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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第2章 バトルロイヤル編
24/172

第24話 解放される力

前半は迅先輩の話で、秘密や雫先輩との出会いが書かれています。


後半は天音達のバトルです。

 理由は分かりませんけど、急いでいる天音さんたちの代わりにこの場に残った私と迅。つい先ほどまで生徒達を安全な場所に避難させた後に、各地に散らばっている聖霊狩りを倒しながら天音さん達を探していました。やっとの思いで天音さん達を見つけましたが、何やら急いでいる様子でしたので私と迅が代わりに聖霊狩りと戦う事にしました。天音さん達には私達の先輩である蓮宮花音さんがいるから大丈夫だと判断しての行動でした。

 さて、視線の前には愚かにも他人の聖獣を狩ろうとする愚者である聖霊狩りが十人ほどいます。しかし、聖霊狩り相手にあまり時間を掛けるわけにはいきませんのでここは最初から本気を出して完膚なきまでに倒そうと思います。そんな私の考えに気付いたのか、迅が私の前に出て左手で右腕を撫でました。

「……幸い、ここにはあいつ等しかいないからな。早く片付けるぞ」

「確かに、この辺りには他の生徒はいませんね。迅、あの力を使うのですね?」

「ああ……」

「わかりました。ですが、無茶だけはしないでくださいね」

「……俺はお前の楯であり、剣だ。剣は、振るってこそ一番輝くものだ」

 そう言うと、迅は執事服の右袖に隠れてあるチャックに手を伸ばして執事服には絶対に使用しないファスナーを開いて、右腕を露わにしました。右腕には数多の梵字が描かれた布によって巻かれています。その梵字の布は迅に施された封印。迅の右腕には人間を超えた力が秘められていて、普段は梵字の布で何重にも封印しています。

しかし、敵と判断した存在と対峙した時のみ、その封印を解いて迅の真の力が解放されます。迅は梵字の布を解き、解放の言霊を唱えます。

「解刃……“破魔之御剣(はまのみつるぎ)”!」

 右腕が輝き、梵字の布が弾け飛ぶように解けて宙を舞う。そして……迅の右腕は人肌の肌色ではなく、鈍く輝く鋼色に変色し、鋭い刃が何本も腕から突き出ました。あれは迅の右腕自体が一本の“剣”と化したのです。

 迅は先祖が剣の神様である“剣神”と呼ばれる存在で、“御剣一族”と呼ばれる一族の末裔です。剣神の血を受け継いだ一族の人間は、体の一部を刀剣に変化して戦うという特異な能力を持つ一族なのです。しかし、時代と共に御剣一族は衰退し、迅は御剣一族の最後の生き残りとなってしまいました。両親を病気で亡くし、身寄りのない幼い頃の迅は途方に暮れながらさ迷っていました。

そんなある時、上流階級の一人娘である私は幼い頃に身代金目的で誘拐されて危険に陥りました。その時偶然通りかかった迅が私を助けるために誘拐犯を倒して私を救ってくれました。しかし、その時の迅はとても衰弱していて解放した右腕の破魔之御剣が制御を失って暴走状態に陥ってしまい、誘拐犯を倒すどころではなく殺す勢いでした。ですが、そんな時に私のお母さまが駆けつけてきてくれて、お母さまのアーティファクト・ギアの力によって迅と破魔之御剣の暴走を止めてくれました。幸い誘拐犯は半殺し程度の傷で済み、治療の後にそのまま警察に連行されました。そして、その後にお母さまは迅を我が家で引き取り、看病をして暫くして元気になった迅にお母さまは私を救ってくれた礼をしたいと言いました。すると迅は涙を流しながらお母さまに向かってこう言いました。

『帰る家が……大切な誰かが傍に居てくれる、居場所が欲しい……』

 家族を失った幼い迅のたった一つの願いにお母さまは迅を優しく抱きしめ、こう答えました。

『何だ。簡単な願いじゃないか。それなら、この家に住めばいい。この家がお前の帰る家で、雫や私、この家の使用人たちが全てお前の大切な誰かで、お前の居場所だ』

お母さまは何とも大胆な決断を下し、私や多くの人を驚かせました。その後、迅を正式に雨月家で引き取ることになりましたが、迅本人の希望で雨月家の養子ではなく、居場所をくれた雨月家の恩を返すために私の身の回りの世話とボディガードの為の執事になりたいと志願しました。迅には幼いながらも誘拐犯をいとも簡単に倒した戦闘能力と右腕の破魔之御剣の力、更には生前の両親から徹底的に叩き込まれた家事能力で、執事としての能力が予め十分に備わっていましたので、僅か数年の訓練で私の専属の執事となりました。

 それから今日までずっと、私と迅は片時も離れずに一緒に過ごしてきました。私は迅と一緒の時を過ごしていくうちに恋心が芽生えてしまい、迅に恋してしまいました。主と執事は結ばれることを許されない禁断な関係でしたが、私は恋心を抑えきれずに迅に告白してそのまま襲ってしまいました。主と執事の禁断の肉体関係を持ってしまい、私は迅を見えない鎖で永遠に縛り付けました。我ながらも何とも醜い行いだと思いましたが、迅本人も私の事を出会った時から惚れていたらしく、私と迅は両想いの恋人同士になったのである意味結果オーライ(?)なのでした。

 まあ、それはさて置き、解放された破魔之御剣は迅の右腕を鋼鉄へと硬化させています。迅が武器を持たずに楯を持っている理由がこれです。右腕自体が剣と言う名の武器なので、私と自分自身を守るために左腕に楯を装備しているのです。右腕には最強の剣である破魔之御剣、左腕には相棒で契約聖獣のクラウドが宿っている楯型のアーティファクト・ギアであるイージス・オブ・ペガサス。これこそが私を守る最強の“楯”であり、最強の“剣”である御剣迅の真の姿なのです。

 迅は破魔之御剣を軽く前に突き出して構え、イージス・オブ・ペガサスを持つ左手を強く握りしめます。

「参る……」

 迅の瞳が太陽の光に反射して一瞬輝いた瞬間、鍛え抜かれた肉体の脚力を駆使して走り出し、聖霊狩りに向かって攻め入ります。聖霊狩りはアーティファクト・ギアで迅を迎え撃ちます。しかし、破魔之御剣を解放した迅の身体能力は倍以上に向上しているので、あっさり攻撃を見極めて回避しながら右手を強く握りしめ、破魔之御剣の力を一時的に溜めてそれを解放します。

「破魔……」

破魔之御剣で迅は空間を無数に切り裂いて真空を生み出します。切り裂かれた空間が元に戻ろうとする際に衝撃波が発生し、それが真空の刃となります。

疾風天狼剣(しっぷうてんろうけん)!!!」

 無数に生み出された真空の刃が聖霊狩り達に襲い掛かり、GAの結界を切り裂きます。宛らその光景は複数の狼が狩りをしているようなものでした。ペガサスのクラウドを契約聖獣にしている迅ですが、破魔之御剣を解放した際の迅の攻撃は荒々しい狼のような攻撃を繰り出すのです。

 そして、聖霊狩りのGAを切り裂いた迅は私の元へ戻ります。

「トドメはお前にくれてやるよ、雫……」

「美味しいところは主に差し出しますか。迅は執事の鑑ですわね」

「いいから早くしろ……」

「はいはい。ソフィー!!」

 私は自分の気力とソフィーの魔力をユニコーン・ザ・グングニールで一つに融合させて、アーティファクト・ギアの能力強化術であるアーティファクト・フォースを発動します。光り輝くユニコーン・ザ・グングニールを持ち、GAの結界を失った聖霊狩りを叩き潰します。

「セイント・オーバー・ザ・グングニール!!!!!」

 以前天音さんと戦った時よりさらに力を増したユニコーン・ザ・グングニールを投げ飛ばします。投げ飛ばされたユニコーン・ザ・グングニールは音速に近いスピードで駆け抜け、周囲の物を全て巻き込むような凄まじい旋風を起こし聖霊狩りをミキサーのようにかけてボロボロにします。聖霊狩りは大昔から築いてきた人間と聖獣の大切な絆を奪う真似をする志のない愚者達、容赦など最初からいりません。

「さあ、聖霊狩りを早く捕縛して天音さん達の元へ行きましょう」

「そうだな……それに、急いだ方が良いかもしれない」

 迅は天音さん達が飛んで行った方の空を見上げた。その表情はいつになく険しい物でした。

「何やら……不穏な気配を感じる。俺達も早く救援に向かった方が良いかもしれない」

「皆さん……」

 その言葉に私も空を見上げました。空は朝と変わらぬ青空の快晴でしたが、一部分だけ空に黒雲に覆われていて今にも雨や雷が降りかかりそうな雰囲気でした。私は未知の敵と戦う天音さんたちの無事を祈りました。

 

   ☆


 生徒会コンビの先輩たちに聖霊狩りを任せた俺達は兄さんの元へと急いだ。すると、快晴の青空だった空に不穏な黒雲が浮かんでおり、不安になりながらもその黒雲の中心の真下である学園の訓練場に向かった。しかし、そこでは信じられない光景を目の当たりにした。訓練場で暴れる巨大な影。それは聖獣ではほとんどお目にかかれないはずの東洋龍だった。

 暴れる東洋龍の近くには先ほど俺と姉さんの脳裏に浮かんだ光景そのものの血だらけの兄さんが倒れていた。

「璃音兄さん!!」

「璃音!!」

「天音! 私たちがあの龍の注意を引き付けるから義兄様の元へ!!」

 千歳がそう言うと銀羅はすぐに訓練場の地面に降りて、千歳と雷花さんは銀羅から降りる。すぐに千歳は銀羅とレイジングで契約を行い、清嵐九尾となった妖銃を構える。

「しゃあねぇな、俺も行くかな!」

 俺の手に掴まっていた恭弥は手を離して地面に降り、如意棒を構える。

「恭弥、雷花、無茶をしない程度に時間を稼ぐわよ!」

「了解!」

「わかった……」

『凄い神力だな。流石は龍種だな』

『はっはあっ! 龍と戦うなんて久しぶりだぜ!!』

『まさか現世でこれほどの怪物と戦う事になるとはのぉ、やはり現世は面白いわぁっ!!』

 三人は同時に暴れる龍に向かって走り出し、兄さんを助けるための時間稼ぎをしてくれた。

「姉さん! 今のうちに兄さんを!」

「ええ! 流星!!」

流星は神速とも言える凄まじい速さで花音姉さんを乗せたまま動き、倒れている璃音兄さんの元へ駆ける。兄さんの元にたどり着き、流星から降りた姉さんは血だらけの璃音兄さんを担いで再び流星に乗り、地面に降りた俺の元へと戻った。

「璃音! しっかりして、璃音!!」

姉さんが必死に兄さんを呼ぶ。

「くっ……がぁっ……?」

姉さんの呼び声に兄さんは意識を取り戻して目を覚ます。

「花音……天音……?どうして来やがったんだ……?」

「私と天音はあなたがこんな姿になる光景が頭に突然浮かんだのよ。気になって来てみたら、こんな……」

 誰があの光景を見せたのか俺と姉さんは分からないけど、兄さんはずっと握っている霊閃氷帝剣を見つめて

「……そうか。轟牙、お前が知らせてくれたんだな……」

「璃音、どういうことなの?」

「俺の危機に霊閃氷帝剣の中にいる轟牙が二人に知らせたんだよ。こいつは叫ぶ以外は無口だからな……」

「ところで兄さん、あの龍は一体……?」

現在、あの龍は千歳と恭弥と雷花さんが注意を引きつけている。

「あいつは澪……親父の契約聖獣だった龍神だ……」

「澪!? あれが澪だというの!?」

「じゃあ、叔父さんと叔母さんを殺したのは瑪瑙!?」

探していた行方不明だった叔父の契約聖獣の龍神と、叔父と叔母を殺した蓮宮家の仇が見つかり、俺と姉さんは目を見開いて驚いた。

「そう、らしいな……澪は今、瑪瑙の死糸に操られている」

「死糸? あの女郎蜘蛛とのアーティファクト・ギアの能力なのか?」

「ああ。瑪瑙の骸繰死糸は他人の聖獣を操り人形のように操ることが出来る……今瑪瑙はあっちにいる……」

兄さんは顔を僅かに傾けて目線で方向を教える。その方向の先には本当に人形を操っているように骸繰死糸で澪を動かしている瑪瑙がいた。瑪瑙の足元には自分の身を守るための結界の魔法陣を展開している。

「骸繰死糸で聖獣を操っている時、瑪瑙自身はその場から動くことが出来ない。だからああやって強力な結界を張っているんだ。瑪瑙本人を叩けば簡単だが……あの結界のエネルギーは澪の膨大な神力が使われている。つまり、澪を倒さない限りあの結界は消えることはない……」

 逆に言えば、瑪瑙は龍神ほどの強大な聖獣をアーティファクト・ギアとはいえ、骸操死糸でそれを操るには瑪瑙自身にもそれ相応の大きな力を要することになる。つまり、龍神を倒せば力を大幅に使った瑪瑙は無防備となる。

「そう言う事か……姉さん、兄さんを頼む。俺と千歳達で何とか龍神と戦ってみる。倒すことはできないかもしれないけど、龍神の力を削るぐらいはできるかもしれない」

「天音……」

「お前達だけじゃ危険すぎる! ここは撤退して態勢を……くっ!?」

 無理に立ち上がろうとした兄さんは激痛が体に走り、傷口から更に血が溢れ出す。

「早く璃音の治療を……はっ!? そうだわ、霊閃氷帝剣の轟牙の力を使えば……」

 姉さんは何かを思いつくと兄さんの霊閃氷帝剣を手に取り、地面に突き刺した。

「お願い、轟牙。あなたの霊力で璃音の傷を癒して!」

 姉さんの願いに反応した轟牙は霊閃氷帝剣の刃から自らの膨大な霊力を溢れ出し、璃音兄さんを中心に霊力で魔法陣を描き出した。その魔法陣から発せられる霊力によって、中にいる人間の治癒力を数十倍に高める作用が発生し、璃音兄さんの傷を少しずつだが確実に治していく。

「これで璃音の傷は何とかなる……でも、今の璃音は戦う事は出来ない。天音、澪の事を頼んでもいいの?」

「取りあえず、出来る事をやるだけだよ。行くよ、白蓮」

『うん!』

 俺は鳳凰剣零式を肩に担ぎ、龍神との戦闘に参加するため千歳達と合流する。龍神と戦っていた千歳達は即興だが見事な陣形で応戦していた。前衛は対多数接近型の恭弥と広範囲攻撃型の雷花さん、後衛の中・遠距離攻撃型の千歳で構成されていた。主な攻撃は伸縮自在の如意棒を操る恭弥で、それを千歳と雷花さんが援護をしていた。

「すまない。待たせたな、みんな!」

「待っていたわ、天音!」

「やっと主人公のお出ましか! 待ちくたびれていたぜ!」

「それでは、一気に叩きに行きましょう……」

 俺達は互いの顔を見て頷き、戦闘を再開する。陣形は前衛に俺が加わり、恭弥と二人で主に龍神に攻め入る。龍神が俺と恭弥に引き付けられている間に後衛の千歳と雷花さんが強力な技を繰り出す。ちなみにこの陣形は咄嗟の思い付きだが、陣形の主旨は全員話し合わなくても既に理解していて、それぞれが自分の役割を果たしている。

「蓮宮流、水蓮天昇!!」

「如意棒、龍牙轟閃!!」

 地を駆け抜け、空を飛翔しながら巨大な龍神の体に攻撃していき、少しずつダメージを与えていく。

『グルゥアアアアアア!!』

龍神は操られながらも怒りを感じているらしく、鋭い爪や牙を立てて俺と恭弥に襲い掛かるが、次の瞬間に青い炎と黄色の雷に包まれる。

「妖炎弾、蒼炎閃華(そうえんせんか)!!」

「爆雷突貫、サンダー・スパーク・シュート」

 前衛の俺達で引き付けている間に後衛の二人はアーティファクト・ギアで強力な技を出すための力を込め、それをナイスタイミングで発射した。蒼炎閃華は狐火を一発の弾丸に込め、それが着弾した瞬間に花のように華麗に爆発する。対するサンダー・スパーク・シュートは球体上に纏めた雷の球をトールハンマーで打ち、こちらも当たった瞬間に爆発した。炎と雷の二つの力が龍神の体を包み込むように攻撃していき、操っている瑪瑙も苛立ちを隠せない。

「ちっ……面倒だな! おい、龍神! ウロチョロしている小僧より先にあまり動かない小娘をやるぞ!!」

 瑪瑙は龍神の目先にいる俺と恭弥より先に千歳と雷花さんを狙う。

「千歳……龍が私達を狙っている。二手に分かれよう……」

「うん、わかったわ!」

 雷花さんは体に宿る雷の力で身体能力を強化して走り出し、千歳は清嵐九尾を後方に向けて狐火を発射する。すると、発射された狐火がまるで飛行機のジェットブースターのような役割を果たし、千歳はバランスを取りながらそのまま低空飛行をして飛んだが、

「きゃっ!?」

まだ清嵐九尾を使った低空飛行に慣れていないのか、千歳は低く飛び過ぎて地面の小石に躓いてしまう。躓いてしまったことで、瑪瑙は当然千歳に狙いを定める。

「やりな、龍神!!」

『グルゥァアアアアアア!!!』

 龍神は獲物を捕る野獣のように牙を突き立てて倒れた千歳に襲い掛かった。

「千歳ぇえええええええええええっ!!」

このままじゃ千歳が危ない! そう思った俺は鳳凰剣零式を前に突き出し、鳳凰之羽衣の双翼を羽ばたかして飛んだ。

「うぉおおおおおおおおおおおおっ!!」

『ははうえ、まもる!』

吠えながら白蓮と心を通わし、俺の霊力と白蓮の天力を1つにしてアーティファクト・フォースを発動する。アーティファクト・フォースによって鳳凰之羽衣の双翼の飛行能力が力を増し、限界まで加速しながら鳳凰剣零式に巨大な炎を纏いながら特攻する。

「蓮宮流剣術特式! 裂空鳳凰紅蓮撃(れっくうほうおうぐれんげき)!!」

ボゴォッ!!

突き立てて特攻する鳳凰剣零式の刃は千歳を喰おうとする龍神の顎に激突した。決死の特攻は顎をぶっ飛ばした事で龍神の意識を奪い、そのまま地面に伏せる形で倒れた。そして俺は龍神に激突した際の衝撃で鳳凰之羽衣の双翼の制御を失い、龍神と同じく地面に落ちてしまった。

「うわっ、うわぁあああああああああっ!?」

バランスを完全に崩した俺は地面に真っ逆様に落ちたが、GAの結界で何とか無事に済んだ。

『蓮宮天音、結界エネルギー15パーセント低下。エネルギー残量、85パーセント』

「いてて……助かったけど、エネルギーをちょっと使ったな……」

特に大した痛みは無かったので地面から立ち上がり、鳳凰之羽衣に付いた砂埃を軽くて出払う。

「天音!!」

危うく龍神に喰われそうになった千歳はすぐに俺に駆け寄る。

「千歳、無事か?」

「私は大丈夫!でも、天音は大丈夫なの!? あんな無茶な攻撃をして……」

「まあ、ちょっと予想より霊力を使いすぎただけだ。でも、お前を守るためなら惜しくないさ」

「天音……」

「さあ、とにかく早く龍神を倒そうぜ。今の特攻で少しはダメージを――」


『グルゥアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーッ!!!』


「与え……えっ!?」

「な、何!?」

俺と白蓮の特攻でダメージを与えたはずの龍神が起き上がり、全ての物を震わせる程の咆哮を上げた。その異常なほど強い咆哮に恭弥と雷花さんが駆け寄る。

「おいおい!何が起きたんだ!?」

「見て……あの龍の色が……」

咆哮に反応するかのように龍神を彩っていた水晶のように透明な龍鱗が黒く汚れていく。何が起きたのか理解が出来ない俺達に恭弥の握っている如意棒から孫悟空の声が響いた。

『やべぇぞ!あの龍、“逆鱗”に触れられて暴走状態になってるぞ!!』

「「「「暴走!?」」」」

『もしかしたら、天音がさっき龍神に“顎”を攻撃したから、それで……』

龍には81枚ある龍鱗の内、顎の下の喉元に1枚だけ逆さに生えている龍鱗がある。それを“逆鱗”とよばれ、龍はその逆鱗に触れられることを非常に嫌う。触られた場合は龍が激高し、触れた者を即座に殺すと言う……。つまり、偶然俺はその逆鱗に攻撃してしまい、操られているとはいえ龍神の持つ本能が蘇ってしまったという事になってしまったと言うことだ。

「これは……かなり危険な事態になってしまったな……」

俺は本当に不幸か何かに取り憑かれているのではないかと本気で思い始めてきた。



.

龍神の澪さん、逆鱗に触れられちゃって暴走状態になってしまいました。


ちなみに、璃音兄さんがやられた理由は本気を出せなかったところと、幼い頃に父親と澪との思い出が蘇って気を取られた隙に一気にやられてしまったからです。

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