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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第2章 バトルロイヤル編
22/172

第22話 失われる心

前回のギャグ回(?)と違い、ドロドロな話しとなってしまった!?(爆)


天音ちゃんが一人の女の子に狙われます!

 その後、何やかんやで俺のファンクラブの馬鹿共と腐女子共を俺と千歳と恭弥と雷花さんの四人で何とか全滅させる事に成功した。倒した人たちはすぐに天聖学園にあらかじめ展開された魔法陣の効果によって強制的に敗者の集まりとなる体育館へと空間転移の魔法で強制送還される。敵もいなくなったので、ここで一息入れることにする。

「はい、召し上がれ」

 今日の為に昨日から作っておいた俺お手製のお菓子と水筒にいれたお茶を千歳と雷花さんに手渡す。

「おぉ~っ! 天音のお菓子だぁ~!」

「ありがとうございます、天音さん」

「それじゃあ、俺と恭弥は周囲を見てくるから二人は休んでいてくれ」

「天音! 俺の分のお菓子はあるのか!?」

「大丈夫。たくさん作ってきたから。見回りが終わったら俺達も休憩しようか」

「よっしゃあ!」

 見回りをしてみんなで一息入れようとするが、このタイミングを見計らってか一人の少女が乱入してきた。

「見つけたわ、蓮宮天音!!」

 突然現れたのは勝気な癖のあるブラウンの髪とモデルのようにスタイルが良く身長が高い女の子だった。その女の子の登場に千歳と雷花さんが立ち上がろうとしたが、俺は掌を向けて二人を制した。

「二人共、俺達で何とかするから休んでいて」

「まあ、ピンチになったら来てくれ」

 俺と恭弥の二人なら何とかなると思ってその女の子と対峙する。

「自己紹介するわ。私は愛の探求者、夢野 亜衣!」

「愛の……?」

「探求者……?」

この子、何を言っている? と俺と恭弥の思っていることは多分一緒だった。

「蓮宮天音! あなたのハート、私が奪います!」

夢野さんは左手に装着したアーチェリー用の変形弓であるコンパクトボウを構える。

「契約執行!」

契約聖獣の姿は一瞬夢野さんの背後に現れただけで見えなかったが、黒いコンパクトボウは一瞬にしてたくさんのハートに彩られたかなりファンシーな弓と化してしまった。

「私のアーティファクト・ギア、“チャーミング・ボウ”であなたは私にメロメロになります!」

「はい……?」

ファンシーで変な名前のアーティファクト・ギアに唖然とする。

「気をつけろ、あの自信ははったりじゃ無さそうだぞ」

「みたいだね……取りあえず、矢に当たらなければ良い話だからね」

「ふっふっふ……矢に当たらなければ、ですか……でも、この弓の前では当たらないという事自体が無意味ですわ!」

不敵な笑みで意味深長な言葉を言う夢野さん。

「……よっぽど腕に自信があるのか?」

「それとも、アーティファクト・ギアとしての能力によるものか?」

「どちらにしても、矢は完全に避けるか叩き折るしかなさそうだな」

弓の使い手は接近戦に物凄く弱い。俺と恭弥のタッグならこれぐらいは余裕で乗り切れるはずだ!

「行くぞ、恭弥!!」

「とっとと終わらせるぜ!」

鳳凰剣零式を握り直し、横目で恭弥とアイコンタクトを取り、同時に走り出す。

夢野さんはチャーミング・ボウの弦を引くと、これまたファンシーな鏃がハートの形をしたピンク色の矢が出現して弓に添えられる。

奪心必中(だっしんひっちゅう) 、ハートフル・アロー!!」

弦から指を離し、添えられたハートの矢がピンク色のオーラを纏いながら放たれる。一直線に俺を狙うがそれを喰らうつもりは最初から無い。

「紅蓮裂刃!!」

肩に担いだ鳳凰剣零式を振り下ろし、ハートの矢を無残に叩き折る。

「よしっ!」

「敵はもうあの子だけだ!畳み掛ける!!」

その時の俺達は完全に油断していた。

「言わなかった? 当たらないという事自体が無意味って……」

相変わらず不敵な笑みを浮かべる夢野さんの言葉にその意味が俺には分からなかったが、遠くから聞こえる千歳の声でようやくそれが分かりはじめた。

「天音!!後ろ!!」

「えっ?」

ドスッ!!

「あっ……?」

痛みはたいしてなかったが、背中から何かが刺さった感触が俺の体を突き抜ける。背中に目を向けると、俺が確かに鳳凰剣零式で叩き折ったはずの矢が何故かいつの間にか再生され、エネルギーが尽きるまであらゆる攻撃から起動者を守るはずのGAの結界を貫いてハートの矢の鏃が俺の背中から心臓を刺している。そして、俺の心臓に刺さった矢は光の粒子へと分解され、俺の体の中に入っていった。何が起きたか全く理解できずにそのまま俺は目の前が真っ暗になり、意識を失ってしまった。


   ☆


「天音ぇっ!!」

「くっ、天音!?」

「天音さん……!」

私達は夢野亜衣と言う女の持つ弓型アーティファクト・ギアの放った不可思議矢によって倒れた天音に寄りかかった。

「天音! 天音!!」

私は必死に天音に呼びかけた。不思議と矢に刺された背中には傷が一切無かったが、何かが天音に起こったことは確かだ。そして、謎の矢を受けた影響か、白蓮ちゃんの宿る鳳凰剣零式が眠りについたように静かになってしまった。

「な、何が起きたんだよ……確かに叩き折ったはずの矢がいつの間にか再生して……しかも天音に向かって飛んでGAの結界をすり抜けるなんて……」

「……あなた、何をしたの……?」

困惑する恭弥と、元凶である夢野亜衣を睨みつけて尋ねる雷花。

「ふふふっ……私のチャーミング・ボウは人を傷つける能力なんて無いのよ。いくら矢を破壊されてもすぐに再生して対象のハートを射抜くまで飛ぶのを止めない。ある意味で最強のアーティファクト・ギアだと私は自負するわ!」

そう言うと、チャーミング・ボウが一瞬光り、アーティファクト・ギアの契約を解除して、契約聖獣が姿を現す。それは背中に翼が生え、弓を持った金髪の幼児だった。

「この子は愛の神、“キューピッド”よ!」

それは日本でも有名で、気紛れな恋愛成就の神と言われているキューピッドだった。

「キューピッドを宿したアーティファクト・ギアのチャーミング・ボウは狙った相手の心臓に矢を刺す事で、その心を奪うことが出来るのです。つまり……天音さんが目を覚ました時、天音さんは私にメロメロになるのです!!」

その事実に私はこれまでにないくらい絶望した。

「そんな……じゃあ、天音は……」

私と天音が共に過ごした十数年の大切な思い出……あの夜に告白した事……。それらがたった一本の矢で全て無になってしまうというの……?

「ちっ! あいつのアーティファクト・ギアは扱いが難しいと言われている洗脳、精神操作系の攻撃だったのか!!」

「強制的に相手の心を自分のモノにする……恐ろしい能力……」

聖獣や聖神の多くは火や水などの自然界の元素の力を持つ。だが、人の心や精神を操る洗脳・精神操作系は高度な術であり、それらを習得するのは容易な事ではないため、その術を持つ聖獣は数少ない。

「……チャーミング・ボウは確かに射抜いた相手のある程度の洗脳は可能ですけど、強靱な精神の持ち主とかにはあまり効果はない。蓮宮天音に使った心を完全に自分のモノに出来るハートフル・アローはキューピッドの持つ膨大な天力を使うため、制約として半年に一度しか使うことが出来ないのよ!!」

半年に一度しか使えない大技を天音に使ったと言うことは……。

「あなた……天音が好きなの?」

私は天音を抱き締めながら夢野亜衣に尋ねた。今すぐ怒りに身を任せて清嵐九尾でぶっ放したかったが、今天音を離すわけには行かないので必死に心の中で怒りを抑えている。

「……あなたは覚えてないけど、私はあなた達二人と小学校からの同級生なのよ」

「えっ?」

「天音と千歳があいつと小学校からの同級生だとぉ!?」

「でも……千歳と天音さんは面識がないように見えたけど……」

私は彼女を知らない。だって、夢野亜衣を見たのは今日初め――。

この時、私は気付いた。否、気付かされた。

夢野亜衣を見たのは初めてじゃない……認識したのが初めてなんだ!

「……あなたと蓮宮天音は小学校の時から先生以外の同級生には全く興味を持っていなかった。同級生の多くに虐められて、二人が無視をしていた所為もあるけど、当時の二人はお互いにしか興味がなかった。だから、私の顔を覚えている筈がない……」

そうだ。私と天音は小学校に同級生から虐められていた。生まれつきの女子そのものの容姿をした天音と虚弱体質の生意気お嬢様である私は同級生から虐められていて、虐めてきた同級生を天音は私を守るために蓮宮流剣術で度々撃退していた。

そして、私達はお互いを見続ける事で虐めを無視して、果てには“友達”を作ることを無意識のうちに止めた。今更思えば、幼い我ながら異常と言えば異常な行為だった。これは私が天音にベタ惚れしてしまった影響だと思うと正直怖いものがある。“恋は盲目”と聞いたことがあるが、ある意味私達の小学生時代はそれを体現していた。

だけど、中学時代に恭弥、高校時代でさっき出来たばかりの雷花と言う大切な二人の友達がいるから昔よりは少しマトモになったと思える。

そして、夢野亜衣は自分の胸を手で押さえて自分の気持ちを全て打ち明けた。

「私は……蓮宮天音が好きだった……同じクラスで初めて出会った時から、ずっとずっと好きだった!! だけど!!」

私に憎しみの視線を向ける。こんなにも憎しみを向けられたのは生まれて初めてだ。

「蓮宮天音は最初から私なんてこれっぽっちも見ていなかった!見ていたのはあなた、天堂千歳だけ!!」

天音には既に相手である私がいることを分かった上で何年も片思いを続けるのは正直すごいと思った。

「私はずっとお前が羨ましかった。そして憎かった! 諦めようとしたけど、無理だった……でも、今の私なら蓮宮天音を振り向かせることが出来る!私が召喚したキューピッドとアーティファクト・ギア、チャーミング・ボウ……これさえあれば私の片思いも報われる、そう確信したわ!!」

「ふざけないでよ……片思いが報われる……? そんな方法で天音の心を手に入れて、あなたはそれで満足なの?」

「何とでも言いなさい。蓮宮天音が起きたらそんな事も言えなくなるわ!!」

そう言われ、私は怖くなって天音を抱き締めた。目が覚めたら天音の心があの女に移るかもしれない。だけど、どうすれば良いのか分からない。

「嫌だよ……天音が、私の前から消えるなんて……」

天音が居なくなったら私はきっと生きていけない。天音が側に居たからこそ私は生きる希望を見いだす事が出来た。私の全てを捧げても構わない……だから、天音を私から奪わないで!!




「私は……天音が好き、大好き、愛している……だから、私の前から居なくならないで……ずっと、ずっと、私の側にいて!!!」




告白と願いが重なった言葉が響いた。

ギュッ……。

背中に腕が回され、私は強く抱き寄せられた。

「ふぇっ……?」

「何当たり前な事を言ってるんだよ……」

「天、音……?」

「千歳、お前は俺の妻なんだろ……?」

涙で視界が歪んでいるけど、私の目にはいつものように少し困ったような笑みを浮かべた天音の顔が映っていた。

「俺が気を失っている間、何が起きたんだ……?」

「天音……天音ぇっ!!」

「ぐえっ!?」

私は全身の力をフルに使って天音を強く抱きしめた。

「くくく、苦しい! 苦しいってば、千歳!!」

「天音ぇ……大好きだよぉ……」

「し、知ってるから! 俺も千歳が大好きだから! だから、離してくれぇっ!!」

そう言われましても、天音に対する想いが爆発している今、離すのは難しいのから……もう少しだけ我慢してね♪

「あーあ……相変わらず見せつけてくれるなー」

「でも、どうして天音さんは精神操作系の攻撃を受けても何ともないの……?」

「確かにな。おーい、そこの略奪愛の探求者!これはどういう事だ?」

恭弥と雷花はそこで呆然と立っている夢野亜衣に聞いてみた。

「どういう事なの……?ハートフル・アローが効いてないなんて……」

自信満々だった本人は目の前の光景に呆然とするしかなかった。そんな時に今まで一言も喋っていなかった契約聖獣のキューピッドが口を開いた。

『……亜衣。一つ、お前に言ってないことがある』

「っ!? 何よ、キューピッド……」

『ハートフル・アローは確かに射抜いた相手の心を奪うことが出来るが……致命的な弱点がある』

「ち、致命的な弱点!?」

『それは、お互いを深く思いやる気持ち……真実の愛に目覚めた者には愛の女神の私の矢でも通用しない』

 つまり最初から天音にはあの矢は効かなかったわけだ。愛の女神の技だからこそ、真実の愛で結ばれた同士の絆を壊すことが出来なかった。

「そ、そんな……」

『全く……これで少しは懲りたか?』

 キューピッドは溜息をつくと光の粒子となってその場から消えた。どうやらキューピッドは初めから夢野亜衣の行為に乗り気ではなかったようだ。

「さて、話が終わったところで……」

「そろそろご退場を……」

 恭弥と雷花は夢野亜衣の後ろに立つと、如意棒とトールハンマーをバットのように両手で持ち、野球選手の打者のように構えた。

「いやっ、ちょっ、待っ――」

「「さようなら~」」

如意棒とトールハンマーが同時に炸裂し、問答無用に夢野亜衣を空高くぶっ飛ばした。

「イヤァアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

キラーン☆

亜衣の探究者こと夢野亜衣は瞬く間に夢野は青空の中に輝く星となってしまいました。

一応GAがあるから大丈夫だと思うけど、人の旦那様を奪おうとしたんだからこれぐらいは当然かな?

天音もようやく起き上がると、鳳凰剣零式の白蓮ちゃんも目を覚まして炎を燃え上がらせる。もしかしたら、二人の契約のシンクロ率が高すぎて精神の共鳴効果が出ているのかもしれないな……。共鳴効果は契約によるシンクロ率の上昇で起きる一種の病気に近い症状で、契約者と契約聖獣に同様の症状が起きる現象。共鳴効果を抑える方法はあるので、後で先生からそれを聞いておかないと……。

「はぁ……一難去ってまた一難……俺ってもしかしたら呪われてる?」

 天音は自身によって起きた出来事の連続に呪われているのではないかと錯覚し始めた。

 そんな事は無いと私たちは励ますために言おうとしたが、それよりも先に口を出した者。がいた




「呪われてる? だとしたらそれは私に出会ったことかぁ?」




 この場の四人の声と全く違う高い声に私たちは驚きながら振り向いた。そこにいたのは今まで見たことのない雰囲気を醸し出していた一人の女だった。

私達四人が最初に感じた事。それは……“ヤバい”という人間の動物的本能が感じた危険信号だ。女の体から滲み出るような殺気に得体のしれない考えを持つような不気味な笑み。この瞬間から私たちはバトルロイヤルに忍び寄る“闇”との戦いに巻き込まれていた……。



.

あー、結局 天千(あまち)でイチャイチャしちゃいましたね。


もう二人の絆は不動のものですね(笑)


次回からは本格的で厳しいシリアスバトルに突入します。

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