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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第11章 戦神極祭編
156/172

第137話 爆誕!『真・鳳凰剣零式』!!

タイトルでネタバレ(笑)


いよいよ天音に蓮神が手渡されます。


そして、新たな敵が迫ります。

side天音


俺は図書館城にあるパソコン室で携帯電話を片手に資料を作っていた。

「学園が用意してくれた資金でお菓子の材料の発注はこれで良し。パティシエの人員と調理場所の確保もこれで良し。何とか戦神極祭までに間に合いそうだな」

「あの、天音さん……?」

「どうした?」

隣で俺の邪魔にならないように座っていた千歳は汗を垂らしながは顔を引きつらせていた。

「天音、お菓子屋でも目指していたの?」

「何の話だ?」

「だって!材料の発注とかパティシエのヘルプとかって普通店長以上の大人がやることでしょ!?いくら戦神極祭のおもてなしのお菓子作りの全権を担っているからって凄すぎやしませんか!?」

千歳は俺にとって『そんなこと』で凄い驚いている。

「別に。蓮宮当主になると決まった時から経理とかの本を適当に見て来たからやり方を知っているだけだよ。それに、お菓子屋やケーキ屋とかのお店はどうやって運営をしているんだろうって疑問に思っていたから調べただけ」

本格的に当主になると蓮宮神社の経営を任されることになるから早いうちから色々勉強していた。

大嫌いな英語に比べるとかなり楽だ。

数学も苦手だけど、意味不明な数式より経理の方が分かりやすくて一応理解している。

「……天音、子供の頃に夢は無いって言ってたけど、実は自分のお菓子屋を売る店を開くのが夢だったんじゃないの?」

「まさか、そんなわけ無いだろう?」

「じゃあ、天音。蓮宮神社に小さな茶屋を出すのはどう?お休み処は神社とかでもよくあるし」

茶屋のお休み処か……確かに有名な観光地の神社とかによくあるな。

「……ありかな」

「え?あの、冗談で言ったつもりだったんだけど……?」

冗談だろうと、千歳の言ったアイデアはナイスだ。

これこそ俺にとって趣味と実益を兼ね備えた仕事ということだな。

「よし、戦神極祭が終わったら親父と歴代当主と相談して……」

「天音!ちょっと天音さん!?目の色が変わってますけど大丈夫ですか!?」

「心配する事なんてないのに……」

千歳よ、何をそんなに慌てているんだ?

それはともかく、一通りやることが終わったのでデータを保存してパソコンの電源を切った。

「さあ、そろそろ寮に帰ろう」

「う、うん。そうだね」

時間を見るともうすでに夕食の時間を過ぎていて、パソコン室を出て仲良く色々な本を読んでいた白蓮と黒蓮と銀羅と合流した。

「もう学食は空いてないから俺が作ってやるよ。みんな、何が良い?」

「うーん、天音にお任せ!」

『ピー!』

『『『わうーっ!』』』

『旦那の作るものはなんでも美味しいから任せるぞ!』

「おいおい、なんでも良いが一番困るんだよ」

リクエストを聞いたのになんでも良いと言われて苦笑を浮かべる。

全国の子供を持つお母さんが料理を作る気持ちがよく分かり、何を作るか頭の中に色々な料理のレシピを思い浮かべる。

「あの、少しよろしいでしょうか?」

「えっ?」

突然声をかけられ、振り向くとそこにはスーツ姿の男性がいた。

「すいません、この学園に迷ってしまいまして、道案内をしてくれますか?」

道案内を俺たちに頼もうと一歩一歩、ゆっくりと近づいてくる男性。

しかし、それを千歳は目の色を鋭く変えて顕現陣を叩く。

「銀羅!」

『任せろ!』

千歳は顕現陣から大量のダイナマイトを取り出して男性に投げ飛ばすと銀羅は狐火を出して発火させ、ダイナマイトの連鎖爆発を起こした。

ダイナマイトの爆発が俺たちを巻き込む前に千歳は金羅と契約し、絢爛九尾を発動し、器用で力がある九尾を使って俺たちの体を抱えてその場から脱した。

「千歳、何を……」

「天音、そいつから僅かだけど邪悪な力の匂いがした」

「邪魔な力の匂い!?」

金羅を体内に宿し、天羅の魂が目覚めてからというもの千歳は九尾の妖狐に近い力を手にしつつある。

俺と千歳は顕現陣から銀蓮とレイジングとストリームを取り出して構える。

『ピィ……』

『『『ぐるぅ……ワウッ!』』』

『旦那、こいつは殺気を押し殺しているがかなりの憎しみを持っているぞ』

白蓮達も戦闘態勢に入ると、ダイナマイトを派手に食らった男の声が響く。

「はっ!そう簡単にうまく行くわけねぇよな。そうじゃなきゃ殺し甲斐がねぇからな!!」

男は煙の中から出て来てボロボロになったスーツを脱ぎ捨てると不気味な黒いマントを羽織り、不思議な文字が刻まれている銃を取り出した。

「お前、何者だ!?」

「俺か?俺はな、てめぇらに殺された瑪瑙のダチだよぉっ!!」

「なっ!?」

瑪瑙の友だと!?

突然の襲撃者に驚く俺達に男は銃を向ける。

「死ねゃあっ!!」

そして銃を乱射し、飛び交う弾丸を避ける為に物陰に隠れる。

物陰に隠れると同時に俺は鳳凰之羽衣と冥覇獣王剣、千歳は無幻九尾銃を契約執行する。

まさかあの瑪瑙に友がいたことに驚きだが、その瑪瑙の敵討ちに来ることにも驚きだった。

だけど、一つあいつが勘違いをしている事があった。

「瑪瑙を殺したのは俺達じゃない!」

「そうよ!それに、瑪瑙は天音の叔父様と叔母様、それに多くの人や聖獣を殺したじゃない!それなのに敵討ちとか都合が良すぎるわよ!」

叔父さんは蘇ったけど、あの優しくて大好きだった叔母さんは瑪瑙が殺し……澪も殺した。

寧ろ敵討ちをしたかったのはこっちで、璃音兄さん達と一緒に瑪瑙を倒した。

瑪瑙を殺してやりたいという気持ちを抑えて刑務所にぶち込んだのに……。

「だいたい、瑪瑙は自分の契約聖獣を殺してその肉を喰らって鬼人になった!もうあいつは人として助からなかったんだ!」

始めて鬼人を見た後、俺はアリス先生とサクラから詳しい話を聞いたが、自分が契約した契約聖獣を殺してその肉を喰らって鬼人になった人間は魔人と同じく二度と元の人には戻れない。

ただ欲望のまま人を殺し続ける殺戮の化け物へとなってしまうのだと……。

だから、サクラが瑪瑙を断罪したことには納得できなかったが、瑪瑙と喰われた女郎蜘蛛の魂を救うにはあれだけしかなかったのだ。

「そんなの関係ねえ!だいたい、瑪瑙がおかしくなったのはお前のせいなんだぜ!!」

「俺の所為……!?」

「瑪瑙はお前に負けた後……光を極端に怯えておかしくなりやがった。光怖いとブツブツ呟いてな……」

「光……」

光と言うキーワードに俺が瑪瑙のトラウマにしたものと言えばあれしかない。

瑪瑙に対して怒り狂った俺に璃音兄さんがくれた氷蓮を鳳凰剣百式にし、鳳凰剣零式と一つにして放った鳳凰光翼剣。

まさかあの一撃で瑪瑙にトラウマを与えていたなんて思いも寄らなかった。

そしてそのトラウマからあの悲劇が引き起こされたわけか……。

「……瑪瑙には怨みを持つが、今の話で少しは哀れみを感じたよ」

俺は物陰から出て男の前に立つ。

「俺が瑪瑙の心を壊し、間接的に瑪瑙を殺したとしれない……だけど、俺のこの瞳に映る自分の世界を守る為に戦う!だから、ここで死ぬわけにはいかない!!今ここで、あんたを倒す!!」

自分の気持ちを思いっきり吐き出して冥覇獣王剣の切っ先を男に向ける。

「ふっ。威勢のいいガキだが、そうこなくちゃ面白くねぇな。だが、てめえはもう終わりだ」

「何、だ……と!?」

突然気分がとても悪くなり、吐きそうになった。

まるで体全体が何かに犯されているように悲鳴をあげていた。

「うっ……ううっ……」

『千歳!千歳!』

千歳も俺と同じ状態らしく、何が起きているのか全く理解できなかった。

「効いて来たようだな。俺が放った毒がよ!」

「毒……!?」

この体に起きた異常が奴の放った毒だって!?

でもいつの間に毒なんかを……。

ふと目についたのはさっき男が乱射した銃弾が地面にめり込んでいた。

その銃弾をよく見ると普通とは全く異なる構造をしていて何かを噴射している部分があった。

「まさか……」

「ようやく気付いたようだな。その銃弾には毒ガスを噴き出す構造になってるんだ。今回はジワジワと苦しめる毒にしてやったぜ」

「っ……!」

なんて卑怯な手を使うんだ……瑪瑙の友と言うだけあるな。

「はははは!早くしねぇとてめえもその嬢ちゃんも毒で死んじまうぜ?もっともその嬢ちゃんから先にあの世に行くかもしれねぇな!!」

「貴様……!!!」

霊力を身体中に駆け巡るように流して毒の苦しみを和らげて立ち上がる。

でも毒自体は消してはいないのであまり意味はないかもしれないが、今は戦えるのは俺しかいない。

「立ち上がったか……だが、手負いなのは変わりねえ。痛ぶってその嬢ちゃんが死ぬところを見せてやるぜ!」

「くっ!!」

再び銃を向け、毒ガスを放つ銃弾を放とうとした瞬間。







『お困りのようだなぁ、天音よぅ』







目の前が真っ暗になり、不気味な声が耳に響いた。

こ、この声!?

「クウ……!?」

『当たり♪覚えててくれてたか、嬉しいねぇ』

そして俺の前に現れたのは白髪の長髪に全身を刺青が刻まれた謎の男、クウだった。

「クウ、何で……?」

『おっと、色々面倒な話は省略させてもらうが、今俺達は精神世界にいて、現実の時間は止まっているぜ』

「精神世界……?」

『今お前はピンチだな?しかもお前の愛しの妻も大ピンチだ』

どうでも良いが、愛しの妻ってどう考えても千歳のことだよな?

こいつの千歳に対する認識はどうなっているんだ?

まあいずれ千歳が俺の妻になるのは確かだし、間違ってはいないけど……。

『そこで、俺が力を貸してやっても良いぜ?』

「お前が……?何が狙いだ」

『狙いはねえよ。ただてめえにここで死なれるのは困るんだよ。だから俺の力をお前に貸してやるんだよ。少なくとも、あの野郎をぶっ潰して、妻を助けることが出来るぜ?』

「本当か……?千歳を助けてくれるのか……?」

『お前は本当に千歳が大切なのだな。もちろん助けてやるぞ』

千歳を助けてくれてあいつを倒してくれる……蓮煌と氷蓮、そして霊煌紋が無い今、俺には頼るものはクウの力しかなかった。

「……頼む、俺に力を貸してくれ、クウ!」

俺は力を借りる為にクウに向けて手を差し伸べる。

『へへっ、そうこなくちゃな!俺の力……蓮宮の力を凌駕する“影の霊力”をお前に貸してやる!!!』

クウは差し伸べた俺の手を握ると感じたことの無い邪悪な霊力を俺に注ぎ込む。

だが意外にもその霊力は全く俺の体に不快や違和感を与えなかった。

『さあ、派手に暴れようぜ!』

クウのその一言に俺の意識は精神世界から現実へと一瞬で返された。

そして、俺の目の前にはクウの代わりに男が立っていた。

「さぁて。このまま毒で殺すのは容易いが、どうせなら最後まで楽しませてもらおうか!」

男の放った毒が徐々に俺の体を蝕み、死へと導いて行く。

だけど、クウの力を貸してもらった今の俺ならこの状況を打破出来る。

全身に纏った霊力が青色から黒色に変色し、新たな力を発動させる。







「『影霊壱式・虚無』」







俺とクウの二つの声が重なり、変色した霊力が体を蝕んでいた毒が一瞬で打ち消し、元の健康体となった。

凄い……毒の異常状態を一瞬で打ち消すなんて……これで全力で戦える!

「『行くぜ。白蓮、黒蓮』」

『う、え、あ、うん!』

『『『ガ、ガウッ!』』』

少し驚いている白蓮と黒蓮だが、今はそんなことを気にしている暇は無い。

「『飛べ、黒蓮!』」

冥覇獣王剣を手放し、黒蓮の好きなように動かせる。

『『『バゥウウウッ!』』』

黒蓮の意思で動く冥覇獣王剣は男目掛けて切っ先を向けて突進する。

「チィッ!」

高速で動く冥覇獣王剣に男もただ避けるしか出来なかった。

その間に俺は毒に倒れた千歳の元に行く。

「はぁ、はぁ……」

『旦那……』

銀羅は契約を解除して自分では何も出来ずに悔しい表情をしていた。

「『任せろ……』」

苦しんでいる千歳を抱き上げて額に手を乗せる。

「『虚無……』」

虚無の力を千歳に与え、体を蝕む毒を打ち消した。

「あれ……?天音……?」

「『もう大丈夫だ。毒は俺が消した』」

千歳はすぐに目を覚まし、真っ直ぐに俺を見つめるとそのまま手を伸ばして俺の頬に触れた。

「天音……その顔の刺青、どうしたの……?」

「『刺青……?』」

刺青ってまさか、クウが体に刻んでいた刺青が俺の体に浮かび上がっているのか……?

うーん、ますますあいつの事が分からなくなってきた。

まあそれはさておき、クウのお陰で千歳を助けることができたんだ、クウには感謝しなければならない。

「『銀羅、千歳のことを頼む』」

『任せてくれ』

千歳を銀羅に任せ、男の元へ行くと未だに冥覇獣王剣に襲われていた。

冥覇獣王剣の中にいる黒蓮に向けて戻れと念じると、すぐに冥覇獣王剣は俺の手元へ飛んで来た。

「お前、何をした……!?その刺青は何だ!?」

「『さぁね。お前に教えるつもりはない』」

「上等じゃねえか。こうなったら……来やがれ、マンティコア!!」

男は銃の弾を変えて地面に打つとそこに召喚の魔法陣が浮かび上がり、魔法陣から何かが這い上がるように現れた。

月明かりに照らされて現れたのは赤い毛皮にコウモリのような翼、そしてサソリのような無数の毒針を持つライオンの姿をした聖獣だった。

あれは凶悪な人食いの獣、マンティコアだった。

「契約執行!!」

男はマンティコアと自分の銃を契約させてアーティファクト・ギアを作り出した。

銃は一瞬にしてマンティコアの姿を模したような不思議な形の銃となり、凶悪な気配を漂わせていた。

「アーティファクト・ギア、マンティ・デスバレット!」

男の使うアーティファクト・ギアを目にし、警戒を強めるとクウの声が頭に響いた。

『ヒャハハ!また面白そうな神器じゃねえか!このまま戦うのも良いが……鬼が来ちまったなぁ。悪りぃ、ここまでだな』

鬼……?

クウが鬼と呼ぶのは誰のことだ?

そしてクウの与える力が体から消えて行くのを感じると、空から二つの声が響いた。

「蓮宮流、大紅蓮氷塊烈波!!」

「ファントム・ファング!!」

思考していると空から巨大な氷塊と、三首の犬の幻影が現れて男に襲いかかる。

この技は……!

「無事か、天音!」

「間に合ったか……」

「璃音兄さん!サクラ!」

璃音兄さんとサクラが降り立ち、それに続いて蓮姫様や風音達、明日奈委員長とイチちゃんがやって来た。

そして、サクラが原罪の邪眼を発動させて男を見つめる。

「あいつは魔毒使いのラヴィルだ……」

サクラはトライファング・ケルベロスを発動させながら男……ラヴィルと戦う。

「名のある聖霊狩りだな……天音!」

璃音兄さんは氷帝剣を地面に突き刺すと、掌の顕現陣を叩いて何かを取り出した。

「天音、これはお前の新たな力……新しい蓮宮神器だ」

「新しい蓮宮神器……!?」

布に包まれた長物のそれを璃音兄さんから渡された瞬間、背筋が震えるような大きな力を感じた。

大きな力に手を震わせながら布を解いた。

布を解くと中には蓮宮の紋と四霊の姿が刻まれた赤い鞘と柄の神剣があった。

「これが俺の……!?」

「そうだ。蓮煌の折れた刃とオリハルコン、四霊の一部と俺達蓮宮の霊力を込めたじっちゃんの最高傑作……神剣・蓮神だ」

「蓮、神……?」

蓮に神の名を持つ新しい蓮宮神器に緊張しながら鞘を持つ。

ズッシリと感じる重みに驚くと同時に懐かしさを感じた。

それは俺が始めて手にした刀である今は亡き蓮煌と同じ感覚がある。

「兄さん、ありがとう……」

「ああ。さっそく抜いて見な」

「うん!白蓮!」

『分かった!』

白蓮は鳳凰之羽衣を解除して俺の肩に乗り、俺は顕現陣から天装衣を取り出して纏う。

「黒蓮、少し休んでいてくれ」

『『『ワンッ!』』』

黒蓮は冥覇獣王剣を解除し、子犬モードになって俺たちを見守る。

そして、蓮神を手にサクラとラヴィルの元へ歩く。

「サクラ、選手交代だ。俺に任せてくれ」

「何……?そうか、遂に出来たんだな……」

「ああ」

「仕方ない。今回ばかりは大人しく引いてやる」

「ありがとう」

サクラとバトンタッチをし、再びラヴィルと対峙する。

ラヴィルはサクラと戦って少しボロボロになっていた。

やはり闇の属性であるサクラには毒は効かないみたいだな。

「てめえ、何しに来やがった!?」

「俺の本当の力をお披露目に来たんだよ」

「本当の力だぁ?」

「そうだ」

意を決し、蓮神の柄に手をかけそのまま両腕に力を込めてゆっくりと鞘から刃を解き放つ。

刃が解き放たれた瞬間、刃から七色の輝きが放たれて辺りを照らした。

そして、霊力を纏う刃には蓮の紋が刻まれており、炎のような揺らぐ波紋が浮かんでいた。

その刃のあまりの美しさに目を奪われてしまう。

「これが蓮神……行くぞ、白蓮!」

『うん!』

「契約執行!!鳳凰白蓮!!!」

蓮神を天に掲げて白蓮と契約執行をする。

俺の足元に契約執行の魔法陣が浮かび上がると白蓮の体が粒子となり、蓮神の中に入る。

神剣である蓮神の姿が徐々に変化していき、赤と白の炎が吹き荒れた。

白蓮と蓮神が一つとなり、吹き荒れる炎を振り払うと、そこには懐かしの剣……鳳凰剣零式が姿を現していた。

だが、以前の蓮煌で契約していた鳳凰剣零式とは違っていた。

赤と白……『紅蓮』と『白蓮』、水面に咲く二つの美しい蓮の如く輝く巨大な刃に鳳凰の双翼の形をした鍔……このアーティファクト・ギアは最早ただの鳳凰剣零式とは呼べない新たな姿となっていた。

俺は瞬時にこのアーティファクト・ギアに新しい名前を思い浮かべ、今ここで授けることにした。

「アーティファクト・ギア!!“真・鳳凰剣零式”!!!」

ほとんど名前は変わってないが、この『真』には色々な意味がある。

新しい『新』に、契約媒体の蓮神の『神』、そして俺と白蓮のまことのアーティファクト・ギアとして生まれたので『真』……色々な意味を込めて『真・鳳凰剣零式』と名付けた。

「行くぞ、ラヴィル!!!」

「ちっ!せめてお前を道連れにして……!」

ラヴィルが俺を道連れに何かをしようとするが、そうはさせるか!

真・鳳凰剣零式を肩に担ぎ、足に力を入れた瞬間、柄から霊力が流れ込んで全身に力が入った。

ビュン!!

「な、何ぃっ!?」

そして、凄まじいスピードでラヴィルの懐に潜り込み、既に炎を纏った真・鳳凰剣零式を振り下ろした。

「蓮宮流、鳳凰紅蓮撃!!!」

ドガァアアアアアン!!!

振り下ろした瞬間、炎が大爆発を起こし、直撃したラヴィルを爆風で吹き飛ばした。

吹き飛ばされたラヴィルはゴロゴロと地面を転がり、木に激突してようやく止まった。

「…………え?え!?」

あまりの威力に俺は目を疑い、パチクリさせて真・鳳凰剣零式を見つめる。

鳳凰紅蓮撃は振り下ろした刃の先に爆炎を作り出して攻撃する技であるが、鳳凰剣零式の時にはこんなにも威力は高くはない。

「何だ、これ……?」

『ぼ、僕もビックリだよ。何だか力が溢れてくるよ……』

蓮神と一つになっている白蓮も驚いていて戸惑いを隠せなかった。

まさか、蓮神と言う膨大な力を秘めた契約媒体のお陰で技の威力が何倍にも増大しているのか……!?

「何にしても、これなら行ける!」

「うっ、ぐぅう……!」

強化された鳳凰紅蓮撃をまともに喰らってもなお立ち上がろうとしているラヴィルに一気に止めを刺そうと再び真・鳳凰剣零式を構える。

「くっ、おのれぇ……蓮宮、天音ぇ……次こそは、次こそはぁあああああああああああああっ!!!」

ラヴィルはマンティ・デスバレットを地面に向けて放つと、緑色の蒸気が辺りを覆った。

「天音!それは毒霧だ!」

「なら全て燃やし尽くす!!紅蓮爆炎波!!!」

水蓮天昇の動作と共に周囲を爆炎で包み込んで生命に害をなすラヴィルの毒霧を全て焼き尽くした。

そして、毒を焼き尽くすとそこにいたラヴィルの姿は消えていた。

どうやらあの毒霧はラヴィルが逃げる為に使ったものらしい。

「逃げられたか……」

「天音ー!!」

「ん?おわっ!?」

戦いが終わるなり、起き上がれるまで回復した千歳が後ろから抱きついて来た。

「天音、凄いよ!遂に新しい剣が来たんだね!」

「ああ、おじいちゃんと蓮宮のみんなの力を込められて作ってくれた蓮神。そして……俺と白蓮の新しいアーティファクト・ギア、真・鳳凰剣零式だ!」

もう一度真・鳳凰剣零式を掲げると、周囲から拍手が沸き起こった。

「良かったな、天音!」

「さあ、これからが大変だぞ。戦神極祭に向けて私達の特訓があるからな!」

「璃音兄さん……蓮姫様……はい!!」

瑪瑙の敵討ちとしてラヴィルとはまた戦うことになるかもしれない。

だけど、俺には蓮宮のみんなから託された力……蓮神がある。

俺はもっともっと強くなる。

千歳を……大切な人を守る為にも!

その前にまず、蓮姫様達の試練を乗り切り、戦神極祭を勝ち抜く!

手に入れた新たな力と共に決意を新たにし、俺は戦神極祭に向けて一歩を踏み出して行くのだった。




天音と白蓮の真・鳳凰剣零式、どうでした?


ぶっちゃけ今の所は鳳凰剣零式の強化版ですけど、これから色々な力を発揮しますので。


次回からはいよいよ全国各地の強者ぞろが関東に集まってきます。

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