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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第4章 騎士王顕現編
56/172

第45話 伝説の軍師と木の精霊

また今回も三人新キャラが増えます。


このままだと新キャラが増えすぎてとんでも無いことに……。


下手したらとある魔術並みの登場キャラ並みに多くなりそうです。

クーデターに向けて現段階で集められる戦力をペンドラゴン教会に集められる事に成功した俺達はこれからどうするか迷っていた。主犯であるディルストがどうやってクーデターを起こすかわからない。少なくとも、守護竜のエンシェント・ホーリー・ドラゴンを封印するほどの力を持った竜を操る古の魔導書を使うことは考えられる。

そこで、情報を整理し、作戦を練るために今回クーデターの情報を掴んだ璃音兄さんと花音姉さんの仲間……天星導志の一人と会うことにし、この教会に来てもらった。

「始めまして。僕は蒼燕と申します」

来てもらったのは眼鏡を掛けた、いかにも賢そうなインテリっぽい青年だった。身長は俺と同じぐらいで、ゆったりとした中国のカンフー服を着ていた。名前から察するに中国人だろう。

「それにしても、花音と璃音は凄いですね。たった数時間でこれだけの戦力を集められるとは」

蒼燕さんはクーデターを止めるためにこの場に集まった俺達を見て関心している。

「俺と花音じゃなくて、弟の天音に知り合いが多いからだよ。関心するなら、天音に関心してくれ」

「天音……?ああ、君の従兄弟の弟君だね?」

璃音兄さんは俺に話を振り、蒼燕さんはすぐに俺が蓮宮天音だと気が付いて手を差し出してきた。

「よろしく、僕は蒼燕。君の話はいつも二人から聞いているよ。確か、璃音の氷蓮を受け継いだんだってね?」

「は、はい。どうも……」

蒼燕さんと握手を交わすと、遠くから誰かが教会に近付いてきた。

「ほぅほぅ。なかなか将来有望な子がたくさんおるじゃないか」

それは古い釣竿を持った老人のような口調で話す見た目は青年だがとても不思議な雰囲気を持つ人だった。その人が近付いてくると、蒼燕さんはため息を付いて話しかける。

「全く……遅いですよ。“太公望”さん」

た、太公望?今、蒼燕さんは太公望って言わなかったか?

「なーに、ちょっと釣りをして遅くなっただけだよ。それに、時間には間に合っているじゃないか?」

「相変わらず釣り好きですね。ああ、紹介しますね。彼は“呂尚”。中国大陸にある“崑崙山”の仙人で太公望さんと呼ばれています」

や、やっぱりそうだ!彼は悟空の西遊記と並ぶ中国で有名な小説、封神演義の主人公で釣り好きの有名な軍師と言われている仙人だ!

「おっ、太公望じゃねえか!久しぶりだな!」

「むっ!?主は孫悟空!?まさか、ここで会うとは奇遇だな!」

すると、悟空が前に出て来て太公望と再会を喜び合っている。そう言えば、悟空は大昔にある仙人から不老不死の術を学ぶために入門したことがある。結局不老不死の術を会得することは出来なかったが、それでも分身の術や変化の術を会得している。西遊記と封神演義の時代背景は大きく異なるが仙人繋がりで知り合ったのだろう。

「……コホン。太公望さん、再会を喜ぶのは後にして軍議をすぐに始めましょう。僕達には時間がありませんから」

「おぉ、そうだな。ではまずは戦力と状況を把握しなければな」

ようやく対クーデターに向けた軍議が始まった。まずはこちらの戦力を調べるために蒼燕さんが魔術で俺達全員の戦い方、アーティファクト・ギア、身体能力……などなど個人の戦闘データを記したステータスを作り出して宙に浮かび上がらせた。

「なるほどなるほど。さて、敵の戦力は未知数の状況でどうやって戦おうかのぅ……」

ステータスを見ながら太公望はニヤリと不敵な笑みを浮かべて作戦を練り、それを全員に伝える。

取り敢えず、パーティーには予定通り千歳と俺、白蓮と銀羅、そして刹那と麗奈は出席することとなった。

クーデターで一番の標的となるのは現英国王女のアルティナ様。出来るだけ守る人間が近くに居た方がいいので俺達はボディガードのようにアルティナ様を守ることとなる。

他の人達は警備が厳重に布かれていて、王宮に入ることは難しいので、基本王宮の外で待機することになる。

しかし、正直のところ俺達だけで王女様を守りきれるかどうか不安だった。その不安を取り除くために、蒼燕さんと太公望は璃音と花音を側に居る置くことを提案した。

だが、さっき言った通り、王宮は厳重な警備を布かれている。

そこで二人がニヤニヤと笑みを浮かべながら提案した策は……。

「どうして……なんだ……」

その策は璃音兄さんにとって……あまりにも過酷なものだった。

「どうして俺がこんな格好をしなくてはならないんだぁああぁあああああぁああああっ!!!」

頭を抱え、天に向かって吠えるように叫ぶ璃音兄さん。その格好は私服でも蓮宮神社の巫女装束でもない……王宮に仕えるメイド、要するに可愛らしいメイド服を着ていた。このメイド服は裁縫が好きな雷花さんが僅か数十分で作った力作だ。

王宮に仕えるメイド服の写真を参考にあっさり作ってしまうのだから驚きだ。もう趣味の範囲を越えて一流の職人のレベルだった。

蓮宮一族特有の整った女顔に三つ編みに纏めた黒髪、そして服の上から見えない極限まで鍛え抜かれて引き締まった筋肉が長身の姿勢を美しく正している。

今の璃音兄さんの姿を一言で言い表すなら有能で美しい武闘派メイドさんだった。

「あはは!とっても似合っているよ、璃音ちゃん♪」

隣にいる花音姉さんは言うまでもなく似合っていて、自分の双子の弟のメイド姿にこれでもかと言うぐらいキラキラと輝くように笑っていた。

そもそも、どうして二人がメイド服を着ているのかというと、メイド姿なら王宮に忍びやすいと蒼燕さんと太公望が言うので、メイド服を着るように命じたけど、当然璃音兄さんは断固拒否した。

それをアリス先生の魔法で璃音兄さんを一瞬でメイド服に着替えさせて現在進行形で絶望しているのだ。

「流石は蓮姫の血族……女装がここまで似合うなんて……」

アリス先生は璃音兄さんのメイド姿に驚きを通り越してよくわからない畏怖の念を抱いていた。

カシャ!カシャ!!

そして、蒼燕さんはカメラを取り出すとメイド姿の璃音兄さんを撮影する。

「ふふふ……似合っていますよ、璃音。僕の想像以上だ!」

「て、てめぇ!何で写真を撮るんだ!?」

「決まっているじゃないですか?撮った写真を天星導志の本部に送り、ボスやみんなに生まれ変わった璃音の姿を見てもらうためですよ!!」

「何が俺の生まれ変わった姿だ!?蒼燕、貴様は何が目的だ!?」

「目的?そんなもの……ただのあなたに対する嫌がらせに決まってるじゃないかぁあああああああああああっ!!!」

「この野郎ぉおおおおおおーーーっ!!今すぐ地の果てまでぶっ飛ばしてやるぞ、コラァアアアーーーッ!!!」

蒼燕さんの嫌がらせにより、一触即発で今にもバトルを勃発しそうな二人だった。

すると、璃音兄さんはハッと何かを思い出すと俺の方を向いてきた。

「……うっ、くぅっ!」

そして、俺を見ると何故か涙を流して膝を付いた。

「り、璃音兄さん……?」

「すまない、天音……。がっかりしたよな。兄さんがこんなメイド服が似合うなんて……幻滅、したよな……」

璃音兄さんは今の姿を見られて俺が幻滅したと思いこんでいた。

「璃音のブラコン……まあ、私もそうだけど……」

「そう言えば、璃音と花音は天音君を大切にしていましたね。でもまさか、あの璃音が涙を流すとは……」

涙を流している璃音兄さんに花音姉さんは呆れ果て、蒼燕さんは呆然とした。

「あの、兄さん。俺は幻滅しないよ。兄さんがどんな格好をしても……」

「本当、か……?」

「ああ。それに、女装は俺も経験あるから……」

「……千歳ちゃんか?」

「確か、小学生の時だったかな……?千歳が自分の持っている服を俺に着させたんだよ。無理やり俺の服を脱がして……あれは人生のトラウマだよ……」

「一応聞くが、下着は……?」

「覚えて、無い……」

あの時はあまりのトラウマに俺自身の自己防衛本能が働いたのか、記憶が全く無い。その後に何をされたのか千歳に尋ねたが、何故か千歳は土下座をして何度も俺に謝っていたので記憶が無い間に“何か”が起きていたのは間違いなかった。

蓮宮神社の巫女装束は小さい頃から着ているからまだ大丈夫だけど、それ以来女装するのが嫌で拒否反応が出てしまう。

「マ、マジか……」

「だから、その、気を落とさないで。どんな格好でも璃音兄さんは俺にとって最高の兄さんである事には変わりないから」

「天音……ありがとうよ!」

璃音兄さんは今度は嬉し泣きをすると、俺を抱きしめた。俺は璃音兄さんの背中を軽く叩いたが、千歳と花音姉さんの睨みがとても怖くてしばらく振り向くことが出来なかった。



取り敢えず、璃音兄さんがメイド服を着ることを納得し、作戦も一通り全員に伝わったところでひとまず動き出す時間まで教会で待機することになる。

恭弥のお祖父さんである恭介さんは携帯電話で誰かと連絡を取ると、教会の外に出て近くにあった木に近付くと、何かのお札を張った。俺はその光景が気になり、恭弥を連れて一緒に恭介さんに話しかける。

「あの、何をしているのですか?」

「その札……もしかして……」

恭弥は木に張ったお札の事を知っていて、突然お札が緑色に輝いて木がメキメキと形を変えて中が割れるように開いた。

「な、何だ?」

「じーちゃんの契約聖獣を呼ぶんだよ」

「恭介さんの?」

「ああ。日本にいるワシの大切な人じゃよ」

恭介さんがそう言うと、緑色に輝く木の中から何かが飛び出た。




「恭介~~~!!」




高く、元気な声が響いて恭介さんはそれを受け止める。

「ハッハッハ!急に呼び出して悪かったな、“若葉”!」

恭介さんが若葉と呼ぶそれは深い緑色の髪をした美しい少女だった。

その若葉さんは着物を着ていて、見た目は日本の古風な少女だったが、何の聖獣なのか健闘もつかなかった。

「恭介のお呼びだしなら、いつでもどこでも駆けつけるわよ!」

若葉さんは嬉しそうな声を上げてギュッと恭介さんに抱き締める。

「えっと、恭弥。あの人は……?」

「ん?ああ。あれは俺の“ばーちゃん”」

「へぇー、恭弥のお祖母さ……えっ?」

恭弥の発言に耳を疑った。今、ばーちゃんって言ったよな?どう見ても恭弥と同じ歳くらいの女の子にしか見えないけど……。

「あっ、恭弥~!」

「ムグッ!?」

若葉さんは恭介さんから離れると次は恭弥に強く抱きついた。

「エジプトはどうだった?ピラミッドは大きかった?」

「ば、ばーちゃん、苦しいって……」

「あっ、ごめんなさい。大丈夫?」

「はぁー、ふぅ~。ばーちゃん、抱きつくのは良いけどもっと優しくしてくれよ」

「はーい。ところで、この子は誰?恭弥のお友達?」

ようやく俺に気が付いた若葉さんは俺に視線を向けた。

「俺のダチの蓮宮天音。前に言ったことあるだろ?クラスに黒髪がとっても綺麗な男が居るって」

「そういえば言っていたわね。初めまして、ワタシは“浅木若葉”です。いつも孫の恭弥と仲良くしてくれてありがとうございます」

若葉さんは礼儀正しい姿勢で頭を下げる。どうみても古き良き日本人みたいな人で、俺は慌てて頭を下げて挨拶をする。

「は、初めまして。蓮宮天音です。中学生の頃から恭弥と仲良くしています」

しかし、本当にこの人は恭弥のお祖母さんなのだろうか?それにしては見た目が若すぎる……。

「あら?そこにいるのは若葉じゃないかしら?」

そこにアリス先生が驚いた声を上げて来た。

「アリスさん!お久しぶりです!」

「ええ、久しぶりね。どう?幸せな生活を送っている?」

「はい!日本で恭介と結婚して妻となり、息子の恭平が生まれて母となり、その恭平が結婚して孫の恭弥が生まれて今度は祖母となりました。女としてこれほど嬉しい事はありません!」

「そう。良かったわね、若葉」

アリス先生は優しい笑みで微笑むと、若葉さんにある提案をする。

「それじゃあ、また後でね。三人でしばらくこの辺りを散歩したら?」

「はい、そうさせてもらいます。行こう、恭介、恭弥」

「よし、行くか!」

「わかったよ、ばーちゃん」

三人はそう言うとすぐに田舎町であるこの地をゆっくり散歩しに行った。

「聞きたいんでしょ?」

「えっ?」

「若葉の事よ。気になって気になって仕方ない顔になっていたわよ」

「す、すいません……」

やっぱりアリス先生には全部バレているみたいだ。

「まあ、確かに気になるわよね。あんなに若いお婆ちゃんは人間じゃあり得ないし」

「その、若葉さんは一体、何者何ですか……?」

「若葉はね、木の精霊“ドリュアス”なのよ」

「木の精霊、ドリュアス?」

「ドリュアスは木に宿る精霊で人前には滅多に顔を出さないけど、気に入った男を見かけると自分の木の中に引きずり込んで百年くらい一緒に住ませちゃう困った精霊なのよ」

「は、はぁ……?」

な、何だその男にとって嬉しいような嬉しくないような精霊は……。

「だけど、ドリュアスは自分の宿る木を助けた人間に対して恩を返す律儀なところもあるのよ」

「恩を返す……ん?もしかして、恭介さんは……」

その話を聞いて、俺は何となくこの後の流れを思い付いた。

「若葉さんの宿る木を助けて……」

「そう。恭介はドリュアスの宿る木を偶然助けたら、ドリュアスが出て来て何かお礼をしたいと言ってきたの。そしたら、恭介はドリュアスに一目惚れしちゃって……『結婚して俺の嫁になってください!』って、速攻でプロポーズをしたのよ」

先程のヴァークベルの行動をそのまま実現したかのような恭介さんの発言に俺は口を大きく開けて唖然としてしまった。

「ドリュアス自身も恭介に一目惚れしたらしく、即答でそのプロポーズを受けたのよ。その後に魔女である私の助力で木の精霊であるドリュアスを人間にして、恭介と一緒に日本に渡って名前を“若葉”に改名して無事に結婚。そして、現在に至る訳よ。ちなみに、若葉が全く老けないのはドリュアスの長命の影響を肉体が受けているからよ」

なるほど……木の精霊なら全く老けないのも頷ける。

「あれ……?若葉さんが木の精霊なら、恭弥はその血を……」

「そうね。ドリュアスの血を四分の一、受け継いだ人間と精霊の混血を持つクォーターってところね。だけど、恭弥自身はあまりドリュアスの力を受け継いでいないわ」

「そうですか」

先祖が剣神で肉体の一部を刀剣化出来る迅先輩がいる、人間と聖獣の混血に関してはそこまで驚くことではなかった。

だけど……実のことを言うと世間的に人間と聖獣の結婚はあまり認められていない。

人間同士ならともかく、種族が異なる生物同士によって生まれる子供は見た目やその秘めた力は人間と大きく異なる存在となる。大昔からそれが世間から批判を浴びる対象となっていた。代表的な例を挙げるなら、人間と妖怪の間に生まれる“半妖”だ。人間でも妖怪でもない存在に昔の人間達は半妖の子を迫害し続けた。

百年前から始まった人獣契約システムのお陰で人間と聖獣の混血の子供が迫害を受けることは無くなったが、それでもまだ世間の風当たりは少し厳しい。

俺個人の意見としてはそんな事は気にする必要のない事だ。見た目や力はその個人の特徴や個性だし、何より大切なものは……その人が持つ“心”だと思う。

心さえ正しければ、例え見た目や力が他と異なっても俺はそれでも構わない。

だから、恭弥に対する態度は今までと変わらない。

例え人間と精霊の混血だろうが何だろうが、中学生の時からずっと俺の側にいてくれた……俺にとって、最も大切な友達だからな。

一通り考えを纏めると、体を伸ばして間接を鳴らすと次の行動に移る。

「さーて、白蓮やみんなに元気が出る料理やお菓子を作ってあげないとな。今夜は厳しい戦いになりそうだからな」

「天音、料理はお肉や炭水化物中心でお願いね。やっぱり体力付けるには肉料理と炭水化物が一番だから♪」

「わかりました。アリス先生はいつものように食材をお願いしますね」

「はいはーい、お任せあれ!」

俺は今夜の戦いに向け、みんなの為に栄養満点の料理とお菓子を作るために教会に戻った。




.

どうでしたか?


蒼燕と伝説の軍師・太公望。


そして、恭弥の祖母で木の精霊ドリュアスの若葉さん。


まあ、一番の見所は璃音兄さんのメイド服姿ですね(笑)


天音も昔、千歳に女装させられました。


下着は……どうなったかな?

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