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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第1章 召喚と契約編
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第16話 想い、交差する時

今回はこの章のラストですのでいつもより短めになってしまいました。


天音と千歳の関係が急展開を遂げます。


次回から新章となります。

 雫先輩と迅先輩のお見舞いの後に保健室の先生から許可を貰って俺は自室に戻ることにした。銀羅は白蓮を連れて先に行くと言って、俺と千歳の二人の帰り道だが、折角なので校舎の屋上に寄り道をすることにした。

 すっかり日が暮れてしまい、空は黒く染まり、月や星々が夜空で輝いていた。

 屋上にあるベンチに座り、暫く星空を眺めていると俺は以前から千歳に言いたかったことを口にし た。

「千歳、今日は――いや、今日だけじゃないな。召喚の時から白蓮の事で色々世話になったな」

「何言っているのよ。私と天音の仲でしょ?」

 当たり前のように言う千歳に俺は何かしてあげたいと思った。

「そうだな。だけど、本当に助かったよ。だから、何か礼がしたいんだけど願い事とかないか?俺に出来る事があれば何でも叶えてやるぞ?」

「何でも……?あっ!それじゃあ……」

「何だ?」

 さあ、千歳はどんな願いをするんだ? 眼がとてもキラキラ輝いていて嫌な予感しかしないけど。




「天音、私と結婚しよう!!!」




 千歳の願いはいつも以上にとんでもない内容だった。

「…………はい?」

「わからない?じゃあ、言い方を変えるね。……天音、私と夫婦になろう!」

 うん。聞き間違いじゃないな。まさか恋人の告白じゃなく結婚のプロポーズをこの年齢で聞くことになるとは思わなかったよ。しかも雰囲気とか全く関係なしに。

「…………待ってくれ、千歳。どうして恋人という過程をすっ飛ばして結婚に考えついたのか説明してくれないか?」

「え?理由は簡単だよ。ほら、白蓮ちゃんがアリーナで言っていたじゃない、天音が父上で私が母上、銀羅が姉上。これはもう天音と結婚しかないと思ったんだよ♪」

 なるほど、白蓮のあの言葉が原因か。確かに白蓮にとって俺達は家族同然の存在だ。そう思っても不思議ではない。さて、どうするか。いつもなら同然のように断っているが……。

「ま、別に今は断ってもいいよ。でも、またきっかけがあればプロポーズをするから――」

「良いよ」

「覚悟してね、天音! ……って、んんっ!?」

 私の耳がおかしくなった? と言わんばかりの驚いた表情の千歳に改めて俺は答える。

「だから、プロポーズをお受けするよ」

「……ふぇ???」

 最初から断られるつもりでプロポーズをしたので、俺の返事は予想外みたいで困惑している。

「な、ななななな、何でぇ!? いつもだったら“お断りします”とか、“実家に帰ります”とか言って私の告白を断るのにどうして今日に限って!?」

 おお、千歳がこんなに乱しているのは本当に珍しい。しかも顔がトマトのように真っ赤。これは少しからかいがあるな。

「だって、何でも願いを叶えてやるって言っただろ?」

「だ、だからって……そんなあっさりと……」

「結婚しようと言ったのは千歳じゃないか。それにプロポーズした本人があたふたしているってどうなんだ?」

「ううっ……本当に、結婚してくれるの……?」

 千歳は涙目のまま上目遣いで俺を見上げる。可愛いと思ったがここはグッと精神を抑える。

「仮に俺が断って逃げても、千歳は地の果てまで追いかけて、最終的には鎖で縛ってでも俺を手に入れようとするだろ?」

「……否定が出来ない自分がいることを許してください……」

 冗談のつもりで言ったけど、やっぱり千歳はヤンデレ要素があったな。もし逃げて捕まったら、二度と日の光を浴びられないかもしれない……。まあ、それはさて置き、話を続けよう。

「それに、将来の事を考えると結婚は必要になるからな」

「将来の事?」

「俺は蓮宮神社の長男だから、十数年も経てば親父の跡を継いで神主になる。そしたら必然的に次の跡取りが必要になるから、嫁がいなきゃだめだろ? 幸い、俺には幼なじみで俺を誰よりも大切に想ってくれる女の子が側にいるからな」

「……私は子を産むための道具?」

 頬を風船のように膨らませながら若干怒っている。別にそういうつもりで言ったんじゃないんだけどな。まあ、内容に関してはそう聞こえても仕方ないと思うけど。

「ばーか、そんな訳ないだろ? そんなのはただの理由の一つだよ。何だかんだ言っても俺は……」

 千歳の頭に手を乗せて自分の気持ちを打ち明ける。ここまで来たらもう勢いしかないな。十年前、病気で伏せていた千歳と再会したあの日から秘めていた想いを打ち明ける。今までは恥ずかしくて言い出せなかったけど、今ならちゃんと言える。

「千歳、俺はお前に心底惚れている……幼稚園の時に再会したあの日からな。ちゃんとした言葉が聞きたいなら聞かせてやるよ」

 俺は千歳の頬を両手で添え、自分の唇を千歳の唇と重ねてキスをした。どうしてこんな事をしたのか正直俺自身にもわからなかったが、目の前にいる幼なじみの少女の千歳をとても欲しくなった。そして、千歳と唇を離すと、たった一言だがとても重みのある言葉を口にする。

「千歳、お前を愛している。これで……文句はないだろ?」

「天、音……」

 ファーストキスと愛の告白をほぼ同時に受けた千歳は嬉しさのあまり大粒の涙を流していた。そのまま俺に抱きついて制服を強く握りしめていた。

「ずっと……ずっと待っていたんだからね……この時を……」

「えっと、何というか……ごめん」

 わからないけど、取りあえず謝りたくなった。

「謝らなくても良いよ。でも、私を幸せにしてね、私の未来の旦那様♪」

「もちろんだよ、千歳」

 その場の乗りや勢いで幼なじみの関係から恋人をすっ飛ばして婚約者になってしまった俺と千歳。だけど、俺は後悔なんてしていない。千歳を大切に想う気持ちは今も昔も変わらないから。

 しかし、ここで一つの予想外な問題が発生してしまった。

『『ジィ~ッ……』』

「はっ!?」

「えっ!?」

 凝視するような視線に気付いた俺と千歳が振り向いた先には先ほど別れたばかりの白蓮と銀羅が屋上の扉に隠れて俺達を見ていた。

『ふっふっふ……見たわ、見たぞ、見てしまったわ! 千歳と旦那のラブラブなプロポーズ現場をこの眼でしっかりと!!』

 銀羅は決定的瞬間を見られた所為か、テンションが何時もより高かった。それよりも、銀羅ってあんなキャラだっけ? 召喚した当初の九尾としての威厳とか何処に行った?

『ピィー! ピピピ、ピィーッ!!』

 白蓮も銀羅に続いてテンションが高くなっている。何となくだけど、「ちちうえ、ははうえ、おめでとう」と言っている気がする。もしかしたら、契約執行のお蔭で白蓮の言葉がなんとなくわかるようになったのかもしてない。

『よし、早速この素晴らしい出来事を恭弥とお猿にこの事を伝えに行くぞ、白蓮!!』

『ピョーッ!!』

 何と、銀羅は何を思って暴走したのかこのプロポーズ現場をよりにもよって恭弥に暴露しようとしている。

「ま、待て! それは幾らなんでもまずい!」

 恭弥がそれを聞いたら必ず襲い掛かってくることは目に見えている! それだけは絶対に回避しないと!!

「そうよ! 彼女のいない恭弥がそれを聞いたら大暴れするし、天音のファンクラブの皆が暴動を起こすわ!」

 今、千歳の口から知りたくもなかった恐ろしい事実を聞いてしまった。

「ちょっと待て。俺のファンクラブなんていつの間に出来たんだ!?」

「今日の天音の神子姿とアーティファクト・ギアの素敵な装束姿に天聖学園の約百人の生徒が惚れてしまい、タッグバトルの後の数時間内にはファンクラブが結成されたのよ。ちなみにファンクラブの会員の中には目覚めてしまった男子も大勢いるわ」

「な、何ですと……?」

 よく学校ではカッコいい男子や可愛い女子がいると学校内で密かにファンクラブが結成されると聞いたことがあるが、まさか俺がその対象になるとは思いもよらなかった。しかも、会員のメンバーは女子生徒だけではなく男子生徒もいるという恐ろしい現状……。これはやはりこの長い髪と母さん似の顔が一番の理由だと思う。

「たとえファンクラブがあろうとなかろうと天音は私の旦那様なんだから絶対に渡さないわ!!」

 千歳は婚約者として俺を守る決意を俺に示した。今の千歳は幸せいっぱいのため、いつもより逞しく、頼もしく見えたのは不思議ではなかった。

「あ、はい。ってか、早く銀羅を取り押さえないと!!」

 そうこうしているうちに銀羅が学生寮の恭弥の部屋に向かって飛んで行った。

「はっ! そうだったわ。待ちなさーい、銀羅ーっ!!」

 俺と千歳は銀羅の暴走を止めるべく、とにかく走った。結果、最後にはアーティファクト・ギアの契約執行の有効範囲の距離である十メートル以内に千歳が入り込むと、すぐさまレイジングと契約執行をして清嵐九尾にすることで、強制的に銀羅を捕まえることに成功した。その後に少しだけ千歳が銀羅に説教をして、銀羅に暴露を止めさせるようにした。




 思いもよらない展開で千歳と婚約者になったわけだが、俺自身は千歳に接する態度は今までとは大して変わらないと思う。ただ、千歳の独占欲や暴走は今までよりさらに倍増することは目に見えているのでそれが新しい悩みの種になりそうだ。

 だけど、このプロポーズで一つだけ俺自身で変わったことがある。それは、俺が今まで大切にしてきた千歳に対する“想い”だ。

 以前、眠っている千歳に向かって言った、「ずっと、一緒にいような……」と言う気持ちが想いと共に強くなった。

 恐らくは俺と千歳のお互いを想う強さが強すぎて、既にもう二度と離れられないぐらいの強い“絆”で結ばれている。それはまるで一種の“呪い”のような絆だ。

 しかし、呪いだろうが何だろうが千歳はそれをきっと嬉しがるだろうし、俺は大して気にしないと思う。だからこそ、今までも、そしてこれからも千歳と一緒に笑って、仲良く、楽しく、予測できない日々の日常を過ごせる。

 俺は……その日々の日常を大切にしていきたい。

 友人、家族、そして愛する人……俺の大切な人たちと過ごすこの日々の日常こそが俺の一番の宝物だから。



.

遂に天音と千歳が恋人ではなく、婚約者となっちゃいました(爆)


恋人ではなく婚約者という関係は千歳の暴走が故です。


展開としては早い気がしますが、物語的に十年間もお互いが想い続けていればやっとかと思う気がして書いてしまいました。


次回からは新章スタートで、新キャラが二人も登場します。


ちなみに、敵ではなく主人公の親族です。

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