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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第11章 戦神極祭編
155/172

第136話 誕生、新たなる蓮宮神器

遂に天音の新しい神器の完成です。

side???


薄暗い部屋の床にばら撒かれた大量の資料の上に一人の男が立っていた。

「天聖学園、関東校……」

資料は天聖学園関東校のもので、地形や建物のみならず、そこに在籍する生徒のものもあった。

そして、その資料の中で添付された写真をナイフで切り刻んでいたものがあった。

男は手に触るだけでも皮膚を切ってしまう『斬糸』を手に乗せて強く握りしめ、掌を切って血を流す。

「瑪瑙の仇……取らせてもらうぜ……」

その斬糸は今は亡き凶悪な聖霊狩りの女、瑪瑙が使っていた遺品である。

そして、斬糸で切った手で切り刻まれた写真を手に取り、血を写真に塗りつけた。

「首を洗って待ってろ……蓮宮、天音ぇっ!」

男は斬糸を上着のポケットに入れ、手に包帯を巻きながら部屋を後にした……。



side天音


開催まで数週間後に迫った戦神極祭に向けて本格的に準備が始まった。

戦神極祭の舞台は毎年八ヶ所にある天聖学園にて交代で開催される。

そして、今年は七年ぶりにこの関東校で戦神極祭が開催されることになった。

他の七ヶ所の天聖学園の生徒の皆さんに失礼の無いように関東校で出来る最高のおもてなしをすることとなった。

そのおもてなしの一つとして何と無く予想していたが、俺がおもてなしのお菓子作りを任された。

「さーて、何を作るかなぁ……」

俺は静かな図書館城にある個室の一部屋を借りて、誕生日に雫先輩から頂いた世界のお菓子のレシピが記された巨大な大百科を手に何を作るか考えていた。

ちなみに白蓮と黒蓮はテーブルの上でスヤスヤと仲良く眠っている。

「あ、いた。天音〜」

大百科を読んでいる俺に千歳が部屋に入って後ろから抱きついて来た。

流石に千歳が抱きついて来てもあまり慌てることなく冷静を保つことが出来る。

「ん?なーに?」

「お菓子で悩んでいるところ悪いけど……戦神極祭にアルティナとセシリア達も来るからね」

「ふーん……って、はぁっ!?」

天繚祭に続いて戦神極祭にもセシリアとアルティナ様達が来ることとなり、思わず大百科から目を離した。

「そりゃあ驚くよね。日本とイギリスの友好の証として、アルティナとセシリアと四大騎士が戦神極祭に招待されるんだって」

「マジですか……」

「うん、マジマジ」

「そうか……尚更おもてなしのお菓子をしっかり作らなくちゃな!」

北の北海道から南の沖縄に住む天聖学園の生徒と先生達、そしてセシリア達イギリス王家と英国騎士団のみんな……これはお菓子を作り続けて約十年で最大の試練かもしれないな。

「天音、お菓子作りも大切だけど修行の方も忘れないでね」

「分かってるよ。新しい蓮煌が届いたらすぐに始められるから」

おじいちゃんが俺が戦神極祭に出ると知ると、急ピッチで新しい蓮煌を作ってくれて、明日か明後日には完成するらしい。

新しい蓮煌が完成次第、俺は霊煌紋を再び体に刻み付けるために蓮姫様を筆頭とする蓮宮歴代当主から修行を受けることになっている。

「ところで、他のみんなはどうしているんだ?」

「みんな?鳳凰紅蓮団のみんな?」

「ああ」

「えっとね、まず恭弥は悟空相手にとにかく実践練習を積み重ねているよ」

「悟空相手に実践練習……そいつは鍛えられそうだな」

「しかも悟空は変化の術を使えるから天界の神々に変化して恭弥を徹底的に鍛えているよ」

「わぁお……」

西遊記は昔見たことあるけど、悟空がまだ三蔵法師に会う前は天界相手に大暴れをしていたからな。

確かその天界に住む神々に変化したことがあって、姿形だけじゃなく武器や戦い方も真似ることができるんだよな。

これは恭弥がかなり鍛えられるのは期待できる。

「次に雷花だけど、雷花は恭弥のようなハードな修行はしてないわ」

「じゃあどんな修行を?」

「うん。雷花は気が集まる場所に座って瞑想をして自身の精神力を高めているわ。精神力を高めれば扱える雷の力が増大するんだって」

「精神力を高める修行か……」

地球には大きな気が集まる一般的に『パワースポット』と呼ばれている場所があり、そこで瞑想の修行をすると精神力や色々な力が高まると言われている。

俺も小さい頃に瞑想をして精神力を上げて霊力の器を高めていたな。

一応うちの蓮宮神社やこの天聖学園もパワースポットの一つでもある。

「まあ、私もその修行をしているんだけどね。金羅の妖力を使いこなす為には精神力が欠かせないし」

「確かに千歳には九魔之魔剣と炎帝九尾銃があるから恭弥みたいな修行は必要ないよな」

千歳や雷花さんの戦い方はある程度完成されているから力の底上げをするのはとてもいいと思う。

「ええ。それで、コノちゃんはアリス先生と相談しながら新しい魔法符の製作と恭弥ほどじゃないけど、せっちゃんとれいちゃんを相手に実践練習をやっているわ」

「魔法符の製作は予想していたけど、刹那と麗奈を相手に実践練習……大丈夫なのか?」

刹那と麗奈は表舞台にはあまり出ないが優秀な忍者とくノ一……木乃香さんの実力をあまり知らない俺は少し心配になった。

「大丈夫大丈夫。さっき見て見たけど、二人相手に良い勝負をしていたよ」

「そうなのか?」

「コノちゃんは魔法符を罠のようにたくさん設置して相手の行動を制限しつつ、色々な属性の魔法を使って戦うのが主流みたいなの。それでせっちゃんとれいちゃんと良い勝負をしているの」

「それは面白そうだな。早く木乃香さんの戦いをこの目でしっかりと見て見たいな」

天才魔法少女と言われている木乃香さんの実力を早く戦神極祭で見て見たい。

そう考えていると俺は誰かがいないことに気が付いた。

「あれ?ところで、サクラと委員長は?朝から姿が見えないけど……」

戦神極祭には参加しないけど冒険部の一員であるサクラと明日奈委員長の姿が朝から見えない。

「サクラと明日奈?確か明日奈が社会科見学とか言っていたような?」

「社会科見学???」

何の社会科見学だよと思いながら、まああの二人なら大丈夫かと自分の中で納得しながら再びお菓子の百科事典に目を通す。



sideサクラ


俺は学生服を脱ぎ、断罪者の黒い戦闘服を身に纏って今日も闇に潜む罪人のいるアジトへ向かっているが……何故か同行者が『二人』もいた。

「さあ、イチちゃん。頑張って悪者退治だぞー!」

「おー……!」

「……なあ、お前達……帰ってくれないか?」

俺の後ろには明日奈とイチがいて、やる気十分でこれから向かう罪人のアジトへ向かおうとしている。

今回の仕事に行こうとした矢先、学生寮の玄関で待ち伏せをされてそのまま一緒に行くことになってしまった。

「えー?ここまで来て帰れるわけないよー」

「私も悪魔になったとはいえ、断罪者……抜け駆けは許せない」

イチは刀を少し抜いて刃を俺にチラチラ見せる。

「あのな……これは遊びじゃ……」

「分かっている。天音君達の為でしょう?」

突然真剣な表情になった明日奈に思わずドキッとし、心を見透かされているような言い方に緊張感が走る。

「な、何のことだ……?」

「とぼけないで。サクラ、天音君達が戦神極祭で聖霊狩りとかに邪魔をされない為に断罪者として倒しに向かっているんでしょ?」

明日奈の指摘はズバリ正解だ。

天音は戦神極祭を本当に楽しみにしていて、自分が参加すると知る前から戦神極祭のことを度々話してくれた。

そんなあいつが名誉ある一年生チームの選手として選ばれたんだ……それを罪人に戦神極祭を邪魔をされたくない。

天音のライバルとして、そして……俺にとって始めて出来た友人として俺に出来ることはこれぐらいしかないからな。

「私も千歳ちゃん達の頑張りを無駄にして欲しくないから友達として出来る限りのことをしたいんだ」

「俺と同じことを考えていたか……流石にお前の前で罪人に断罪をするのは心苦しい。仕方ないから再起不能にして警察に突き出すか」

「私も最初からそのつもり……行くぞ、サクラ」

イチは刀を構えて全身に魔力を纏う。

「はっ……相変わらず口が悪いな。イチ、明日奈を守れよ?」

「当然だ……」

「ふっ……ツバキ!契約執行!」

『『『ガウッ!!』』』

闇からケルベロスのツバキが現れて俺自身の体と契約執行をする。

トライファング・ケルベロスと原罪の邪眼を発動し、明日奈とイチと共に罪人が巣食うアジトへ乗り込んだ。

しかし……。

「……イチ、気配を感じるか?」

「いいや……お前の邪眼はどうだ?」

「俺の邪眼も反応しない……」

アジトへ乗り込んだものの、イチの鋭い気配察知や俺の原罪の邪眼が反応をしていなかった。

つまりそれはこのアジトはもぬけの殻、ターゲットの罪人がいないということだ。

「ちっ……逃げられたか。戦神極祭を狙う罪人がいると情報を受けて来たが無駄足だったな」

「とりあえず中を徹底的に調べて何か手掛かりとか探さない?」

「それもそうだな……よし探そう!」

三人で手分けをして何か情報が無いかアジトに残されたパソコンや本を中心に調べていく。

そんな中、最後の部屋に入った瞬間目を疑う光景があった。

「これは……!?」

「天聖学園の資料……学生の詳細なデータもあるよ」

床にばら撒かれた大量の天聖学園の資料……その中に一際目立つものがあった。

誰かの血に塗られた資料……その名前に俺は目を見開いた。

「天音……!?」

天音とその契約聖獣である白蓮と黒蓮の資料で、特に天音の写真は切り刻まれて血をベッタリと塗られていた。

罪人が塗ったと思われるその血に触れて罪人の思念を感じ取った。







『蓮宮天音…!貴様の大切なものを奪い、絶望させてから殺してやる!!』







感じ取った思念は天音に対する深い憎しみから生まれた復讐心だった。

「天音が……天音と千歳が危ない!!」

「天音君と千歳ちゃんが!?」

天音にとって一番大切な人は千歳だ。

罪人は天音を絶望させる為に千歳をも殺すつもりだ。

「明日奈!イチ!急いで天聖学園に戻るぞ!」

「う、うん!」

「分かった!」

境界輪廻を手に既に天聖学園に向かったと思われる罪人を追う。

俺の追っている罪人は聖霊狩り……しかもターゲットの弱点を確実に突いて倒す戦法をしている。

天音、千歳……頼む、無事でいてくれ!



side璃音


蓮宮神器の職人であるじっちゃんに呼ばれ、蓮峯山のじっちゃんの家に蓮姫様達蓮宮歴代当主と風音ちゃんが集まった。

じっちゃんは既に天音の新しい神器が出来たと言ったが、まだ完成はしていないらしい。

「それで、じっちゃん。どうやって天音の神器が完成するんだ?」

「それはここにいるみんなの力が必要なのじゃ」

「俺達の力?」

「最初に蓮姫様達歴代当主のありったけの霊力をこの神器に込めてください」

「霊力か、任せろ!」

蓮姫様達は自分達が持つ神器を手にして準備をする。

歴代当主十二人分の霊力……それはかなり膨大な量の霊力になるな。

「そして、璃音と花音ちゃんと風音ちゃんはアーティファクト・ギアを契約執行してアーティファクト・フォースを発動させて込めるのじゃ」

「俺達のアーティファクト・フォースを?」

俺達三人の霊力と四霊の霊亀と麒麟と応龍の力が更に加わるのか……?

オイオイ、じっちゃんよ、どんだけ凄い神器が完成するんだよ!?

じっちゃんが今からやろうとすることに内心驚きながら最後の仕上げをするためにある場所へと向かう。

そこは薄暗い洞窟で中には火の灯りで灯されていた。

灯されているその地面にはじっちゃんが蓮宮神器を完成させる為に必要な魔法陣が引かれていた。

魔法陣はじっちゃんを初めとする歴代の神器職人が俺達の祭神・蓮霊之神と交信して神器にその加護を与えるらしいけど……どう見てもその魔法陣はアリス先生が書いたようなものだった。

よくよく考えれば蓮宮の起源にアリス先生が関わっているんだから蓮霊之神と交信する魔法陣を引いてもおかしくはなかった。

じっちゃんは布に包まれた天音の神器を取り出した。

布を解くとそこには白木拵えの蓮煌の面影がない鍔の無い鞘と柄があった。

歪みが一切ない朱塗りの赤い鞘と柄で天音にはピッタリの色だった。

鞘には蓮宮の蓮の花を模した金色の紋章にそれを囲むように鳳凰、霊亀、麒麟、応龍の金の細工が施されていた。

「それが……天音の?」

「ああ。蓮煌は刃を美しく鍛えた為、余計な美はいらないと思い、あえて鞘と柄を白木拵えにしたが……この神器は刃が蓮煌より美しいのでそれ相応の鞘と柄を必要としたのじゃ」

「すんげぇ綺麗じゃねえか。天音、絶対に喜ぶぜ」

「ははっ、そう願うよ。さあ、皆さん。準備を!」

いよいよ神器に力を注ぐ時が来た。

「轟牙!」

「流星!」

「鈴音!」

俺、花音、風音ちゃんは契約媒体の神器を構え、契約聖獣を呼び出した。

「「「契約執行!!」」」

契約を執行し、俺達のアーティファクト・ギアを顕現させる。

「霊閃氷帝剣!!」

「蒼穹麒麟弓!!!」

「神龍双覇!!!」

三つのアーティファクト・ギアが完成すると、俺達の霊力と四霊の霊力が合わさり、超越の力を得る。

「「「アーティファクト・フォース!!!」」」

体全身にアーティファクト・フォースの光を纏う。

「私達も準備は良いぞ」

蓮姫様達は魔法陣の周りに並んで神器を構えている。

「じっちゃん!」

「おう!」

じっちゃんは天音の神器を魔法陣の中央に置くと、右手を額に持って行った。

そして、

「我が名は蓮宮静音!我らが祭神、蓮霊之神よ。我は今ここに捧げ、祈る!」

じっちゃんは蓮霊之神と交信をする呪文を詠唱すると、魔法陣が輝くと共に俺達からアーティファクト・フォースの力と膨大な霊力を神器に吸収させる。

「我が御業より生まれし神の器具に汝の御加護を!蓮の血を受け継ぎし子に新たな刃を与えよ!」

魔法陣の輝きが強くなると、薄っすらだが神器の前に人の影のようなものが見え、手で神器に軽く触れた。

まさか、あれが蓮霊之神なのか?

「光を失いし煌く蓮よ……人の想いと獣の願い、そして神の力を授かり、蘇れ!!」

発動しているアーティファクト・フォースの力と蓮姫様達の膨大な霊力を吸収すると、神器に白蓮達の幻影が現れて一つに合わさって光となり、神器の中に入った。

蓮霊之神の加護を受け、力を充分に吸収した神器にじっちゃんは名を授けた。







「“蓮神はすがみ”!!!」







新たな神器……蓮神。

その名前を授けたと同時に神器から霊力の衝撃波が放たれ、神器を持っていたじっちゃんが吹き飛ばされた。

「じっちゃん!!」

吹き飛ばされたじっちゃんを受け止めようとしたが、織音様が受け止めた。

「全く、じいさんのくせに無茶をするな、馬鹿者」

「あなたに似たのですよ、母さん……」

じっちゃんは久々に母の織音様に怒られて苦笑を浮かべていた。

そして、じっちゃんは織音様の肩を借りて起き上がり、完成した蓮神を手に取って布に包むと俺に差し出して来た。

「璃音、蓮神を天音に渡してくれ」

「ああ。任せてくーーっ!?」

蓮神を受け取った瞬間、脳裏に何かの映像が浮かび上がった。

それは……天聖学園で天音と千歳ちゃんが糸を操る黒いマントを被った何者かに襲われている光景だった。

「天音と、千歳ちゃんが誰かに襲われている!?」

「何じゃと!?」

「蓮神が教えてくれた……じっちゃん、俺行ってくる!」

蓮神を顕現陣にしまい、蓮姫様達も共に行く。

「私達も行くぞ。織音はここに残っていろ。息子の頑張りを労ってやれ」

「分かりました」

じっちゃんは織音様に任せ、俺達はすぐに天聖学園へ向かった。

天音と千歳ちゃんを助けに、そして……完成した最強にして最高の蓮宮神器、蓮神を送り届ける為に!




次回はバトル突入になります。


天音と謎の襲撃者とのバトルです。

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