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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第11章 戦神極祭編
168/172

第149話 白零の決意

いつの間にか小説の文字数が100万字を超えていました。


良く書いたなぁ……。


さて今回は白龍神姫こと、白零ちゃんのお話です。


天音に残念なお知らせがありますがwww

戦神極祭二日目の朝……。

俺は目を覚ますとぼーっとしながら自分の胸元を見た。

「……やっぱり夢じゃなかった……」

胸元にある大きな二つの膨らみを見て俺は昨日の出来事が夢ではないことを証明した。

「はぁ……憂鬱だなぁ……」

そう思いながら自分のベッドから降りて着替えようと思ったが、

「着替え、どうしょう……」

体が女体化してしまったから体に合う服が一つもない。

身長すら縮んでしまっているからいつも着ている服がない大き過ぎて合わないのだ。

「どうするか……」

「お嬢様、お召し物ですよー」

「ですよー」

「何……?」

俺が着替えに困っているとタイミングを狙ったかのように千歳と雷花さんが部屋に入ってきた。

「天音、女の子の体に合う服を用意してきたよ」

「どれでも好きなの選んでくださいね……」

千歳と雷花さんが用意したのは色々なデザインの女の子向けの洋服だった。

「この中から……?」

「うん!天音に似合うのを選んであげるね♪」

「仕立ては任せてください……!」

ズラッと並べられた今時の女子高生が着ているような服からマニアックなセーラー服からゴスロリ、後何でこんなのがあるか知らないが千歳とかがよく見ているテレビアニメのヒロインのコスプレ衣装もあった。

「お前ら俺をどうしたいんだよ……」

頭にこれまでにないほどの強烈な痛みが起きて椅子に座り込む。

ちょうどその頃、バスケットに寝ていた白蓮と黒蓮、そして千歳のベッドに寝ていた銀羅が目を覚まして今の状況を二人から聞くと今の俺に似合う服を選んだ。

『ピィー!』

『『『わうっ!』』』

『うむ、これだな』

見てすぐに選んだ服に俺たちは衝撃が走った。

「こ、これか……!?」

「おお!雷花、これは!?」

「私の自信作……天音さんならこれを着こなせます!」

「もう良い……勝手にしてくれ……」

俺はもう考えることをやめて思考停止し、二人の玩具として身を捧げることにした……。



side白零


僕、レイこと白零は今……自分が元いた世界とは全く別の世界に来てしまっている。

初めは信じられなかったが、この世界のことを天音の婚約者である千歳から詳しく聞き(女同士で結婚出来るのか不明だが)、まず驚いたのは神霊獣……この世界では聖獣と呼ばれている存在が人間とパートナーとして共に暮らしていることだ。

これは僕のいた世界では全く想像すら出来ないものであったが、この学園……天聖学園の学生たちを見てそれが嫌というほど見せつけられた。

家族のように一緒にいるものから親友のように笑ったり喧嘩したりするものや、果てには恋人同士のようにしか見えない者たちもいたりと……本当に人間と聖獣が仲良くしている世界なのだと実感した。

そして何より驚いたのはそんな人間と聖獣の強い絆の結晶である奇跡の神器、アーティファクト・ギアだ。

聖獣と道具を一つにしてありえない能力を秘めた神器を生み出し、それを人間が操る。

人間と聖獣の心の結びつきが強ければ強いほどそのアーティファクト・ギアの力は高まり、下手すれば国一つ滅ぼすことも可能な強大な力を秘めた想像しただけでも背筋がゾッとするものだった。

そうなると、神霊獣である私もこの世界ではその聖獣として扱われるのだから、アーティファクト・ギアになれるのだろうか……?

「契約者は……あいつしかいないな」

「あいつって誰のこと?」

「え?うわぁあああああっ!?」

突然後ろから話しかけてきたのは傷ついてまで私を助けようとした変な女……蓮宮天音だった。

「な、何でもない!ん!?なんだその服は……?」

天音が着ている服は今まで見たこと無かったデザインのものだった。

統一性が無く、蓮の花が描かれた和服と黒いドレスの二つのイメージの服を一つにしたようなものだった。

「ああ、これ?和ゴスって言う服だよ」

「和ゴス?」

「雷花さんって言う洋服作りが得意な女の子が作ったんだよ。それよりお腹すいたでしょ?朝ご飯が出来ているから行こう」

「朝ご飯……?」

そう言われて後をついていくと食堂と呼ばれるみんなの食事をする場所には天音の仲間である人間と聖獣がたくさん集まっていた。

「レイ、適当な席に座って。すぐにご飯が出来るからな」

「……お前が作るのか?」

「ん?ああ。料理は結構好きだからな」

天音はエプロンを着用すると調理場に行き、私は席に座るため恐る恐るテーブルに向かう。

「ハクちゃん、こっちこっち!」

「千歳……そのハクちゃんは止めてくれないか?」

「いいじゃない。レイちゃんって呼びたいけど、それだとこちらの麗奈と被っちゃうからね」

「申し訳ありません、奥様、白零様」

「別に謝られることはないが……ん?」

千歳の隣の席に座り、ふとテーブルに目線を向けると小さな白い影がこちらを向いていた。

『ピィー!』

「お前……何者だ?」

それは白い鳥の雛でその小さな体に大きな力を秘めていた。

「この子は鳳凰の白蓮ちゃん。天音の契約聖獣だよ」

「鳳凰……?天音の契約聖獣か……」

小さな体でつぶらな瞳でこちらを見てくる鳳凰、白蓮の雛の頭を指で軽く撫でる。

いや、まさかな……『あれ』が消えたのはもう随分昔の話だ。

こんなに幼くはないし、人間態にすらなれないなら人違い……否、獣違いだな。

『ピピー?』

「いや、何でもない。私は白零だ。よろしくな」

『ピィー!!』

白蓮は私を気に入ったのか小さな羽を羽ばたかせて肩に乗る。

「はーい、みんな。朝ご飯出来たよ」

天音は次々と完成した朝ご飯の料理をテーブルに置いていく。

「これ本当に全部天音が作ったのか……?」

「まぁね。人数もいるから少し手伝ってもらったけどだいたい俺が作ったよ」

「凄い……」

テーブルに並べられた数々の料理はどれも見たことない料理だったが、見栄えもよくいい匂いをしていて何よりとても美味しそうだった。

「さ、召し上がれ」

「い、いただきます……」

他の人達も食事をし始め、私も恐る恐る食事を始める。

まずは卵を使った出し巻き卵と呼ばれる料理から口にする。

出来たてなのか、湯気が出て良い匂いが鼻をくすぐる。

それを口に入れた瞬間、味わったことのない味が口の中に広がった。

「お、美味しい……」

「そう?よかった」

「こんな美味しいものは僕の人生の中で初めて食べた!」

「そんなオーバーな。たくさんあるからどんどん食べてね」

「うん!」

僕は天音が作ってくれた美味しい料理に舌鼓を打った。



朝食を食べた後、天音は食器を片付けると、白蓮と三つの首を持つ黒い犬……黒蓮を連れて不思議な形をした鍵を取り出してその辺の扉を開くと、全く別の部屋へと案内した。

その鍵は境界輪廻と呼ばれる魔法の鍵で一度訪れた事があるどんな部屋にも入ることができるという代物だった。

訪れた部屋の主人……無限神書の魔女の異名を持つ魔女、アリスティーナ・D・クレイプスコロは本の山の上で寝転んでのんびりと本を呼んでいた。

「あら?おはよう、天音、白蓮、黒蓮。それに白零」

「おはようございます、アリス先生。早速ですが……」

「女体化の解除ね。わかってるわ」

「女体化の解除……?」

「そう言えば言ってなかったな。俺は実は男で、この体は体内に入っているある宝具のせいで女の体になっちゃったんだ」

「ええっ!!?」

あ、天音が実は男!?

こんなに可愛くて女の僕でも羨む体型がとてもいいのに!?

僕はこの世界に来てある意味一番の驚愕の真実を知ることとなった。

「それじゃあ、取り出すわね。魔法陣を出すからその上に乗って」

「はい」

アリスは魔法の杖を取り出して床に魔法陣を展開し、天音はその上に乗る。

するとアリスは右手をパキポキと怪しく動かして関節を鳴らすとそのまま天音の胸の谷間に手を置いてズルッとまるで水の中に入るように天音の体内に手を入れた。

「うっ……」

「大丈夫、心を鎮めて。体には傷はつけないから」

どうやら天音の中にある女の体にした原因を取り出そうとしているみたいだ。

そして、何かを探るようにアリスが手を動かして数秒後。

「……これね」

アリスは天音の中で何かを見つけ、それを握りしめて一気に引き抜いた。

握りしめた手をゆっくり開くとそこには小さな貝殻があった。

その貝殻が天音の中に入って女の体にしたようだった。

「燕の子安貝……」

「無事に取り出せてよかったわね。これで……あら?」

ピシッ……パリン!!

「「えっ!?」」

「わ、割れた……?」

天音から取り出した貝殻が突然粉々に砕けてしまった。

「まさか……天音、体に変化は!?」

「変化って言っても未だに女の体のままですけど……」

「まずいわ……どうやら子安貝の力が全部天音の体の中に溶け込んでしまったみたいね」

「ええっ!?それじゃあ……」

「このままだと天音はずっとそのままかもしれないわ……」

えっと、つまり天音はもう男に戻れないってことなのか……?

僕は女の天音しか知らないからなんとも言えないけど、男に戻れないって本人にとって辛いことだよな。

「そんな……」

ガクッと崩れ落ちてショックを受ける天音。

見ているこっちが辛くなった……。

「だ、大丈夫よ!すぐに男体化の魔法薬を作ってあげるから!」

そう言ってアリスは急いで別の部屋へ入ってその男の体になれる魔法の薬を作りに取り掛かった。

「……この姿で戦うしかないのか?」

「戦う?何とだ?」

「今この学園では、戦神極祭って言うアーティファクト・ギアで戦うAGバトルの大会をしているんだよ。今日は二回戦で、一応俺はチームのリーダーで大将戦をやるんだ」

「そうなのか……」

「そうだよ。レイも見るか?」

「……見て、みたい」

この世界の人間と聖獣の絆の証であるアーティファクト・ギアの戦い……是非ともこの目で見て記憶に刻んでおきたい。

「じゃあ風音達と一緒に観客席で見ていてくれ」

「分かった」

天音は戦い前の準備があるというので一旦その場で別れて、僕は天音の妹の風音の元へと向かった。



天音と別れた後に風音と合流し、天音と風音の家族と一緒にAGバトルの会場であるAGアリーナへ向かった。

天音の家族はなんと言うか……とても気さくな性格な人達で見ず知らずの私にまるで家族のように接してくれた。

「レイ、食べる?」

風音はお手製の焼き菓子を私に勧める。

「ああ、いただく」

『リーン!』

「はいはい、今あげるよ」

鈴の音色のような鳴き声をあげたのは風音の契約聖獣であるこの小さな龍だ。

僅か十歳の幼き少女が龍を従えていることに驚きだが、実はこの龍が千年以上の長い年月を生きた応龍と呼ばれるこの世界でも特別な龍の一体である事にも驚きだ。

天音と風音……この蓮宮の一族には特別な聖獣を引き寄せる何か不思議な力か魅力があるのだろうか?

もっとも、僕もその魅力に徐々に惹かれているのだが。

「そろそろ始まるよ」

「いよいよか……」

アーティファクト・ギアの戦い、いよいよ間近で見ることができる。

僕は期待や色々な感情を心に秘めながら初めてのAGバトルを観戦する。



正直な感想を言うと……十五歳から十八歳の少年少女が聖獣と道具を一つにした絆の神器、アーティファクト・ギアを使う戦いがこれほど凄いものだとは思わなかった。

互いに切磋琢磨するその勇ましい姿、激しくぶつかり合う火花。

そして、手に汗握る攻防戦……。

「これが、AGバトル……この世界の戦い……!?」

「そうだよ、私も一応アーティファクト・ギアは使えるけどAGバトルは十五歳以上じゃないと始められないんだよね」

「そうか、風音は異例で契約聖獣を持っているがバトルには参加出来ないんだな」

「うん。だから後五年……小学校と中学校を卒業して天聖学園に入学したら沢山AGバトルをしてみたい!」

『リンリーン!』

我も楽しみだと鈴音はそう鳴いた。

初め、アーティファクト・ギアの存在を知った時、聖獣を道具に押し込めて人間が好き勝手に使っていると思っていたがそうではなかった。

アーティファクト・ギアを間近で見て初めて気付いた。

それは契約しているアーティファクト・ギアの中にいる聖獣の魂の一部が所持している契約者の中に入って一緒に戦っていると……。

ある意味一心同体に近い状態で戦っており、契約者のみならず契約聖獣も楽しそうに戦っている。

実際、アーティファクト・ギアの中にいる聖獣達の楽しそうな声の波導が僕の耳にちゃんと届いていた。

「人と聖獣……」

異なる姿と力を有する存在である人と聖獣……それが共に暮らす世界で行われる戦いの競技。

「分かり合えることが出来るのか……?」

瞼を閉じて思い出すのはこの世界とは別の……自分がいた世界。

そこでは争い、憎しみ、怒り……様々な負の感情が渦巻く地獄のような世界だった。

元々は平穏な世界だったが、ある悪の根源によって世界は二つの勢力に別れてしまい、永年に渡る憎しみの争いを続けてしまう世界になってしまった。

僕はその世界に生まれてしまったことを呪った。

こんな世界にしてしまった運命を呪った。

ただみんなが仲良く平和に暮せる世界……そんな単純な世界を望んでいるのに。

だけど、この世界はどうだろう。

あの世界ほどの大きな問題は無いとは言えないが、少なくとも今、この瞬間は……人と聖獣、誰もが幸福だ。

「知りたい……」

僕は思いのまま客席から立ち上がる。

「レイ?」

「ごめん、ちょっと行ってくる!」

「あ、ちょっと!レイ!?」

風音の制止を振り切り、僕は観客席を飛び出していった。

僕は知らなければならない。

人と聖獣の絆を……この世界の要となる力を!

「天音!!!」

僕は天音の元へと辿り着いた。

「レイ……?」

天音は白蓮や千歳達と一緒に試合に出る前の準備をしていて、僕の来訪にキョトンとしていた。

僕は己の願いを叶えるため、天音にある事を頼んだ。







「天音!僕を……君の契約聖獣にしてくれ!!」







人と聖獣……共に歩む世界を作るために。




天音、女体化解けませんでしたwww


次回は白零ちゃん大活躍!?のお話です。

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