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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第4章 騎士王顕現編
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第47話 ドラゴン退治開始、毒蛇と木精の力!

今回は紅&アスクレピオス、恭介&若葉が主役です。


ドラゴン退治はまだまだ始まったばかりです。

空に現れた魔法陣から出て来たドラゴン達が動きだし、蒼燕さんが前に出る。

「皆さん、陣頭指揮は私が取ります!」

両手の甲が輝き、二つの顕現陣が浮かび上がり、顕現陣の中から二体一対の双剣が現れた。

一本は刀身に亀裂模様、もう一本には水波模様が浮かんでいる。

「招来……陰陽剣、“干将・莫耶”!」

陰陽剣と呼ばれたその双剣を蒼燕さんは両手で構えて華麗に振り回し、太公望さんが背後に現れる。

「太公望さん!」

「うむ!」

「契約執行!仙道軍師、太公望!!」

仙人であり、古代中国伝説の軍師である太公望さんの体が粒子化し、干将・莫耶の中に入り込んでアーティファクト・ギアを作り出す。

「アーティファクト・ギア、“神羅太極剣”!!!」

蒼燕さんと太公望さんのアーティファクト・ギアである神羅太極剣は契約媒体となった干将と莫耶の見た目はほとんど変化はないが、刀身には古代中国の思想である白黒の勾玉を組み合わせた形をした陰陽太極図が刻まれている。

蒼燕さんは自然体で立ち、神羅太極剣を降ろすと足元に太極図が現れる。

「太極図、配置!!」

太極図が一瞬輝くと、中国独特の不思議な漢字や紋様が次々と現れてそれが一気に地面全体に広がっていく。

「太極図、配置完了……ある程度の指揮と情報は念話(テレパシー)で私が伝えます。後は皆さんの判断で行動してください!」

そう聞いた紅さんは真っ先にニヤリと笑って反応した。

「それなら……好きにやらせて貰おうかな!!」

『うおっ?』

そう言うと、紅さんは契約聖獣のアスクレピオスの首根っこを掴んで街の方へ走り出した。

「あのドラゴンが街の方へ行くかもしれない。私は街の人を守り、怪我人を直すことに専念させてもらう!」

「ま、待ってください!お母様!」

「紅様、お待ちを……!」

先に走り出す紅さんを追いかける雫先輩と迅先輩だった。

他のみんなもそれぞれでチームを組んでドラゴンに挑んでいく。



side雫&迅&紅。

医者であるお母様はアスクレピオスの首根っこを掴んで全力疾走で宮殿から街の近くに向かいました。

「さーて、来たぜ。血に飢えたドラゴン達がよ……」

街に住む人間がドラゴンが降下して襲いかかろうとしています。

「アスクレピオス!!」

『ふぅ……わかった。早くしろ』

「ああ!契約執行!神医、アスクレピオス!!」

お母様が長年愛用している紅色に杖にアスクレピオスが粒子化して契約されます。

「アーティファクト・ギア、“ロッド・オブ・アスクレピオス”!!!」

お母様が手にしたのはアスクレピオス自身が持つ蛇が巻き付いた杖、通称『アスクレピオスの杖』と酷似したアーティファクト・ギアでした。

ロッド・オブ・アスクレピオスを持った瞬間、お母様の雰囲気が変化し、空いている右手を軽く掲げました。

「喰らいな……毒蛇の牙!!」

すると、お母様の右手の五指の爪が鋭く伸びてどろりと紫色の液体が出ました。足腰に力を込め、高くジャンプして降下するドラゴンと対峙します。

「ヴァイパー・バイト!!!」

お母様の右手がまるで毒を纏わせた牙と強靭な顎を持つ毒蛇のように変化し、ドラゴンの体に傷を付けました。地上に降りたドラゴンはお母様に再び襲いかかろうとしましたが……。

『ガァアア……ガッ、アァ……?』

ドラゴンは突然固まるように止まってしまい、そのまま倒れてしまいました。

「心配するな。お前に打ち込んだのはただの麻痺毒。ただ、最低でも1日は動けないがな」

お母様は不敵の笑みを浮かべてドラゴンを見下ろしました。

ロッド・オブ・アスクレピオスはあらゆる怪我や病気を直す治癒系のアーティファクト・ギアの中で最高峰の能力を持っています。

しかし、ロッド・オブ・アスクレピオスの能力の一つで世界に存在する全ての『毒』を自由自在に操ることができます。

それは、先程ドラゴンに打った体を痺れさせる麻痺毒から生命を死に至らせる恐ろしい毒も……ですが、お母様はその毒で命を奪ったことがないと仰っていました。

医者として命を救うことに誇りを持っているお母様は何があってもこの毒で命を奪わないと心に誓っています。

私はそんなお母様が大好きで、人生の大きな目標でもあります。

「さあ、迅!私達も負けてはいられません!」

「ああ。紅様だけに戦わせるわけにはいかないからな……解刃!」

迅は右腕に巻かれた梵字の布を取り、御剣一族の力を解放します。

「破魔之御剣……!!」

剣神の力を宿した右腕が鋼鉄に変化し、何本も鋭利な刃が現れます。

「それでは、迅。少しの間、時間を稼いでくれますか?」

「あれをやるつもりか?」

「ええ。お母様に成長した私の姿を見て貰いたいですから」

「……承知した!」

迅は既に契約執行をしたイージス・オブ・ペガサスを左手で構えてドラゴンと戦います。

その間に私はユニコーン・ザ・グングニールを構えて自らの気力とソフィーの天力を一つにします。

「行きますわよ、アーティファクト・フォース!」

『ブルゥ、ヒヒーン!!!』

ユニコーン・ザ・グングニールからソフィーの唸り声が響き、発動したアーティファクト・フォースの力を更に解放させます。

「ギアーズ・オーバー・ドライブ!!!」

手に持つユニコーン・ザ・グングニールを手放してから宙に浮かせ、呪文を詠唱します。

「作り出すは無限の幻影。幻影は虚空、掴むことのない夢と幻……」

ユニコーン・ザ・グングニールの姿が消え、私の周囲の空間の歪みます。数秒後にユニコーン・ザ・グングニールの姿が再び現れますが、今は無限の幻影として現れます。

「されど、我は望む……幻影の意志と虚空の想い。我が神槍の力を今ここに顕現させる!」

無限の数を持つ幻影の神槍は私が命ずると同時に器を手に入れ、私の奥の手であり、ソフィーとの絆の結晶であるギアーズ・オーバー・ドライブが完成します。

「アンリミテッド・グングニール・ファンタジア!!!」

無限の神槍は私の意志で幻想曲を奏でるように軽やかに、美しく飛んで行きます。

そして、向かってくるドラゴンを無限の神槍で囲んで動けなくして、その間にお母様の麻痺毒と迅の破魔之御剣で戦闘不能にして倒します。するとお母様は私の前に降り立つと、医者の目で私の両腕をじっくりと見ます。

「雫。ギアーズ・オーバー・ドライブを使って腕は大丈夫なのか?」

以前の私はまだ未熟でアンリミテッド・グングニール・ファンタジアを使用すると両腕に負担がかかり、両腕から血が吹き出していましたが……。

「はい。アリス先生が体に負担を掛けることなく使えるようご教授して頂きましたので!」

「そうか。日本のことわざで“男子三日会わざれば刮目して見よ”とあるが……まあ、お前は女だけどな。私が見ない間に雫は随分成長したんだな……」

「お、お母様……?」

お母様は指で目頭を抑えて上を向きました。もしかして、泣いているのでしょうか……?

『紅はお前の成長に感動しているんだよ』

カタカタとロッド・オブ・アスクレピオスが自ら振るいながらの中にいるアスクレピオスが答えました。

『紅にとってお前は“あいつ”との宝物だからな。会う度にすくすくと成長しているお前が嬉しくて仕方ないんだよ』

アスクレピオスの仰った『あいつ』とはおそらく亡くなったお父様の事でしょう。お父様は私が産まれてすぐに亡くなってしまったので私自身は何も覚えていませんが、お母様はお父様の事を『お節介でお人好しのバカ』と称していました。ですが、お母様は恥ずかしいのかお父様との馴れ初めを教えてくれません。まあ、いつか絶対に聞き出しますが。

「……お二方!お話は戦いの後にしてください……」

迅に注意され、ハッとする私達。

「それもそうだな。それでは、雫……」

「はい。奏でましょう……私達家族の幻想曲を!!」

私達雨月一家は家族の結束の力で襲いかかるドラゴンから街の人々を守るために戦います。



side恭弥&雷花&恭介&若葉。

俺はいつもの相棒である雷花と、最強冒険家のじーちゃんと木の精霊のばーちゃんでチームを組んで一緒にドラゴン退治をする。

「さーて、行こうか。悟空!」

『おう。久々の竜退治だ、腕が鳴るぜ!!』

俺のアーティファクト・ギア、如意金箍棒の中にいる悟空は数々の妖魔を退治してきたスペシャリスト。

興奮した声が如意棒から聞こえてくる。

「トール、準備は良いかな……?」

『ガハハハッ!まさかこの時代で竜退治を出来るなんて幸運だな!!』

雷花のライトニング・トールハンマーから悟空と同様に興奮したトールの声が響いた。

やっぱり悟空とトールは似た者同士だなぁと改めて思った。

「伸びろ如意棒!龍牙轟閃!!」

突き立てる龍の牙のように高速で伸びる如意棒で天と同時にドラゴンを衝く。

雷花はライトニング・トールハンマーを掲げて雷雲を呼び出して雷を召喚する。

「轟雷重撃……」

一つの落雷がドラゴンの翼を掠り、飛行のバランスを崩した。そして、雷花はその落雷をトールハンマーで受け止めて雷をチャージし、バランスを崩したドラゴンに向けて雷撃を放った。

「デュアル・サンダーボルト!!」

天空と地上からの時間差の雷撃にドラゴンは避ける暇もなく直撃し、そのまま撃墜した。

あれは空を飛ぶ存在から見たらかなりエグい攻撃だ。これからあの天地から重なる雷撃の餌食となるドラゴン達を思わず哀れみ、合掌してしまった。

「やるではないか。恭弥と雷花ちゃん」

「孫悟空と雷神トール……二人共良いパートナーを持ったわね」

「よし。若葉……わしらも一丁行くかい?」

じーちゃんは懐から長年使っている古い型のリボルバーの拳銃を取り出す。

「久しぶりね。恭介との契約♪」

「ははっ、準備は良いかな?」

「もちろんよ!」

「行くぞ、若葉!契約執行!木精、ドリュアス!!」

リボルバーにドリュアスのばーちゃんが粒子化して中に入り、契約が執行される。

金属製のリボルバーからメキメキと木の根っこや枝が生えて、リボルバー全体を包み込むように巻き付く。

「これが、ワシと若葉の愛の結晶。アーティファクト・ギア……“シード・ザ・ユグドラシル”!!」

そして、一回り大きくなった不思議な姿をした木製のリボルバーが完成した。

じーちゃんはシード・ザ・ユグドラシルを構え、ドラゴンに向かって木の弾丸を発砲した。

木の弾丸はドラゴンに直撃したが、あまりダメージは無いらしく、じーちゃんに狙いを定めて襲いかかる。

「成長しろ、植物の種子弾よ……プラント・バインド!!」

じーちゃんが命ずるように叫ぶと、ドラゴンに撃ち込んだ木の弾丸が緑色の閃光を放ち、たちまち成長してドラゴンの体を巻き付きながら樹木となる。

そして、体の自由を完全に奪われたドラゴンは飛行能力を失い、そのまま地面に落下した。

「さあ、どんどん行くぞ、若葉!!」

『うん!恭介、しっかり狙いを定めてね!』

昔の感覚をすぐに取り戻した二人は次々とドラゴンに木の弾丸を撃ち込んでから樹木に成長させて動けなくしていく。

一方、隣にいる雷花のトールハンマーからトールの不審な声が響いた。

『シード・ザ・ユグドラシル……?一体、どう言うことだ?』

「どうしたの、トール……?」

トールはじーちゃんとばーちゃんのアーティファクト・ギアの名前を聞いて不審な声を出している。

『ユグドラシルとは我々神の世界を含めた“九つの世界”を内包する巨大な木……日本では“世界樹”と呼ばれる存在だ。何故、あのアーティファクト・ギアがその名前を付けている?』

ユグドラシルは北欧神話で登場しているから同じ北欧神話の登場人物であるトールが反応したらしい。

「ああ、その事か。なら答えは簡単だ。ばーちゃんは“世界樹のドリュアス”だからだよ」

俺達浅木家やアリス先生だけが知るばーちゃんの秘密にトールは衝撃を受けて驚きの声を上げた。

『な、何だとぉっ!?あの合法ロリババアがユグドラシルに宿る木の精霊っ!?』

「……見た目は若いけど実年齢はかなり上だから、確かに間違ってないけど俺のばーちゃんをロリババア言うな!」

『痛っ!』

ばーちゃんに失礼な事を言うトールに対して、如意棒でトールハンマーを軽く突く。

雷花は突かれたトールハンマーを抱きしめ、何故か不安な表情で俺を見つめる。

「雷花?」

「恭弥……体、大丈夫なの……?」

「はぁ?大丈夫って何がだよ?」

「その……世界樹の力とか受け継いで、恭弥の体に何か影響があるかと思ったから……」

どうやら雷花は俺の中に流れているばーちゃんの『世界樹のドリュアスの血』が体に何か影響を与えているのでないかと心配してくれたみたいだ。雷花は本当に優しい女の子だな。

「大丈夫だ、心配するな。俺の体は小さい頃から丈夫でしっかり成長しているから問題ナッシングだ」

「そう……良かった。ごめんね、変な事を聞いて……」

「良いさ。心配してくれてありがとうな」

俺は心配してくれた雷花の肩を軽く叩いて如意棒を手の中で回す。

「それじゃあ、引き続き暴れるか?」

「うん……!」

雷花もトールハンマーを手の中で回し、一緒にドラゴン退治を続ける。




『ふふふっ。恭弥ったら、とっても良い子に巡り会えたようね』

「はっはっは、二人の将来が楽しみじゃな!」




シード・ザ・ユグドラシルを連射しながらじーちゃんとばーちゃんが何か言っているが、それは全力で聞かなかった事にした。




.


ロッド・オブ・アスクレピオスは治癒と毒を操りますので敵にしたらかなり厄介ですが、私個人でけっこうお気に入りのアーティファクト・ギアです。


そして、若葉さんの秘密があっさり暴露されました(笑)


世界樹のドライアスと言う設定についてですが、恭弥はクォーターなので木の精霊の力をあまり受け継いでいません。


ただ、これから幾らか覚醒するかもしれません。

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