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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第10章 七不思議編
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第132話 蓮の神器を創り出す者

唐突ですが、今回で七不思議編は終わりです。


あっという間に終わらせてすいません。

天聖学園七不思議、その最後の謎である『難攻不落の巨大地下迷宮』。

何だかんだで七不思議最後の謎だけあってみんなワクワクして心を踊らせていた。

「迷宮……いよいよ冒険の正念場だぞ!」

雷撃を喰らってからすぐに復活した恭弥は地下迷宮に挑戦できるとあって誰よりもテンションが上がっていた。

地下迷宮の入り口はアリス先生の住む地下室の近くにあるのでまずはアリス先生の地下室に向かう。

境界輪廻を使い、近くの扉から地下室へ空間を繋いだ。

そして……アリス先生の地下室に入った瞬間、目を疑う光景が広がった。

「せ、先代の皆様方……?」

地下室には蓮姫様を初めとする蓮宮の歴代当主が勢揃いしており、その周りには金銀財宝や宝石が山のようにたくさんあった。

「おお、来たのか天音よ」

「れ、蓮姫様……その財宝の山は一体……」

「これか?これは地下迷宮を攻略して、一番奥の部屋にあった宝だ」

「へぇー……地下迷宮の宝ですか。凄いですね……って、えぇえええええええっ!?」

俺達がこれから行こうと思っていた地下迷宮に既に蓮姫様達が乗り込んで既に攻略してしまったことに驚愕してしまった。

「そ、そんな……せっかく俺達で攻略しようと思っていたのに……」

「恭弥……」

一番ショックなのは言わずもがな恭弥であり、ガクッと項垂れてしまった。

何か言葉をかけてやりたいが、下手に言えば余計に恭弥が傷つくかもしれないので、恭弥は雷花さんに任せることにし、引き続き蓮姫様に話を聞く。

「どうして蓮姫様が地下迷宮に?もしかして財宝が目当てですか?」

「いいや、財宝はおまけだ。本命は……これだよ」

蓮姫様は他のに比べてやけに頑丈な宝箱を取り出して俺に渡して来た。

鍵は既に空いているようで、俺は宝箱を床に置いてゆっくりと開けると中から七色の輝きが放たれ、思わず目を一瞬だけしまい、ゆっくり目を開けて宝箱の中身を見る。

「虹色の……石?」

それは七色の虹のような輝きを持つとても綺麗な石だった。

「綺麗……」

『ピィ……』

『『『わぅ……』』』

『これはこれは……初代よ、この石は何だ?見たところ不思議な力を宿しているみたいだが』

銀羅の言うとおりで見たところ、この石には不思議な力が宿っている。

蓮姫様の目的のこの石は一体何なんだ……?

「これはな……神の鉱物、オリハルコンだ」

「へぇー、オリハルコンですか……オリハルコン!?」

ちょ、ちょっと待って!?

オリハルコンってあの伝説の鉱物の事だよな!?

噂や本やネットとかでしか知らないけど、神の力や聖なる光が宿っているとか色々な説があって実在するかどうか怪しいと言われている代物だ。

「どうして、蓮姫様がオリハルコンを……?」

「決まってるじゃ無い。あなたの蓮煌に代わる新しい刀を作る為よ」

「…………え???」

蓮姫様の爆弾発言に俺は耳を疑い、目を点にするのだった。



「せーの、やっほー!」

『やっほー!』

『ぴぃー!』

『『『がぅー!』』』

「おいおい、何山のこだま返しをしてるんだよ」

千歳の先導で山のこだまを返す遊びをしている白蓮達にツッコミをする。

「何言ってるのよ、山に来たらやっほーって言うのは常識じゃん!」

「それは山の頂上に付いたらだろ」

確かその『やっほー!』の起源はドイツで、日本に伝来した時にそうなったらしい。

「おい、天音達よ。その辺にしてそろそろ行くぞ」

「はい、蓮姫様」

俺達は今、ある山を登っている。

そこは蓮宮神社が所有している山で名は『蓮峯山れんほうざん』。

蓮宮神社がにとって神聖な場所らしく、俺自身も過去に一度しか登ったことが無かった。

ちなみに山を登っているのは俺と千歳、白蓮と黒蓮と銀羅。

そして蓮姫様と織音様と詩音叔父さんと……もう二人。

「すごーい!本でしか見たこと無い木や花がいっぱい!」

『リンリーン!』

風音と鈴音は小学校の図書館の図鑑でしか見たことない珍しい木や花を見て楽しんでいた。

さて、俺達が何故この蓮峯山に登っているのかと言うと、それはこの山の頂上に住むある人に新しい刀を作ってもらう為だ。

そのある人に会う為に土日の休日を利用して蓮峯山を登っており、目的地が近い証を見つけた。

「あれ?空に煙が登っている……」

「ああ、もうすぐだな」

山で煙が登っているのは山火事かもしれないが、木々が燃えている気配はない。

つまり、山で煙が登っている理由はもう一つある。

煙を頼りに山の頂上に辿り着き、そこには大きな日本家屋の家が建っていた。

そして玄関には目的のある人が立っていて、俺達を見るとゆっくり歩いてきた。

「おお、皆さん。待っておりましたぞ!」

その人は白髪の髪がとても長く、和服を着ており、笑顔が素敵な老人だった。

「お久しぶりです、おじいちゃん」

そう、その人は俺の祖父で親父と叔父さんの父である『蓮宮静音はすみやしずね』だ。

「おお!天音よ、元気だったか?」

「はい、元気です。おじいちゃんも元気そうで何よりです!」

「はっはっは!ワシはまだまだ長生きするからな!おおっ!風音ちゃん、いらっしゃい!」

「は、はい!」

おじいちゃんは千歳の後ろにいた風音を見つけると手招きをする。

「風音ちゃんも大きくなったな。元気みたいじゃな?」

「は、はい!お祖父様も元気で良かったです!」

「うん、ありがとう」

若干緊張する風音をおじいちゃんは軽くハグをして頭を撫でる。

風音は蓮宮の養女としてうちに来たが、おじいちゃんはそんな事を気にしないで孫娘として俺と同じくらいに愛してくれている。

『ピィー?』

『『『がぅ?』』』

『リーン?』

「おお、君達が天音と風音ちゃんの契約聖獣だね?話は聞いているよ、ワシは静音じゃ。よろしくな」

おじいちゃんは白蓮達にも挨拶をすると、そこに千歳が挨拶に来る。

「は、始めまして、蓮宮静音さん。私、天堂千歳と申します!天音……いや、天音さんとは……」

「ほぉ、君が千歳ちゃんか?話は時音から聞いているよ。天音の事をよろしくお願いします」

「い、いえ。こちらこそ」

千歳は緊張しながら初めて会うおじいちゃんに挨拶をした。

そして、俺達との挨拶が終わると次は……。

「父さん、お久しぶりです」

「……最初は信じられなかったが、本当にお前なのか……?」

おじいちゃんは自分の息子の詩音叔父さんの頬に手を添えて尋ねる。

「ええ。肉体を得て蘇りました」

「……詩音。心配をかけさせるな、馬鹿者……」

「すみません……」

二人はあまり多くを語らなかったが再会できてとても嬉しそうだった。

そして、もう一人……おじいちゃんと再会する人がいた。

「ふぅー……随分老けたな、静音よ」

織音様は煙管を吹かしながらニヤニヤと笑みを浮かべ、

「……そう言うあなたは随分若返りましたな、母さん」

おじいちゃんは小さく涙を浮かべながらそう言った。

織音様は俺の曽祖母、つまり織音様はおじいちゃんの母でもあるのだ。

何十年も前に亡くなった母との再会に流石のおじいちゃんも涙を抑えることは出来なかった。

「さあ、こんなところで立ち話もなんですから中にお上がりください。妻が待っておりますので」

そう言っておじいちゃんに中に案内すると居間には優しそうな風貌の六花母さんを連想させる老婆がいた。

「おお!天音さん、風音ちゃん。いらっしゃい!」

「おばあちゃん、お久しぶりです」

「お、お久しぶりです……」

彼女は俺達のおばあちゃんで名前は『蓮宮想はすみやおもい』。

おばあちゃんはおじいちゃんと同じようにみんなに挨拶や詩音叔父さんや織音様と再会を喜ぶと、早速ここに来た本題に入った。

「天音。あれを」

「はい……」

蓮姫様に言われ、俺は顕現陣から布に包んだものを取り出した。

それは……一週間前に折れてしまった蓮煌だ。

もう既に炎を灯したような紅い輝きは失われてしまい、もはや神器以前に鉄屑同然だった。

「これはこれは……まさかワシの作った蓮宮神器が壊れるとは……緋緋色金で作った刃をここまで痛めつけるとは……」

おじいちゃんは蓮宮神器を作る職人で一年ほど前に俺の十五歳の誕生日に蓮煌を作ってくれた。

しかし、その蓮煌は白蓮達四霊の力を一つにした四霊天帝剣を契約した事によって契約媒体として耐えられずに壊れてしまった。

だからその蓮煌が壊れてしまったことにとても申し訳ないと重い責任感を感じる。

「ごめんなさい、おじいちゃん……」

「いや、謝ることは無い。確かに蓮煌が折れたことは悲しいが、蓮煌自体はお前を恨んでは居ないからな」

「恨んで居ない……?まるで蓮煌が生きているみたいな言い方だけど……」

「ワシが考えるに、全ての蓮宮神器は蓮霊之神の力が宿っている。その為に生きてはいないが、神器自体に意志を持っているのでは無いかとな」

「神器の意志、か……」

風音は蓮姫様が使っていた双蓮をジッと見ながらそう呟く。

「それで、蓮姫様。電話で仰っていましたが、この折れた蓮煌をある物質と組み合わせて、天音の新しい神器を作って欲しいのですか?」

「ああ。それで、素材にはこれを使って欲しい」

蓮姫様はこの時の為に地下迷宮から手に入れたオリハルコンを顕現陣から取り出しておじいちゃんとおばあちゃんに見せる。

オリハルコンは相変わらず美しい七色の輝きを放っていた。

「これが神の鉱物、オリハルコン……何とも美しい七色の光ですな……」

「あなた、これは新しい挑戦ですね。頑張ってください」

「ああ、そうだな。だが、これだけでは素材は足りないな……」

……え?オリハルコンだけじゃ足りないってどう言うこと?

「何?足りないだと?」

蓮姫様は眉を額に寄せて疑問を抱く表情となる。

「素材は申し分ありません。足りないのは折れた蓮煌とオリハルコンを一つの刃にする為の“繋ぎ”です」

「繋ぎ?」

繋ぎって事は、蓮煌とオリハルコンとはまた別の素材ってことだよな?

神器作りの知識は無いから分からないけど、どんな素材を使うんだ?

するとおじいちゃんはお菓子をムシャムシャと食べている白蓮と鈴音を指差してこう言った。

「その為の素材はそこにいる鳳凰の白蓮と応龍の鈴音からいただきます」

「「……えっ???」」

『ピィー?』

『リーン?』

おじいちゃんの発言にキョトンとする俺達だった。



その後、おじいちゃんとおばあちゃんの家に一晩泊まり、風音や詩音叔父さん達と別れて天聖学園に戻り、二日ぶりの学生寮の自室に戻ると、白蓮達は旅の疲れですぐに寝床に眠ってしまい、俺もベットにゴロンと寝転んだ。

「“数週間後”か……」

「早く完成するといいね」

「ああ……」

今俺の手元には折れた蓮煌は存在しない。

オリハルコンと一緒に今はおじいちゃんのところに預けている。

おじいちゃんは折れた蓮煌とオリハルコン、そして繋ぎとなる“四つの素材”を使って俺の新しい蓮宮神器を作ってくれる予定だ。

おじいちゃんが言うにはこの神器作製は今までで一番大変な仕事になるかもしれない、ワシ自身の人生をかけた神器になるかもしれない……と。

「おじいちゃんに任せるしか無いか……」

「そうだね。ところで、一つ気になったんだけど」

「何だ?」

「天音のお祖父様はどうして蓮宮神器の職人になったの?」

「ああ……ちょっと長くなるけど良いか?」

「うん」

千歳はベットに腰掛けて俺の話を聞き始める。

この話は親父から小さい頃に聞いた話だ。

静音おじいちゃんは生まれつき俺や叔父さんよりも蓮宮の人間よりも霊力が弱く、人より多少霊力が強いだけだった。

霊操術も使えず、蓮宮の当主にもなれなかったが、おじいちゃんは蓮宮の為に何か役に立てる事をしたかった。

そこでおじいちゃんが見つけた道は蓮宮に生まれた人間が手にする神器を作る神器職人の道だ。

おじいちゃんは長い時間と努力を重ねて誰もが認める一流の神器職人となった。

そして、その後に想おばあちゃんと結婚して親父と叔父さんを産んで幸せな日々を過ごしていたが、俺達が生まれる少し前におばあちゃんは思い病気に掛かってしまった。

療養の為におじいちゃんはおばあちゃんを連れて蓮峯山で暮らすようになり、今に至る。

蓮峯山は自然の澄んだ環境はおばあちゃんの体に良いらしい。

だけど、その所為でおじいちゃんとおばあちゃんに会えるのは年に数回あるかどうかになってしまった。

「そうだったんだ……」

「おじいちゃんは確かに霊力は弱いし、霊操術も使えない……だけど、俺達蓮宮の人間にとってはとても大切な存在なんだ。璃音兄さんや花音姉さんのように戦いに蓮宮の人間を守る神器を作ってくれるんだ……」

「お祖父様が蓮宮のみんなを守る為に作る神器か……天音が蓮煌をいつも大切にしていた理由がよく分かったよ」

「ああ。だから……早く新しい蓮煌が来ないか待ち遠しいよ。やっぱり愛着のある物が無いと落ち着かないからな」

「うん、分かるよその気持ち。私もレイジングが無いと落ち着かないからね」

千歳はそう言いながらレイジングを顕現陣から取り出し、ふと机に置いてあるカレンダーに目を向けた。

「もうすぐ十二月だね……」

「ああ。十二月と言えば戦神極祭だからな……」

戦神極祭。

俺が一番楽しみにしている天聖学園の行事で日本各地にある八つの天聖学園から選ばれた生徒達がAGバトルで戦い、頂点を決める祭典だ。

京都にいる新選組のメンバーは関西校で出場しているし、出来ることなら俺も出場して戦って見たい。

だけど、一年生の俺が関東校の代表になれるかどうか分からないから何とも言えない。

そう言えば雫先輩は去年出場していたけど……あれは多分先輩がアーティファクト・ギアの奥義であるギアーズ・オーバー・ドライブを使えるからそこを評価されて選抜されたのだろう。

俺自身はまだギアーズ・オーバー・ドライブを使えないからな……道はまだまだ険しいな。

「天音、戦神極祭に出たい?」

「ん?ああ、出来ればな」

「じゃあ、私がーー」

「学園長に頼むのは無しな。そんなことをされて出られても嫌な気持ちが残るだけだ」

「はい……そうですよね」

予め千歳に釘を売っておかないと本気でやりかね無いからな。

俺の為に色々尽くしてくれるのは嬉しいがたまにやり過ぎな時かあるから困りものだ。

「俺は自分自身と白蓮と黒蓮の力を合わせて、天聖学園関東校の代表として認められたいんだ。千歳の気持ちは嬉しいけど、こればっかりはコネは必要無いからな」

「うーん、でも天音なら代表に選ばれるかもよ?」

「どうだろうな。俺はまだまだ未熟だし……」

「その未熟で精霊狩りや混沌の使徒と渡り合っているよね……?」

「それは千歳やみんながいてくれたからだよ」

「そうかな……?」

「さあ、早く寝る支度をしよう。明日も授業があるんだからな」

「はーい。あ、添い寝をしましょうか?旦那様♪」

「お断りします」

「ガーン!?」

突然欲情する千歳の誘いを断り、俺は久々に大浴場へ向かった。







この数日後……俺は新たな出会いにより、予想もしていなかった新たな運命を紡ぐこととなる。






それは西に住む俺の最大のライバルとなる『神子』、そして俺自身の『影』との大きな戦いへと誘うのだった。




次回からはいよいよ長編の『戦神極祭編』です。


キャラとバトルの盛りだくさんでお届けします。


私はこの時が来るのをずっと待っていました……!!


全国各地の強者共が集い、AGバトルを繰り広げます。


そして、天音は自分の影を乗り越えることが出来るのか!?


がんばって書いて行きますのでよろしくお願いします!

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