第30話 己の道
これでアーティファクト・ギア第二部のバトルロイヤル編の終了です。
年内に書き終えて良かったです。
波乱のバトルロイヤルから数日後の休日。
俺と千歳、恭弥と雷花さん、そして生徒会の雫先輩と迅先輩は天聖学園の屋上にいた。
「どうしても行くのか?兄さん、姉さん……」
「ああ。短い間、世話になったな。天音、みんな」
「私達はまた世界を回るわ」
屋上に来た目的は璃音兄さんと花音姉さんの見送りだった。聖霊狩りの瑪瑙とその部下を倒すことが出来たが、世界中にはまだまだ巨悪な聖霊犯罪者がいる。天星導志として二人はその聖霊犯罪者をぶっ潰すためにまた世界を回るらしい。
「そうか……二人共、無茶だけはしないでね。あと、これはお土産」
俺は花音姉さんに大きめのバスケットを渡した。
「これは……? あっ、お菓子だ!」
「もしかして、天音の手作りか!?」
「うん。日持ちするように焼き菓子にしたから好きな時に食べてね」
バスケットの中には俺が作った焼き菓子がたくさん入っている。
「ありがとう、天音!天音の作ったお菓子は大好物だから嬉しいよ!」
「ああ、俺も天音の菓子は大好物だ。では、こんな嬉しいお土産をくれた最高の弟に俺から一つ、贈り物をあげよう。天音、左手を出せ」
「左手?」
「ほら、早く」
「う、うん!」
兄さんに言われた通りに俺は左手を差し出し、その左手を兄さんが左手で握り返してきた。
「我が剣をこの者へ……」
「ん……? あっ、熱っ!?」
突然、兄さんと握った掌が熱した鉄の棒に触れたような熱さによって焼けて激痛が襲いかかる。
「あっ、がぁああっ!?」
な、何だ?何かが俺の掌を刻むように焼いて、俺の中に力が流れ込んでいる!?
「天音!!」
千歳達が駆け寄ろうとするが、璃音兄さんに睨みつけられて足が止まる。
「来るんじゃねえ。心配するな、すぐに終わる」
「っく、うっ、ああっ……」
俺は歯を食いしばり、全身に力を込めながら喘いで左手に走る激痛に耐えた。
「……よし、終わりだ!」
兄さんはパッと手を離し、俺は膝をついて左手首を強く押さえた。左手の掌から煙が上がり、何かが刻まれたようだった。
「はぁ、はぁ……くっ……兄さん……俺に、何を……?」
呼吸を整えて兄さんを睨みつけるように見上げた。
「悪かったな、痛い思いをさせて。だが、そろそろ浮き上がるぞ?」
「一体何を――これは……?」
煙が収まると、掌には何故か魔法陣が刻まれていた。この魔法陣の形を俺は見たことがあった。
「顕現陣……?」
それは兄さんと姉さんが武器収納庫として使っている顕現陣だった。
「その顕現陣の中にある物を取り出してみな?」
「えっ?えっと……」
取りあえず左手と右手を合わせて兄さんがいつもやっていたようにする。
「顕現……」
顕現陣が輝き、両手をゆっくり左右に離すと、中から青白い光を放つ棒状の何かが出て来る。
「まさか……?」
俺は右手で棒状の何かを顕現陣から引き抜くと、光が止んでその姿が現れる。
「氷蓮……」
予想した通り、引き抜いたそれは兄さんの愛剣であり、蓮宮神社の神具の一つである神剣“氷蓮”だった。どうして兄さんが俺の左手に顕現陣を刻み、その顕現陣の中に氷蓮が入っていたのか理解出来ず、ただ氷蓮を見つめるしかなかった。そんな俺の様子を見た兄さんはとても満足した様子で腕を組んで頷いた。
「よし、顕現陣を問題なく使えるな。天音、その氷蓮と顕現陣は今からお前の物だ!!」
「…………はぁっ!?」
手の中にある氷蓮を強く握りしめ、俺は目を見開いて驚愕した。兄さんは何を血迷ったんだと少し失礼な事を思いながら兄さんに大声で言う。
「な、何を馬鹿な事を言っているんだ、兄さん! この氷蓮は蓮宮神社から兄さんだけに与えられた神具だぞ!?」
「知ってるさ。だが、貰った物をどうしようと俺の勝手だろ?」
「理由になってない! どうして氷蓮を俺に渡すんだよ!?」
「答えは簡単だ。俺が“背負うはずだったモノ”を天音が背負ってくれたからだ」
「兄さんが背負うはずだったモノ……?」
「本来当主になるはずだった俺の代わりにお前が蓮宮神社の当主になってくれた。最近になって、俺は思った。俺はお前に何かをしたことがあるか?そう思い立った俺はせめて一つ、天音が喜ぶ事をしてあげたいと思ったんだ。そして、導き出した答えがこれだ」
「ど、どうしてそんな無茶苦茶な答えに導かれる!?」
「ふっ……天音よ。お前、昔この氷蓮を物凄く欲しそうな目で見ていたことがあっただろ?」
「なあっ!?」
ど、どうしてそれを……。たじろぐ俺を兄さんは意地悪な笑みを浮かべて俺の頭を撫でてきた。
「はっはっは! この俺が知らないとでも思ったか? 初めてその氷蓮をお前に見せた時、今までで俺に見せたことのないキラキラした表情で氷蓮を見つめていたじゃないか。お前、誰よりも氷蓮を欲しがっていただろ?」
「うっ……」
兄さんが指摘していたその言葉に嘘偽りは一切ない。だって、全て本当の事だから。
俺はあまり物を欲しがらない性格で趣味の料理関係の物以外は必要最低限の物しか持ち合わせて居ない。その所為で生活に必要な物を千歳に無理やり買わされることもあり、今では人並みに購入しているので問題は無くなった。
そんな俺でも人生で初めてもの凄く欲しいと思った物。それは兄さんの指摘通り――氷蓮だった。兄さんが十五歳になった時の祝いに蓮宮神社から送られた神具を俺に最初に見せてくれた。その鞘から柄までに施された美しい装飾。その鞘から引き抜かれた刀身は氷や水晶をそのまま刃にしたかのような透明感のある美しい両刃に俺は一目で心を奪われてしまった。
十歳だった俺は兄さんに「欲しい!」と言おうとした。だけど、大好きな兄さんを困らせたくない気持ちがその声を詰まらせて何も言えず、我慢して氷蓮を欲しがる気持ちをそのまま心に仕舞いこんで今に至る。
「そう言う訳だ。大人しく氷蓮を受け取りな!」
「き、気持ちは嬉しいけど、轟牙とのアーティファクト・ギアはどうするんだよ!? 白蓮と違って、他の聖獣は最初に契約した契約媒体が無いと契約執行が……」
「あー、心配するな。氷蓮が無くても契約し直せば済む問題だ。流石に霊閃氷帝剣はもう使えねえけど、別の契約媒体を見つけて新しいアーティファクト・ギアを使えば問題ねえーよ」
余りにも適当過ぎる兄さんの考えに俺は呆れるしかなかった。五年も使い続けていた愛剣をあっさり他人に譲り、別の物を使えば済むという考えに俺は怒りを抱いた。
「兄さん!! ふざけるのも――」
「天音。氷蓮は白蓮と契約をした瞬間からお前の物だったんだぞ」
「――えっ?」
怒鳴ろうとした矢先、兄さんの言葉に唖然とした。
「お前はまだ知らないだろうが、蓮宮神社の神具は選ばれた持ち主にしかその力を使うことが許されない。もし持ち主以外の人間が使おうとするなら、例えそれが蓮宮の人間だろが、神具がそれを拒絶して手から弾いてしまう。だが、お前は花音が放った氷蓮を手にし、白蓮で無事に契約を完了して鳳凰剣百式を生み出した。つまりだ、氷蓮はお前俺以外のもう一人の“主”として認めたんだよ」
「え、えっと、その……」
話が理解できないというかうまく付いて行くことが出来ない。つまり、簡潔に言うと主以外の人間が使おうとすると拒絶反応を起こす蓮宮の神具である氷蓮は兄さんだけでなく、俺をもう一人の主と認めたという事……まさか蓮宮の神具にそんな力があるなんて今まで知らなかった。
「何となくだけど、氷蓮はお前の剣として使われて欲しかったみたいだぜ? その証拠にほら、氷蓮を抜いて刃を見てみな」
「あ、うん……」
兄さんに言われ、取りあえず氷蓮を鞘から抜いて刃に目を移した。鞘から抜かれた氷蓮の刃に今まで兄さんに制止されたとは言え蚊帳の外であった千歳達は思わず声を漏らした。
「わぁ、綺麗……」
「おいおいおい、あれは本当に“剣”なのか?」
「凄いです……」
「……迅、御剣一族の末裔であるあなたの感想を聞きたいですわ」
「……己の存在が“剣”である俺が見てもこれほど感服したことはない。あれほどの美しい刃を持つ剣は初めて見た……」
千歳達は氷蓮の刃を見て感動していた。何故ここまで感動していたのかと言うと、答えは簡単だった。氷蓮は今まで見たことのないほどの透明感な刃となって、太陽の光に反射した刃はキラキラと美しい輝きを放って一種の素晴らしい芸術品と化していた。それは自らの体の一部が一つの“剣”である迅先輩でさえ納得してしまうほどの物だった。前から綺麗な剣だとは思っていたけど、ここまでの輝きを放ったのは初めてだった。
「これでわかっただろ? 氷蓮はお前に握られて嬉しいんだよ。物に魂が宿るとよく言うが、氷蓮はまさにそれを現したかのようだな。という訳だから、天音よ、今度こそ氷蓮を受け取ってくれ」
「……本当にいいの? 兄さん」
しつこいかもしれないが、氷蓮を受け取るのに躊躇ってしまう。例え氷蓮を俺を主と認めても兄さんの大切な剣を簡単には受け取ることはできない。
「ああ。お前が氷蓮を受け取ってくれることで俺は自分の道を行ける気がするからな」
「自分の道?」
「俺はいままで過去を振り切るために氷蓮を振り続けていた。天音の……いや、天音とみんなのお蔭で俺は過去に決着をつけることが出来た。だからこそ、自分の歩むべき本当の道を歩むために氷蓮を手放し、お前に託そうと思ったんだ」
自分の道……兄さんは氷蓮を俺に託すことでその道を歩もうとしている。俺の道は蓮宮神社を継いで当主になる事。だけど、今はっきりともう一つの自分を見つけた。
「……わかったよ、兄さん。氷蓮はありがたく受け取るよ。だけど、一つだけ約束してくれ」
「おう? 何だ?」
「俺はいつか必ず、千歳と恭弥と雷花さんと一緒に人間界と聖霊界を旅する!」
「人間界と聖霊界を……?」
俺の決意に兄さんは目を見開いて驚いた。人間界と聖霊界の二つの世界を旅をすることは並大抵な覚悟では行うことが出来ないからだ。
「旅の中で見聞を広め、己の力をみんなと一緒に遥かなる高みにまで昇華させる。そして……俺が蓮宮神社の当主となったその時に兄さんと真剣勝負がしたい!」
「旅をして己の力を高め、その後に俺と真剣勝負か……良いだろう、天音。その約束、受け取った!」
兄さんは俺との約束を承諾して右手で拳を作って俺に向けた。
「天音! 俺も今よりももっと強くなる。お前が当主となった時を楽しみにしているぞ!」
「ああ! 兄さんは俺の目標だ。俺はみんなと強くなって、必ず兄さんを超える!!」
俺も右手で拳を作って兄さんの拳にぶつけた。コツン! と鳴ったその二つの拳は俺と兄さんの新しい道を歩む始まりの合図となった。
互いの拳を離し、兄さんは花音姉さんの方を向いた。
「さーて、そろそろ行くかな。花音、待たせて悪かったな」
「全くよ。男同士の暑苦しいシーンを見せられるこっちの身にもなってよね」
「何だとぉ!? 俺と天音の魂の約束にケチをつける気か!?」
「はいはい、わかったから早く行くわよ。おいで、流星!」
花音姉さんは流星を呼び出してその背に乗り、璃音兄さんも慌てて乗りながら俺達に別れの挨拶をする。
「天音、それからみんな。いろいろありがとう。またいつか会いましょう」
「じゃあな、みんな! またどこかで会おう!」
『ヒヒーン!!』
別れの挨拶と共に流星は鳴き声を発し、黄金の粒子を体から放出させながら宙に浮いた。そして、二人を乗せたまま天聖学園から西の方角に向けて空を駆けながら飛びだって行った。俺達は二人の姿が見えなくなるまで手を振って見送った。
「またね。兄さん、姉さん」
「良かったね、天音!」
今まで空気を読んで話に加わらなかった千歳が背中から抱きつく。今は凄く心が落ち着いているから抱き着かれてもあまり慌てないで済んだ。
「そうだな。蓮煌に氷蓮……俺が思う最高の刀剣が揃ったからな。剣士としてとても嬉しいよ」
「天音は凄いよね。そんな綺麗な剣に認められるなんて!」
「認められたからこそ、今よりもっと強くならなくちゃいけないな。兄さんから託された責任は重いよ」
「だったら、冒険部として一緒に頑張ろうぜ!!」
「私も一緒です……」
恭弥と雷花さんは俺の少し弱気な言葉を打ち消すかのように話しかけてきた。
「天音、俺は嬉しいぜ。遂に冒険部として自覚してくれたんだな!」
「天音さん、一緒に頑張りましょう……」
「ああ、皆で頑張ろう」
今まで打ち明けなかったけど、心の奥に秘めていた事。皆と一緒に冒険して強くなることは俺の最近できた願望だ。兄さんとの真剣勝負の為にも必ず成し遂げてみせる。
「それじゃあ、さっそく今から図書館城に行こうぜ!」
「何故図書館城?」
「天聖学園の伝説では、図書館城のどこかに何百年も生き続けている不老不死の魔女がいるらしい……冒険部の最初のミッションとして、図書館城の秘密を明かしつつ、その不老不死の魔女を見つけるぜ!」
「恭弥部長、ファーストミッションにしてはランクが高くないか!?」
不老不死の魔女が本当にいるかどうかは別として、内容からしてかなり難易度は高い気がする。
「魔女か……天音と何時でもイチャイチャできるように惚れ薬とか貰おうかな?」
「そして千歳は変な欲望を見知らぬ魔女に頼むな!!」
相変わらずぶれない欲望を持つ千歳に突っ込みを入れる。こんな調子で大丈夫なのかと思っていると。
「図書館城に住む不老不死の魔女……伝説とは言え、これは天聖学園生徒会として調査する必要があるかもしれませんね」
「雫先輩!?」
たかが伝説である話に生徒会としての使命なのか、会長の雫先輩も調査しようとしている。
「だが、これはあくまで冒険部の話だ……生徒会の俺達が口を挟む事ではないだろ……?」
迅先輩がフォローに入るが、雫先輩は両手を合わせながら何かを思いつき、提案した。
「それなら、私と迅も冒険部に入りましょう」
「「「「ええっ!?」」」」
「なっ……?」
生徒会長の雫先輩が俺達の冒険部に入ると言いだした。俺達はともかく、いつも冷静な迅先輩ですら驚愕している。
「よろしいですか? 恭弥さん。これなら冒険部の邪魔をせずに済みますし、私達生徒会としても調査をできますし。一石二鳥だと思いますが……」
雫先輩が冒険部に入る事を断る理由がないので部長の恭弥は笑顔で何度も大きく頷いた。
「も、勿論です! 学園最強の生徒会長と副会長が入ってくれるなら百人力です!!」
「ま、待て、雫……俺は……」
「それでは早速、図書館城の探検に必要な装備をそろえましょうか」
「それならすぐに俺が用意しますよ。いつでも冒険が出来るように準備だけは怠っていませんから!」
「まあ、流石は冒険部部長ですね。では、部長として私達に指示をお願いします」
「わかりました!」
「……俺の意思は、無視か……」
色々と図書館城の探検に向けての事が進み、主である雫先輩に完全に巻き込まれた迅先輩はガクッとその場にうな垂れた。そして、恭弥は冒険部部長として冒険前の最初の指示を俺達に贈る。
「俺は冒険に必要な道具を全て用意するので、他の皆は各自で自分が必要だと思う道具を用意して、30分後に図書館城前に集合だ!」
準備は全て恭弥がやってくれるので、俺達に向けた指示は至って簡単なものだった。いったん各自で準備をするためにその場で別れることになり、取りあえず俺は学生寮の自室に置いてある愛刀の蓮煌を取りに行こうと考えた。
「今から蓮煌とか取りに行った方がいいな。何が起こるかわからないし……」
「大丈夫、その必要は無いよ」
蓮煌を取りに行こうと俺は学生寮の方を向いたが、何故か千歳が俺の前に立ちふさがった。
「ふっふっふ……天音がそう言うと思いまして、ジャジャーン!ここに用意しちゃいました!」
千歳が部屋に置きっぱなしのはずの蓮煌を一体どっから取り出したのか、俺の目の前に持ってきた。
「……千歳さん。前にもこんな事があったけど、どうして俺が必要になった時に限って蓮煌を持ち歩いているの?」
「うーん、女の子の感かな?」
「それ、説明になってないから。まあ、取りあえず蓮煌は受け取るけど……」
蓮煌を千歳から受け取ると氷蓮と一緒に顕現陣の中に仕舞う。
「うん、これは楽だな。さすがに刀剣二本を持ち歩くのは大変だからな」
「へぇー、顕現陣か……便利そうだから私も体のどこかに刻もうかな?」
「それは止めとけ。便利だけど、刻む時にもの凄く痛いから」
顕現陣は便利だけど、体に刻まれた時のあの尋常じゃない痛みがあるから俺は絶対他人にオススメしない。
「そう?じゃあ、痛くない顕現陣の刻み方を調べた方がいいかな?」
「そんな方法があるかどうかわからないけど、そうした方がいいよ」
「あ、そうだ!調べる前にこれから会う魔女さんから聞けばいいか!」
「図書館城に住む魔女か……本当にいると思うのか?」
「さあ?でも、ワクワクしない?」
「ワクワク?」
「うん!映画の何が起こるかわからないシーンや展開みたいにワクワクしそうな冒険が待ちかまえているからね!」
なるほど、その気持ちはよくわかるな。何気に小さい頃から千歳と色々な映画を見てきたからな。
「そうだな……俺達、すっかり冒険にハマりそうになっているな」
「楽しければそれでよし!天音、楽しいは正義だよ!」
「は、はぁ……?」
「とにかく、早く私達も行こう!」
元気な笑顔を見せながら千歳は俺に向けて右手を差し出した。
「……ああ、行こうか」
俺は小さく笑い、千歳の右手に左手を重ねた。そして千歳はそのまま右手で重ねた俺の左手をギュッと握り、手を繋いで俺を引っ張っていく。
「よーし、図書館城に向けてLet's Go!」
引っ張りながら俺を屋上から図書館城に向けて連れ出すが、俺達は大切な子供達の事を忘れかけていた白い二つの影が俺と千歳の前に降り立った。
『ピピィーッ!』
『千歳、旦那。私達も共に行くぞ!』
昨日の戦いで消耗した力を聖霊樹で回復した白蓮と銀羅が俺と千歳の前に飛んできた。
「白蓮、銀羅。待っていたよ」
「やっと来ましたか、My Sweet Children♪」
二人を迎えると、白蓮はいつものように俺の頭の上に乗り、銀羅は千歳の体に巻きつくように寄り添う。
「今から俺達は図書館城に冒険部として探検に行くんだ」
「銀羅と白蓮ちゃんも一緒に行こうね」
『ピキュー!』
『当然だ。私達は二人の相棒で子供だからな』
元気よく返事をする白蓮と銀羅に俺は顕現陣から蓮煌を、千歳は上着の懐からレイジングを取り出して上に掲げて叫んだ。
「「契約、執行!!」」
そして、俺達の大切な契約聖獣と契約を執行し、奇跡と絆の神器――アーティファクト・ギアを生み出した。
「行こうか、千歳!」
「うん、天音!」
俺達はアーティファクト・ギアを携えて、記念すべき初めての冒険の舞台となる図書館城に向けて走った。
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次回から第三部のスタートです。
図書館城に住む不老不死の魔女、抜け忍となった忍者の少年とそれを追うくノ一……新たな出会いと波乱の戦いが天音に迫ります。




