわっと千歳の体からシャンプーとボデ ィソープの良い香りが鼻を擽る。

「きっと無事に生まれてくるよ」

「だと、良いんだけどな……」

「もう、天音は心配しすぎだよ~」

「心配するよ。変な言い方かもしれないけど、自分の子供が生まれそうな気分だからね」

「子供、ね……だったら私の子供って事になるのかな?」

 千歳はニコニコしながらいつもと同じで相も変わらず変な事を言う。子供って……。

「変な言い方をするな。って、言っても千歳には無駄か……」

「無駄って何よ~? まあ、いつかは天音との子供が欲しいけど……」

 頬を赤く染めて両頬に手を添える千歳に俺はまた頭に頭痛が響く。こ、子供って……まだ俺たちには早すぎるだろ。

「千歳、学生の内の過ちだけは止めて欲しいな……」

「わかっているよ~。天音が責任取れるまでじっくり待っているからね♪」

「はい、はい……」

 千歳の言葉をスルーして卵を温めるように撫で続ける。

「ねえ、天音。そろそろシャワーを浴びてきたら? 私が代わりに温めてあげるから」

「そうだな、頼むよ」

「うん!」

 千歳に卵を温めてもらう役を代わってもらい、バスタオルと着替えを持ってシャワー室に向かう。


   ☆


「さてと……よしよし」

 私は愛しの天音と交代して、不思議な卵を毛布で包みながら手で撫でて温めていく。

『千歳』

「ん? なーに、銀羅」

 私の契約聖獣の銀羅がベッドから降りて私の元に来る。

『旦那が居ない内に聞きたい。千歳はどうして旦那を好きになった?』

「天音を好きになった理由? 聞きたいの?」

 銀羅はコクンと頷いてジッと私を見る。まあ、銀羅なら教えても良いかな?

「良いわよ、教えてあげる。私と天音はね、生まれた時からの幼なじみなんだよ」

『生まれた時から……? それは、どういう事だ?』

「私と天音は同じ病院でほとんど同じ時間に生まれたの。ちょうど、私と天音の両親はそこで出会って すぐに友達になって、その不思議な縁でそれからずっと天音と一緒なの」

生まれてから約15年間……ずっと、ずっと一緒に居たから、私は自然に天音に惹かれて大好きになった。だから、私は天音を手に入れたいから、いつもあれこれと魅了してアタックしている。まあ、魅了してもいつも天音に軽くあしらわれるけどね……。

 そして、生まれた時からの幼なじみという私と天音の不思議で私にとって当たり前な縁の話を聞いた銀羅は呆れ顔で私を見つめてくる。

『よくも、まあ、そんな幾つもの偶然が重なったな……』

「まぁね。人生の半分以上も一緒に過ごしてきたからね」

『だが、旦那は千歳の事をあまり好いていないのではないか? 見た感じの雰囲気では……』

「ああ、あれね? 天音はちょっと素直になれないのよ。簡単に言えば、照れ隠し。天音も私にベタ惚れだから大丈夫♪」

『ベタ惚れ……そうか……』

 銀羅はどうしてかわからないけど、呆れ顔でため息をついて私の膝に頭を乗せる。私は膝に頭を乗せた銀羅の頭を開いている左手で撫でて、願いを込めるように卵に話しかける。

「無事に生まれてきてね。そして、天音と契約して最高のパートナーになってね」

 そう話しかけて私は天音がシャワーを浴び終えて戻ってくるまで卵を撫で続けた。


   ☆


 それから、俺がシャワーから出て寝間着に着替え、千歳と一緒に卵を温め続けると、遂にその時が来た。

 ピシッ……ピシッ!!

 突然、卵から眩い光が放たれる。ピシッ、ピシッと卵にヒビが入り、念願の卵の中から何かが生まれようとした。

「千歳……!」

「うん、遂に生まれるね!」

 俺と千歳は嬉しさがこみ上げてきて卵を突き破って出て来るその瞬間を待ちわびた。銀羅も目を覚まして起きあがり、卵をジッと見つめた。

 少しずつ卵が割れていき、パカッと一気に真っ二つに割れて――生まれた。

 卵から生まれたモノにオレと千歳と銀羅は目を丸くして見つめた。

「「…………雛?」」

『これ、鳥の卵だったのか?』

 白くて小さな体にまだ柔らかい嘴と翼。それはとても小さな鳥の雛だった。

『ピィ……』

 目がまだ開かない雛は弱々しい高い声で鳴く。

「……はっ!? 天音、早くこの子の体を拭いてあげないと! 風邪を引いてしまうよ!」

 いち早く正気になった千歳に言われ、すぐさま俺達はタオルとお湯を用意して雛の体に纏わりついている粘液を拭き取って体を乾かした。

『ピィー……ピィー……』

 産まれたばかりの雛はお腹をすかせているのか必死に鳴き続けていて、それに気づいた千歳が行動に移す。

「天音、ちょっと雛ちゃんの餌を買ってくるね!」

「えっ? でも、今は寮の外出禁止時間……」

「雛ちゃんにご飯を食べさせなきゃ可哀想だよ! 後で先生に連絡するから大丈夫! 天音は雛ちゃんを見ていて!」

 千歳のやる気に満ち溢れた気迫に俺は頷くしかなかった。

「銀羅、行こう!」

『分かった』

 上着と財布を持ち、銀羅を連れて部屋を取び出した千歳は腹を空かせた雛の為に餌を買いに向かい、そして部屋に残った俺と雛。

『ピィー!』

 雛はご飯を待ち焦がれているように鳴き、人差し指で頭を撫でる。

「ちょっと待っていてな。千歳母さんが帰って来るまでな」

『ピィー……ピィー……!』

 まだ飛ぶこともできず、目が空いてない雛は一生懸命鳴き続ける。


   ☆


 それから数十分して、千歳が大量の雛の餌を買って戻ってきた。「そんなに餌は必要ないだろう……」とぼやいたが、そんな心配はいらなかった。

『ピピピピ、ピィーッ!!』

 雛は餌を目の前にすると、火がついた火薬のようにバクバクと勢い良く食べ始めた。どう考えても雛が食べるレベルではないほどの量の餌を食べ、それがすぐに体に変化が現れた。

「目、いつの間にか開いてる……」

「それに、羽毛が生えて飛んでいるね……」

 生まれたばかりで目が閉じて、羽毛すら生えていなったのに餌を食べたら目が開いて卵と同じ七色の瞳が現れ、綺麗な純白の羽毛が生えていた。もはや雛は僅か一時間弱で、生後数週間の状態まで成長してしまった。さらに驚くことは、まだおぼつかない感じだが、パタパタと小さな羽を一生懸命羽ばたかせて、小さく飛んでいるという脅威的な成長だった。

「まあ、無事に成長しているから、OKなのかな?」

 千歳は買ってきた餌を皿に盛りながら苦笑いを浮かべる。

「まさか、こんな大食いで成長速度が異常だとは思わなかったよ……」

「それで、この子の名前はどうするの?」

「名前?」

「そうよ。いつまでも雛ちゃんって呼ぶわけには良かないからこの子の名前を決めなきゃ。なんなら、私が名付け親になってあげようか?」

「いや、それは遠慮しておくよ。それに、名前はもう考えてあるんだ」

「そうなの? じゃあ、早く名付けないと」

「そうだな。さーて、雛ちゃん」

『ピィ?』

 食事中だけどちょっと失礼して雛を両手で包み込むように持ち上げると、雛は何事かと疑問符を浮かべる。

「今からお前に名前を付けてやるからちゃんと聞いてくれよ」

『ピィー?』

「お前は綺麗な白い羽毛に体を包んでいて、俺の一番大好きな花を連想させるから、今からお前の名前は――“白蓮”だ」

雛の名前――白蓮。

 この名前の由来の蓮の花は、実家の蓮宮神社で毎年の夏に池を埋め尽くすほどの大量の蓮が白とピンク色の美しい花を咲かせている。そして、白色の花の蓮……つまり白蓮は俺が特に一番好む花だ。

蓮には“神聖”や“清らかな心”と言う花言葉が込められている。だから、この雛にはそんな存在に育って欲しいと願って白蓮と名付けた。

「いいか? お前は白蓮、白蓮だぞ。」

『ピィーピ?』

「よろしくね、白蓮ちゃん♪」

『ピィピー?』

 俺と千歳に名前を呼ばれた雛――白蓮は何のことか分からずに首を傾げた。

『取り敢えず……よろしく頼むぞ』

 銀羅は自慢の九本の尻尾で白蓮の体を撫でる。

『ピィー♪』

フサフサで触り心地抜群の銀羅の尻尾に撫でられた白蓮は気持ちいいと鳴いた。その後、俺と千歳と銀羅は夜通し白蓮の世話をして、夜が明けてしまった。



.

天音と千歳の関係を踏まえた話はどうでしたか?

もはや天音リア充爆発しろと言われても仕方ないですね(笑)

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