表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アーティファクト・ギア  作者: 天道
第10章 七不思議編
148/172

第129話 幽霊と鏡

最近スランプ気味ですが、なんとか投稿しました。


それに仕事が忙しくて大変です。

俺を元気づける為に千歳と恭弥達が企画してくれた七不思議探検ツアー。

今回参加するメンバーは俺と白蓮と黒蓮、千歳と銀羅、恭弥と雷花、サクラとツバキと明日奈委員長とイチちゃんだ。

ちなみに恭弥と雷花の契約聖獣よ悟空とトールは野暮用、雫先輩と迅先輩は生徒会の仕事で居ないらしい。

さて、七不思議探検ツアーの最初の一つ目は『学園にさ迷う幽霊』。

七不思議の定番でよくある幽霊ネタだけど……。

「俺の出番だな」

俺にとっては仕事の対象だ。

「ちょっと天音!何で神子装束に着替えてるんだ!?」

神子装束に着替えた俺に恭弥が突っかかって来た。

「何を言っているんだ恭弥。悪霊か地縛霊かどうか分からないけど、さ迷う幽霊を成仏させなくちゃ」

「えっ?蓮宮神社は悪霊祓いもやってんの!?」

「ああ。ただの幽霊ならいいけど、下手したら悪霊になる恐れもある。早めに成仏させる必要が……」

「やめんか!初っ端から七不思議の一つを壊すな!」

「天音、協力するぞ。冥界の断罪者としてさまよえる魂は冥界に送らなくてはな」

「ああっ!?ここにあの世関係者がいた!?」

サクラがツバキを持ち上げて冥界の断罪者としての目をして俺を見る。

フッ、今日は同業者として一緒に戦いそうになりそうだな。

「頼もしいな。そうと決まったら行くぞ、サクラ!」

「ああ!天音!」

冥界の断罪者であるサクラと共にさ迷う幽霊を成仏させる為に早速その幽霊がいる場所に向かった。

「Fool(馬鹿者)!!!」

ドカーン!

「「ぐはぁっ!?」」

だがそれを邪魔するように千歳が久しぶりにダイナマイトをぶっ放した。

ダイナマイトの爆発を受けた俺たちはその場に倒れ、体から白い煙を上げた。

「な、何をするんだ千歳……」

「俺達、何かお前に気に障る事でも……?」

「あなた達ね、七不思議を探検するのにどうして七不思議の一つを壊そうとするのよ。やめなさい」

「でもな、千歳……」

「本当に悪霊ならともかく、その幽霊が平穏に暮らしているかもしれないじゃない。それなら無理に成仏させる必要ないわ」

「だけどよ、千歳……」

「何?文句ある?」

千歳はダイナマイトの次に二丁の合成銃のレイジングとストリームを顕現陣から取り出す。

うん、これは本気と書いて『マジ』だな。

どうして千歳がそこまで真剣なのか分からなかったが、俺とサクラの答えは決まったようなものだった。

「分かったよ……お前がそこまで言うならな」

「仕方ねぇな……」

「よろしい♪」

千歳は文句を言わせない笑みを浮かべ、俺とサクラは一瞬戦慄した。

「と、とりあえず行こうか?」

「そう、だね……」

「イチちゃん、七不思議楽しみだね」

「うん……楽しみ」

俺とサクラの所為で一悶着あったが気を取り直して、最初の七不思議である『学園にさ迷う幽霊』に会いに行く。

しかし、その幽霊の出現場所は学園の教室や施設など至る所にランダムに出現するので運か幽霊を引き寄せる力が無いと会えない。

そこで出番なのが冥界で生まれたケルベロスの黒蓮とツバキだ。

黒蓮とツバキは死者・幽霊の臭い、本人達曰く『死の臭い』を嗅ぎ取ることができるので、その鼻を使ってその目的の幽霊達を探す。

そんな時に明日奈委員長はあることに気が付いた。

「ねえ、私達って幽霊が見えるのかな?」

「そっか……幽霊は普通見えないから……」

「天音君、何か方法無いかな?」

そうか、俺やサクラと違ってみんなは幽霊が見えないもんな。

千歳は金羅と天羅の妖力を持っているから別だけど。

「待って、そう言うことなら……他に幽霊が見えない人も俺の前に来て」

霊力があまり強く無い明日奈委員長に続いて恭弥と雷花さんも俺の周りに集まる。

そして、手をみんなの目を覆うように置いて霊力を込める。

「霊操術、見霊の瞳」

みんなの眼に俺の霊力を分け与えると、瞳の色が薄っすらと青白く輝く。

「俺の霊力をみんなの眼球に与えて一時的に幽霊とかを見えるようにしたんだ」

「「「おお〜!」」」

幽霊が見えるようになり、拍手をする三人。

「すごいな、霊操術はそんな力もあるのか……」

サクラは目を見開いて明日奈委員長の青白く光る瞳を見つめながら霊操術を感心した。

「ああ。霊操術は蓮宮の長い歴史で色々な用途を考えて作り出されたからな」

「へぇ……興味があるな、霊力の高い人間達が生み出した霊の力……」

「あまり教えないぜ。何せ冥界の断罪者様だから気に触れるかもしれないからな」

「そうか……そいつは残念だな」

本来なら霊力を駆使する俺達蓮宮と冥界の断罪者であるサクラは相入れぬ存在、あまり互いの力を明かす事は止めておこう。

そして俺達は黒蓮とツバキの導きで幽霊の元へ近付いた。

「霊の気配を感じる……」

「近いな……」

幽霊の気配を感じた俺とサクラは警戒しながら近づく。

顕現陣から今となっては唯一の剣である銀蓮を出して左手に持つ。

そして、幽霊のいた場所は偶然にも生徒がいなくなった俺達の1年A組の教室だった。

気配を殺して扉の窓からそっと中を覗くと……。




『ヒャッハー!久々の酒盛りだぜぇー!』

『最近は色々騒がしくて我々も集まれませんからね』

『今日は思いっきり騒ぐぞー』

『本当に、今年は生徒達が騒がしくて下手に遊べないから不便よね』

『そうそう。本当よね、よりどりみどりの将来有望な子達とかね』

『しかし、また騒がしくなるよ。来月の戦神極祭とか』




何だこれ……幽霊達が俺達の教室で思いっきり酒盛りを始めていた。

「……どうしょう、これ」

「どうするも何もな……これが七不思議の一つなのか?」

俺とサクラは絶賛酒盛りでお楽しみ中の幽霊達を見て複雑な気分だった。

ってか幽霊なのにどうやって酒を飲んでいるのかすごく不思議で不思議で仕方が無かった。

そんな中、千歳だけは懐かしむような表情をしていた。

「あはは、みんな相変わらずだね〜」

「え?千歳、知り合いなのか?」

「うん。小さい頃、天音がたまに居ない時によく遊んでもらったんだ。何人か知らない顔はいるけど……」

なるほど、さっき千歳が怒りを露わにしていた理由はこれか。

確かに小さい頃に遊んでもらった幽霊を成仏させる訳にはいかないよな。

最後の言葉は少し気になったけどそれはスルーしておこう。

「おお、本当に見えてるぜ……」

「怖いけどちょっと感動……」

「それにしても愉快な幽霊さんだね」

俺の霊力を分け与えて幽霊が見えるようになった三人は窓からチラリと幽霊を見て感動していた。

まあ、幽霊なんて俺達みたいに霊力が高く無い限りそうそう拝めるものじゃないからな。

「さて、そろそろ行きますか」

「挨拶、しないのか……?」

あっさりした千歳にイチちゃんが不思議そうに尋ねた。

「良いの良いの。私達は七不思議を探しに来たんだし、何よりも彼らの楽しみを邪魔する訳にはいかないからね」

「千歳らしいな。よし、みんな行こうか」

幽霊達の邪魔をしないようにそのままこっそりと教室を離れ、次の七不思議を探しに向かった。



side蓮姫


目の前に広がる巨大な扉……そこに私達がいた。

「ここか……」

そこは天聖学園の地下にあるアリスの地下室に向かう図書館城の道の途中にある隠し通路から入った巨大迷宮の入り口だった。

天聖学園の歴史をくまなく調べた織音の情報によるとこの壁の向こうには難攻不落の迷宮が広がり、更には侵入者を追い出す数々の罠が待ち構えているらしい。

「さて、早いところ挑戦するか……ん?扉に何か書いてあるな」

読もうとするが生憎私が読めない外来語……確か世界共通語の英語だったか?その文字で書かれていた。

「すまない、誰かこれを読めるか?」

「初代様、私が読みます」

天聖学園が学術を学んだ詩音が壁に書かれた英語を私の代わりに読んでいく。

「この先には大いなる災いが待ち構えている、命が惜しければ今すぐ立ち去れ……と書いてあります」

「命が惜しければ、か……残念ながら私達は既に一度死んだ身。そこまで怖くないな」

他の当主達を見ると、これから戦いが待ち構えていると言うのに現代の人気な週間漫画雑誌やファッション雑誌を読んだり、六花が作った弁当を食べたり、千歳からもらった『携帯ゲーム』と言う玩具で遊んだりと緊張感の欠片が一切無かった。

すっかり現代に馴染んでいる歴代当主達の姿を見て少し頭が痛くなったがそこは黙って何も言わないでおこう。

「お前達!そろそろ行くぞ!」

「ではお母様、私が先陣を切らせてもらいます」

ファッション雑誌を見ていた娘の乙音は雑誌をしまうと扉の前に立ち、拳を構える。

「霊煌弐式・強化」

体が弱かった乙音が作り上げた霊煌弐式で体全身を文字通り強化し、更に右腕に霊力を纏う。

「部分強化、右腕……」

そして、繊細な霊力操作で右腕の霊力で更に強化させて、今この時だけ触れたものを破壊させる破壊力抜群の剛力を得る。

呼吸を整えて正拳突きの構えを取る。

「はぁあああああ……突貫!!!」

右手を前に突き出して拳が扉に触れる。

「剛砕衝破!!!」

派手な音と共に頑丈だった扉は見事に粉砕された。

土煙が軽く舞い、その中心にいた乙音は体についた埃を手で払いながら戻ってきた。

「開きましたよ、お母様」

いや、開いたんじゃなくて破壊したの間違いでは?と言いたかったがニコニコな笑顔をする乙音にそんな事は言えなかった。

体が弱かった娘がこんなにも逞しくなって……嬉しいような寂しいような複雑な母の心境だった。

「行くか……」

乙音が開けてくれた扉をくぐると、そこにいたのは。

「ふむ……魔物か」

扉の中に封じ込まれていたと思われる数多の魔物がいた。

黒くて醜い姿の魔物で奴らに心はなく、ただ獲物を喰らう……そんな奴らだった。

私達は蓮宮の神器を構えて魔物達を睨みつける。

蓮宮はこう言う邪悪な魔物を退治するのも使命の一つだ。

やれやれ、現代に復活しても魔物退治をすることになるとはな。

「こう言う時、天音の言葉を借りるなら……さあ、イッツショータイムだ!」

蓮音の切っ先を魔物達に向け、現代に生きる蓮宮十三代目当主が言う決め台詞を言い放った。



side天音


次の七不思議、二番目の『本性を暴く真実の鏡』だが、これは恭弥曰く、本性と言うよりもその鏡に映った人間の前世やルーツの姿が見えるらしい。

そんな鏡が本当にあるのか思わず疑ってしまったが、その鏡はどうやら図書館城の中にあるらしい。

実際に図書館城にあるその鏡で多くの生徒が自分の前世やルーツを見ることが出来たらしい。

まあ、俺自身は蓮宮の生まれだけど前世を見てみたい気がするので早速図書館城に行ってその鏡の元に向かった。

意外にも鏡は無数の本棚が並ぶ部屋の壁に普通に掛けられていた。

鏡の周りには金の装飾が施された高級感の漂っていたが、それ以外は特に変なところが無い普通の鏡だった。

はて、これが写ったものの前世やルーツを見ることが出来る鏡なのか?

「千歳、試しに写ってくれないか?」

「まあ、私の前世は既に分かっているからね。りょーかい」

千歳は京都で自分の前世を知っているのでためらいもなくそのまま鏡の前に立って自分の姿を写し出した。

「おお!天羅の姿が見える!あ、金羅も見えるよ!」

『何?本当か?』

銀羅が千歳の隣に立ち、一緒に鏡に映った。

『おお、母上と姉上が見えるぞ』

「確かにこの鏡で私の前世が見えるね」

千歳の前世を銀羅と金羅のお母さんで、九尾の妖狐だった天羅。

それは分かり切っていたが千歳はこの鏡でそれを見られて少し感動していた。

「ほら、みんなも映って見て!けっこう面白いから!」

「じゃあ私から行きます!!」

「うん……!」

千歳の次は明日奈委員長が鏡に映った。

「おお、これが私の前世のソロモン王?あら、お髭を生やしたイケメンなオジ様ね」

ソロモン王は男性と記述があるが、明日奈委員長の前世がお髭を生やしたイケメンなおじさんか……何と言うか不思議な感じだな。

明日奈委員長自身はソロモン王の姿を見て面白そうに笑みを浮かべていた。

あまりショックじゃ無いらしい。

「ほら、サクラ君も見てみれば

?」

「俺は……期待しないがな」

明日奈委員長の次にサクラが鏡に映る。

「俺は……何だこれ?」

サクラは鏡に映るなり目を凝らして自分の姿を見る。

「どうしたの?」

「黒いマントをした男の姿が見えた。それに大きな鎌を持っているな」

「へぇー、不思議だねー」

サクラはその姿にあまり気にしていないようだけど、明日奈委員長以外の俺達は思わず戦慄した。

あの、サクラ……そ、それってもしかしなくても死神なのでは……?

断罪者の前世が死神……ものすごく納得出来るものがあった。

その後、気を取り直して恭弥と雷花さんもその鏡に映って見た。

恭弥はおばあさんの若菜さんのドリュアスの血が流れているので木の精霊の姿が見えて、雷神の子孫である雷花さんは女性の雷神の姿が見えたらしい。

そして、最後に俺の番となった。

この中で唯一前世やルーツが全く分からない俺はどんな姿が映るかみんな興味津々だった。

俺自身も自分の前世がどんな人だったのか興味がある。

千歳のように妖怪だったのか、恭弥や雷花さんのように聖霊の力を秘めた何かなのか……軽く目を閉じて恐る恐る鏡の前に立ち、ゆっくり目を開いて鏡に映った自分を見た。

しかし、そこに映ったのは俺が望むようなものでは無かった。

「誰だ……お前!?」

鏡には全身にくまなく刺青が刻み込まれ、長い白髪の髪をした俺と同じくらいの年齢の男が立っていた。

そして、その姿に反して綺麗な青空のような瞳で俺を見ると、頭に声が響いた。

『遂に御対面だなぁ……蓮音天音』

「お前、一体……?」

『俺か?俺様は……そうだな……まだ名前は明かせられねぇから、俺様の事は“クウ様”呼びな』

「クウ?」

『おいおい、いきなり呼び捨てか?まあ、良いぜ……これから長い付き合いになるんだ。仲良くやろうぜ』

手を伸ばして握手をしようとするクウに対し、俺は銀蓮に手を掛ける。

「……自分の事を話さない奴と仲良くなるつもりは無い」

『連れねぇなぁ。だが、覚えていろ。お前はいずれ俺様が貰うからな』

ニヤリと笑みを浮かべたクウに俺は鋭い視線で睨みつけた。

「何をふざけたことを!」

『ふっ……じゃあな、天音』

「おい!待て!!」

その男、クウが映っていた鏡がピシッとヒビが割れ、周りの世界が真っ白に染まっていく。

「天音!!天音!!!」

「ハッ!?」

千歳の俺を呼ぶ声に目を覚ました。

どうやらいつの間にか俺は倒れていて千歳達の心配する顔が目の前にあった。

「どうしたの!?鏡を見ていきなり倒れたから……」

『ピィ……』

『わう……』

「大丈夫だ、急に気分が悪くなっただけだから」

心配する白蓮と黒蓮を撫でながらみんなに大丈夫だと言う。

鏡に全身刺青の白髪男が映っていたなんて言えるわけがない。

あいつが……クウげ何者か分かるまでみんなには黙っておいた方が良いのかもしれない。

下手に話したらみんなを心配させるだけだ。

「……恭弥、天音の調子が悪いみたいだから少し休みましょう」

「ああ、そうだな。一旦地下室に行って天音を休ませよう」

「悪いな、みんな……」

一旦七不思議探検ツアーを中断し、千歳の肩を借りてアリス先生の地下室で休むことにした。




天音に不穏な影が出てきました。


よくある主人公のあれですかね(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ