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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第11章 戦神極祭編
171/172

第152話 蓮宮と神宮

新年最初の投稿です。

今回は天音と叢雲の対話です。

戦神極祭三日目、二日目に洗脳された鬼神隊のせいでフィールドは滅茶苦茶に壊れてしまったので今日は一日お休みでフィールドの修復と整備に入っている。

鬼神隊のメンバーは試合前に謎の男に洗脳の首輪をつけられてそれからの記憶は無いらしく、罪には問われないだろうと千歳が言っていた。

クウのお陰で男に無事に戻った俺は清々しい気持ちで過ごすことができた。

「ちくしょう……天音が男に戻っちまった……」

「せっかくお洋服を作ったのに……」

恭弥や雷花さんが酷く落ち込んでいたが俺は完全スルーをして星界に向かった。

俺の男の姿を初めて見たレイはジィーっと俺を見つめている。

「ん?どうした、レイ」

「天音、本当に男なんだな」

「ははっ、女の方が良かったか?」

「ううん。そっちの姿も綺麗で良いと思う」

「そうか、ありがとう」

レイの頭をポンポンと撫でながら蓮神を持ち、天装衣を身に纏う。

そして、俺の前にいるのは五人の先代当主達だった。

「行く、ぞ……」

「我々の準備は完了です」

「はぁ〜……とっとと始めようか」

「覚悟はよろしいですね?」

「さあ、私達の力を受け継いでもらおうか?」

すでに戦闘態勢を取っている玲音様、音夜様、玖音様、雷音様、織音様に俺は蓮神を鞘から抜く。

「レイ、白蓮と黒蓮たちと一緒に下がっていてくれ」

「今から何をするのか?」

「一言で言うなら……地獄の修行」

「え?」

「逝ってくる……」

「あ、天音!!?」

十二の霊煌紋のうち、取り戻したのは五つ。

ここで五つの修行をクリアすれば十の霊煌紋が元に戻る。

「行きます……先代様!!」

『ピィー!』

『『『わうー!』』』

「えっと、頑張れ天音!」

俺は五つの霊煌紋を取り戻すための五つの修行に挑んだ。

そして、その修行は想像を絶するもので俺はまた死にかけるのだった……。



長い修行がようやく終わり、星界から外に出ると既に夜だった。

「し、死ぬかと思った……」

『ピィョー』

『『『ワウッ』』』

「お疲れ様……しかし、お前の先祖は何か?化け物じみた人間ばかりだな」

レイは先代達との修行を見てその恐ろしさに身震いをしたようだった。

まあ、確かにあの修行は恐ろしすぎた。

やってる本人と見ている人が言うんだから間違いないな。

「さて……腹減ったから飯を作って明日に備えるか」

「明日の対戦相手は……確か、新選組だったかな?」

そう、明日の対戦相手は関西校上級生チームのチーム新選組だ。

「ああ。日本最強の剣客集団、新選組……局長の勇刀とは対決する約束をしたからな。楽しみだ」

京都の戦いが終わり、俺たちを見送る時に勇刀と戦神極祭で戦うことを約束した。

新選組の局長を勤める勇刀の剣の実力は同年代の中でも高い、同じ剣士として戦ってみたかった。

「そうか。私も一緒に戦うぞ」

「ああ、頼んだよ」

レイは飛び入り参加のようなものだが、洗脳された鬼神隊の騒動を抑えた功績を認められ、俺の契約聖獣として戦神極祭に参加することが認められた。

「ところで……そこにいるのは誰だ!!」

その辺に落ちていた小石を拾ったレイは林の方に勢いよく投げると、バッと何かが出てきて俺の前に降り立った。

「ははは、気付かれてしまったね」

「神宮叢雲?」

それは和かに笑う神宮叢雲だった。

「天音、ちょっと付き合ってくれないかな?」

叢雲は液体の入った瓢箪を手に俺を誘った。



冬の冷たい空気の中、月明かりが照らされた夜の校舎の屋上に登った。

屋上のこの場には俺と叢雲しかいない。

白蓮達は眠いと言っていたので明日に備えて先に学生寮に帰らせた。

屋上の床に座ると叢雲に朱塗りの杯を渡された。

「さあ、どうぞ」

杯に瓢箪から液体を注がれた。

液体からアルコールの香りが漂い、すぐにそれが酒……日本酒だと分かった。

「叢雲……未成年飲酒は法律違反だよ」

「少しぐらいは良いじゃないか……太陽神が共に飲みたいと言ってるので」

俺と叢雲の前に神気を漂わせながら現れたのは巫女装束に似た派手な衣装を着た美女だった。

「あなた様が……太陽神、天照大御神様……?」

「ええ。初めまして、蓮宮の末裔……蓮宮天音」

まさか……日本の最高神である天照大御神様にこうして会える日が来るなんて夢にも思わなかった。

背後から僅かに後光が差して、凄いオーラを感じる。

「叢雲、私にもくれ」

「ああ」

天照大御神は自ら大杯を取り出し、叢雲が酒を注ぐ。

「それでは、乾杯」

「乾杯」

「か、乾杯」

杯を軽くぶつけて叢雲と天照大御神はグイッと酒を飲んだが、俺は飲む気になれなかった。

アルコールにかなり弱い俺は甘酒ですら酔ってしまうほどだ。

『おい、天音。飲め』

(えっ?ク、クウ!?)

頭にクウの声が響いて思わず杯を落としそうになった。

『酔いのことなら俺様に任せな。影霊壱式の虚無で酔いを抑えられる』

(あ、そっか。虚無は異常状態を無効にする力があるんだった。それってアルコールの酔いにも効果があるのか?)

『おう。ってか、酒を飲ませろ。お前が飲めば俺様にもその味とか伝わるからな』

(わ、分かった……酔いは任せた)

『任せな!』

杯を口に付けて酒を口に含んだ瞬間。

『影霊壱式・虚無!!』

俺の体に刻まれた影霊紋が僅かに輝いて不思議な力が身体中を巡った。

「あ、美味しい……」

「うちの伊勢神宮で作った特別な神酒です。明日の朝には酔いは覚めてますのでご心配なく」

「そうか……そっちはチーム神螺と戦うんだよな」

準決勝に勝ち残ったのは俺たちチーム鳳凰紅蓮団と雫先輩たちのチーム神螺、そして関西校のチーム新選組と叢雲たちチーム天照。

奇しくも関東校と関西校の4チームが残った。

「僕たちは勝ちます……そして戦神極祭の優勝を狙います」

「その台詞、そのまま返すぜ。戦神極祭は俺たちが制覇する!」

お互い戦神極祭の頂点を目指す者として俺と叢雲の視線が合い、激しい火花が散った。

「ふふふ……熱いのぉ、若者よ。さて、叢雲よ。この蓮宮の当主に話すことがあるんじゃないか?」

「……そうでしたね。僕としたことがお酒で気分が盛り上がってしまいました」

杯を床に静かに置くと叢雲は真剣な眼差しで俺を見つめ、静かに口を開いて話を切り出した。

「天音、一つ頼みがあります。あなたの妹、風音さんを僕たちに引き取らせてもらえませんか?」

「……お前、何を言ってる?」

杯を叢雲の杯の隣に置き、蓮神を顕現陣から出しながら睨みつける。

いつもならこんな事はしないがアルコールで気分が高まってるのだろう。

「申し訳ありません、順にお話ししましょう。風音さんは僕達神宮一族の血を継いだ人間なのですよ」

「風音が、神宮一族の……!?風音は母さんの実家、雪村一族の遠縁のはず……」

どういうことだ!?

風音は雪村一族の遠縁にあたる子で両親が事故で亡くなって母さんが引き取った……。

それが西日本最高の破魔の一族、神宮一族の血を継いだ子だって?

「信じられないかもしれないが、あの子には私の“妹”を呼び出す力を持っているのだから……」

「天照大御神様の妹……?まさか……月の女神!!?」

天照大御神様には弟と妹がいる。

一柱は日本神話の英雄と言われている伊邪那美命。

そしてもう一柱は文献がほとんど無く、その実態が不明とされている月の女神と呼ばれている『月読尊』。

「風音が……月読尊様を召喚し、契約することができるのですか……?」

「ええ。それと、風音さんは神宮の血を継ぐ者の中でも特異な四季姫の最後の生き残りなのです」

「四季姫……?」

「四季姫は春夏秋冬の季節の力を操ることができる女子だ。私も風音に会うまで四季姫の血を継ぐ人間はもういないと思ったが……」

風音が神宮一族の中で四季の力を操る四季姫の血を継いでいて、更に月読尊と契約する選ばれた者……?

うわぁ、色々と真実が判明して頭が混乱しているよ……。

でも、たとえ風音の正体が何だろうと俺の答えは決まっている。

「風音は絶対に渡さない。蓮宮の当主として、何よりも風音の兄としてな」

「そうですか……」

「もし風音を奪うなら、俺たち蓮宮一族は容赦しない……これ以上、大切な家族を失うわけにはいかないからな」

蓮宮一族は大切な家族や人間を守るためならどんな事でもする。

大切な存在を守ることこそ、蓮宮の教えであり、誇りでもあるからだ。

「我々は蓮宮と全面戦争をするつもりはありません。そんな事をしたら双方に多大な被害が出ますからな。でも……」

「でも?」

「合理的に風音さんが来てくれればいいですけどね」

「ほう、それはどうやってだ?」

「実は……僕の弟、神宮八雲が風音さんに一目惚れしてしまったんですよ」

「……は?」

何を言い出したんだこいつは?と耳を疑った。

そして叢雲はキラキラと輝くような顔で爆弾発言を投下した。

「ですから、近い将来に風音さんが八雲と結婚し、うちに嫁に来てくれれば万事解決ですよね?」

取り敢えず俺は無性に叢雲に一発殴りたくなった。



学生寮の部屋に戻ると俺は境界輪廻を使ってある場所へ向かった。

そこは実家の蓮宮神社の地下室だ。

かつてそこには双蓮で鈴音が封印されていた場所で更には歴代蓮宮当主の神器が収められていた。

そして地面には数ヶ月前に刻まれた大きな魔法陣があった。

「十二支、いるか?」

『チュー?なんでちゅか、御当主様』

現れたのは天聖学園の七不思議の一つ、地下迷宮の守り神だった十二支だ。

地下迷宮で歴代蓮宮当主にフルボッコにされて完全敗北し、守る対象であった財宝を蓮姫様たちが手に入れた後に蓮宮神社の守り神へ転職(?)したのだ。

今話をしているのは十二支の代表、鼠だ。

「十二支のみんな、頼みがある。しばらくの間風音の警護を頼む」

『風音ちゃんの?でも風音ちゃんは警護しなくても強いでちゅよー?』

「確かにそうだが、実はな……」

十二支に風音と神宮一族の因縁を話した。

戦神極祭が終わるまで神宮叢雲とその弟、神宮八雲から遠ざけるように守って欲しいと頼んだ。

『なるほど、確かに心配でちゅね。その八雲って小僧が風音ちゃんに何らかのアプローチをするかもしれませんし』

「母さんとの約束でまだ風音を嫁に出すわけにはいかない。少なくとも二十歳過ぎるまでな」

『そうでちゅか。わかりましたでちゅ!十二支の名にかけて風音ちゃんをお守りするでちゅ!』

「ああ、頼んだよ」

鼠の頭を指で撫でると一つ質問してきた。

『御当主様、最後に一ついいでちゅか?』

「何だ?」

『シスコンは早めに卒業した方がいいでちゅよ』

「誰がシスコンだ、誰が!」

風音のことは大切に思っているがシスコンではない。

第一俺には恋人の千歳がいるし、風音にそんな感情を抱いたことがないから。

「はぁ……とにかく、頼んだぞ」

『りょーかいでちゅ!』

ビシッと敬礼をする十二支たちに風音を任せ、俺は明日に備えて学生寮に戻って寝ることにした。

明日は新選組との対決だ、気を引き締めていかないとな。



side???


日本から遠く離れた地の地下深く……そこはとても広い空間で薄暗い場所だった。

溶接で火花が飛び散り、金属がぶつかり合う音が響いた。

そこの責任者である一人の老人に頭を包帯で巻かれた男が静かに近付いた。

「どうだ?こいつの完成度は?」

「八割……と言ったところじゃな」

「完成を急がせろ。祭の最終日は三日後だ」

「はっはっは!三日後か、仕方ない、完成を急がせるか」

老人はやれやれと言った様子で手元にある資料を整えて

男は完成が近づいている目の前の巨大な金属の物体に笑みを浮かべていた。

「邪悪な神話の怪物の首に、世界最新鋭の機械技術。そして……」

狂ったように笑い出す男……その男の手には翡翠色に輝く神気を帯びた古い剣が握られていた。

「最高クラスの神器!最強の組み合わせだな!!これで……これで最強のアーティファクト・ギアが手に入る!!!」

その剣は日本神話に伝わる伝説の神器……草薙剣。




次回は新選組との対決です。

かなり濃密な戦いを書こうと思います。

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