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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第2章 バトルロイヤル編
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第19話 新しい一歩

今回は天音ではなく、千歳と恭弥がメインです。

二人が互いの本音を言い合います。

さて、天聖学園の名物イベントであるバトルロイヤルまで残り後一週間まで日が迫り、生徒達は祭りが近づく特有のワクワクした空間を学園中に広げる中、私の幼なじみで未来の旦那様である天音はと言うと……。

「おーい、天音ー」

「起きろー、もう帰れるぞー」

「ふぅ……ふぅ……」

授業が終わった放課後、殆どの生徒達は部活や帰宅などで校舎から出て行っているなか、自分の机で伏せるように眠っている天音に私と恭弥は体を揺すりながら起こそうとしているが、天音はなかなか起きようとしない。ちなみに白蓮ちゃんは現在爆睡中の天音以上にとても疲れていて、今は聖霊樹で休んで体力を回復させている。姉貴分の銀羅が傍に居るから今日は安心して授業を受けていた。

天音と白蓮ちゃんはどうやら真夜中に璃音義兄様と特訓をしているらしく、それで疲れているみたい。私も一緒に参加したかったけど、花音義姉様が「これは男同士の秘密の特訓だから、女は黙って陰から見守るのよ」と言われた。真剣に取り組んでいる天音の邪魔をしたくないので姉様に言われたとおりに陰から見守ることにした。

「ダメね、これは。しばらく起きそうにないわ」

「六時間目の授業が終わった途端にこれだからな。今日の授業中に一回も居眠りしなかったのは逆に凄いな……」

「天音は英語とか数学の理数系が特に苦手だから、日々の授業だけはしっかり受けたいのよ」

「でもさ、天音って現代文や古文、あと歴史は得意だよな?」

 天音は理数系は苦手だが、文系は大の得意だ。その訳はと言うと……。

「それは天音が小さい頃から実家の神社で古文書とか呼んでいるからよ。それに、天音自身は歴史が好きだからね」

「……天音って生まれる時代を何世紀か間違えたんじゃねーか?」

「否定できないわね。本人も『英語さえ無ければ』っていつも嘆いているからね」

「なるほどな。まあ、それは取りあえず置いといて、このまま天音を教室に置いとくわけにはいかないから、俺が寮まで運ぶか?」

「なら、その役は私に任せて」

「何?」

机に伏せている天音を起き上がらせ、自前のゴムで綺麗な長髪を簡単に纏めた。そして、私は両腕を天音の足と首に持って行く。

「お、おい、大丈夫かよ?」

「心配ないわ。こう見えても鍛えているから。せーの、よいしょっと!」

気合いを入れて天音をお姫様抱っこで抱き上げる。女の子に見える天音はやはり男の子なので両腕にかなりの体重がのし掛かるが、そこは愛とか根性とかで何とかする。

「恭弥、私と天音の鞄を持ってくれない?」

「お、おう。構わねえけど、もし辛くなったら交代してやるからな」

「ありがとう。でもこれは婚約者である私の仕事だから、寮の部屋まで頑張るわ」

「ははっ、強いなお前は……」

若干の呆れ顔で苦笑を浮かべた恭弥は私と天音の鞄を持ってくれる。今日は雫先輩達の訓練は無いので、私達は体を休める為に学生寮にそのまま直行した。




 校舎から歩いて数十分後、私の愛の力とか根性で学生寮の部屋まで無事に寝ている天音を部屋まで運んでベッドに寝かせた。

「お休みなさい、天音」

「しっかし、これだとどっちがお姫様だかわかんねえな。もし、千歳が男装して天音が女装したら男女逆転しちまうな」

 鞄を持ってくれて部屋までついてきた恭弥の冗談に私は少し本気になってしまった。

「……それも良いわね。今度やってみようかな?」

「おい、バカ……」

「大丈夫、冗談よ」

「お前の場合、天音関連だと冗談に聞こえないぞ」

「むー、失礼ね」

「天音の貞操が色々危険なのは友人としてほっとけないからな」

「それ、自分が奪うから私に奪わせないってこと?」

「俺にそんな趣味はねーよ」

「嘘つき。中学生の時に天音に一目惚れしたらしいじゃない」

あの時は本当に恭弥に殺意が湧いたけど、義姉様と義兄様が来たから爆殺はうやむやになってしまった。

「あれはあれ、今は違うわ」

ふーん、怪しいな……ん? ちょっと待って。確か、天音との模擬戦の時に……。

「そう言えば、好きな人がいるって言ったわよね……?」

「ん? まぁな……」

「ねえねえ、教えなさいよ」

 あの冒険馬鹿の恭弥の好きな人にちょっとだけ興味がわいて来た。

「な、何で千歳に教えなきゃならないんだよ!?」

「良いじゃない。減るもんじゃないんだし」

「嫌だ! お前にだけは絶対に教えない!」

「恭弥のケチ!」

「ケチねぇ……だったらこれだけは言っておく。俺が好きになったその子は活発で暴走的なお前と違ってお淑やかで物静かな子だ!」

 恭弥の好きな女の子のタイプを知ったのはいいけど、ムカつく言い方をされて体を震わせながら制服の下に隠してあるダイナマイトに手を伸ばそうとする。

「本当に相変わらず失礼な奴ね……眠っている天音が居なかったらすぐに爆撃していたのに……」

 流石にダイナマイトを此処で爆撃すれば爆音で目が覚めてしまう。でも、ここまで大きな声で言い争っているのに一向に起きない気配を見せないので、本当に疲れているみたい。

「ってか……何でお前はそういつも俺に敵意剥き出しかな……」

いつも敵意剥き出し? そんなの、決まっているじゃない。だって、私は……。

「あんたに……嫉妬しているから、敵意を剥き出しにしているのよ」

「はぁ……? 千歳が俺に嫉妬ぉ……? 何でだよ?」

私の言った言葉の真意を恭弥は理解していない。確かに突然嫉妬していると言われても身に覚えはないだろう。

「だって……天音は恭弥といるときに私には見せない笑顔をしたり、私にも話してくれない悩みとか話しているじゃない……生まれてからの幼なじみとして悔しいのよ……」

私の知らない天音の違う一面を知っている恭弥に私はずっと嫉妬していた。友人だけど、私は恭弥をライバル意識してずっと敵意を向けてきた。そんな私の本音を聞いた恭弥は呆れ顔で私にこう言った。

「……お前、馬鹿だろ?」

「ば、馬鹿って何よ!?」

「人として当たり前の事をいちいち嫉妬していることだよ」

「人として、当たり前の事……?」

「俺は男で天音の友達……まあ、俺は親友だと思っているけどな。それで、千歳。お前は女で天音の幼なじみ……いや、今は恋人をすっ飛ばした婚約者か。性別や立場が違うんだから接し方は変わるだろ」

「そう言うものなの?」

「そう言うものだ。同性同士でしか話せないこととか沢山あるんだ。お前の場合は……天音が大好きすぎて女友達がいないだろ?」

そう言われるとそんな気がしてきた。小学校から天音には友達が居ないから必然的に私が常に側にいた。女友達を作ることなんて考えていなかった。天音さえ側にいれば構わなかったから。

「確かに……いなかったわね」

「だから分からないんだよ。お前も一人ぐらい女友達を作れよ。そうしたら気持ちが分かるよ」

「同性同士でしか話せない事か……うん、頑張って友達を作るよ」

「そうか。それと、一つ言っておくぞ」

 恭弥は手を口に添えて思い出すように小さく笑う。

「何?」

「天音は俺と話しているとき、お前の話題の時は楽しそうに話してたぜ」

「私の事を……?」

「ああ。千歳の暴走行動や爆弾発言とかな。その時の天音の笑顔はいつも楽しそうだったぜ」

「そ、そう……」

知らなかった。天音が恭弥とそんな事を話していたなんて……。恭弥の話を聞いて私も早く天音と恭弥の親友関係のような女友達を作って楽しい話をしようと心に決めた。すると恭弥は両手を軽く叩いて真剣な表情をした。

「さて……お互いのわだかまりも解消されたところで、改めて千歳に話がある」

「え?何を?」

「天音と一緒に冒険部に入ってくれ!!」

「……恭弥、あんたは懲りないね」

「懲りないとは何だ。俺は本気だ!」

 中学の時からずっと恭弥は私と天音に「冒険部を作ろう!」や「旅をしよう!」などと言い続けてきた。余りにもしつこいので最近では軽くスルーしていたが恭弥は本気らしい。

「あのねえ、学生である私達に人間界と精霊界の二つの世界を旅するって、本当に出来ると思うの? 冒険するにしても膨大なお金が掛かるし、精霊界に行くにも世界人獣協会の特別な許可とか書類の手続きが必要だし……」

 とにかく冒険や旅と言っても面倒なことやクリアしなければならないことは山ほどある。

「心配するな! 取りあえず、人間界で旅をする旅費は何とか用意できる。精霊界は知り合いのつてで何とかなる!」

しかし、それを物ともしない自信満々な恭弥の態度に私は眉を額に寄せて尋ねた。

「本当に……?」

「本当だ。確か、天音は成人になったら蓮宮神社を継いで神主になるんだったよな? そしたら千歳もすぐに蓮宮家に嫁に行くだろうし、俺としては天聖学園を卒業する三年間の間にお前達と――千歳と天音と一緒に世界を旅したいんだ!!」

 天音と私の将来の事を踏まえて恭弥はこの天聖学園の三年間の内に私たちと旅をしたいという。そこまで言われては断るのが難しくなる。

「恭弥。本当に私と天音で良いの?」

「ああ! 初めて会った時からずっと思っていたんだ。この二人となら楽しいたびになるから絶対に一緒に行きたい、ってな!」

 どうやら恭弥の気持ちは変わりそうにないみたいね。仕方ないね……恭弥の事だから私が頷くまできっと言い続けるかもしれないし、ここは腹を括ろう。

「そうね……人間界と聖霊界の二つの世界を旅……考えただけでも壮大な旅行になりそうね」

「千歳、それじゃあ……」

「天音の答えはまだだけど、きっと一緒に行くって言うと思うわ。だから、旅の計画とか準備をよろしくね。“冒険部部長”」

「応よ! 任せとけ!」

 恭弥と私は軽くハイタッチをして約束を交わした。

 本当に人間界と聖霊界を冒険が出来るかどうかわからないけど……せっかく一緒に行くと決心したんだから、絶対に天音と一緒に連れて行ってね。

頼りにしているわよ、恭弥部長。



.

次回、早くもバトルロイヤルスタートです!

女の子の新キャラ登場ですのでお楽しみに。

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