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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第11章 戦神極祭編
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第151話 蠢く闇

最近スランプで一ヶ月も更新が止まって申し訳ありませんでした。


今回は戦神極祭の裏で蠢く闇が分かってきます。

side???


天聖学園で戦神極祭が行われる少し前……関東から遥か遠くの中国地方の島根県。

島根県の日本を代表とする神社の一つ、出雲大社で事件が起きた。

大社の一角にひっそりと埋まれた古のある怪物の『首塚』が掘り起こされ、その首を収めた大きな壺が盗まれてしまったのだ。

「これさえ、これさえあれば……神話の怪物が復活する……!!!」

盗んだ犯人はその壺を意気揚々と持ち上げ、何かに取り憑かれたように笑い出した。



side天音


白龍神姫・白零ことレイと氷蓮を契約し、新たなアーティファクト・ギアの氷輪白龍剣を手にした。

「まずは……あいつらの動きを止めるか」

『そうだな!』

レイが敷いた守護天陣が解除され、守るものがなくなると尽かさず敵のあいつらは力を封じる弾丸を撃ってくる。

だけど、氷輪白龍剣を持った今なら……。

「行ける!」

足に力を入れて走り出した瞬間、今まで体験したことのないように体が羽根のように軽くなり、光を纏いながら動いた。

『光神化!』

レイが動いたのと同じように俺の体が光と同じようになり、光速の速さで動いた。

そのスピードは強化で走る時は比べ物にならないほどであっという間に敵の背後に回りこめた。

白龍剣を掲げると周囲の空気が一気に冷やされ、新たな蓮宮流の技を生み出す。

「蓮宮流、氷蓮裂刃!!!」

地面を思いっきり切り裂くと空気中の水分と白龍剣の冷気が合わさり、敵全員を一気に氷漬けにした。

「そこで大人しくしてろ」

『天音、千歳達を!』

「ああ!」

すぐに千歳達の元へ向かうが、かなりの力を吸い取られたらしくみんなぐったりとしていた。

「どうやってこいつを破るか……」

『簡単だ。一瞬で凍らせて粉々に砕けばいい』

「出来るか?」

『僕を誰だと思っている。僕は白龍神姫、これぐらいの事は造作無い!』

「ふっ、頼もしい限りだ!」

白龍神姫って一体何のことだと疑問に思うが自信満々なレイの言葉を信じ、白龍剣を静かに構える。

そして蓮宮の舞を踊るかのように回りながら白龍剣を振るう。

すると、千歳達を覆っていた結界が氷結し、ガラスのように砕け散った。

「蓮宮流、氷神零滅界ひょうじんれいめつかい……と名付けるか」

『そうだな!』

結界から解放された千歳達はその場に崩れる。

「みんな!」

「天音……」

「大丈夫か?」

「うん、ありがとう……」

みんなを解放したその直後にフィールドを包んでいた結界が壊れ、空から複数の影が降り立つ。

「天音!無事か!?」

「璃音兄さん!」

「全く、相変わらず呪われてるなお前は!」

「サクラ!」

璃音兄さんとサクラが俺たちを守るように現れると、続々と人がフィールドに押し掛けて氷漬けにされた敵の周りに集まる。

「あいつらは洗脳されているんだ」

「多分あの首輪だな。首輪から特殊な魔法を感じる」

「ならすぐにでも氷漬けから解放しないと……」

『僕に任せてくれ』

「レイ、出来るのか?」

『なんなら、氷漬けを解除すると同時に首輪を破壊してあげようか?』

「凄いな……そんな事まで出来るなんて……」

『伊達に白龍神姫と名乗ってはいないよ』

「よし、頼んだぞ」

『うん!!』

氷漬けの敵の元へ走り、白龍剣の切っ先を氷に触れさせた。

『氷解砕破』

氷を溶かした瞬間に首輪を粉々に破壊し、意識を失った五人はすぐに救護隊に運ばれた。

「さて……何が起きたか整理しないとな」

「天音……」

「ん?」

氷輪白龍剣の契約を解除し、少女の姿に戻ったレイは俺を見つめながら尋ねてきた。

「千歳が言っていたが、天音はいつもこんな感じで揉め事に巻き込まれているのか?」

「あはは……まあ、認めたくはないけどね……」

苦笑しながらレイの頭を軽く撫でて千歳達の元へ戻った。

戦神極祭……どうやら無事に終わりそうに無いみたいだな。

さーて、これからどうするか作戦会議と行きますか。



俺たちは事後処理を大会本部の大人たちに任せて鳳凰紅蓮団と冒険部のメンバー、そして風音と璃音兄さんと花音姉さんと一緒にアリス先生の地下室に集合した。

「さて……何が起きているのか情報を整理しましょうかしら?」

アリス先生は大きなホワイトボードを用意して幾つかの情報を纏めた。

一つ、今回の事件の狙いは俺。

二つ、幾つもの闇の組織が同時に裏で暗躍している。

三つ、闇の組織は何か巨大な力を目覚めさせようとしている。

一つ目の事だが、どうして俺が狙われているのかこれは璃音兄さんが話してくれた。

「天音は天聖学園に入学してから色々な事件に巻き込まれていて、なんだかんだで事件解決の中心人物にいる。闇の世界では結構有名人だぞ?」

「……マジで?」

「本当よ。精霊狩りの瑪瑙は闇の世界でもかなり名の通った奴だからそれを倒した時から天音の名前が既に広がっていたのよ」

既にその時から俺は闇の世界の有名人だったのか……嫌だなぁ、そんな有名人は。

「天音は闇の世界にとっていずれ邪魔な存在となる。それを恐れてまだ成長期の今を叩くことにしたんだと思う」

平和に暮らしたいのにどうして俺はこんなにもトラブルに巻き込まれなくてはならないのだ。

元々人と聖獣を守る蓮宮の家に生まれたんだからそれぐらいの覚悟は出来ていたけどまさかここまで酷いとは思わなかった。

二つ目だがこれは複数の闇の組織が互いの利害が一致して行動しているらしい。

俺を狙う者や俺以外の誰かを狙う者、またはこの天聖学園に怨みを持つ者、はたまた別の理由を持つ者……それらの理由を持つ者達が団結しているらしい。

もっともその半分近くはすでに璃音兄さんと花音姉さん、そしてサクラとイチちゃんが殲滅したらしい。

そして、三つ目。

何か巨大な力を目覚めさせようとしている……。

これは花音姉さんが組織の中パソコンに入っていたデータを解析して見つけたものだけど、その内容はどうやら巨大な力を持つ邪魔な聖獣を復活させようとしているらしい。

「巨大な力……イギリスや京都の事件の時みたいなものかな?」

イギリスではディルストが聖霊界から数多の魔竜を召喚してクーデターを起こそうとし、京都では金羅が妖魔城を呼び出して最強の鬼の酒呑童子を蘇らせて日本を征服しようとした。

「そうだとしても情報が少なすぎる……花音、一度天星導志に連絡して情報があるか聞いてみよう」

「そうね、早速本部に連絡して……」

花音姉さんが携帯電話を取り出したその時。







「その話、私にも参加させてくれませんか?」







全員が振り向くとそこには驚きの人物たちが立っていた。

「神宮、叢雲……!?それに……」

神宮叢雲率いる関西チームのチーム天照とチーム新選組のメンバーが立っていた。

「どうしてあなた達が……!?」

「それは晴香のお陰です。彼女が術でこの部屋への道を示してくれました」

日本最強の陰陽師の晴香がVサインをして得意げな顔をする。

今まで俺たちが境界輪廻で導かなければ来ることができなかった地下室に新たな来訪者にアリス先生は難しい顔をして、

「今度部屋に新しい魔法でもかけようかしら……?」

と呟いていた。

神宮達が入ってくるなり、風音はすぐに俺の元に来てギュッと抱きついてきた。

「風音?」

「ううっ……あの人、嫌い……」

風音は涙目で神宮叢雲を見た。

「神宮叢雲?」

「うん……」

その瞬間、俺は風音を優しく抱きしめがら神宮叢雲を睨みつけた。

「神宮叢雲……貴様俺の妹に何をした?」

「返答次第では容赦しないわよ?」

千歳は銃を構えて俺と同じように神宮叢雲を睨みつける。

「あ、いや、あの、えっと……」

「自業自得よ、叢雲。ごめんね、私が後で折檻するから許してあげて」

「えっ!?晴香!?」

「あなたは黙ってなさい」

晴香は陰陽符を神宮叢雲の口に貼り付けて口を封じた。

「んむーっ!!んんーっ!?」

「あははは!むらちゃんもはるちゃんには形無しやな〜!」

口を封じられた叢雲に言葉さんが大笑いをし、総詩達も笑い始める。

「……とりあえず、こっちの情報を教えよう」

勇刀は苦笑いを浮かべ、年上の新選組局長として話を進める。

「さて、みんなは日本神話の怪物をご存知かな?」

突然切り出された話に場が困惑する。

「実は数日前、中国地方の出雲大社にである物が盗まれたんです」

歳光さんがタブレットを取り出してその時ネットにあげられた情報をだす。

「あるものって、何?」

タブレットに何かの墓を掘り返したような写真が写り、勇刀の口から衝撃的な一言が語られる。







「盗まれたのは八岐大蛇……日本神話の怪物の首だ」







雷のような衝撃が俺たちに走った。

八岐大蛇……日本人なら誰でも知っている日本神話の怪物だ。

八つの蛇の首に八つの尾を持つ山のように大きな人喰いの怪物で、神話の英雄・須佐之男命に打ち倒された……日本神話の有名な話の一つだ。

「まさか……八岐大蛇を復活させようとしているのか!?」

「山のように巨大な体の怪物……まずいわ。すぐに天星導志に連絡するわ!」

璃音兄さんと花音姉さんは事態を危惧してすぐに天星導志に連絡を入れる。

「八岐大蛇……」

「もし復活したら京都の事件とは比べものにならないほどの被害が起こるかもしれない……」

晴香は顔を真っ青にしていた。

陰陽師として妖怪の怖さを知っている晴香だからこそ古の妖怪である八岐大蛇の恐ろしさを危惧しているのだろう。

「ねえ、戦神極祭……中止になるのかな?」

「千歳……」

「いや、中止にしないほうがいいわ」

戦神極祭が中止になるのかと思ったが、アリス先生は中止しないほうがいいと言った。

「戦神極祭はみんなが楽しみにしている祭よ。それに……下手に中止したら八岐大蛇を盗んだ犯人やその他の奴らを刺激するかもしれない。何事もなかったかのように戦神極祭を続けて、裏でそいつらの動向を調べるのよ」

「よし……その役目は俺に任せろ」

サクラが肩や首の関節を鳴らして立ち上がる。

「天音、お前達は何も心配せず戦神極祭の戦いに集中しろ」

「サクラ……」

今度は右手の関節を鳴らし、原罪の邪眼を発動させながら璃音兄さんと花音姉さんを見る。

「璃音さん、花音さん。引き続き戦神極祭を邪魔する罪人を潰すぞ」

「ああ、言われなくてもだ!」

「もちろんよ!」

「サクラ、私も断罪者として行くよ……」

「待って!私も行くわ!」

イチちゃんと明日奈委員長も一緒に罪人を裁くことに名乗りをあげる。

戦神極祭で戦う俺たちのために動いてくれる人たちがいる。

本当に俺たちは何もしないで戦神極祭で戦うだけでいいのか?

俺はサクラや璃音兄さんと共に戦えない歯がゆさを感じていた。



sideクロノ


夜の街のビルの屋上でクロノは横になっていた。

「あれが、平行世界の獣の力か、面白いな……神霊獣の姫」

クロノは白龍神姫・白零の持つ力を見て楽しそうに笑みを浮かべていた。

「それにしても、まさか神霊獣と契約してアーティファクト・ギアを生み出すとは思わなかったな」

クロノはまさか神霊獣である白零がアーティファクト・ギアの契約が行われると思っていなかった。

白零がアーティファクト・ギアの契約をする事を決めたきっかけ……蓮宮天音に興味を持ち始める。

「複数のアーティファクト・ギアを操る日本人、蓮宮天音。流石はキメラを追い詰めただけはある。しかし、何故女の姿に……?」

男のはずだった天音がどうして女になっていたのか……その疑問を持ちながら起き上がり、天聖学園に視線を向ける。

「さて……どうなるか見させてもらうぞ、闘争の運命を持つ者よ……」

ニヤリと笑みを浮かべてこれからの天音と白零の運命を楽しみにしていた。



side天音


その夜……俺は夢の中で不思議なものを見た。

真っ黒な不気味な部屋に二つのソファーと小さなテーブルがあり、ソファーの一つにあの男が座っていた。

『よぅ。天音』

「クウ……」

『クウ様だって。まあ、もういいや……とりあえず座りな』

「ああ……」

クウに勧められ、俺はソファーに腰かけるとクウは立ち上がって何かを用意し始める。

『コーヒー飲むか?』

「……これ、夢だよな?まあ飲むけど……」

夢の中だがクウは見事な手際でコーヒーを淹れてコーヒーカップを差し出す。

「ありがとう……」

『おう』

クウは再びソファーに腰掛け、一緒にコーヒーを飲む。

夢の中でコーヒーを飲むのは不思議な感覚だが、美味しい苦味と旨味が口の中に広がる。

「美味しい……」

『そうか?』

「ああ。驚いたよ、クウにこんな特技があったなんて」

『う、うるせぇよ』

褒められて嬉しかったのか頬を赤く染めてコーヒーを飲む。

しばらくし、コーヒーを飲み終えると俺から話を切り始める。

「それで、俺をここに招き入れた理由は?」

『……しっかし、本当に女になっちまったなお前。あまりにもいい体をしているからムラムラして襲いたくなるぜ』

「阿呆……」

面白がるように笑っているクウは冗談で言っているが、阿呆な内容なので思わず頭が痛くなる。

『まあ、俺様の要件は一つだ。お前の女体化を解除して元に戻してやるぜ』

「え……?本当か!?」

『俺様は嘘は言わねぇ。影霊紋に女体化を解く力を作ったからな』

「影霊紋?」

クウは自分の体に刻まれた刺青を指差しながら答える。

『お前の体に刻まれた霊煌紋みたいなもんだ』

「霊煌紋と似たもの……?クウ、お前は一体何者なんだ……?」

その問いにクウは無言で立ち上がると真っ黒な部屋が崩れていく。

「クウ!」

『まあ、なんだ。影霊紋はこれから色々役に立つはずだ。戦神極祭や八岐大蛇との戦い……頑張りな』

「クウ!!!」

クウは俺に背を向けて手を振り、俺はすぐに立ち上がって手を差し伸ばすが部屋が完全に崩れてしまった。

その瞬間、夢から目が覚めてしまい、ベッドから起き上がった。

隣のベッドを見ると千歳とレイがスヤスヤと眠っていた。

「まだ真夜中か……ん?」

体に違和感があり、寝間着をはだけさせると驚く光景が広がった。

「胸がない……男に、戻った!?」

体が完全に元の男の体に戻り、嬉しさのあまり声を上げようとしたが、体に別の異変が起きていた。

「何だ……?この刺青は……?」

それは青い刺青のような蓮の花のような形をした霊煌紋の隙間に張り巡らされるように赤と黒が混ざった色の似たような形の刺青が刻まれた。

「まさか、これが影霊紋……!?」

体に浮かび上がった禍々しい力を秘めた影霊紋。

それを発現させたのは間違いなくクウだ。

霊煌紋と似た力がある影霊紋……それを俺の体に発現させ、しかも女体化した体を元に戻したクウは一体何者なんだ?

クウにはとても感謝しているが、益々クウに対する疑問が大きくなるのだった。




天音が男に戻っちゃいましたがご心配なく、女体化が完全になくなったわけではないので(笑)


とあるハーレム漫画の主人公のように度々女体化します。


次回は天音と叢雲の対話とかを書いていきます。

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