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アーティファクト・ギア  作者: 天道
第10章 七不思議編
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第130話 魔女と精霊

今回は短めですがかなり重要な話です。


最近仕事が忙しくて大変です。

side蓮姫


オリハルコンを手に入れるためにちかの迷宮に乗り込んだ私達蓮宮歴代当主達。

最初の巨大な扉を破壊するなりいきなり魔物達と遭遇し、取りあえず全て退治した。

「いきなり魔物か……この先大変だな」

「心配なさるな、初代」

「何が来ても俺様達がなんとかしてやるぜ!」

相変わらず戦闘に強い初音と剣音が自信満々な表情でそう言った。

確かに戦闘に関してはこの二人ほど頼りになる奴はなかなかいない。

だがこの地下の迷宮は力だけで勝てるほど甘く無い。

何故なら……。

「父上、お祖母様。どうやら二人のしばらく戦いは無いみたいだよ」

「これはどうやら……巨大な迷路のようですね」

その答えは朱音と音夜が言ってくれた。

魔物達の部屋の次に待ち構えていたのは巨大な迷路だった。

石で出来た私達の身長以上に高い壁が並び、複雑な道が入り組んでいて誰もが一度は想像する巨大な迷路だった。

「ここを……突入しないと……先には行けない……」

「ふぁっ……面倒だなぁ……これじゃあ正攻法は無理じゃね?」

玲音と玖音は普通にこの迷路は攻略出来ないと判断した。

「迷路は壁を伝って行けば最後は出口に繋がると聞いたことはあるけど……」

「これだけ大きいとそれは時間がかかりますね」

「後は壁を壊すのが楽かもしれませんが、その衝撃で天井が崩れる恐れがあります」

乙音と魅音と雷音がどう迷路を攻略するか模索する。

確かにこんな巨大な迷路を攻略するのは困難を極めるだろう。

下手に入ったら迷って出られなってしまうかもしれないからな。

「霊煌拾壱式・記憶……」

「織音?」

織音は座ると手を迷路の床に置いて人や物の記憶を読み取る霊煌拾壱式を使った。

「刻まれし時を解き明かせ……“記憶時解”!」

織音の手が触れた床に気の根っこのような光が迷路中の全ての床に張り巡らされていく。

なるほど、織音の記憶はただ記憶を見るだけじゃ無い。

その真価は記憶の中に隠された時間を読み取り、自分の物にすること。

つまり、この迷路の記憶を読み取ったとすると……。

「よし。この迷路の出口まで一直線で行けます」

「凄いな、この迷路の記憶を見て攻略法を見つけたのか?」

「ええ。最短ルートで一気に行きます。着いて来てください!」

織音のお陰でこの巨大迷路はすぐに攻略出来そうだ。

全く、本当に頼りになるな私の子孫達は。

この調子ならすぐにオリハルコンを手に入れられそうだな。

私はそう確信しながら織音の後を着いて行く。



sideアリス


魔力の枯渇の影響で体が小さくなってしまい、お菓子を食べたり聖霊樹から魔力を貰いながら、ようやく体も元のサイズに戻って少しはまともになることが出来た。

と言ってもまだ魔力は半分程度しか回復出来ていないのでまともな戦闘は難しいけど。

引き続き魔力を回復させるためにお菓子を食べようとした矢先に何と、精神が疲れきった天音が担ぎ込まれた。

「天音、みんな。どうしたのかしら?」

「アリス先生、天音が元気になる魔法薬か何かくれませんか?」

「それなら天音が霊煌参式の治癒を使えば……って、今の天音は霊煌紋が無いんだっけ?」

天音は先日キメラに霊煌紋を奪われて私が錬金術で歴代当主十一人分の肉体を作った際に霊煌紋が十二個に分かれて蓮姫達の体それぞれに宿った。

だから今まで使えた霊煌霊煌紋を使う事が出来なくなってしまっている。

「分かったわ。ちょっと待っててね」

私は地下室の沢山ある部屋の一つにある魔法薬の部屋に入り、生命に大きな活力を与える魔法薬を作る。

頭の中にその魔法薬のレシピがしっかり刻まれているので一分足らずで完成させて天音の元に向かう。

「ほら、天音。飲みなさい」

「ありがとう、ございます……」

ビーカーに入れた魔法薬を天音はグイッと一気に飲み干した。

「ぷはぁ……美味しいです……」

「でも飲み過ぎたらダメだからね」

「はい」

「そう言えば七不思議の三番目はちょうどここだよね」

千歳が思い出したようにそういった。

七不思議の三番目……?

はて、一体何のことかしら?

「第三の七不思議、図書館城に住む魔女……それってアリス先生の事ですよね?」

「もしかして……私の存在が天聖学園の七不思議の一つになっているのかしら?」

「ええ、そうですよ」

「あらあら……私もすっかり有名人になったわね〜」

冗談交じりで笑いながら天音が飲み干した魔法薬の入っていたビーカーを受け取り、他の七不思議について聞いた。

「ねえ、七不思議は他に何があるのかしら?」

その答えは七不思議ツアーを企画した恭弥が答えてくれた。

「えっと、俺達が見たのは、学園にさ迷う幽霊と本性を暴く真実の鏡で。まだ見ていないのは、聖霊樹に宿りし精霊、異世界と繋ぐ時空の扉、神器の歴史を刻む部屋、難攻不落の巨大地下迷宮です」

私以外の七不思議を聞くとその幾つかの謎に心当たりがあった。

「ふぅーん、なるほど。幾つか心当たりがあるわね」

「本当ですか!?どれも実在するんですか!?」

「どうなんですか……?」

恭弥と雷花は目を輝かせて尋ねるが私はポンポンと二人の頭を叩いて微笑んだ。

「さあ?それはどうかしらね。それは自分の目で確認してごらんなさい」

「ふっ。あなたならそう言うと思ったぜ」

「せっかくの七不思議の楽しみが減ると嫌だからね。ねぇ、イチちゃん?」

「うん。そう思う……」

サクラと明日奈、そしてイチの親子は(親子じゃないけど)、残り四つの七不思議を楽しみにしていた。

それにしても本当に仲良しね、この三人は。

冥界の断罪者にソロモン王の生まれ変わりに悪魔に転成した断罪者……ある意味ではこんなにも異質な存在が揃った親子はこの子達ぐらいね。

「それじゃあそろそろ行きます。天音も復活したみたいだし」

「ああ。心配かけたな。アリス先生、魔法薬ありがとうございました」

「いえいえ。それじゃあ気をつけて行って来なさいよー」

「はい!」

天音達は恭弥の先導で次の七不思議がある場所に向かい、私は軽くてを振ってみんなを見送る。






その時、私の脳裏に直接語りかける不気味な声が響いた。







『くくくっ……相変わらず見た目が若えままだな、アリス先生よぉ』







「っ!?」

私はその声に絶句してしまい、思わず身構えて周りを見渡した。

今の不気味な声……まさか……いや、そんなはずは……!







空音そらね……!?」







それは蓮宮の歴史で唯一の『闇』と言える存在で……人を殺すことを誰よりも嫌っていた蓮姫が……唯一殺してしまった男だ。

私は嫌な予感がヒシヒシと体中に伝わり天音や蓮姫……蓮宮一族の身を案じた。



side天音


アリス先生の魔法薬のお陰でいつも異常に元気になり、早速七不思議ツアーを再開した。

次の場所は天聖学園の名物でもある魔力を秘めた大樹・聖霊樹の前に来た。

聖霊樹は夜になると枝に生えた沢山の葉に込められた魔力が淡い緑色の光を放つので、とても幻想的な光景が広がる。

「いつ見てもこの聖霊樹は綺麗ね……」

聖霊樹をうっとりとしている千歳。

そう言えば前に聞いたことがあるけど、聖霊樹は全国八ヶ所にある八つの天聖学園全てに植えられているが、その形は皆若干異なるらしく夜の輝きもまた違うらしい。

「それで、三つ目の『聖霊樹に宿りし精霊』はどこにいるのかなー?」

「気配は感じられない……」

明日奈委員長はキョロキョロと周りを見渡し、イチちゃんは気配を感じ取ろうとするが目的の聖霊樹の精霊を探し出せない。

「……いっちょ、聖霊樹を思いっきり殴って精霊を叩き出すか?ツバキ、やるぞ」

『『『がうっ!』』』

「待て待て待てぇい!何野蛮な事をやろうとしているんだ!?ここは俺に任せろ!」

聖霊樹にとんでもない暴行を加えようとしたサクラとツバキを止めつつ、恭弥は聖霊樹に近付いてそのまま手を置いた。

すると、恭弥の体から祖母の若葉さんから受け継いだドリュアスの力を使って緑色の光を放ち、聖霊樹と共鳴した。

そして、聖霊樹から緑色の光が一つに集まり、若葉さんに少し似た雰囲気の少女となった。

『私を呼んだのはお前か?』

「突然すいません。えっと……」

『私の名前は瑞樹。聖霊八樹木せいれいはちじゅもくの長女だ』

「聖霊八樹木の長女?」

『天聖学園にある八本の聖霊樹には私と同様の精霊が宿っている。その八人の精霊の長女が私だ』

勝手に色々と説明してくれるのでありがたかったが、この精霊の女の子が『聖霊樹に宿りし精霊』って事で良いんだよな?

『それで……天堂千歳、浅木恭弥、鳴神雷花、蓮宮天音、サクラ・ヴァレンティア、霧夜明日奈。それから白蓮に黒蓮、銀羅にツバキにイチは私に何か用か?』

瑞樹は自分の宿る聖霊樹に寄りかかりながら何と、俺達全員の名前を読み上げた。

「どうして俺達の名前を……?」

『私は天聖学園が創立されてから百年もの間ずっといるんだ。これはあくまで私の“趣味”だが、天聖学園の全生徒と全聖獣の名前と顔は全部覚えている』

趣味で百年間の天聖学園に在籍していた全生徒と全聖霊の名前と顔を覚えるなんて凄すぎると思うのですが……。

「んと……暇だったの?」

「おい、千歳」

千歳がかなりぶっちゃけたことを聞くと瑞樹は特に表情を変えないで千歳を見る。

『……千聖の娘か……フッ』

怒るかと思ったら瑞樹は何かを思い出したかのように小さく笑みを浮かべた。

『全く……親と子は本当に良く似るものだな。数十年前にも千聖はお前と同じ言葉を私に言ったよ』

千歳のお母さんの千聖さんが、同じ言葉を瑞樹に?

「ママが……?」

『ああ。千聖は元気か?』

「うん!パパと一緒にアメリカで暮らしているよ!」

『そうか。ま、よろしく言っといてくれ』

「はーい。あ、そうだ。瑞樹、天聖学園七不思議の『異世界と繋ぐ時空の扉』と『神器の歴史を刻む部屋』について何か知らない?」

千歳は五番目と六番目の七不思議について聞くと瑞樹は無言で聖霊樹の前に立った。

「千聖の娘と、この学園のために戦ってくれた者達ならここを知っといた方が良いだろう……」

瑞樹は緑色の魔法陣を展開すると聖霊樹の根っこの一部がミシミシと動き、地下へ通ずる階段が現れた。

「瑞樹、これは……?」

「お前達が探している“扉”と“部屋”へ続く階段だ。普段は使うことは出来ないが、いずれお前達が使う時が来るかもしれないぞ」

「私達が使う時……?」

「どう言うことだ……?」

普段は使うことが出来ない『異世界と繋ぐ時空の扉』と『神器の歴史を刻む部屋』……どうしてそれを俺達が使う時が来るのか?

『理由を知りたいか?それは……お前が“闘争の運命”を背負っているからさ』

その単語には聞き覚えがあった。

以前修学旅行で伏見稲荷大社に訪れた時に主催神の宇迦之御魂神が最後に言った単語だった。

「闘争の運命!?瑞樹よ、何だそれは!?」

『教えてやっても良いが、まだ知らない方が良い……』

瑞樹の体が徐々に透明になり、緑色の粒子になって聖霊樹へと戻っていく。

「瑞樹!!!」

教えようとしない瑞樹に思わず声を上げる俺に瑞樹は最後にこう言い残した。

『また会おう、“世界をかける旅人”よ……』

幾つもの謎を残したまま瑞樹は聖霊樹へ消えてしまい、俺は聖霊樹を見上げる。

「闘争の運命……世界をかける旅人……何なんだよ、一体……」

瑞樹の言った単語に踏まえてクウと名乗る白髪の刺青男……重なる問題や謎に俺はどうしたら良いか分からなかった。




天音に不穏なフラグが重なって行きます。


天音の精神が少しずつヤバくなっていきます。


早く七不思議編を終わらせて戦神極祭編をやりたいです。

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