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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第2章 バトルロイヤル編
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第28話 新たなる『鳳凰剣』

今回で瑪瑙とのバトルが終了となります。


天音が新たな力を手に入れ、瑪瑙と最終決戦に望みます!

「千歳……?」

 鳳凰剣零式を一心不乱に振り続けている俺の耳に千歳の叫び声が届いた。受け取る……俺は何を受け取ればいいのかわからなかった。

 すると、その答えが俺に向かってくるのが気配ですぐに分かった。目を離すわけにはいかない状況だったが、俺は一瞬だけ後ろを振り向いた。それは、触れた死糸を次々と塵にして破壊しながら近づく一本の光を纏う矢だった。矢は当然とても速い高速で飛んでいたが、俺の目には何故かスローモーションのようにゆっくりと止まるようなスピードに見えた。

 そして、矢が死糸を塵にしながら俺の左真横を通り過ぎようとした時、俺は無意識に空いている左手でその矢の棒の部分を掴んでしまった。普通ならそのまま前に飛ぼうとする矢の力で掴んだ手の中で摩擦が発生してしまい、皮膚が擦れて怪我をしてしまいそうだったが、俺が触れた瞬間にその光の矢は消滅してしまい、そこから衝撃波が発生して俺の周囲を囲む死糸を弾き飛ばした。そして、俺の左手には消滅した矢の代わりに全く別の物が握られていた。

「氷、蓮……?」

 それは璃音兄さんの神剣である氷蓮だった。しかも、左手で氷蓮の柄をしっかりと握っていた。何故氷蓮があの光の矢に包まれていたのかどうか不明だった。そして、氷蓮の柄を強く握った瞬間、俺の体の中に何かが流れ込んできた。その力は俺の疲れた心と体を癒すようにとても暖かかった。

この力は……霊力? しかも、この霊力は兄さんと姉さんの……?

 消費した霊力以上の膨大な霊力が俺の中に流れ込んだことで、今までに感じたことのない力を感じる。そして、この氷蓮から兄さんと姉さんの込めた“思い”が伝わってくる。その思いが何なのかはハッキリとは分からないけど、これだけは分かる。

 二人から渡されたこの氷蓮と霊力で戦い、そして、必ず勝利しろと!!

「アーティファクト……フォース!!!」

 霊力と天力を一つにした力が俺の中で爆発し、発生した力の波動が俺に襲い掛かる死糸を更に吹き飛ばした。今のうちに、氷蓮で契約執行をする!

「白蓮!!」

『うん! あたらしいけいやく、だね!』

「ああ。兄さんと姉さんから受け取った“力”を全て出し切る! 契約……執行!!!」

 契約執行の宣言と共に俺の足元に白蓮の白い炎で描かれた契約の陣が発生する。

 今俺と白蓮が契約をしている鳳凰剣零式、鳳凰之羽衣、鳳凰柔剛甲の三つのアーティファクト・ギアから白蓮の肉体と魂の粒子の一部が分けられて氷蓮の中に入り込もう。氷蓮の形は大きく変わり、光に包まれて新たなアーティファクト・ギアが誕生する。

そして契約が完了し、光に包まれたアーティファクト・ギアがその姿を現した。

「これは……?」

契約媒体は神剣の氷蓮で、神刀の蓮煌と同じ蓮宮の神具故かどうかは分からないけど、氷蓮と白蓮を契約させたアーティファクト・ギアは鳳凰剣零式に良く似た刀身が氷の蒼色と白銀と黄金の三色が混ざり合った見事な大剣へと変化した。

この大剣を見た瞬間、俺は何となく名前が浮かんだ。鳳凰剣零式が俺の右腕の翼なら、この氷蓮と契約した大剣は俺の左腕の翼だ!

「アーティファクト・ギア……“鳳凰剣百式(ほうおうけんびゃくしき)”!!!」

 零が無限の可能性を示すなら、百は目に見える束ねた沢山の力……そして、俺はその思い浮かんだ名前にふと気付かされた。

俺は……独りじゃない。信頼できる友人がいる、頼れる先輩がいる、大切な家族がいる。そして……愛する人と大切な相棒がいる。

 俺の中の瑪瑙に対する怒りは静かに収まった。その代り、瑪瑙を絶対に倒すための大きな“力”と強き“心”を手に入れた。恐れるものは……何もない!

「行くぞ!!!」

両手にある二つの鳳凰剣……“双翼鳳凰剣”で死糸を斬り裂く。怒りで我を忘れていた先程とは決定的に違うのは、頭は驚くほど冷静で今度は自分の体を回転させ、舞を踊るような華麗な動作で動いていることだ。体を回転させる遠心力によってかなりの重量を持つ双翼鳳凰剣は破壊力を増し、全く苦もなく死糸を簡単に斬り裂いていく。

俺の怒濤の攻めに危機を感じた瑪瑙は自らもアーティファクト・フォースを瞬時に発動して死糸の出す量を更に倍にした。

以前の俺だったら驚いてその場に立ち止まり、防御に徹してしまっていただろう。だけど、今の俺なら……“俺達”なら、これらを全てぶち壊して突破出来る!!

「蓮宮流……“双天大蓮華(そうてんだいれんげ)”!!」

自分の想像力をフルに使いながら、双翼鳳凰剣の刃を交差させて左右に切り払い、一つの巨大な炎の斬撃を生み出す。しかし、それはただの巨大な炎の斬撃ではない。倍に増量した死糸の束に触れた瞬間――。

「咲き誇れ、大輪の蓮!!!」

池の水面に咲く数多の大輪の蓮の如く、蓮の花の形をした炎の刃が溢れんばかりに咲き乱れた。巨大な炎の斬撃から蓮の花の形へと変化した炎の刃は死糸の束を取り込むように焼き尽くした。そして、あれだけ苦戦していた無数の死糸の束を突破し、遂に瑪瑙まで僅か数メートルの距離まで近付けた。

「覚悟しろ……瑪瑙!!」

そう瑪瑙に告げると、俺は双翼鳳凰剣を後ろに構え、足に力を込めて走り出す。瑪瑙の骸操死糸は広範囲の攻撃範囲を持っているが、近付いてしまえばこっちのものだ。

「クソが……私を舐めんじゃねぇぞ、ガキがあっ!!」

瑪瑙が怒りを込めながら叫ぶが、今更死糸を生み出しても既に遅い。だが、瑪瑙は両手を動かして何かを操作する動きをする。

「私が……ただ糸を造るだけだと思うなぁっ!!糸針襲縛(ししんしゅうばく)!!」

ドスッ!!

「があっ!?」

次の瞬間、体中に細い何かが何十本も突き刺さり、痛みと同時に体が全く動かなくなった。

「こ、れは……!?」

痛みに耐えながら体を見ると、体中に針のような物が刺さっていた。それを見て俺はすぐに理解した。この針は切り裂いた骸操死糸の死糸の糸くずで、それを瑪瑙が操り、針のように鋭くしてから飛ばし、俺の体のツボ……いわゆる“経絡”を正確に突き刺して体を動けなくした。

まさかこんな手を残しているとは予想外で、本当に体が一歩も動けなくなってしまった。

俺が動けない間に瑪瑙は死糸を使って俺を殺すだろう。だけど……諦めるわけにはいかない! 自分の意志で体は動かなくても、別に動かせるモノがある。それを使って針を抜いてみせる。

「駆け、巡れ……!!」

霊力と天力を融合させたアーティファクト・フォースの“力”を俺の体の中を高速で駆け巡らせた。体中に張り巡らせてある血管に流れている血液のようにまんべんなく、とにかく早く駆け巡らせた。やがて、俺の体に突き刺さっていた死糸の針はグラグラと揺らぎ始め、少しずつ体から抜けていった。アーティファクト・フォースの力で体中を駆け巡らせた事で、押し出されるような形で針が少しずつ抜かれようとしている。

「ちっ!大人しく死ねぇええええええっ!!」

針を抜こうとする俺の行動に気付いた瑪瑙は残り少ない力で骸操死糸を生み出して俺を殺しにかかる。

「うおっ……うおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

アーティファクト・フォースの力を全力で解放し、抜き掛けていた死糸の針を全て抜いて吹き飛ばした。後は、向かってくる死糸ごと瑪瑙を倒すために、この一撃に全てを込める! 二つの鳳凰剣零式と鳳凰剣百式――双翼鳳凰剣を一つに重ねてアーティファクト・フォースの力を纏わせる。

「光り輝け、鳳凰の翼!!!」

一つに重ね、光を纏わせた双翼鳳凰剣で死糸を薙払う。そして、そのまま天に向けて剣を掲げると、光は徐々に大きくなり、天を貫くような巨大な光の剣となった。すると、光の剣から白蓮の鳳凰の羽が無数現れて、それが光の剣を包み込むように幾重にも重なり、やがてそれは美しい翼の剣へと姿を変えた。

「蓮宮流……“鳳凰光翼剣(ほうおうこうよくけん)”!!!」

見るもの全てを虜にする美しき光翼の巨大剣は千歳達を魅了し、瑪瑙は開いた口が塞がらずに体が震えていた。

「あっ……あっ……そ、そんな、虚仮威しが私に通じると思っていると思っているのかぁああああああああああっ!!」

瑪瑙は頭を大きく振り、苦し紛れに死糸を生み出すが、もう遅い!

「瑪瑙……お前が生み出した因縁――俺達、蓮宮家を縛る忌まわしい運命の鎖を、今ここでぶっ壊す!!」

振り下ろされた光翼の巨大剣は死糸を全て消し去る。

「Break The Fate!!!」

そして、光の翼の巨大剣は瑪瑙を叩き潰すように振り下ろし、鳳凰の光の羽が散ると同時に光の波動が発生して、周囲の空間を清らかな空気へと浄化した。

 光翼が全て散り、元の二つの大剣へ戻り、全ての力を出しきって大きな疲労を味わっている俺の視線の先には瑪瑙が倒れていた。瑪瑙は鳳凰光翼剣の直撃を受け、更に自身の力を使い果たした所為で完全に気絶した。それにより、アーティファクト・ギアの骸操死糸の契約が解除されて、契約聖獣の女郎蜘蛛の鬼那が出現するが、その鬼那も倒れてしまった。鬼那も妖力を使い果たして気絶したようだった。

 今度こそ全てが終わり、俺は大きな疲労感から体の力が抜けてしまい、双翼鳳凰剣を手放してしまった。二つの鳳凰剣は地面に突き刺さり、俺は後ろに倒れそうになる。

「おっと、危ない!」

 ガシッと倒れそうになった俺の体を支えた。その支えた人物は頭の上から俺の顔を覗き込んだ。

「天音、大丈夫?」

「千歳……」

 淡く微笑みながら俺を見つめる千歳はとても綺麗だった。疲労で俺の頭がおかしくなってしまったのかもしれないが、今の千歳はまるで女神のように美しく見えた。

だが、その事は絶対に口にしない。だって、絶対に千歳は調子に乗るから。

「……悪い、千歳。少し、寝る……」

 自分のおかしくなってしまった気持ちを隠すように瞼を閉じて意識を手放そうとする。

「はい。お休みなさい、天音」

 千歳に優しく包み込むように俺を抱きしめ、俺はその心地よい千歳の抱擁の中で完全に意識を手放した……。



.

な、長かった……。


バトルロイヤル編の山場である瑪瑙戦が遂に終わりました……。


後二、三話でバトルロイヤル編が終了すると思います。


そしたら、長らく投稿をお休みしていたIS5D'sをピクシブで復活させようかなと思います。

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